もう二度と剣を持てないモードレッドとの優しい隠匿生活 作:オリスケ
吹き上がった砂塵が、視界を赤褐色に染める。
轟音の余波と暴風だけの、静寂。
やがて砂嵐が止み、視界が再び鮮明になり。
――地に立つオレを認めて、オデュッセウスは忌々しげに顔を歪めて見せた。
「誠に、愚かなりや、叛逆の騎士」
紋様を紅く灯らせた瞳を向け、ホメロスは侮蔑の言葉を続ける。
「我が千里眼は健在。貴様の霊基はありありと視えている。魔力は残っていても、器の方が崩壊寸前であろう。今この瞬間にも、内側から爆ぜてもおかしくない」
「……」
「その状態こそが、貴様の不出来たる証。より優れた神の威光をその身で浴びて、この上まだ醜態を晒すか。その意固地、あまりに無様であるぞ」
苛立ち混じりの声が、オレを蔑む。
感覚はまだ元に戻らない。先ほどの衝撃で、身を守る鎧は殆ど砕け散った。
痛みと衝撃で、脳味噌がミキサーに駆けられたみたいにグラグラする。
「……不出来だとか、出来損ないだとか、そんな事は関係ねえ」
力の差は圧倒的だ。神に人が立ち向かうのは馬鹿げた事だ。
そんな事は分かっている。でも、でも。
「テメエの、馬鹿みてえな力自慢が……世界を持つ資格なんかに、なるものか」
「……」
「オレは、ホムンクルスだ。お前の言う通りの、出来損ないの泥人形だよ……でもな、この世界には、そんなオレを愛してくれる男がいた。ホムンクルスのオレが、この世界で、いちばんと思えるくらいの幸せを手に入れられた」
大地に突き立てた剣を杖にしながら。オレは立ち上がる。 霞む目を見開いて、奴を見つめる。光を失った盲目の目を、嘲笑と共に睨み付ける。
「何度でも言ってやる。世界は誰の物でもない。どんな命だって、等しく尊いんだ……優れた命だとか、元々の所有物とか関係ねえ。今は、人の世なんだ! テメエみたいな老害が、しゃしゃり出る場所なんて有りはしねえんだよ!」
「老害、だと……!」
「ああそうさ、昔が良かったって呟くジジイと何も変わらねえ! 歴史を作った功績こそあれ、今のテメエの言葉には、耳を傾ける一片の価値もありゃしねえぜ!」
そうだ、オレはこの世界の素晴らしさを知っている。
一人の人間として生きる事の嬉しさを、愛し愛される事の喜びを知っている。
かつて神は人を愛しただろう。それはさぞかし輝いていただろう。命を燃やして、誇りの為に戦っただろう。
けれど、神が退去したって、その営みは続いた。
命ある限り、英雄は生まれ続ける。世界は輝きを放ち続ける。胸が一杯になるような愛が、誰かを幸せにし続ける。
だからオレは折れない。
守るべきモノが、オレの背中を押してくれる。立ち続ける勇気をくれる。
「当然かもしれぬが……やはり、分かり合えぬか」
オデュッセウスは微かな落胆を滲ませ、すぐにそれを、途方もない憤怒の魔力で吹き飛ばす。
矢を番えた弓を手にし、そこに今までで最も強い魔力が籠もる。
燃え盛る黒紅の魔力を浴び、オレの眼と盲目が交錯する。
「もはや言葉を交わす価値も無い。十二の斧を穿ちし我が剛弓によって、風穴を空けて散るがいい」
「ほざけ老体。テメエの使命と、オレの覚悟。どっちが重いか、白黒ハッキリ付けようじゃねえか」
「この後に及んで烏滸がましいわァァ! 神の威光の前に、藻屑と散れぇ! 『
咆哮と共に、顕界まで引き絞られた弦が解き放たれる。
轟! と世界が揺らぐ。
射出された光芒が、空間を割る程の速度と威力で、オレの胸を穿つべく飛翔する。
回避は不可能。故にこそ、立ち向かう。
