1.大和さんの場合
「こんにちは明石さん、お荷物は届いていますか?」
「あら、いらっしゃい大和さん、さっきの定期便で届いたみたいですよ」
私はそう言うと大型の台車に載せた荷物を裏から出してきました、お、重い……
送り主は呉海軍工廠…そして中身は…
「これがアレですか? 嫁入り道具だっていう大和模型付き桐箪笥ですか?」
「えっ!? よ、嫁入りだなんて…ちょっと気が早すぎます……♪」
恥ずかしそうにくねくねと身体をくねらせる大和さん、やっぱりこの子は提督と本気でケッコンするつもりなんだ。
そう思うと自然と笑みが浮かんできました。
「いやあおめでとうございます、ケッコン式には呼んで下さいねー」
「もう何言ってるんですか、みんなを呼んで盛大にやるに決まってるじゃないですか!」
受け取りにサインをすると、大和さんは箪笥を軽々と持ち上げてスキップしながら帰っていきました。
さすが大和級、提督さんも大変だなあ……
2.榛名さんの場合
榛名さんが酒保にやってきました。
彼女は店の中を一巡してから、狙いを定めたように手早く棚から品を取って足早にレジにやってきます。
「えっと、これとこれ…お願いします」
「はい、コンドーム2箱と男物のパンツですねー」
「きゃああっ! い、いきなり何言ってるんですかっ! 榛名は! 全然! 大丈夫じゃありません!」
甲高い悲鳴をあげる榛名さんは本当に可愛いです、からかいがいがあります。
くくくと笑いながら榛名さんの耳元で囁きました。
「大丈夫ですよ、この時間帯なら誰もいませんから……ところでこれ、提督から頼まれたんです?」
「だ、だって…提督にどうしてもってお願いされたら、榛名は断り切れなくて……あっ」
「あはっ、榛名さんの部屋に提督が泊まりに来てるって噂、本当だったんだ」
榛名さんは顔を真っ赤にして、あわわわと両手を忙しくぎくしゃくと動かしました。
「こ、これはっ! そのっ! 秘密ですっ! 秘密ですからっ! みんなには黙っててくださいっ!」
「うーん……そのうち秘密じゃなくなるし、ゴムは必要なくなるかもしれませんね」
「え? な、なんでですか?」
「だって近いうちに提督とケッコンしちゃうんでしょう?」
その時の榛名さんの顔は見物でした。
艦娘ってあんなにも顔を真っ赤に出来るものなんですね。
3.あきつ丸さんの場合
「失礼するであります」
「あ、あきつ丸さんいらっしゃい」
MI作戦で自信をつけたのか、あきつ丸さんはよく酒保や食堂などで姿を見かけるようになりました。
自信を付けた原因はそれだけではないようですが……
「ふむ…海軍はやはり品揃えが違うでありますな」
「お客様? お探し物はなんでしょうか?」
「しかもサービスまで行き届いてるであります…ハハハッ」
私の冗談にからからと笑いながらあきつ丸さんは買い物をして衣装類のコーナーを眺めています。
酒保には外出用の衣類も取りそろえられていて、艦娘達のリクエストでコーナーはかなり広めになりました。
そしてあきつ丸さんの視線の先は……
「はぁ…ウエディングドレスもいいのであります……」
純白のケッコン衣装を見てため息一つ、誰がこんなのをリクエストをしたのかは名誉のために言わないでおきます。
「お色直しっていう手もありますよ、あきつ丸さん。あちらの和装も今ならセット料金レンタルでお安くなってますよ~」
「えっ、ちっ、違うのであります! 自分は…提督殿とそんな関係では…ああぁ…」
「ふふふ、パンフレット渡しておきますから、お二人でご相談に来て下さいね」
あきつ丸さんはひったくるようにパンフレットを奪っていくとささっと出て行ってしまいました。
提督と一緒に来る日も近いことでしょう。
4.大淀さんの場合
「あれ、大淀さんじゃないですか、珍しい」
「なに? 私が酒保に来たらいけないんですか?」
棘のある大淀さんの言葉。
「別にそんな意味で言ったわけじゃ…あはは……」
だけどつい愛想笑いをしてしまう、付き合いは長いのに最近は大淀さんとの仲がぎくしゃくしてしまっている。
その原因は提督が大淀さんに激しくアプローチしているから。
そして大淀さんは私の提督に対する気持ちを知っていたから。
「えっと…ペン先の代えとインクと…早く会計して」
だから、買うものだけ買って早く帰ろうとする大淀さんにあえて聞いてみた。
「もうすぐケッコンするって本当なの? 提督が指輪を買っていきましたよ?」
誰が何を酒保で買っていったのかなんてのは言わないのが暗黙の掟だが、提督に関しては逆である。
もっとも、こんなことを大淀さんに直接聞くのは私自身もどうかと思うが……
大淀さんはぎょっとした顔付きになるとばつが悪そうに視線をそらして、こくりと頷いた。
「うん…ごめんね…」
「なんで謝るの? 別に私に遠慮しなくていいのに…」
「だ、だって…あなたに悪いじゃない……」
「ちっとも全然悪くなんかないよ、おめでとう大淀さん、お幸せにね」
心の底から祝福の言葉を述べると、大淀さんはぽろぽろと涙を零してしまった。
あわわ、これはちょっと予想外。
「なんだか横取りしちゃったみたいで…みんなにも悪くて…悪くて……」
「ううん、みんなも祝福してくれるよ。だって私が一番嬉しいんだから!」
「明石さんっ…明石さんっ!」
とうとう大泣きしてしまった大淀さんを胸に抱いて、よしよしと泣き止むまで頭を撫でてやる。
「本当におめでとう大淀さん、ケッコン式にはおっきなケーキ作っておくからね」
「ありがと、でもいつかみたいに油と弾薬入りなのはごめんよ、提督も食べるんですから」
冗談も言えるようになったのならもう大丈夫だろう。
もう一度ぎゅっと抱きしめてから、大淀さんのどこかほっとしたような雰囲気の背中を見送りました。
5.私の場合
大淀さんを見送ると、私はポケットから指輪を取り出す。
「戦略的ケッコンカッコカリもいいけど、ちゃんとみんな幸せにしてくださいね」
指輪を大量に買ったその場で私に求婚してきた提督を思い出しながら、私は指輪の付け心地にうっとりとしてしまうのでした。
(了)
やはりこの提督はぶちころがすべきでは?