まだまだ階段を昇り続けているわけだが、いかんせん場の空気が悪い。
「「………………」」
ポンズとレオリオは一気に気まずそうな表情に変わって走り続けているし、クラピカは――。
あははは……、クラピカは瞳のハイライトが消えてしまってる。
まあ、母親を父親から寝取っていた事を、寝取った男から聞かされればなぁ……。
「あっ、そういえば、クラピカ」
「……なんだ?」
いやいや声かけたぐらいで殺気向けてくるなよ。まあ、いいや。それより――。
「――クレスタの瞳……いるか?」
「――っ!? 持っているのか!?」
必死の形相で詰め寄ってくるクラピカ。
「ああ、当然だろ。愛し合った相手の瞳が美術品として扱われるのは嫌だったからな。さっき名前をあげた女の瞳は全部俺が持ってるんだよ」
「――っ」
クラピカの瞳のハイライトが戻っていく。
「マジかよ……。さっき10人近く名前あげたよな? ただでさえ『緋の眼』っていやあ、1セットでもかるく億は超えるはずだろ……」
「ああ。手に入れるのに300億近くかかった」
最初はクレスタ達を殺された恨みを晴らそうと、知り合いで同郷だった旅団を女性メンバー以外全員殺そうと思って戦い挑みかけたんだ。
あの時は、この世界ではじめてスーパーサイヤ人に目覚めたときで、理性が抑えられなくてウボォーやノブナガ、フェイタンとか本格的に戦闘に移る前に殺しかけて、いざ旅団フルメンバーVS俺っていう戦闘が始まりそうになったとき、マチとパクに説得されてなかったら、クラピカが復讐を行なおうとする大分前に、俺が旅団を滅ぼしていた事だろう。
結局は旅団の一部、まあ、マチとパクと個人的に取引をして、旅団の団長であるクロロが『緋の眼』を愛でるのに飽きたら、まず俺が欲しい『緋の眼』を金で買い取る権利をもらう事でこの件を不問にしたんだったよな。
「「300億ぅ!?」」
「――っ!」
300億で緋の眼を買い取ったという俺の言葉に、ほぼ同時に驚きの声をあげるポンズとレオリオ。クラピカも驚愕し、奇異な眼でこちらを見てきた。
「……本当に持ってるの?」
「まあ、クレスタのはな」
ポンズの確認するような問いに素直に答えると、俺の答えに疑問を持ったクラピカがまた訊ねてきた。
「クレスタのは――、というのはどういう意味だ? 他の緋の眼はどうしたんだ?」
クラピカの問いに頭をかいて正直に答える。
「クルタ族の村に埋葬したよ」
「――っ、そうか……」
「ん!? なんでクラピカの母親の眼は持ってるんだ!?」
相変わらず大声で話すレオリオ。辛いなら話さなきゃいいのに。
レオリオの問いに同じく疑問を持ったようなポンズとクラピカ。どうせ聞かれるんだろうから先に答える。
「クルタ族の女のなかで特に愛していたし、愛してくれた女性だからだよ。どうしても埋葬する気になれなくて、ずっととっていたんだ」
「――っ」
複雑そうな表情のクラピカ。
「クレスタの息子になら、クレスタの眼を譲ってもいいぞ」
「…………本当にいいのか?」
疑うような問い。
「ああ。金なんてとらねえし、ただで譲ってやるさ」
「……ただ? 手に入れるのにかなりの金を使ったんじゃないのか?」
「ふん。さっきも言っただろ。買い取った眼を埋葬したって。美術品とかコレクションする事が目的だったら、わざわざクルタ族の村まで行って埋葬なんかしねぇよ」
「それは――、そうだな……」
クラピカは俺の答えに満足した様子で気を抜いた。
「で、どうする? いるのか? いらないのか?」
「…………」
無言で悩んでいたクラピカだったが、心を決めたようだ。
「いや、いい。おまえが持っていてくれ」
「いいのかよ、クラピカっ! おまえの母親の眼なんだろう!?」
「ああ。不本意だが、複雑だが……彼ならな。私がハンターになりたい理由は復讐だが、もう1つの理由は緋の眼の回収だ。リョウは仲間の眼を信じられないほどの大金を出してまで買い取って埋葬してくれたんだ。こちらが感謝したいぐらいだからな」
