「んむっ…んっ…んちゅ…ちゅ…んふぅ…」
「ん…んむ…ちゅ…ん…んむ…んちゅ…あ、司令…んっ♪」
司令の唇が私の唇を何度も優しくノックするようについばんでくる、まるで子供みたい。
でも、そんなキスでも私の心臓は早鐘のように打ち始めるのが分かる。
人間と艦娘の間でも、粘膜接触はどうしようもなく快感を生むのだ。
「は、あ…んっ…んぅうっ!…ん、んふぅっ」
「はむ…ん、んむっ…ふぅ…んっ!」
そして司令の唇が私の上唇を”はむ”歯を立てず柔らかく唇で挟んでくる。
ああ、鼻息が顔にかかってくすぐったい、この人も興奮してるんだ。
なんともいえない優越感を感じながら、たっぷりと唇が柔らかくなるまで愛撫されたところでようやく唇が離れる。
「そろそろいくぞ」
そんなことわざわざ言わなくてもいいのに……
そう呆れながらも口を軽く開きます。司令の舌がぬるりと口腔内に入ってくるとお互いの口の中にカレーの味が広がりました。
今日はカレー、カレー味のキス…あれ、昨日はスパゲティだったかな…?
カレー臭い唾液を交換しながら飽きるぐらい舌を絡めあったところでようやく口を離します。
「んむ…ふう、はぁ…はぁはぁ……」
「で、どうだ、これなら認めるか比叡?」
「まだまだですね、こんなんじゃ金剛お姉様のことを任せられません」
激しい口接で蕩けて緩んでしまった口元を隠すために、袖口で軽く拭うふりをしました。
ホントのことを言えば、司令も最近は大分キスが上手くなっているような気がします、あぶないあぶない。
「さ、午後のお仕事しますよ、気合い入れていきましょう!」
色々と誤魔化すために、書類の山を執務机にドンと力強く置きました。
司令はうっと顔を引きつらせますが知ったことではありません。
私の唇を練習台にしてるんですから、これも金剛お姉様のためと思えば頑張れます。
……少しウソをつきました。思い返してみれば、司令の相談に乗ってしまったのはやっぱり間違いだったと思うのです。
1ヶ月前、私は司令からある誘いを受けました。
「実は比叡に相談があるんだが…え、ダメ? む、美味しい食事を食べながらなら妙案が出るかもしれない? ぬぐぐ…」
司令は財布の中身との相談の結果、個室もあるちょっと御高めの食事処を用意してくれました、ひえー。
個室で軽くお酒を飲みながら、ディナーを食べつつ日頃のことを司令は聞いてきます。
とはいえ金剛お姉様関係のことばかりなので、鈍い私でも相談の内容がなんなのか想像はつきました。
「それでさあ比叡、俺さぁ、金剛とケッコンしようと思ってるんだよ、どんな感じでプロポーズすればいいかなあ?」
この時、司令も私も酔っていたのでしょう、私は思わず口が滑ってしまいました。
「えーっ…キスの一つもしたことない童貞野郎に金剛お姉様は無理です! 無理無理カタツムリです!」
「なんだと! キ、キキキキキスぐらいしたことあるわ!」
「へえ! じゃあ私がどんな程度か試験してあげますよ! ほらほらぁ!」
テーブル越しに、からかうつもりで唇を突き出しながら顔を近づけてみると、突然唇に柔らかい感触。
え? うそっ? 本当に? ひひひひえーーーー
パニックになる私から司令はすっと離れると、真顔で「どうだった?」と聞いてきました。
「ぜぜぜぜ、全然ダメですね、こんなのでは金剛お姉様は満足してくれません!」
「なんだと比叡! じゃあどうすればいいんだ!」
「そんなのもちろん! 気合い! 入れて! 練習です!」
「がははは! やっぱり練習か! そうか!」
この時は酒の席の話ということで冗談だと思っていたのですが……
次の日の昼休みのことです、秘書艦だった私に司令は言われました。
「比叡、ちょっと練習に付き合ってくれないか?」
「練習って…え? キス…キスって…え、ええーっ…昨日の! ほ、本気だったんですかーっ?」
「お前なー! あんなに気合い入れて練習とか言っておいてなー!」
「し、仕方ありませんね…本当に私が言い出したというのなら…あ、司令、まずはハミガキしてきてください! 私も付き合いますから!」
こうして少しずつキスの練習が始まったのです。
最初のうちは3日に一度ぐらいだったのに段々と頻度が増えて毎日するようになりました。
お互いにぎこちなかった唇の重ね合いも慣れてきて、ついばむようなバードキスや唇をはみあうビギニングキスなどを本を読みながら(こういう本はなぜか事欠かないものです)お互いに研鑽していきます。
「なあ、そろそろ金剛に…」
「まだダメです、次はこのキスのパターンためしてみましょう」
「うう、そうか…仕方ないな…」
そしてさらに練習期間は長くなっていきました、2ヶ月目、3ヶ月目、そして……
「ふぅ…ふぅ…どうした比叡、もう立てないのか?」
「はぁはぁ…こんなの、全然平気です…司令もやるようになりましたね」
執務室の床にへたり込んだ私は、快感でうっとりとした顔を隠そうともせずそう答えます。
今では司令に5分ほど唇を可愛がられると頭の中まで蕩けるようになってしまいました。
さらに開いた口から舌を嬲られ続けると、口腔内から頭の中に電流が流し込まれるようで……
最初はお互い変な気持ちにならないように、唇以外に触れることすら…腰に手をやることすらしなかったのに、
今では抱きついていないとあっという間に足元から崩れ落ちてしまう体たらくです。
「そうか、じゃあもっともっとキスしないとな」
「はい、もっとしてください司令…♪」
司令に抱き寄せられてまた唇を重ね合う。ああ、これ以上されたら私はもうどうにかなってしまいそう。
そのときノックもせずにドアが開かれました。
「ヘーイ提督! うちの比叡がお邪魔してませんカー…って…何? 何してるんデスカ…2人で…え、ええーっと……」
唖然とする金剛お姉様、あ、あれ、わ、私達…な、何を……
こ、これはただのキスの練習で、違うんです…って言いたいのにびっくりしすぎて声が出ません。
「ご、ごめんなサーイ! このことは誰にも言いまセーン! 2人ともお幸せにデース!」
ああっ! 誤解を解く前にお姉様が顔を真っ赤にして脱兎の如く駆けだしていってしまった!
司令が後を追いかけようと私の身体から離れた瞬間、私は思わず司令の袖を掴んでしまいました。
あっと声を出してこちらを振り向く司令、この時、私の口からついて出た言葉に司令の足は止まりました。
「私をっ、み、みすてないでっ…置いてかないで…っ!」
ああ、ごめんなさい金剛お姉様、私は唇の練度だけが一足先に99まで上がってたみたいです……!
(了)