「見て下さい、天都君……。天都君にオナニーを見てもらえるって思っただけでもうこんなに……」
「ごくっ……」
ベッドに膝立ちになった寧々さんが自らの手でスカートを捲り上げることで、その奥にある既に愛液でびしょびしょになった薄桃色のショーツが露になり、その姿を目にした私は思わずごくりと生唾を嚥下した。
寧々さんの荒い呼吸と、彼女がこちらへと近づいてくる度にギシリと鳴り響くベッドのスプリングの音が私の気持ちを否応なくいかがわしい方向へと持っていく。
「私がいやらしく乱れる姿、じっくり堪能してくださいね……」
そう言いながら焦らすような手つきで寧々さんは白シャツのボタンを外していき、やがてその下にあるショーツとお揃いの色のブラが姿を現した。それと同時に寧々さんの甘い香りが漂ってきて、私の思考は一瞬で寧々さん一色に染まっていく。
そうして、ブラのホックだけを外して半脱ぎの状態になった寧々さんは、私の身体を背もたれにするようにして身体を沈めて、それを私は無意識の内にそっと後ろから抱きしめた。その自身さえも予期していなかった行動に反射的に腕を離そうとしたが、そうする前に寧々さんが片手を私の交差する両腕に重ねてそれを阻止してくる。このまま抱きしめていてくれということだろうか。
お互いに無言ではあったがそう言われたような気がして、私は結局そのままの姿勢で、寧々さんが傍らに置いてあった色々な玩具の中からローターを一つ摘まみ上げるのを黙って眺めることにした。そして、寧々さんはそれをゆっくりと起動させて、自身の薄い色の乳首へと自らの意思で運んでいく。
「んっ……」
ローターが与える弱い刺激を受けて、寧々さんは僅かに身体を浮かしながら小さく甘い吐息を漏らした。昨日の行為の時に耳にしたのとは少し毛色の違う悩ましげな声に、私は早くも下腹部に熱を帯び始めるのを感じたような気がした。
「天都君……っ」
小さな駆動音と甘い吐息の音が静かな寝室に響いている中、寧々さんが上擦った声で私の名前を呼ぶ。
片方の手で豊満な胸を揉みしだきながら、もう片方の手で振動し続けるローターを乳首に付けたり離したりを繰り返して、断続的に性感を刺激し続けている姿に私は確かな郷愁を覚え、こういったことをした経験があることを感覚として捉えた。その時の私は確か、寧々さんの耳元で──
「気持ち良い、ですか?」
「っ……! はい……っ♡」
そう囁いたはずだ。
それが真実であったのか、寧々さんは私の言葉に対して分かりやすく反応を示して、声の甘さの濃度が一段階増したような気がした。そして、それに応じて身体が更に強い快楽を求めたのかは分からないが、何も持っていなかった手でもう一つのローターを拾い上げて起動させる。
「あぁっ……ん……くふぅぅっ……!」
二種類の振動を左右の乳頭で受けて、寧々さんは更にその身を捩らせた。
吐息の様な嬌声は徐々に激しさを増していき、じっとりと肌を湿らせる汗が寧々さんの魅惑の肢体を艶めかしく彩っていくようだ。
「天都君っ……ダメ……!」
妄想の中の私に犯されて、寧々さんは現実の私に身を擦らせる様にして身体を動かし続ける。
記憶の中の以前の私との思い出に浸りながら乱れる寧々さんの姿は、確かに容赦なく私の情欲を刺激してくるものであったが、同時に心の隅の方でモヤッとした何かを私は感じるような気がした。
「ひゃっ……!?」
「ごめんなさい、少し我慢できそうになくて……」
「ふふ、いいですよ……私も、天都君に気持ち良くしてもらいたいです……」