「そうか……」
レオリオは一言呟いたあと話す事を止めて走りに集中した。クラピカも体力を温存するために走りに専念した。
さてと、話は終わったな。
「ポンズ、まだ余裕か?」
「ええ、まだ大丈夫よ」
嘘を言っている感じはしないし、体の疲労蓄積度もそこまでいっていない。
ここで前方を走っていた受験者達が騒ぎ始めた。
「光だ!」
「もうすぐゴールだ!」
どうやらもうすぐ地上へ着くみたいだ。
「スパートかける?」
「いや、まだ試験会場についたとも限らないし、体力は温存しておいた方がいい」
「……わかったわ」
このまま一定のペースを保ったまま俺達は地上まで走った。
◆
先に地上についていた受験者に続いて、俺とポンズも地上に出た。
周りに広がるのはどこまでも続いている湿原だった。
試験官は一旦立ち止まり、こちらを向いて説明を始めた。
「ここはヌメーレ湿原、通称『詐欺師の塒』。二次試験会場へはここを通って行かねばなりません」
「詐欺師の塒……」
どうやらポンズはこの湿原の事を知っているようだ。まあ、幻獣ハンターらしいからな。
試験官が知らない受験者のために説明を始めた。
「この湿原にしか珍奇な動物達。その多くが人間をあざむいて食料にしようとする狡猾で、貪欲な生き物です」
試験官はこちらを抜いて指を立てる。
「十分注意してついて来て下さい。だまされると、死にますよ」
他の受験者達が息を飲む。
目の前に広がるのは一見普通の湿原だけど、人間を騙して食う動物が住んでるんだからな。騙されないように警戒するだろう。
ここで入り口のシャッターが下りて、一回目の振るい落としが行なわれた。
ん~、ざっと100人近く減ったな~。
「ねえ、リョウ。ハンター試験って毎年こんなに危険な事ばかりやるの?」
ポンズが小声で聞いてきた。
「まあ、毎年こんな感じだね。毎年こんな感じで試験の度に受験者の何十人かは死んじゃうんだよ」
「……そう」
俺の言葉を聞いてポンズは改めて周囲を警戒した。
受験者達が気をつけて、試験管のあとに続こうとしている時に、大声がとんだ。
「嘘だ! そいつは嘘をついている!」
大声で叫びながら入り口の影から飛び出してくる男。体にいくつも傷を作った男で、自分の事を試験官だといい。サトツという試験官によく似たサルを受験者達に見せた。
――のだが……。
ヒソカに念能力の応用、「周」でほんの少しだけ強化されたトランプを本物と偽者か関係無しに投げられ、偽者はヒソカのトランプを受けきれずにあっさりと殺され、ヒソカのトランプを受けきったサトツが本物だという事が証明された。
ってこっちにも投げようとしやがったな?
はぁ……、本当にウザイ奴。
気をとりなおして走り始めたけど、ヒソカの殺気は高まったまま……。しかも、霧が出てきた。
これはマズイな。
ヒソカの少し前を俺とポンズは走っているが、近くにいたら攻撃される可能性がある。
「ポンズ」
「……ええ、わかってるわ。ペースを上げましょう」
ポンズもヒソカが霧に乗じて受験者を殺すかもしれないと理解した様子で、ペースを上げる。
「レオリオーー! クラピカーー! キルアが前に来た方がいいっさー!」
他にも気づいたヤツがいたようだ。っていうかたぶん406番の子供か。
っていうかキルアって……ああ、このオーラ。ゾルディックの秘蔵っ子か。それと、イルミのヤツもきてるようだ。
っていうかすぐ近くでかくかく頭を揺らしながら走っていた。
あははは……、やっぱすごいなイルミの変身。まったくイルミの原型ないじゃん。
とりあえず知り合いだし、近づいて声をかける。
「おーい」
ん? 口の前で本名で呼ぶなと指を立てやがった。
「ギタラクル」
「ああ、わかったよ。じゃあギタラクル。久しぶりだな。おまえがハンター試験を受けるなんて、ハンターライセンスが必要にでもなったのか?」
イルミは走りながら、完結に答える。
「うん。仕事で。あとは監視」
監視ねえ。……やっぱキルアのか?