「怯むものか! 貫けぇ、クラレントぉぉぉぉ!」
オレはありったけの魔力を籠めて、クラレントを投擲した。
焔の如き燃え盛る黒紅と、激しく迸る赤雷が激突する。
互いの全力を籠めた激突は、あらゆるものを吹き飛ばす大爆発を巻き起こし、とうとう両者一歩も引かずに互いの刃を打ち合った。
ギィン! と目覚ましい音を奏で、矢とクラレントが、方々に吹き飛んでいく。
それを目で追う暇は無い。オレは直ぐに両脚に力を籠め、オデュッセウスに向けて肉薄した。
「学ばぬ奴。人の愚かさを、自ら体現しに来たか!」
オデュッセウスが大弓を振るう。力では決して叶わないという現実を知らしめる横薙ぎの一撃。
それは途方もない威力故に、大振りで読みやすい。オレは感覚を鋭く研ぎ澄ませ――迫り来る弓の柄を、オレの足裏で踏み潰した。
「ぬぅっ!?」
「テメエこそ、いつまでも無敵を気取ってんじゃねえぞ! テメエの目の前にいるのは、あらゆる道を切り開く円卓の騎士サマだ!」
大地に縫い付けた大弓。そこにぴんと張られた弦に、オレは更に自分の脚を叩き付けた。
豪腕のオデュッセウス以外に引ける者無しと謳われた剛弓は、しかしオレの全霊の蹴りを受けて、グンと撓む。
歌われし逸話の通りの力で、弓はオレの蹴りを受け返し、オデュッセウスに向けて思い切り射出した。
驚きの表情を讃えたオデュッセウスの髭もじゃの顎に、先の何倍もの破壊力の膝が突き刺さる。
「が、ぱぁ!?」
「オラ、今度は効いたろ! モードレッド様の喧嘩殺法、カウンターキックだ!」
続けてオレは魔力を腕に。浮き上がったオデュッセウスの手から、剛弓を弾き飛ばす。
互いに徒手空拳。オレは片方しかない腕を突き出し、クイクイと奴を挑発する。
「来いよ、老体。命の格がとか抜かしてると、あっという間に刈り取っちまうぞ!」
「ッどこまでも礼儀を知らぬ、猿めがァ!」
山のような巨体が、拳を握り迫り来る。
繰り広げられるは、互いの誇りと、世界を駆けた一騎打ち。
オデュッセウスが振り抜いた拳は大地を抉れば、オレの蹴りは赤雷を纏い奴の骨の髄を痺れさせる。
互いの一発一発が、重機のように強烈な一撃。肉を打つ強烈な打音が空間を戦慄かせる。
覚悟は互いに一歩も譲らない。苦悶の呻きの次の瞬間には怒りの咆哮が喉を抜ける。互いの血反吐が荒野に飛び散り、汗が舞う。
「ハッハハハハァ! 威厳も何もねえなあ! 泥人形と泥塗れになるのは愉しいかよ、オデュッセウス!」
「ぬぅぅぅぅ! 貴様貴様、貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!」
「オォいい発破じゃねえか! オレは剣試合じゃともかく、喧嘩じゃ絶対に負けやしねえんだよ!」
それは命を賭けた果たし合いながら、余りに泥臭い、意地の張り合いであった。その土俵に立たされた恨めしさから、オデュッセウスは益々怒りを募らせる。オレは胸に沸き立つ昂揚で以て、奴を煽り倒す。
「何が使命だ! テメエが抱えたそれも、結局つまんねえ意地に違いねえだろうが! 果たされるべき? ハッ! 駄々を捏ねてんじゃねえよ、ガキが!」
「黙れぇぇ! 出来損ないが、我が宿願を愚弄するなぁぁぁぁ!」
「その凝り固まった脳味噌を殴って、正気を戻してやる! あるいはそのままぶち壊されて、あの世で悔い改める事だな!」
ゼロ距離に肉薄しての、息つく間もない肉弾戦。
目を潰して神霊を視るまでに至った千里眼は、魔力の塊であるサーヴァントにとっては、未来予知に近い性能を発揮する事だろう。
