「(大鯨さんの)エプロン姿もいいけど、メイド服姿も見たいな…」
提督のふと漏らした言葉が金剛の血(オイル)に火を付けた!
清潔な紺色のワンピースは膝下スカート、その上から飾り気の少ないエプロンをつけ、ホワイトブリムは綺麗に立っている。
今の金剛は完璧なヴィクトリアンメイドだ! 提督はこうふんしている!
「(本当は大鯨さんのを見たかったけど)こ、これはこれでたまらんな…!」
「フフーン! どうですか提督ー! これが伝統的な英国メイドというものデース!」
「いいねいいね! では紅茶を一杯頼むよ金剛クン」
「承りましター! すぐに淹れてきマース!」
ふんふんと鼻歌を歌いながら紅茶をトレイに載せて金剛が帰ってくると、ソファに座る提督に赤色の半袖ミニスカワンピースに派手なフリルのついたエプロンを着けたフレンチメイドが抱きついていた。
「榛名!? 何やってるデスカー!?」
「あ、お帰りなさい金剛お姉様、提督が私のメイド服姿を見たいっていうからさっそく見て貰っていたんです♪」
「ノー! さっさと離れなさい! そんなフレンチ(注:イギリス人から見たフランス風とは下品な性的劣情を誘うデザイン)メイド服を来て提督を誘惑するなんて許せまセーン!」
「こういうのが流行だって霧島の分析結果にあったんです! それに提督だってこんなに喜んでいるんですよ?」
フレンチメイド榛名に頬を撫でられ鼻の下を延ばす提督を見て金剛はいきなりキレた。
「恥を知りなサイ! 万全の膝下スカートから長さを奪うなど! 矯正施設で襟をまっすぐにしてくることデースッ!」
「まあまあ、そこまでキレなくてもいいだろ。ヴィクトリアンメイドもいいけどフレンチメイドもいいものだと思うゾ、金剛」
提督はそう良いながらもすり寄ってくる榛名の腰を抱いてニヤニヤと笑っている。
そんな態度を見た金剛はこめかみをひくひくとさせまたキレてしまいそうなのを必死になって我慢した。
「ノー! 労働者の仕事着としての機能美があってこそメイド服は輝くのデース! そんな劣情を催させるのが目的のようなフレンチ(注:イギリス人から見たフランス風とは下品な性的劣情を誘うデザイン)メイド服は邪道デース!」
「ふふふ、本当にそう思ってるのですか金剛お姉様。問題は提督がどう思っているかにあると思いますよ?」
提督の肩に頭を寄せている榛名は卑しく笑う。
ワタシの方が先にメイド服姿を見せたんデース! とまたキレそうな金剛。
剣呑な雰囲気になってきたので提督はこう提案した。
「ではこうしよう、今日のところは金剛が秘書艦だから金剛がヴィクトリアンメイド服で過ごす、明日は榛名を秘書艦にしてフレンチメイド服で過ごす、最終的な評価は明後日の朝に俺が出す、これでどうだ?」
「うーん、仕方ありませんネー…英国メイドのいいところ全部教えちゃいマース!」
「分かりました提督、明日を楽しみにしていてくださいね?」
これはいわばイギリスとフランスの代理戦争である…わけはない、しかし、金剛と榛名がメイド服で勝負するという噂は瞬く間に鎮守府に広まった。
「え、また勝負やるの? いつもご苦労なことだね」
「金剛お姉様!頑張ってください!」
「えーっと…オッズは3:7か…もうちょっと均したいところね…」
「ここで提督がどっちを選ぶかで秋のファッションはミニかロングかが決まるわ!」
「まあ業務に支障がなければあまり五月蠅く言う気もありませんが…やっぱり男の人って…」
「日本の海軍将官がメイドに弱いのはボク達が良く知ってるよ、ね、マックス」
「なによ、またスケベ提督がバカなこと始めただけじゃない」
初日、金剛、ヴィクトリアンメイド服。
「ワタシ、ヴィクトリアンメイド服のいいところいっぱい提督に教えマース! まずはお掃除デース! 汚れてもエプロンを替えればいいだけですし、シンプルデザインなワンピースはすぐに洗濯機でウォッシング! できちゃいマース!」
ささっとメイドとしてのお仕事をする金剛、少しテンションが高いようだ。
「どうですか提督ー! こういうのも悪くないものですよネー!」
「いや、無理に頑張らなくてもいいから、あくまで求めてるのは秘書艦としての仕事だから」
「え、そ、そうなんですカ…」
提督の野獣のような目が光る。
どのような採点をしているのか分からないが、金剛は緊張しながらもその日一日をメイド服で過ごした。
2日目、榛名、フレンチメイド服。
「ふふふ、提督、その資料はちょっと高いところに置いてありますね」
榛名は踏み台を用意すると腰をふりふりとさせながら資料棚の一番上にある資料を取ろうとする。
スカートが揺れて中が見えてしまいそうだ、白いフリルとペチコートが目に眩しい。
しかしおかしいと提督は思った。あの資料はよく使うからすぐに取り出せる場所にあるはずなのに…
そうか、榛名があらかじめ資料をあそこに置いておいたんだな、さすが榛名卑しい子!
(ああ、提督が私をあんなに見てる…! この勝負は榛名が貰いましたよ金剛お姉様!)
提督は榛名のスカートの中をたっぷりと堪能しながら2日目を無事に終わらせた………
そして3日目朝、結果発表。
「ふむ、2人ともよく頑張ってくれた、結果発表だ」
提督は左右に金剛と榛名を並ばせるとその手を掴み………
「金剛のヴィクトリアンメイド服は言うだけあって様々な作業に適している、しかもいつもミニスカの金剛が、足先しか見せぬ膝下ロングスカートを履いてくるというのはまたたまらないものがあった!」
ばっと金剛の腕を上げる。
「や、やった…」
「そして次に榛名! フレンチメイド服はエロかった! ミニスカを彩るフリルは感動的だったしそこから生える生足からは目が離せなかった! フレンチメイド服最高!」
さらに榛名の腕も上がった!
「しかしやはり重要なのは中身だよ! 結局俺にはどちらも選ぶことは出来なかった!
だから今日は秘書艦の鳳翔さんに割烹着を着て貰ってさらなる再確認をする!」
提督の結果発表を見ていた鳳翔は、本当に困った人ですねーと苦笑している。
今日の昼ご飯はきっと美味しいことだろう。
そしてやはり金剛はキレた!
「やっぱり提督に期待したのがバカでしター! もう二度とメイド服なんて着ねーデース!」
捨て台詞を吐いて提督の手をふりほどくと怒って執務室から出て行ってしまう。
榛名は金剛のそんな後ろ姿を見送りながら、提督の耳元で囁いた。
「じゃあ次は私がヴィクトリアンメイド服を着てみますから、味見してみてくださいね?」
(了)