指で空中に文字を描いて尋ねると、こちらの予想通り頷いて、空中に
『俺が試験受けている事はキルアには内緒にしといて』
と返してきた。
「ほんと過保護だな」
声に出して呆れながら言う。
「まあね」
あ、そうだ。
「ポンズ。ちょっと着て」
「え? ……わかったわ」
見た目でヒソカ以上に危なそうなヤツに声をかけて話し始める俺を警戒して、少し後ろに下がって走っていたポンズにこちらへ来るように言った。
ポンズは警戒しながらも俺の横に並ぶ。
「この子はポンズ。ギタラクル、この子には絶対に手を出すなよ」
「わかったよ。覚えておく」
俺の言葉になんら疑問も思わずに頷くイルミ。
殺し屋一家とは知り合いだし、正面から俺と戦っても勝てない事も理解しているだろうし、殺し屋といっても戦闘狂でも快楽殺人犯というヤツでもないし、俺の事もよく知ってるだろうからな。
下手に俺の恨みかう事も敵対する気はないだろうからな。
「じゃ、俺とポンズは先に行くな」
「分かった」
俺はポンズを引き連れて前を走る。
「ねえ、リョウ。あいつもやっぱりヤバイヤツなの?」
少し離れた位置でポンズが訊ねてきた。っていうかやっぱりって。まあ見かけからして危険人物だからな。
「そうだよ。快楽殺人鬼とか戦闘狂じゃないけど、ヒソカクラスの実力者で、殺すことに躊躇いがない殺し屋。見かけ通り危ない奴だよ」
「……本当に?」
「うん」
「…………」
息を飲むポンズ。
さてと、湿原の動物にも殺される受験者がいるだろうし、ヒソカも受験者殺すだろうし何人ぐらい残るかな~。
◆
「みなさんお疲れ様です。無事に湿原を抜けました。ここビスカ森林公園が二次試験の会場となります」
湿原を抜けた大きな建物の前でやっと立ち止まった試験官が1次試験の終わりを宣言した。
「はぁはぁ……やっと着いた……」
ポンズが大きく肩を上下に動かしながら息を整える。結構ハイペースで走らせたからな~、かなり疲労が溜まっているようすだ。
2次試験開始は正午きっかり、それまでは話しかけずに休ませてあげよう。
ん~、現在この場にいるのは約150人。今年は豊作だな。
念の使い手は~……、俺を含めて2人。ヒソカも合わせて3人か。
――あ、キルア発見! っていうか、最初からあっちは気づいてたようだ。気づかれたみたいな嫌な顔したし。
手をあげてあいさつする。
「よっ、キルア」
「ちっ、気づかれたか」
心底嫌そうな顔しながらも近づいてくるキルア。妹のアルカちゃんと仲いいからってそんなに邪険にしないでいいだろうに。
「なに? また知り合い?」
少しだけ回復したポンズが呟いた。
「ああ。まっ、この子の親つながりで知り合いでね。結構強いから警戒だけはしておいたほうがいいよ」
俺の発言にキルアはため息を吐いた。
「別に警戒しなくていいよ」
「へ?」
驚いた様子を見せるポンズに、キルアはつまらなそうに言う。
「リョウの女や狙ってる女を殺しちゃったら、リョウに何されるか分かったもんじゃねーし」
「そ、そう……」
それだけ言ってキルアは他の受験者達の方へ消えていった。
「ん? どうした?」
「なんだか、改めてリョウのすごさが分かった気がして……」
「あははは、まあ、世界有数の使い手だしね」
「…………なのに、なのになんで毎回ハンター試験に落ちるのよ……」
え? 話したよね?
