週末の土日は任務の状況にもよるが艦娘達に外出許可が下りることもある。
(無論、門限破りがばれたら厳しめの外出禁止を言い渡される)
そんなわけで提督は妙高四姉妹に引きずられるように外部の居酒屋に連れられていったのであった。
座敷部屋の上座に提督は座り、テーブルの左側に妙高那智。テーブルの右側に足柄羽黒と座っている。
しかし姉妹達は全員無言で押し黙っていた。
仲居は全員にお通しと(提督が勝手に先に注文した)生ビールジョッキ5つを置いて注文を受けようとするが、その剣呑な雰囲気にのまれてそそくさと去ってしまう。
「あの…なんでみんな黙ってるの? 久しぶりの外飲みだし明るくいこうよ」
提督は愛想笑いしながら生ビールのジョッキをあげるが、四姉妹は押し黙ったまま睨み付けるばかりであった。
「提督…まさかばれないとでも思ってたんですか?」
妙高がため息を吐きながら詰問を始めた。
「他の艦娘と一緒に出かけたりデートしたりとかそんなのは別に文句は言いません、”仲良く”するのも提督のお仕事のうちでしょうからね」
「だが、なぜよりによって私達姉妹と同日にデートしようと思った?」
那智がキッと提督を睨み付ける
「そうよそうよ酷いわ!朝から1人ずつデートしていって夜の子なんてうらやま…いや私達全員を弄ぶなんて酷いわ!」
足柄はうぎゃーっと叫びそうになりながら提督に詰め寄ろうとした。
「ま、待って下さい、これはきっと何かワケがあるんです。そうですよね司令官さん?」
羽黒が両手を握り合わせ、潤んだ瞳で提督を見つめてきている。
この状況下でもまだ提督のことを信じているのだろうか?
「そ、そうだ羽黒。本当なら明日は何事もなく終わるはずだったんだ! そういう予定じゃなかったのか!?」
「ほう…貴様、やはり我々姉妹を全員弄ぶつもりだったと?」
「那智! そんな弄ぶだなんて酷いこと言わないで! …わ、私は司令官さんと一緒にいれればそれで……」
「アンタ何猫被ってるのよ! ばっちり勝負下着を履いてきたくせに! ちょっと私達に見せてごらんなさい!」
「い、いやぁっ! め、めくらないでぇっ!」
足柄がガルルルとうなり声をあげながら羽黒のスカートをめくり上げようとするが、無論激しい抵抗を受けた。
「足柄、いい加減にしないか。ホコリがビールに入ってしまうだろう」
「ほんっとにえぐいの履いてきたんだからこの子、むかつくから晒さないと!」
「だめぇえっ! ホントにだめぇええっ!」
那智が注意するが足柄は羽黒のタイトスカートをめくりあげようとするのをやめない。
テーブルが揺れ、ビールジョッキからビールが零れそうになる。
「2人とも! いい加減にしなさい! この場でお仕置きしますよ!」
暴れる2人にとうとう妙高の雷が落ちた。
2人はびくっと身体を震わせるとお互いに離れて正座する。
「提督も…正座してください、よろしいですね?」
その圧力に負けて提督もビールジョッキを置いて正座をしてしまった。
「では釈明を聞きましょうか、提督、正直に答えてくださいね。なんで同日デートなんてことをしようとしたのか…」
「そ、それはだな…」
提督の地獄の面接釈明が始まった。
「まず…最初にデートの誘いをしたのは妙高、お前だったな」
「え? 私ですか?」
「そうだ、”今度の日曜日、一緒に朝のお散歩しませんか?”って…いやあ随分可愛らしく誘ってくれたものだ」
「か、可愛らしいって…あ、ごまかさないでください!」
顔を赤くした妙高は怒るが提督は意にも介さずそれを受け流し、那智の方に顔を向けた。
「そして次に誘ったのは那智だ。お前はこう言ったよな”いいランチを出す店を見つけたから日曜日に外に食べにいかないか、もちろん私が奢るぞ”って」
「う、うむ…確かにそれで間違いないが…し、しかし……」
「だから私はこれなら妙高と朝の散歩を楽しんだあと小腹を空かして食事を楽しめるなと思って、スケジュールに書き込んだんだ」
手帳に書き込むような手振りをし、次に左右の指で四角くスクリーンを作りながら羽黒の方に向き直った。
「羽黒、お前は”日曜午後からの映画のチケット取れたんです! 一緒に見に行きましょう!”って誘ってきたね」
「は、はい…私は司令官さんと映画を楽しみたくて…」
羽黒は映画のチケット(カップル席)を皆の前に出す。
「ううん? それって凄く過激なドロドロ恋愛物じゃない、R-18指定の。私も見に行きたかったのよねー」
「羽黒、映画については後で話し合いましょうね。…提督、続けてください」
「……それで午後の映画なら那智とランチを楽しんでから間に合うと思ってOKしたんだ」
もの凄く渋い顔をする那智、泣きそうな顔をする羽黒、また深々とため息をつく妙高。
そして、ようやく分かってきたような顔をする提督。
「最後に足柄! お前は”夕方からカップルで行くと3割引きしてくれる居酒屋さんがあるの、一緒に行かない? もちろんその後は…ぐへへへ……”なんて言うから、ああ、これはみんな結託して誘ってるんだな。居酒屋でみんな集まるんだな。と思ったんだぞ。俺は明日という日をホントに楽しみにしてたのにお前らときたら……」
「え、だ、だってみんな…”明日は提督と一日中デートするんです”なんて言うもんだから…ねえ」
「わ、私は”明日は朝から提督と一緒にいられるんです”って言っただけです!」
「私だって”司令官さんと映画を見に行くんです”ってちゃんと言いました!」
「そ、そうだ! 私達は悪くないぞ!」
「4人纏めて食べようとするなんて許せない! ってつるし上げようとしたの足柄じゃない!」
とうとう四姉妹でケンカになってしまいそうな雰囲気になる。
これはやばいぞと足柄は苦し紛れにこう言った。
「違うわよ! 全部提督が悪いのよ! なんでそんなにほいほいデートの誘いを受けちゃうのよ!」
「お前達からデートを誘われて俺が断れるわけないだろうが!」
その一言に妙高達ははっとなる。
なんだかんだで提督は艦娘達のことを思っているのは間違いないのだ。
今回は不幸な偶然が重なっただけ、そう姉妹達は思った。
「ふぅ…分かりました、明日のために今からちゃんと時間を決めましょう、本当に都合よく時間割が出来ていますからね」
「え、えっとそれじゃあ…司令官さんと一緒に映画を見てもいいの…?」
「やたっ! 居酒屋でたっぷり酔わせて…ぐへへ」
「足柄? 随分と酔っ払いそうなら迎えに行きますからね?」
とりあえず姉妹達は納得してくれたようだ。
今回はなんとか切り抜けることが出来た、だが……提督はあることを思い出し、顔を真っ青にさせた。
そして次の日の朝、海岸にて。
「なあ妙高、実は相談があるのだが……」
「え? 来週の日曜日は阿賀野さん達と四重デート? もう…知りません!」
呆れかえったような妙高の声が、波間に消えていった……
(了)
やっぱりこの提督ぶちころがそう。