だが、高速の戦いに於いては、その処理は追いつかない。視覚的な情報が遮断された盲目は、そのままオレの付け込める隙になる。
ヴンッ! と空気を抉るフックに横髪を数本巻き込まれながら、オレは空いた脇腹に拳を叩き込む。レバーを抉る確かな手応え。頭上から吐血の雨が振る。
苛立ち混じりに振り上げられた蹴りを、鼻先を削るような紙一重で躱し、浮いた膝頭にまた拳。硬い骨を直接殴りつけられる痛みに、オデュッセウスが苦悶の呻き声を漏らす。
「ハッ、顔面がガラ空きだぜ! 今度こそ、脳天貫くクリティカルを――」
「しゃああああああ!」
俯いた顔面を抉るべく繰り出したアッパーカット。
しかしオデュッセウスは、あろう事か気合い一喝。全力の頭突きで以て、オレの拳を迎え撃った。
それはさながら、鉄球とぶつかったよう。余りに重い衝撃に、オレの身体がじぃんと痺れる。
その隙が、勝負を別つ決定打となった。
「ッしま――」
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!!」
無防備なオレに振りかぶられる、丸太のような腕。
それはオレに横薙ぎに叩き付けられ――ひしゃげて断面を剥き出しにした左腕に、強かに叩き付けられた。
ぼぢゅ、という酷い音。肉が潰れ、身体が爆ぜる音がする。
「かッ――」
呼吸が止まる、絶大な痛み。
電気がショートしたように、視界がバチンと真っ白に染まる。それはこの戦に於いて、致命に至る決定的な隙だった。
「土に還れ、泥人形めがァァァァァ!」
ようやくクリアになった視界が捉えたのは、顔面目がけ突き出された拳。
その拳と一緒に、オレは凄まじい勢いで大地に叩き落とされた。
鼻をバキバキにへし折ったオデュッセウスの拳が、そのままオレの首根っこを捕まえる。
憤怒に満ちた悪魔の形相がオレに覆い被さり、固く固く握りしめられた拳が、オレの土手っ腹に深々と突き刺さった。
「が、ぽ……っ!」
「不敬でッ愚昧なッ劣等種が! 許さぬ許さぬ! 許さぬぞぉぉぉぉ!」
「がっ! ばはっ! ぐぼ、ご――!」
何度も、何度も。怒りに駆られた拳が、オレの腹に降り注ぐ。
腹筋が壊れ、嘔吐感に喉が詰まる。ぱぁんと内臓が潰れ、体内がぐしゃぐしゃに潰されていく。
鼻から、口から、目からも、胃液とも血ともつかない液が噴き出し、ホメロスの手をべっとりと汚す。それでも拳は止まらない。ただ黒々とした怒りで以て、オレの身体を徹底的に粉砕する。
殺すのではない、壊す為の拳。
数えるのも億劫な数を振り下ろされて、オデュッセウスはようやく、巨体をオレから退かした。
「っ……か……か、ほ……」
殴り続けられた腹は青あざで紫に変色し、骨も内臓も挽き潰れて混じり合っているのが分かる。
辛うじて息ができるのが奇跡。それも肺を動かす度に、途方もない激痛に魂が震える。
もはや、人の形をしたずた袋。そんなオレに向けて、オデュッセウスは冷ややかな眼を向ける。
「はぁ、はぁ……これで、理解できたか、泥人形。詫びの言葉があれば、聞くぞ」
「げ、げぇ……へへ、テメエ、今も盲目なんだよな?」
「……そうだが、それがどうした」
「ああ、見せてやれなくて残念だ……今、テメエに中指を突き立ててる」
「っ――」
足裏が、既にブチ壊れたオレの土手っ腹を踏み付けた。混じり合った体液が、噴水のようにオレの喉から吹き出す。
「げぼ、げっほぉ! う、げぇぇ……!」
「もういい。最後の戦いと、貴様に何かを期待したのが間違いだった」