「……はぁ……」
どうやら2次試験まで休むようだ。会話を止めて近くの木に背を預けて休みに入った。
さてと、試験開始の正午まで待つか~。
気配からいって2次試験の試験官は2人。片方は確実に美食ハンターになったメンチ。建物から香る匂いや、オーラからしてメンチだ。って事はあと1人は高い確率でブハラ。建物から響く腹の音とか、美食ハンターであいつぐらいだろうし。
俺はまったく疲労していないけど、とりあえず「絶」で体を休めておく。俺のオーラ回復量からいって2分ぐらいで全快だな。はぁ……やっぱりハンター試験つまんないなぁ……。今回は特に美人もいないし、ポンズがいなかったら途中で帰ってたかも。
体力が全快したところで「絶」を少しずつ解いて、他の受験者の気配のなかに自然まぎれさせる。
チーン……。
正午になった。
受験者達の視線が建物の扉に集まる。
開いた扉の奥には予想通り。
美食ハンター2人。メンチとブラハだった。
それにしても、ブラハ。なんて耳障りな腹の音だよ……。
「どお? おなかは大分すいてきた?」
「聞いてのとおり、もーペコペコだよ」
ソファーに腰を下ろしたメンチの問いに、巨漢のブラハは腹の音を鳴らしながら頷いた。
「そんなわけで、二次試験は料理よ! 美食ハンターのあたし達2人を満足させる食事を用意してちょうだい」
メンチは満足そうに笑みを浮かべたあと、受験者全員に向って大声で二次試験の内容が料理であることを告げた。
受験者達は課題が料理であると聞かされ、どよめきが走るが、2人は構わず2次試験の説明を続けた。
「まずはオレの指定する料理を作ってもらい」
「そこで合格した者だけがあたしの指定する料理を作れるってわけよ」
おいしいっていえば合格だとメンチは言ってるけど、普通の方法じゃ無理だろう。ブハラはともかく、問題はメンチだ。
常人よりものすごいく舌が超えてて、熱くなりやすい。食に妥協しないメンチにおいしいと言わせる料理を一般の受験者が作れるわけがない。
思考を巡らせていると、最初の試験官であるブラハから試験内容が聞かされた。
まずは豚の丸焼きね。
「リョウ、行きましょう」
ポンズが話しかけてきた。
「ここに住んでいる豚の種類も弱点も知っているわ。さっさと捕まえに行きましょう」
自信たっぷりに言うポンズ。
「さすが幻獣ハンター志望だね」
「まあね」
あ……。
さっきメンチと目が合った。
ふふっ、久しぶりに会ったけど、相変わらず……いや、昔より成長しているナイスなおっぱいだ。
ん~、露出も高めでエロい服だし!
体を覆うオーラも精錬されてる。ふふふっ、数年前はド新人だったメンチもここまで成長したか~。
俺が熱烈な視線を送っていると、呆れられたような視線をメンチに向けられたあと、すぐに目を離された。
うん! ナイスな、ツ・ン・デ・レ!
昔も初々しくて可愛かったけど、今はもっと可愛くてエッチしたくなったよ。
「リョウ! 置いていくわよ!」
「あ、ごめんごめんすぐ行くよ」
メンチから一旦目を離して、ポンズの誘導に従い、この森林公園に住んでいる肉食で世界で最も凶暴な豚、グレイトスタンプを2頭狩り、無事に丸焼きにして、ブラハから無事に合格を貰った。
ここまで、残りの受験者は71名までにしぼられた。
◆
二次試験前半はブラハが何を食べてもおいしいと言う所為で、豚を狩れた受験者だけが合格し、残った受験者は71名となった。
そして残った71名にメンチから二次試験後半の試験内容が明かされたが――。
おいしいスシを食べさせろって、無茶振りにも程があるだろう……。
しかも、メンチから受験者に与えられているヒントは、島国の伝統料理である事。調理道具にご飯のみ、さらに、にぎりズシしか認めないという事。
これだけのヒントだけで、おいしいと言わせるほどのスシを作れって無理だろう。
一応、見るからに忍者スタイルのハンゾーという293番は分かっているようだけど、100%合格しないだろう。
本職でもなければメンチを満足させる事なんて無理なんだから。
レオリオが最大のヒントとなるだろうスシには魚を使ういう情報を漏らして、受験者達が川へ魚を求めて走っていったけど、おそらくスシを作る事は無理。
他の受験者達が魚を求めて走るなか、まったく動こうとしない俺にポンズが小声で聞いてきた。
「ねえ、リョウ。あなたってまさかスシの作り方知ってるの?」
俺は他の受験者、かといってほとんど魚を求めて出て行った所為で聞き耳を立てている奴はヒソカやイルミぐらいだけど、無言で頷いた。
俺が頷いた瞬間。ポンズはやったという表情を浮かべ、ヒソカやイルミも反応した。
