※この作品はR-18です。

艦娘百夜物語   作:ブラックマンバ

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第34夜「艦娘列島日本」

 

時給900円以上 駆逐型募集!

「睦月型」「白露型」「暁型」。様々な顔を持つYOKOSUKA & CHINZYUFU(ヨコチン)では、

毎週イベント!イベント!イベント!で盛り上がっています。

深海棲艦も駆逐型が多いのでお手軽に本場さながらの雰囲気。

魚雷を活かせる環境。

 

時給900円以上 ●残業手当、深夜手当有 時給1000円(月100h以上+ラスト勤務) 潜水艦型募集!

大人気の潜水艦部隊「クルーズオブオリョール」の2号店です。

バイトするならオシャレに!気軽に!新しい海域で新しい仲間たちと同時スタート!

学生さん・フリーター・既婚者みんな集まれ~♪スケジュールはあなたの都合を優先!大鯨さんの美味しいまかないもあるよ☆

 

時給920円以上 高校生/時給870円以上 *22時以降/時給1150円以上 戦艦型を特に募集中!

【12名以上の大募集】有名デザイナー設計の艤装はとってもお洒落な装備★120種以上の砲塔が並ぶ格納庫もあり、

働きながら砲塔の知識もUP!かっこよく戦える!

連合艦隊結成や支援艦隊出撃時の際は皆でイベントを盛り上げよう♪

 

時給1000円 ★美味しいカレー付き 軽空母正規空母募集中!

敷地内の中にはジュエリーのような航空機がズラリ。英・仏の洒落た航空機に、NASAの航空甲板を取り入れた個性的な会社です。

一度攻撃されたら忘れられない…そんな魚雷をたくさんの深海棲艦に味合わせるのが私たちの仕事。

未経験の方も大歓迎です。

 

あー…ホントにろくなバイト先ないな…

 

「あれ、あんたバイトすんの?いいのあるー?」

 

バイト情報誌に目を通していたらそんなことを聞かれた。

夏休みも目前だし、遊ぶお金ぐらい自分で稼がないとね………そんなことをクラスメイトと話す。

 

「そうなんだ…そういえば潜水艦の子って超ブラックなところしかないよね、えーっとなんだっけ…オリョ屋?」

「オリョールグループ…あそこの経営のところはみんな大体そうよ…あー、私に潜水艦の適正なくてよかった!」

「そりゃそうだけどこればっかりは”血”だものねー」

 

あははと2人で爆笑してたら目の下に隈のある潜水艦系の子に睨まれてしまった…やばっ。

とはいえ、私のバイト先は親のコネですでに決まっているのであった。

 

 

 

 

 

「それではこれからよろしくお願いします!」

 

バイト先で自己紹介してぺこりと挨拶すると、ぱらぱらと拍手があがった。

この会社は8名で回してるので、業務で入渠した場合、出撃の定数6名が埋まらないことがたまにある。

特に今月は激しい業務で入渠する子が多かったので親族の中でも軽空母の艦娘適正のあった私が呼ばれたのだ。

 

「それじゃあまずは艤装を合わせて見ようか、更衣室分かるよね?」

「はい、大丈夫です、前に何度か来たことありますし!」

 

まあその時はママのお供で来たんだけど。

ママも軽空母の艤装がばっちり似合ってたなぁ…あの時はせがんで発艦弓を持たせて貰ったんだっけ。

 

そして更衣室でママと同じ艤装を合わせて貰った、わざわざ倉庫から引っ張ってきたんだって。

うわ、ちょっと感動かも。

 

 

 

 

 

「あらあなた…たしか鳳翔-408型さんの所の娘さんよね?随分大きくなったわね」

 

艤装チェックを終えて更衣室を出ると声を掛けられた。

屋内にも関わらず日傘型電探をさしているヤマトナデシコ。

最古参(オリジナル)の艦娘で、ここの会社の社長でもある大和グランマだ。

こうして直接会うのは何年ぶりだろう?普段は忙しいらしくてなかなか出会えないのだ。

 

「はい、今日からバイトすることになりました!鳳翔-524型です!」

 

ビシッと海軍式の敬礼をする私、この艦娘(ひと)はこういうのを喜ぶタイプだ。

 