苦々しくそう吐き捨てて、オデュッセウスは本当に、オレを殺す覚悟を決めたらしい。万感の思いを込めて、拳が握られる。
その、死神の刃を振り上げた老爺に向けて、オレはニッと唇を吊り上げた。
「……なあ、オデュッセウス。オレに勝った後、テメエはどんな世界を作るつもりだ」
「――神の世だ。それ以外にはない」
「神だけの世か? お前の世界は、神と人で成り立っていたにも関わらず……お前は、人間の方を切り離すつもりかよ? そっちも、世界の大事な一部だったんじゃねえのか?」
死を目前にした霞む意識でも、奴が息を飲む気配を感じる。
「何を……」
「いくら綺麗な湖でも、淀みがなければ魚は住めない。神だけの世界には、一体何が生まれる? ……古代は、神と人の世だった筈だ。どんなに愚かな人間だって、世界に欠かせない一部だったんだ」
「……」
「お前を慕う兵はいなかったか? テメエの国に、護るべき民草はいなかったか? なあ、よく思い出せよ。眼を潰して神を見る前の光景は、本当に全部下らなかったか?」
「……黙れ」
オデュッセウスの声が、震える。明らかな狼狽の色を浮かべて。
「分かるだろ、オデュッセウス。テメエの論は最初から破綻してるんだ。テメエが心酔する神は、世界の一部の、上澄みでしかない。それで世界のあるべき姿だなんて言うんだから、お笑い種なんだよ」
「黙れ、黙れ……!」
「断言してやる――テメエみたいに耄碌しきったジジイには、絶対に素晴らしい世界なんか作れない」
「黙れぇぇぇぇぇ! 世界と共に、虚構に沈めぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
命を刈り取る拳が、振り上げられる。
避けようの無い死が、すぐそこに在る。
ギリと握りしめられる拳。怒り狂ったホメロスの咆哮。
朦朧とする視界に、死が迫る――。
鮮血が、散る。
真っ赤な血飛沫が荒野の空に舞い、紅い雨になって、ぱたたとオレの頬を打つ。
オレはゆっくりを目を開けて、ぼやけた視界が、確かに実像を捉える。
拳を振り上げたまま、何が起きたか分からないと呆然とするオデュッセウス。
その目は――呆然と見開かれた盲目は――
――自分の脇腹を貫く、銀の刃に注がれている。
「――そうだ、貴方は間違えた。この世界の何が素晴らしいかを、最後まで理解できなかった」
オデュッセウスの背後から響く、優しく凜とした声。
呆然と貫かれた腹を睥睨し、それからオデュッセウスは振り返り、ようやく認識する。
自分の背後。
盲目の眼と怒りに潰れた心では感じる事のできなかった存在。
余りに矮小で、惰弱な存在。
何の価値もないと葬り去り――その語り部の能力を失った今も忘れ去っていた人間。
吹き飛んだクラレントを拾い、決死の思いで飛び込んだ男。
無価値と断じられた男が!
今、神に反旗を翻す!
「
「ッ凡夫、風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
全てを理解したオデュッセウスが、絶叫を天まで轟かせる。
振り上げた腕が、轟! と音を立てて振り下ろされ、背後のマスターに直撃。マスターの身体が紙細工のようにひしゃげ、遙か彼方まで吹き飛んでいく。
「う、お、オオオオオオオォォォォォォォォ!!」
オレはありったけの力を籠めて、魂を奮い立たせる。
翡翠の瞳が見据えるはただ一点。
マスターが切り開いた突破口。
今この瞬間、勝利を約束する刃!
