※この作品はR-18です。

艦娘百夜物語   作:ブラックマンバ

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第39夜「翔鶴が提督と最後の甘味を食べる話」

 

「ああ提督やっぱりいけません」

「何を言うんだ誘ってきたのはお前ではないか」

「でも、瑞鶴に悪くて…」

「その瑞鶴が好きなのを知ってて裏切るのがお前なんだろう?」

「やめて、言わないで下さい…ひどい…」

「ひどいのはお前だ、本当は欲望に負けて独り占めするつもりだっただろう、なあ?」

「やめてやめてやめて!聞きたくない!」

「その割にはもう涎が零れているではないか」

「こ、このことは瑞鶴には内緒に…」

「もちろんだ、ばれたら俺達もただではすまん…」

「は、はい、ではいただきます…」

「くくく、まずはお前のさくらんぼを頂くぞ…」

「だ、ダメです!それは私のモノなんですから!」

「じゃあ白桃食うか?」

「あ、交換ならいいですよ、いただきます」

 

部屋の掃除中に書類棚の上にあったダンボールの中からフルーツ缶詰を2つ、翔鶴が見つけたのが発端であった。

 

ここは南方トラック泊地。

現在トラック泊地では補給が滞り、ある問題が浮上していた。

水や食料の備蓄は入念に管理されていたが、それでもやはり足りなくなるものがあった。

 

甘味の不足である。

 

娯楽の少ないこの南方諸島ではストレスの解消方法は限られている。

バクチは基本的に禁止されてるので、寝るか喰うしかないのだ。

なので甘味不足は大問題であった。

 

「うま…うま…生暖かくてもやはりこのフルーツ缶詰のシロップはたまらん」

「ええ本当に…私もう甘いのなんて3ヶ月は食べてませんでしたから…ああっ!幸せすぎてどうにかなりそう!」

 

涙を流しながらフルーツを1つずつゆっくり食べていく翔鶴。

提督は回りを気にしながらガツガツと食べていく。

早飯早糞芸の内、それなりに長くなった軍隊生活で身に染みてしまった習慣だった。

そして缶詰の中にあったシロップを全て飲み干すと、それでも缶にへばりついて残っているシロップを舌で舐めとろうとする。

 

「もう、提督…ぺろぺろ…下品ですよ…ぺろぺろ」

「お前だって似たようなことしてるじゃないか…れろれろれろれろ」

「だってもう我慢出来なくて…ぺろぺろ」

 

執務室の机の裏に隠れるように、床にべたりと座り込みながら提督と翔鶴は恐らく島に残る最後の甘味を味わっていた。

備蓄品の氷砂糖を1日1つずつ艦娘達に配布していたのは半年前だったか?

 

「こりゃあ…確か実家からの仕送り品だったか? 賞味期限は半年過ぎてたが大丈夫だったな」

「ああ、ごちそうさま…今日はハミガキしたくありません」

「おいおい、ハミガキしないと虫歯になるぞ」

「そんなことしたら甘みが本当に消えてしまうじゃないですか!」

 

翔鶴の表情を見るとどうやら本気のようである。

呆れながらもゲップを1つした提督は立ち上がると缶詰を踏んで潰す。

 

「さてと、証拠隠滅しないとな…今日の廃棄予定の装備にでも挟んで妖精さんのところに持っていくか…」

「あ、それなら私が処理しますね」

「む…ああ航空甲板の裏に隠していくのか…じゃあ頼むぞ…」

 

と、潰した缶詰を渡そうとしたところでドアが開いた。

瑞鶴である。

 

「失礼しまーす、翔鶴姉いるー? あれ翔鶴姉? 提督と何を…あれ…その缶詰…もしかして…あ、あああっ!」

「い、いや、これは…ただのゴミで…あ、こら、どこ行く?」

 

瑞鶴はあわてて部屋の中に入り、書類棚の上のダンボールを下ろして中を漁る。

 

「や!ややっ!やっぱりっ!ない!ないない! それって私が見つけた缶詰じゃないですかあああああ!」

「いや、それは元々俺のだし…さっきまですっかり忘れたんだがな、なあ翔鶴」

「え、ええそうなのよ…その缶詰って元々提督のだったのよ、分かるでしょ瑞鶴? じゃあ私はこれで…」

「…………待って」

 

地獄の底から響くような声と共に、瑞鶴の手が翔鶴の腕を掴んだ。

 

「缶詰は2つあったのに…2つともない…ひょっとして…翔鶴姉…食べた?」

「えっと…それは…その…」

 

瑞鶴に詰め寄られ顔を背ける翔鶴、その時かすかに残ったシロップの香りを瑞鶴は逃さなかった。

 

「この匂い…麻薬!」

「いやね!これはシロップよ…はっ!」

 

カッと瑞鶴の目が見開かれると電光石火の早業で翔鶴の唇を奪った。

そして見ているモノを唖然とさせるような熱烈なディープキスが始まった。

 

「んじゅ…じゅるぅっ…ちゅっ…ちゅぷううっ…ぐちゅっぐちゅぅっ」

「んっ…んぅー!?んっんっ…んぐぶぅうううっ!」

 

翔鶴の口に瑞鶴の舌が差し込まれ、口の中に残った甘味を余すこと無くこそぎとっていく。

それだけではない、あふれ出る唾液にすら甘味を感じるのか瑞鶴はひたすらに啜っていた。

そのあまりの迫力に提督は見ていることしか出来ず、10分ほど経った頃にようやく瑞鶴は口を離した。

すでに翔鶴は様々な意味でショックを受けて気絶してしまっている。

 

「はぁはぁ…甘い…本当に甘い…これを2人で独占してたなんて…ゆ、許せない…!」

「お、おい待て…早まるな…お、俺は俺達は悪くない…!」

「ねえ提督…この場でゲロをぶちまけるのと、大人しく口の中を弄られるの、どっちがいいかしら?」

 

握り拳を作って甘味への欲求に狂う瑞鶴を前に提督の答えはすでに決まっていた………

 

 

 

 

その後、ようやく補給が届き、艦娘達はまともな食事と甘味を味わえるようになったが

提督と翔鶴だけはフルーツ缶詰を食べることはなかったそうだ。

 

 

(了)

 

 

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