司令部より新たな指令が下った。
中部海域哨戒戦、潜水艦部隊を引き連れて敵艦隊を撃滅せよと。
「どうですか提督ぅ~似合います~?」
「ああ、よく似合うよ」
軽空母龍鳳は衣装入れから前の艤装を取り出して久しぶりに装備した。
潜水母艦大鯨、それが彼女の今の姿だ。
海軍で開発されたセーラー服の上からエプロンをつけて買い物袋を下げる。
ちょっとした若奥様といった感じだ。
だがその実体は潜水艦隊旗艦として潜水艦の補給やケアをし、さらには水上偵察機などで作戦を支援する、潜水艦達のおかーさんなのだ。
買い物袋の中には玉葱馬鈴薯カレーマルシェに魚雷管、補給物資もばっちりだ。
「ああ、やっぱりセーラー服はいいな…」
「あら提督? こういうのが好みなんですか?」
大鯨はついっとスカートを持ち上げてパチリとウインクする。
クジラマークの入ったエプロンが眩しい。
「そうだな、もっと正確に言えばセーラー服の上からエプロンを付けているというのがたまらない。司令部にはいい趣味を持っている開発者がいるようだ」
「え、えっとこれ自分で選んだんですけど…」
「それならなお良い…大鯨、君は最高だ!」
何の迷いもない提督の趣味に溢れた言葉に大鯨は呆れるが、褒められて悪い気はしない。
が、龍鳳になった時も似たような感じで褒められたことを思い出したのでチクリと刺してみる。
「でも私が龍鳳に改装された時も”和風いい! 赤色の上着いい! 袴風ミニスカートいい!! 軽空母は最高だ!”って大はしゃぎしてましたよね。提督って本当はどっちが好みなんですか?」
「もちろん今、大鯨が着ている方だ!」
刺したつもりがあまり意味はなかった。
付き合いの長い艦娘なら”まあ提督のことだからそんなもんだよねー”で済むのだが、大鯨は少し頭を抱えてしまった。
(この鎮守府に着任したのは間違いだったかもしれない………)
そしてついつい弱気な言葉が零れてしまう。
「はぁ…提督、実はちょっと不安なんです、提督さんは高練度の潜水艦の子達を随伴艦に選んでくれてるようですけど、やっぱり今の私って空母の時よりも圧倒的に戦闘力下がってますし…」
「いや、あまり心配する必要はないと思うぞ。大鯨が旗艦になると聞いてゴーヤもイムヤもハチもやる気がかなり出たからな、それこそ命がけで守るだろうさ」
潜水母艦は先ほども言ったように潜水艦隊旗艦として潜水艦に対してあらゆるサポートをする。
重要性も考えれば何があろうと絶対に潜水艦達は大鯨を見捨てることはしないだろう。
最も、仲間を見捨てるような艦娘などこの鎮守府には一隻も存在しないが。
「それに装甲の薄さをカバーするためにバルジもつけたではないか…ふむ、そういえばバルジってどこに装備するんだ?」
提督は訝しげに大鯨の身体を眺める、太ももに装着するのか、肩にでも付けるのか、はたまたエプロンの裏に仕込むのか。
「え、お気づきになられてないんですか?」
「ああ、俺は本当に知らんのだ、武蔵に聞いた時はニヤニヤ笑われ、長門や陸奥は”そんなの必要ないから知らん”と言われ、龍驤に至っては唾を吐かれた………それで本当のところはどうなんだ?」
提督は困ったように首を捻る。
大鯨はハァとため息をついてどうしたものかと頭を悩ませた。
「仕方ありませんね…ほら、私の身体でどこかボリュームアップしたところがありませんか?」
「ボリュームアップ…そうか! バルジってウィッグのことだったんだな! カツラ型防弾ヘルメットか!」
おお! と、納得したようにポンと手を打つ提督。
大鯨は”わざとなの!?”と思わずカッとなって突っ込んだ。
「違います! ほら! ここ! おっぱい! ブラですよブラ!」
「お、おお…こ、これは…! か、硬い!?」
大鯨に手を掴まれて胸に手を誘導された。
実際に触ってみればよく分かる、確かに硬い感覚がある。
ブラのカップに増設された”ふくらみ”がバルジだったのだ。
「なるほど…中型バルジ、大型バルジってそういうことだったのか…なるほどようやく納得がいった」
「多分、提督の想像してることは間違ってると思います…」
「ふむ…こうして見るとボリュームアップよりも形がよくなることの方が重要に思えるな」
セーラー服とエプロンを押し上げても、なお良い盛り上がりをしている形に生唾を思わず飲み込む。
「あ…たしかにそうかもしれませんね、でも」
ふっと大鯨は口元を緩ませた。
「私はバルジが無くても…自信ありますよ…?」
……………
…………
………
……
…
この後、ズコバコキラ漬けされた大鯨は中部海域哨戒線を無傷で突き進んだがゴーヤ君とイムヤ君とハチは毎回大破撤退した。
「な、なんでこうなるんでちか!?」
(了)