遠征から帰還した磯波から連絡があった。
「新型の深海棲艦を捕獲したので尋問をする」と。
はて、遠征部隊である磯波がなぜ深海棲艦など捕獲出来たのか?
私は首を捻りながら呼び出された先、工廠近くにある離れの建物…尋問室へと足を運んだ。
尋問室とは言うが元々は旧軍の営倉で、今ではほとんど使われることはない。
せいぜい吹雪との逢い引きで何度か使ったことがある程度だった。
今思えば営倉に呼び出されたその意味をよく考えるべきだったのだ……
「あ、提督、お待ちしていました……」
「磯波、それで捕獲した深海棲艦というのは?」
「は、はいっ! こ、こちらにどうぞ……」
私は磯波に先導されて建物の中に入る。
ほこりっぽく饐えた匂いが充満し、思わず眉をしかめた。
「しかし凄いな磯波、深海棲艦を生きたまま捕獲した艦娘なんてお前が初めてじゃないか」
「ふふふ、ありがとうございます提督、もっと褒めて下さい」
深海棲艦を生きたまま捕獲するという計画は今まで何度も立案されたがその度に頓挫していた。
話は簡単で捕獲そのものが困難極まるものだったからである。
殺すよりも生きたまま捉えるのは数倍以上の労力が必要で、しかも深海棲艦を基地まで持ち帰るなど正気の沙汰ではない。
だから磯波がどうやって深海棲艦を捉えたのか非常に興味があった。
「なあ磯波、お前一体どうやって深海棲艦を…」
「あ、提督、この部屋ですよ」
丁度ついたのか、磯波は鍵を開けて営倉の扉を開く。
室内は裸電球で照らされていた。コンクリ壁は新しく塗り直されていたが未塗装で不気味な雰囲気のままだ。
そして、木製椅子の肘置きに腕を縛られ、両足を開いて椅子の足に縛られた深海棲艦がそこにいた。
しかし…
「うっ…うさぎ?」
「ええ、適当な拘束具がなかったので、う…うさぎの着ぐるみを頭に被せました」
そう、深海棲艦の頭にはピンク色のうさぎの着ぐるみがかぶらされていたのである。
身体に衣服などは一切着けられていなかった、ひょっとして部屋の片隅に置かれている布きれのようなものがそうなのだろうか?
肌は病的なまでに真っ白で青白く光り、正真正銘の深海棲艦であることを伺わせる。
「ほう…これは…」
こいつの体つきからすると中学生ぐらいだろうか? しかしこれでも信じられないくらいの膂力を発揮する。
軽く手足を振り回しただけで私の手足は引きちぎれるだろう。
胸は軽く膨らみ、乳首は緊張からか少し硬くなっているようだ。
そして屈んで見てみると陰毛は生えていない。
「………」
磯波の視線が痛いが私は深海棲艦を良く知ろうとしているだけだ。
そして深海棲艦の顔を良く見ようとうさぎのかぶり物を取ろうとした、が。
「ダメですっ!」
磯波の強い静止の声に動きを止めてしまう。
「なぜ止める?顔を確認しないことには…」
「だ、ダメなんです…その拘束具を外して、そ、そいつが本気で噛みついてきたら提督の首が落ちちゃいます、そ、それに顔ならほら」
磯波はポラロイド写真のようなものを差し出した。
そこにはたしかに深海棲艦の顔らしきものが写っている、
しかしピンぼけが酷く赤い目と白い髪の毛…たしかに深海棲艦の特徴だ…しか確認出来ない。
「私はこいつのことを…フ級駆逐艦と名付けました」
「おいおい、命名権は司令部にあるだろ…いや、深海棲艦を捕まえた功績を考えたらお前が名付けるのもいいな」
私はうんうんと頷くとさっそくメモを取り出した。
「ではさっそく尋問を始めようか」
「そうですね、さ、起きてください、駆逐艦ちゃん♪」
磯波は薄く笑うとフ級駆逐艦の向かって左側の乳首を思い切り摘んで捻った!
「ウグウウウウッ!ウッウッウグウウウウウウウ!!!!」
すると途端にうさぎの着ぐるみの中からこの世のものとも思えぬ声が漏れた。
あまりにも酷い声に唖然としていると、磯波は両方の乳首をすりつぶさんとばかりに両手でぎりぎりと摘み上げていた。
「おいやめろ! もう起きてるだろ!」
「い、いいんですよ、どうせ敵じゃないですか…」
おお、今日の磯波は何か怖い、確かに敵だとはいえ捕虜虐待などしたくはない。
「起きたならもういい、私が尋問をする」
「わ、わかりました…」
磯波は私の命令に素直に従って後ろに下がった。
そして私は所属と名前、深海棲艦の目的を聞きだそうと何度も同じ質問を繰り返すが、
フ型駆逐艦は首を何度も振りながらうなり声をあげるだけで何も答えを返そうとしない。
「こ、こいつは…う、上手く喋れないんです…」
「なんだって? そいつは困ったな…これじゃあ司令部に引き渡すしかないな…」
「そ、そうですね、こ、こんなやつばらばらに解体してやりましょう」
やはり今日の磯波の様子はおかしい、なぜここまでこの深海棲艦に嗜虐的な態度を取るのだろうか?