だからだろうか、私は最後まで眺めているつもりであった寧々さんのマスターベーションに介入するように、彼女を抱きしめていた腕を動かして、下から寧々さんの乳房を掬い上げるように揉みしだき始める。突然の私の攻勢に寧々さんは驚くような声を上げたが、それもすぐに扇情的な微笑みの裏に引っ込んでいって、私の愛撫を受け入れてくれた。
「んんんっ! はぁ、はあぁぁ……んっ……!」
重なる白き柔肌の双手からするりとローターを譲渡されて、私はそれを受け継ぐ形で寧々さんの敏感な部分を振動で刺激し始めると、寧々さんは一際大きな嬌声を上げて身体を悩まし気に動かす。
自分でやるのと人にやられるのとでは感覚が違うのだろう。今はその性感の変化に翻弄されているといったところか。
「天都君っ……! 好き、好き好き好きぃっ♡」
それでも元の趣旨は忘れていないのか、寧々さんは私への愛を言葉にしながら、ローターを手渡すことでフリーになった両の手を自身の下半身へと持って行く。そして、それをもうぐしょぐしょになってしまった下着の中へと侵入させて、敢えて私にその音を聴かせるためにぐちゅぐちゅと大きく水音を立てるように掻き回し始めた。
「ひゃあぁぁああぁぁぁっ♡♡」
ある程度そのまま時間が流れて寧々さんの快楽の進行が遅くなり始めた頃、それを見計らった私はローターの出力を一段階上げてそれを胸に沈みこませるようにして押し込むと、寧々さんは可愛らしい嬌声を上げながらビクリと大きく身体を跳ねさせる。
突如押し寄せる性の衝動から逃れるようにして、寧々さんは上半身を大きく右方向に振ろうとするが、後ろから抱きしめている私がそれを封じて、快楽の渦の中に彼女を無理矢理押し込んだ。それに対して、寧々さんは口から大きく呼吸を漏らしながら仰け反るようにして私に全身を押し付けてきて、イキそうになるのを耐えているようだった。
「寧々さん、イっていいですよ……。寧々さんのえっちな姿をたくさん見せてください」
「はひっ♡ いっぱいイきまひゅっっ♡」
そんな寧々さんに私は耳元でそう囁くと、彼女は嬌声混じりの言葉を大声で私に伝えてくる。その遣り取りに何処か懐かしいものを一瞬だけ感じたような気もしたが、今はそれを無視して私は寧々さんが絶頂出来るようにローターを持つ手を動かし続けた。
「イくっ、イきますっ♡ はっ、あぁぁっ、んんんんんっっ♡♡♡」
そして、敏感な所を激しく攻め立てられて、自身の手でも攻めていた寧々さんは一度目の絶頂を迎える。その身を弾かれるように弓形にしならせて、その後ぐったりと私に全身を預けてくる姿は、昨日見た攻めっ気たっぷりの彼女とは違った妖艶さを孕んでいて、また、昨日よりも私の心を強く揺さぶるような気がした。
「にゃっ♡ らめっ、天都君……ッ♡ イったばっかりは気持ち良すぎて……っ」
その揺れる心に従って、私は未だ余韻の只中にある寧々さんの肢体を弄ぶように、彼女の静止の声を無視して性的な刺激を発生させるために動かし始める。それはまるで、そうした方が寧々さんが悦んでくれると分かっているかの如き、一切の淀みの無い動作だった。
弱々しい力で私の手を掴む寧々さんの少し小さな手をするりと抜けて、私は片方をそのまま胸に、もう片方を秘部へと配置して、更なる情欲を引き起こすために玩具を擦り付けるようにして寧々さんを弄り続ける。
「やっ、あぁぁんっ♡ 好きっ、天都君に虐められるの好きぃっ♡♡」
快感でぷっくり膨れ上がった寧々さんの綺麗な乳首をくにくにと摘まみながらローターをくっつけて、もう一方では下着越しに陰核を掠めるように秘裂に沿って何度も大人の玩具を上下に動かしていると、寧々さんは甘える様な喘ぎ声を上げながら身体の奥底から湧き上がってくる快楽の波を享受して、来たるべき二回目の絶頂に備えて私の衣服を両手で強く握りしめた。