「とりあえず、ここではマズイ。外で話そう」
「ええ、わかったわ」
ポンズにそう言ったあと、ヒソカとイルミにもついてくるようにアイコンタクトを送った。
◆
「何でこいつらまでいるのよ……」
「それで、スシについて教えてくれるかい◆」
「…………」
二次試験会場のすぐ裏手、受験者も魚を取りに川へ行って周りに誰も居ない場所。そこに俺はポンズ、そしてついでにヒソカとイルミを連れてきていた。
スシを教えてもらえるだろうとふんでいたポンズは、今回のハンター試験で明らかに危なく異常者であろうナンバー1と2が一緒にいることに、命の危険を感じている様子で警戒しながら顔に汗をかいていた。
だが、ここで時間をかけてしまうとメンチが熱くなって採点基準を引き上げて、ただのスシを作っても合格できなかったり、メンチのお腹が膨れて審査を受ける前に終わってしまう可能性もあるので時間はかけられない。
なので最初にヒソカとイルミに貸し1つという事で、スシの情報提供と調理を俺が担当する事にして、時間がかけられない事と、最初から合格できる可能性が極めて低い事を話し、まずはイルミに魚を多めに4人分調達してくるように頼んだ。
そして残った2人にスシの説明を行なう。
「それは、マズイわね……。スシ自体何なのか分からないのに、おいしいスシを作れるまで10年も修行が必要になるなんて。しかもあなたの話通りだったら、本当においしいスシを作らないと合格させてもらえないみたいだし」
「合格させる気がないのかな◆」
おいおい殺気引っ込めろよヒソカ。っていうかポンズ、少しはヒソカの殺気に慣れてきたみたいだな。表情は強張るもそこまで怯えていないんだし。
「まあ、俺の予想通りいけば、おそらく試験のやり直しが行なわれる。メンチの試験基準が酷すぎるという理由でな」
「……その可能性はあるわね」
「ん~、そうだね◆」
このままメンチの試験内容がハンター協会の本部へ伝わって、ネテロの爺さんに伝われば、不当な試験、いや、試験の内容がおかしいと出張ってきて試験のやり直しをするだろうからな。
「それで、キミはおいしいスシを作れるのかい◆」
「そうね。おいしいスシを作るには10年以上の修行をしないらしいし、あなたにそんなスシが作れるとは思えないわ」
まあ、当然の疑問だろう。
「職人でもないし、最初に言った通り、普通の方法なら無理だよ」
「ん◆ でもスシを作るんだよね◆」
「ギタラクルって奴に魚を捕らせに行ったぐらいだし、何か秘策でもあるの?」
「まあね。――っと、ギタラクルも戻ってきたようだし、策を説明するか。まあ、策っていっても通用するか分からない、試験やり直しにならなかった場合の保険のようなものだけどね」
「ただいま」
「――っ、いつの間に……」
魚を無事に捕らえてきたイルミが戻ってきた。ポンズにはイルミが突然現れたように感じたようで、驚いていた。
「もーー! どいつもこいつも! 観察力や注意力以前にセンスがないわ! もう、やになっちゃう!」
…………。
「メンチがキレ出したな。それにそろそろハンゾーとかいうスシの国出身が、美味しくないスシを出すだろうし、スシの形が受験者達に伝わればヤバいから、急ぐぞ」
「ええ、そうね」
「急ごうか◆」
「…………」
3人を引き連れて調理場でもある会場へ向う。
「ざけんなてめー! スシをまともに握れるようになるには10年もの修行が必要だって言われてんだ! 貴様ら素人がいくらカタチだけマネたって、天と地ほど味は違うんだよ! ボケ!」
…………ああ……。
「10年修行しないと美味しいスシが作れないって知ってるのに、なんで試験課題にしたのよ……」
「キミの言った通りだったね。しかも、忍者の所為でスシの作り方まで伝わっちゃったし◆」
「…………」
ポンズは頭に手をあて、ヒソカとイルミはメンチに向って殺気を飛ばした。
はあ、とりあえず2人は無視して、魚をさばいて切り身にして、魚の身が焼けないように試験会場においてある冷蔵庫に入れ、ライスに酢を入れて素早く酢飯を作製。念使いで元々身体能力が高いから達人ほどでもないけど、それなりにおいしい酢飯が作製できた。
あとは酢飯を一口サイズの長方形に握って、魚の切り身などネタを乗せて握らないといけないわけだけど、イルミが捕ってきた魚は赤身と白身の魚も両方いたが、本来スシのネタになる魚は海のもの、川の魚は普通使わない。やっぱり秘策が必要だな。
冷蔵庫から白身魚の切り身を取り出し、刺身に変える。
酢飯を一口サイズに握り、わさびを乗せるところで秘策だ。
俺の念能力、いくつも作った「発」の1つである『私の愛は無限大/マイスウィート』発動!