磯波はフ型駆逐艦の後ろから抱きつくと耳元で囁き始めた。
「ほ、ほら、ちゃんと質問に答えないと…提督が怒って何をするか分かりませんよ…この……」
そしてまた磯波はフ型駆逐艦の胸を掴み思い切り捻り上げた。
今度はさらに酷い絶叫がうさぎの着ぐるみから放たれる。
「ギャギィイッッ!ギッギィイイイッ!ギイイイイイイイイイイッッ!」
「おい! やめろっもういいだろっ! 命令だ! やめろっ!」
しかし磯波はやめる気配がない、そしてフ型駆逐艦に対する暴力行為に段々と酔っていったのかその手をフ型駆逐艦の股間…おそらく性器に手を伸ばし、一気にねじ込んだ。
「このっ…泥棒猫っ! あ、あんたはここでどれだけくわえ込んだのっ!」
「ングウウウウウウウッ!ンッ!ンッ!ンブグゥウウウウウウウウウウウウウッ!」
そしてついにフ型駆逐艦は失禁してしまう。
あまりにも凄惨な光景と、深海棲艦もおしっこをするのかと妙な気分になったところでアンモニア臭がこちらまで漂ってきた。
ん? しかしこの尿の匂いにはどこかで嗅いだ覚えがある…まさか……
磯波がフ型駆逐艦に対する拷問に夢中になっている隙をついて、私はうさぎのかぶり物を思いっきりはぎ取った。
「ああっ! や、やはりお前だったのか…吹雪!」
そこには目隠しされて口をボールギャグで拘束された吹雪の姿があった。
これなら声を出せないのも当然である。
よく見ると肌が白いのも白粉か何かで誤魔化していただけだった!
「どういうことだ磯波! こんな悪ふざけをしてただで済むわけが…」
「ああ、だから取っちゃいけないって言ったのに……ちょっと早いけど、し、しかたありませんね……」
磯波はけろっとした顔で近づいてくると、私の首筋に容赦の無い手刀をたたき込んだ。
声をあげる間もなく、私の意識は刈り取られた……
「お、起きてください提督…そろそろ時間ですよ……」
頬をぺちぺちと叩かれ、私は目を覚ました。
身体を動かそうとするが縄で縛られ動くことが出来ない。
そして磯波は私を見下ろしていた。
吹雪はどこだ? と首を左右に振って探してみると椅子に縛り付けられたままであった。
そしてアイマスクを取られた吹雪と目が合う。
私が気絶してる間に磯波に何をされたのか分からないが、吹雪はぼたぼたと涙を零している……
「ダメですよ…あんな泥棒猫じゃなくて私を見てください…」
ぐいっと頭を掴まれ磯波と顔を合わせられる。
心なしか磯波の目の色が赤い……
「私はずっと提督のことを想っていたのに…そこの女と…ずっと乳繰りあって…こんな薄汚れたところに呼び出されて、て、提督が穢されてたなんて、ゆ、ゆるせません…」
「お、お前は一体何を言っているんだ……」
「い、いいんです、私には全部分かっていますから、提督は吹雪さんに、だ、騙されてるんです…はぁはぁ」
ああ、ダメだ…磯波…お前はそれ以上行ってはダメだ……
「ずっと悩んでたんですけど…ふふふ、お誘いがあったんです……そろそろ時間ですね」
磯波が腕時計で時間を確認すると、ずどんと床が突き上げられるような揺れが起きた。
地震!? いや、この震動は砲撃か?
「海の底の人達が…私と提督を迎え入れてくれるって言ったんです」
ああ、磯波の髪の毛が一瞬で真っ白になり、目は爛々と赤く染まる。
外ではずどんずどんと連続して砲撃が行われている、心なしかこの営倉に砲弾が近づいてくる感じがする。
「さあ行きましょう提督…私達だけの世界へ………」
ついに営倉に砲弾が直撃して目の前が真っ白になる。
私は磯波に身体を抱えられると壊れた壁の間から外に出て、そのまま一気に海へと………
その日、鎮守府への深海棲艦襲撃事件により1隻の艦娘と1人の提督が行方不明になった。
提督と艦娘の行方を知ると思われる艦娘がいたが、司令部直轄の艦娘専用病院へと入院し面会謝絶のままである。
最近ではうさぎのぬいぐるみのような頭をした深海棲艦とそれに付き従うような新型深海棲艦の目撃情報があるが、この襲撃事件と結びつけて考える者は1人もいなかった……
(了)