「あ~気持ちいいわ~…ああっ!そこっそこよ雲龍ちゃんっ!」
「提督…大分肩が凝ってますね…」
「だって最近書類仕事ばっかりなんだもん」
提督…と呼ばれた女性はソファにうつ伏せになって雲竜型航空母艦雲龍にマッサージを受けていた。
あちこち大分凝っているのか雲龍の耳にもごりごりとした音が聞こえそうであった。
「おっおおっ…いいわ…いいわぁ…あはぁん」
「…変な声出さないで、動かないで、手が滑ります」
こそばゆいのかわざとなのかくねくねと腰をくねらせる提督。
雲龍は困ったような顔をしながらも真面目にマッサージを続けていた。
「あはっ…だってだって本当に気持ちいいし…ねぇ雲龍ちゃん私に毎日マッサージしてくれない?」
「マッサージぐらいならいくらでもかまいませんが…」
「じゃあついでにケッコンしてくれる?」
「それはダメです、ケッコンなんてついでにするようなものじゃありません」
「えー…いいじゃない別にカッコカリなんだし…雲龍ちゃんも性能あがるんだしー」
提督は唇を尖らせてぶつぶつ言うが、この態度から分かる様にたいしたショックは受けてはいない。
「そうやって”私のために毎日味噌汁作って!”って鳳翔さんにも言い寄ってたって聞きましたよ?」
「うわ、知ってるんだ?」
「有名な話ですから」
先輩達から忠告された…とはさすがに雲龍は言えない。
「あちゃー…雲龍ちゃんにまでそんなこと言われるなんてまいったわー」
提督はぽりぽりと頭を掻きながら雲龍の下から這い出る。
「はあ、マッサージはもういいわ」
「はい、それじゃあお仕事に戻りますか?」
「うん。あ、お茶を淹れてきてくれないかしら、たっぷり濃いのを頼むわ」
「承りました」
雲龍が部屋を出たのを見て、首をコキコキと鳴らしながらいつもの席に提督は座る。
書類の山を見てうんざりとしつつも、こればっかりは艦娘に投げるわけにもいかないのと思い直しペンを取って仕事を始めた。
「おまたせしました」
「あは、ありがと雲龍ちゃん♪」
注文通りの濃いお茶を飲みながら書類に目を通す提督がふと口を開く。
「あー…ホントに美味しい…ねえ私のために毎日お茶を淹れてくれるオヨメサンになってよ」
「だからダメですって…そんなこと言われても私困ります…それに提督って旦那さんがいらっしゃるんでしょう?」
「旦那…? いいのよ別に! どうせあいつだって別の泊地で艦娘とよろしくやってるんだからさー!」
提督は既婚であった。
そして旦那のことを言われて「うわぁぁん」と書類を中にバラマキながら提督は暴れだしてしまった。
その姿に雲龍はほとほと困り果てててしまう。
「もうねー! 1年近くも会えてないのよ! 手紙は来るけどあいつ毎回写真に写ってる艦娘が違うのよ? 巫山戯てるの?」
「あ、あの分かりましたから落ち着いてください…」
「何が分かったっていうのよ! もうねー! あいつがモテるの知ってるけどなんでどいつもこいつも隣にいる艦娘は頬染めてるのよ! バイブでも入れられてるの? それとも媚薬でも漏られた? あいつに週何回抱かれてるっていうのよ! バカバカバカー! 私だってねー! 本当に寂しくてー! 寂しくてー………ふえええ…雲龍ちゃ~ん」
とうとう提督は泣きながら雲龍の胸に飛び込んで涙を擦り取るように顔面をぐりぐりとさせる。
この子供のような行動に雲龍もさすがに困り果ててしまった。
「お、落ち着いてください…ケ、ケッコンは出来ませんけど、わ、私の胸でならいくらでも…」
「ふえ? おっぱいもてあそんでもいい?」
「え、も、もてあそぶ…?」
提督は返事を待たず、雲龍の胸を服の上からむにゅりと揉み始める。
服の上からでも分かる弾力を備えた柔らかさ、思わず指を思い切り埋めていってしまう。
「だ、ダメです…いくら提督でも、こ、こんなこと…やめ…ああっ!」
「あーもー! おっぱい大きくてパイズリ穴が標準装備されてるとかどんだけ破廉恥な艤装なのよ…このっこのっ!」
「ぱ、ぱいずり穴? ああっ!」
提督は服の隙間から見える胸の谷間に顔を埋め、くんくんと匂いを嗅ぎつづける。
むふーむふーと荒い鼻息が雲龍の胸の谷間から漏れて、雲龍はくすぐったさに声が漏れた。
「あ、んふっ…あ、もう…落ち着いてください…ね? ね?」
「こんなおっぱいを目の前にして落ち着いていられるかぁーっ! このっこのっ!」
とうとう服の下に手を差し入れて生乳を揉み始めてしまった。
ぐにゅぐにゅと指が這い回る感覚に我慢出来ず、提督の頭を掻き抱きつつ撫でることで誤魔化そうとする雲龍。
しかしそれが逆に提督をキレさせた!
「私は子供なんかじゃないのよーっ! おっぱいばっかり無駄に大きくさせやがって! 龍驤ちゃんにも少しは分けてやれってんだ!」
「そ、そんな…これは生まれつきで…ああっ…や、やめ…あぁーっ!」
こうして提督は旦那からの手紙が来る度に雲龍を呼び出すようになった。
そしてもう手紙に関係なく頻繁に肌を合わせるようになったのもまた当然の流れであった………
――――半年後。
「ふぅ…いつもありがとうね雲龍ちゃん♪」
自室で事を終わらせた提督は、口移しで貰った雲龍の煙をいつものようにぷはぁと吐く。
雲龍は胸元にタオルケットを抱き寄せて悲しそうに呟いた。
「いつまで…提督は私にこんなことを…」
「そうねえ…戦争が終わるまでかしら?」
「そ、それならっ」
思わず高い声が出て雲龍は顔を上げる、しかし提督は振り返ることもなくカーテンの隙間から夜の空を眺めるままだった。
そのいつもと変わらぬ様子に雲龍は失望を隠せないまま呟いた。
「私とケッコンを…その…ずっとこんな関係のままは…いや…」
「それはダメよ、私には旦那がいるんですもの」
「…そう、でしたね…でも、ケッコンしたら私、提督のためにもっと…」
「あら、今のままでも十分私は助けられてるわよ」
「っ!」
単に私を手慰みにしてるだけのくせにとはもう雲龍は言えなかった。
こんな関係でも離れられない自覚があるのだから。
「あの、私もう…帰ります」
「そう、明日もよろしくね」
慣れた様子で手早く艤装を付けなおした雲龍は涙を見せないように廊下に出た。
いつまでこんな関係続けなくちゃいけないんだろう…いつもの自問をしていた雲龍だったが不意に想像をしてしまった。
「…あの人の旦那さんの艦娘も、ひょっとしたら同じような目にあってるかもしれない」
ふっと雲の隙間から月が現れ、雲龍の姿を照らす。
「私には妻がいるからケッコンはできない…って…」
口に出して言ってみると、思わぬ愉快さに雲龍は笑いを堪えることが出来なかった。
「浮気雲」(了)