具現化系、変化形の複合能力で自らのオーラを変化させ、怪我の治療、疲労回復から美容効果や媚薬効果など様々な効果を持った薬を創りだす事が出来る能力!
「この能力で最高の調味料を作り出して、おいしいスシに変える」
わさびに偽装させた調味料を指先に具現化させ、酢飯に塗り、「隠」でオーラを少しだけ隠す。
「へぇ~◆ そんな能力も持ってるんだ◆」
「…………」
「え? なに? 指に何か出た?」
ヒソカとイルミは念能力者だから何をやっているか分かるが、まだ念の使えないポンズには何で指先に緑色の物体が出たのか分からず混乱している。
ポンズは念に気づき始めているし、順調にいけばハンター試験も受かるだろうからね。
「ポンズにはあとで気になってるだろう事も含めて教えてあげるから、後でね」
「…………わかったわ」
ネタを乗せて完成っと、あと3人分別々の魚で作製! 終わりだね!
「じゃっ、出しに行こうか」
「ええ」
「そうだね◆」
「…………」
さてさてどうなるかなぁ……?
◆
「はあ……リョウ。あんたまだ合格していなかったの?」
「あははは、色々と事情があってね」
「事情ってどうせまた女でしょ。私が試験受けたときも女が原因で落ちたぐらいだし」
呆れるように呟くメンチ。女が原因ってそのときの女はメンチだっただろ……。っていうか俺は念の師匠なんだし、敬って。あと、おっぱい大きくなったね~。
「それで、おいしいスシを作ってきたんでしょうね?」
「ああ、食べてくれ」
スシをメンチの前へ差し出す。
「へぇ~、さすが美女を探して世界中を旅するバカね。スシを最初から知っていたみたいだし、あのカタチだけの忍モドキよりも段違いにおいしそうに見えてるわ」
メンチは手でスシを掴んで口に入れた。
味わいながらスシを飲みこんだその瞬間――、メンチの表情は驚愕の色に染まった。
「――っ!? ――こ、これは!?」
俺の能力『私の愛は無限大/マイスウィート』で創りだした薬は、使用する相手に対して俺の愛が大きければ大きいほど、深ければ深いほどその効果を増す!
今回は調味量として作製したので、俺のメンチに対する愛の分だけ、おいしさを感じるのだ!
「なんなの……? スシ自体は達人以下の見習いレベルなのに、すごく……、すごくおいしく感じる……?」
メンチの顔が緩みだし、メンチはその緩みを見せないように頬を両手で押さえて悶え始めた。
ふふふっ、おいしく感じるだけじゃなくて、愛を感じて軽い媚薬効果も起こるからな。油断してネタの下に「隠」で隠されていた念に気づかずに食べる方が悪い!