「あぁぁっ、やぁんっ♡ イくっ、イくぅぅぅぅぅッッ♡♡♡」
そして訪れた二度目の絶頂は極大の快感を寧々さんに齎し、彼女の腰だけが弾けるように跳ねていって叫び声にも近い嬌声を彼女に上げさせた。
一頻り衝撃が彼女の全身を駆け抜けていくと、寧々さんはビクビクと身体を大きく痙攣させながら身体を弛緩させて、私の服を掴んだままずるずると姿勢を崩していく。快楽で緩み切った寧々さんの表情は普段の彼女からは想像できないほどだらしなく、その様子から余程道具で攻められるのが気持ち良かったようであると推測できた。
情動に任せて三回目もヤろうかと思いはしたが、心ここにあらずといった表情を浮かべて、上のお口からも下のお口からも大量に分泌液を零す寧々さんを見ていると、流石にそれを実行に移すのは憚られる気がする。
「寧々さん」
「はひ……? んっ、ちゅぷっ……あむっ……♡ んひゅっ……ちゅるるっ……♡♡」
しかし、何もしないのはどうにも我慢できず、私は折衷案として寧々さんの口元に付着していた唾液ごと舐め取るようにしながら寧々さんの桜唇を豪快に奪い去った。
私が呼びかける声に焦点が合っていない瞳をこちらに向けながら返事をする寧々さんに唇を重ねて、性感を刺激するのではなく、終息させるようなキスを続けていると、徐々に正常な意識を取り戻し始めた寧々さんもそれに応えるようにゆっくりと自身の舌を動かして私のそれと絡め合わせてくる。そうして、粘性の液体が混ざり合う音が耳に響くのを楽しみながら、私たちはそのままたっぷり五分間の口吸いを続けた。
「ぷはぁっ…………えへへ、天都君に犯されちゃいました……♡」
甘い接吻から解放された寧々さんは、私と目が合うとその表情をにへらと緩ませて、心底嬉しそうな声色でそう言葉を紡ぐ。当初の目的とは外れてしまったような気もするが、しかし、その花が咲いたような笑顔を見ることで何だか大切なものを思い出せたような気配を私の魂は感じていた。
そうだ、こういう風に私が寧々さんを攻めるのが私たちの性交の常ではなかったか。それとなく寧々さんから聞かされていたことではあったが、今確かに私は感覚としてそれを理解したような気がした。
「少しだけ、思い出せました」
「本当ですか?」
私はそのことを寧々さんに伝えるべく口を開くと、寧々さんはハッキリと見て取れるレベルでその顔色を明るいものへと変化させる。それは今まで見てきた仄暗い何かを感じさせるものではなく、歳相応の可愛らしい笑みだった。
「いつも、こういった行為に及ぶ時は私が寧々さんを攻め立てて、それで、私は私の攻めで気持ち良くなってくれる寧々さんの姿が好きだった……」
思い出した事柄を噛みしめるようにしながら言葉にすると、笑顔を浮かべた寧々さんはそれを強く肯定するように何度も何度も首を縦に振る。
何だか微妙にカッコつかないが、本当に記憶が僅かながら戻ったようだ。その事実が私の心を覆っていた罪悪感を少しだけ晴らしてくれた。
「これからは、前と同じように私がリードしてみますね。……まだ、技術の面では拙い所もありましょうが、頑張ります」
「はいっ」
幼子の様な笑顔を浮かべて喜びを露にする寧々さんが愛おしくて、私はつい彼女の頭を撫でながらそう宣言すると、寧々さんは感極まって私に抱き着きながら返事をする。初めて恋人の何の憂いもない心の底からの笑顔を見ることができて、私も彼女と同様に自然と自身の口角が上がっていく気配を感じた。
十五年越しに取り戻した私の記憶の欠片。その鍵は寧々さんと共に過ごすことにあるのかもしれない。何となくそう考えていた私であったが、今回の一件で、改めて強くそう思うのであった。
ようやく引っ越し作業が終わりました。