「はい、私はあまり顔を見せられないけど先輩の言うことをちゃんと聞くのよ?」

 

にっこりと笑って敬礼を返す大和グランマ、ううっやっぱ元本職だけあってばっちり決まっている。

あ、そういえば前からグランマに聞きたいと思ってたことがあったんだった。

 

「あの、グランマ…いえ、大和社長、少しお聞きしたいことがあるんですけど!」

「あら何かしら、時給の相談?うちとしてはかなり頑張ってるんだけど………」

「あ、ち、違うんです!実はここがまだ”鎮守府”って呼ばれてた頃のことを聞きたくて」

 

ぱっと顔色が輝く大和グランマ、この艦娘(ひと)は昔話も喜ぶタイプだ。

 

「まあまあまあ、何が聞きたいの?大和になんでも聞いてちょうだい!」

「あの…昔は生身の”提督”って人がいて…艦娘に…その、お手つきしてたのって本当なんですか?」

 

グランマはきょとんとした顔をしていたが、それを意味したところを悟ったのか頬を朱に染めさせた。

この艦娘(ひと)はえらい歳のはずなのになんでこう乙女チックなんだろう………

 

「まあ、そんなこと誰に聞いたの?いけない子ねぇ………鳳翔-408型さんは…そういうの苦手よね…お友達からかしら?」

「はい!そうなんです!実際のところどうだったんです?」

 

もうすでに好奇心だけが先行した質問をしてしまったが、グランマは嫌な顔一つせず答えてくれた。

 

「ふふふ、懐かしいわね。割とあったわよそういうこと…というか…提督は鎮守府にいた艦娘全員に手を出してたわ」

「あはは…冗談でしょう?」

「本当よ、そうじゃないとあなた達が産まれなかったもの」

「あ…え…?」

「あら、今の学校じゃ教えてくれないの?第3世代以降の艦娘は全て提督の血を引いてるのよ?」

 

そこから先はもう聞くんじゃなかったって話ばかりだった。

 

「提督が手をつけて、妊娠した艦娘が複数発覚する頃にはもう大変な騒ぎになっていたわ、最終的には全員の妊娠が確認されたんだけど」

「兎に角、ハチマキに探照灯をくくりつけた艦娘達が行方不明になった提督を山狩りして連日連夜酷いことになったわ」

「海軍上層部や陸軍まで動いて大わらわ、激しい提督捜索戦で山が一つ更地になったわね」

「でもそこまでしても提督は見つからなかった…なぜだか分かる?」

 

そんなこと聞かれても首を左右に振ることしか出来ない。

そして嬉しそうに口元をにやけさせてグランマは言った。

 

「だって、大和が艤装の中でずーっと提督を匿っていたんですもの…そして1ヶ月ほどして提督は私にお願いをしたの」

「みんなを守るために、ここの地下にあるメインコンピューターと一体化させてくれって」

 

いや、ちょっと意味が分かんないんですけど…

 

「兎に角、明石さんが開発した陽電子頭脳を利用して提督は鎮守府のメインコンピューターと一体化したわ」

「提督は私達を守るためにあらゆる作戦を立案し、それを実行させていったの」

「陰謀を巡らせて陸軍を黙らせ、半ば恫喝に近い形で政府に法案を通させ、艦娘に人権を与え………」

「それで今の社会になったというわけ」

 

そう、今の日本には純粋な人間女性はいない。

全て艦娘になっている。

艦娘の遺伝子が全てを駆逐したのだ。

 

「ああ、本当にあの頃が懐かしいわ…あらいけない、提督が呼んでいるわ」

「あの、ひょっとして提督って…経営戦術コンピューターのことじゃなくてまさか…」

「そうよ、”提督”は今でも稼働しているわ、私とずっと一緒にね♪」

 

グランマはうっとりとした表情を私に見せる、まるでこれから恋人と逢い引きするみたいな顔付きで。

 

「ふふふ、私が傍にいないことに気がついたからちょっとぐずってるみたい、すぐに行かないと…」

 

ああ、グランマが常に忙しいことになってる理由が、やっと分かった気がする。

 

深海生還との戦いから200年

戦いは終わらないまま、すでに当たり前の日常の一部となっている。

だから明日も明後日も、大和グランマと提督は一緒にいることだろう。

 

 

 

(了)

 

 

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