まあ、受験者がハンター試験で念能力を使って、しかも「隠」まで使ってその念能力を発動させたも分からせないようにする事なんか想像できないと思うけどな。
未だに幸せそうにおいしさを感じているメンチに聞く。
「おいしいって言ったんだから俺は合格だよな?」
「え、あっ……、そ、それは――、でも、これは――!」
「ん? 使っちゃダメとは言われていないし、おいしいって呟いたんだから、合格だろ?」
ふふっ、俺の能力で創りだした調味料はとんでもなく美味しく感じる事は、その体で知っていたのに、忘れている方が悪い。
「――くっ、それは……、わ、分かったわよ……。……403番、合格」
「「「「うおおおおおおお~~~~! あいつ合格者やがった!?」」」」
スシの製作に戸惑っていた周りの受験者達が驚愕の叫びを上げた。
「はぁああああ……やられた……」
メンチは深いため息を吐き、次の受験者のスシの審査をしようとして気づいた。
「あんた、これ……」
額にシワを造りながら震えていたが、
「自分で作れとは指定してなかっただろう?」
と言うと、怒るのもバカらしくなったのか肩を落としたあと、やけくそ気味に俺のあとに並んだポンズ、ヒソカ、イルミのスシを食べて合格を言い渡した。
「ああ、もうっ! 402番、44番、300番も合格! 403番! もうあんたが他の受験者の代わりにスシを作る事は認めないわよ!」
「は~い!」
「やったわね」
「助かったよ◆」
「……貸し1つ」
こうして俺とポンズは、あ、ヒソカとイルミの4人が絶望的な試験内容を提示された二次試験に合格した。
現時点での2次試験合格者、4名!
◆
無事2次試験を合格した俺達4人だったが、現在、他の受験者達と共に飛行船に乗っています。
はい。予想通り、試験内容に受験者達から次々に不満の声をよせられ、その代表としてプロレスラー男がメンチに攻撃しようとする。メンチがその受験者を殺してしまわないように、ブラハが対処。そのあと、ネテロの爺さんが着て試験内容があんまりだと試験のやり直しになったんです。
まっ、俺とポンズ、それにヒソカとイルミは最初から合格していたのでやり直し試験は免除になって、ゆっくりポンズの体力を回復させる事が出来たし、どちらにしろやり直し試験で受験者がふるい落とされるだろうから別にいいけどさ。
さてと、第三次試験までまだまだ時間もあるし、ポンズに念の説明を始めるかなぁ~。
まあ、元々ポンズは感覚が鋭いし、船で会った時から俺が四六時中つきまとっていてて、抱きしめたり、添い寝したり、愛撫したり、エッチが出来ない分発散できないオーラを体に溜めたまま、ポンズを弄っていた所為で、精孔が開いていないまでも念の感覚に気づいているようだし、俺独自の方法を使えば最短で1日、最長で1年で念に目覚めることが出来るだろうからな。
さっきポンズに、一緒にシャワーを浴びようって誘って断られたし、戻ってきたら話すか。
◆ ◆ ◆ ◆
能力者/リョウ
名前/『私の愛は無限大/マイスウィート』
具現化系、変化形の複合能力/
自らのオーラを変化させ、怪我の治療、疲労回復から美容効果や媚薬効果など様々な効果を持った薬を創りだす事が出来る。
さらに、派生能力『愛の伝道師/ラブブラザー』あり。
制約
・女性に対してのみ効果があり、使用者以外の男性には効果がない。
・愛情がないとまったく効果を発揮しないが、使用する相手に対して愛情が深く大きいとその分大きな効果があり、オーラの消費量も減る。
誓約
・特になし。
◆ ◆ ◆ ◆
能力者/リョウ
名前/『愛の伝道師/キューピット』
特質系、具現化系、変化系の複合能力/
『私の愛は無限大/マイスウィート』の派生能力で、大体の効果は同じだが、愛している相手ほどその効果が上がるという、愛している側の対象が、元々使用者から別の男性へと対象へを変更して使用する事が出来るようになる。
制約
女性にしか効果がない。
女性から男性への使用はできない。
愛を送る側の男性と、愛を送られている対象の間に肉体的な接触、握手や肌に触れていないと効果はない。
誓約
能力を使用している方に、対象への愛が使用者になければ効果はなく、逆に使用者の望んでいない不幸な結果となる。