神の脇腹を貫いた、銀に輝く叛逆の剣!
「この我がァァ、下等な者共などにぃぃぃぃぃぃ!」
「こいつで――終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
オレは飛び跳ね、絶叫と共に、脇腹を穿つ刃を渾身の力で蹴り上げた。
魔力を乗せた一撃は強かに鋼を打ち、刃が跳ね上がる。
クラレントは赤雷を纏いながら脇腹を縦に裂き、骨を砕き、とうとう奴の肩をもぎ取りながら、天高く打ち上がった。
燃え立つ空に、血の軌跡を描きながら、銀の剣が翳される。
「ッ――が――ばぁッッ」
脇腹から肩にかけて、身体を縦に裂かれたオデュッセウスは、致死の呻き声を上げながら、大地にドサリと膝を着いた。
ようよう立ち上がるオレの目の前で、支えを失った奴の左半身がでろりと捲れ、ドボドボと途方もない量の血を落とす。
致命傷かどうかなど、聞くまでもない。
「……な、ぜ、だ……!」
舞い落ちたクラレントを受け取り、ビッと振って血を振り払った時。オデュッセウスは息も絶え絶えに、そう問うた。
「我、は……誤っては、いない……神は、唯一絶対の……存、在で……!」
「いいや、テメエは間違ってるよ」
冷たく、憐憫を込めて、オレは断言する。
「眼を潰して神を見た時、テメエは同時に、人を見る事を辞めちまった。神の輝きに見惚れて、人も平等に輝く存在で在る事から、眼を逸らしてしまったんだ」
確かに、彼の生きた世界は輝いていたかもしれない。
神と人との共存は、心躍る世界かもしれない。
けれどその賛美は、決して――今を否定する侮蔑には繋がらない。
彼はそれに思い至らなかった。心まで盲目になっている事に、自分自身も気付けなかったのだ。
「その誤りが分からない以上、お前は勝てねえよ。お前は時代に取り残された、過去の亡霊だったって事さ」
「っ……ふ、ざ、けるな……!」
もう風前の命であるにも関わらず、オデュッセウスは唸る。
血塗れの歯をギリと噛み締め、立ち上がる。
人外の快復力が、裂けた腰から肩の断面を、ウゾウゾと肉で覆っていく。
人の形でさえなくなったソレは、まさしく理性を失いし怪物のそれ。
その醜く悍ましい姿は――心底、興醒めで。
オレの最後に残っていた敬意が、その失望で吹き消える。
「オレが言うべきじゃねえかもだが、生き汚えにも程がある……お前のそれは、醜い亡者の執念だぜ」
「我は……神、神、かみ、をぉぉぉぉぉ……!」
「ああ、そうだ……一応、ひとつ礼を言っておかなきゃいけないな」
光を失い、とうとう理性さえ無くした瞳に、クラレントを突きつける。
そしてオレは、怪物と課した古代の妄念に向けて、手向けの言葉を捧げた。
「最後まで、下衆でいてくれてありがとうよ――お陰で、躊躇無く首を撥ねられる」
「ぉ、ォォォォォォォァァァァァァアアアーー!」
醜い怪物が、狂った咆哮を上げながら迫る。
最早、未練も、敬意も必要ない。
捧げるのはただ、一閃。
醜い両腕をかいくぐって閃いたクラレントは、過たず奴の首を捉え、怪物の身体から撥ね上げた。
ズズゥン――と地響きと共に倒れた怪物は、光の粒になって消滅していく。
大地に転がった奴の首もまた、後を追うようにして、淡い光に包まれていく。
神話を紡ぎ、歴史を始めた大いなる語り部は、最期にはその口から哀れな呪詛を吐き出す怪物と化して、妄執と無念に囚われたまま、この世界から姿を消した。