※この作品はR-18です。

艦娘百夜物語   作:ブラックマンバ

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第23夜「春雨のドラム缶に入った話」

司令官が亡くなりました。

 

死因は陸奥さんとの火遊びみたい。

倉庫の方でぼーんって大爆発して2人の手足があちこちに飛んじゃった。

姉さん達が泣きながら2人の遺体をかき集めたけど、司令官の頭だけが見つかりません。

でもそれは当然のことです。

 

 

だって司令官の頭は春雨のドラム缶の中に入ってるんだもん。

 

 

あの爆発があった時、何か丸い物が大きな弧を描いて春雨のドラム缶の中に入ってきました。

 

「おお、ホ~ルインワ~ン…でも何が入ったんだろ?」

 

あまりにも見事な入りっぷりに春雨は爆発よりも中に入ったものの方が気になってしまいました。

でも中を覗いたことを春雨は死ぬほど後悔しました。

 

「ひぃいっっ!」

 

ドラム缶の中には

司令官の頭が入ってて

目があって

その表情は

何が起こったのか

分からないまま

口と目を大きくあけて

 

ドラム缶にあわてて蓋をするとその場で吐きながら泣きました。

なんで、よりによって、春雨のドラム缶に、こんな。

昼ご飯を全部戻して、酸っぱい胃液が出るまで吐いて吐いて泣きました。

 

その後は基地中が大騒ぎになって爆発の後始末の末に2人の遺体を探しました。

陸奥さんの身体はバラバラの状態でも大部分が見つかりましたが、司令官の身体はごっそりと失われていました。

訓練中の事故ということで処理され、2人の遺体は埋葬されました。

でもそのお墓に司令官の頭はありません。

 

なんであの時、春雨は姉さん達に司令官の頭を返さなかったんだろうと思う時があります。

告別式で泣きながら弔文を読んでる五月雨を見たせいかしら?

それとも狂ったように這い回って遺体を探してた時雨姉さんを見たから?

ひょっとしたら今でも引きこもってる夕立姉さんのせいかもしれない。

 

だから、春雨は間宮さんのところから塩を盗んできて、司令官の頭部を塩漬けにしました。

腐ってしまったら可哀想だもの。

ちゃんと干して干し首にしてあげたいけどみんなに見つかる危険性があるので出来ません。

 

春雨は、実のところ司令官のことがよくわかりません。

姉さん達は司令官にゾッコンって感じだったけど、春雨には魅力はいまいち分かりませんでした。

着任したときは大規模作戦の途中ということもあって司令官とちゃんと話した記憶もあまりありません。

 

だから、今こうやってベッドの中で司令官に話しかけてる時間の方が多くなっちゃった。

 

ねえ聞いて下さいよ、今日も長門さんは泣いてたし。

赤城さんはボーキサイトを一口も口にしていません。

加賀さんも喪に服してるつもりなのか弓弦を張っていません。

ねえ司令官、どうして死んじゃったんですか?

みんなみんなあんなに悲しんでいるんですよ?

 

春雨は先輩達みんなが大好きな司令官を独り占めしていると思うだけで胸の奥がきゅーってしてきます。

みんなが大事に思ってる司令官の頭をドラム缶の中に入れて独り占め。

いつでもどこでもずっと一緒。

そう思うだけで春雨の心は限りなく高鳴るのです。

 

「じゃあおやすみなさい司令官、明日もみんなに会いに行きましょうね」

 

ドラム缶の中のすっかり変わり果てた司令官の頭を見て、春雨は思わず頬が綻んでしまうのでした。

 

 

 

 

(了)

 

 




当時は春雨のドラム缶に入りたいと思っていたようです。
塩漬けっていいよね。
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