初霜を手に入れたので食べてみることにした。
初霜はお米の中でも収穫時期が遅いので今年の新米もようやくの入荷だ。
そして今年の初霜は出来がいいと妖精さんに聞いた。
ああ、夕飯が楽しみだ。
そろそろ日も暮れそうなので、まずは精米を行うことにする。
玄米のままでもいいがやはり食べにくいのでぬかを1枚ずつはぎ取っていく。
初霜の体重が1割ほど減って■■kgになった。
この時点で初霜は顔を真っ赤にしているが炊きあがるにはまだ早い。
次は風呂場で丹念にお米を研ぐ。
これから食べるのだから残りのゴミや埃を取り除かなければ。
昔は台所洗剤で「洗う」なんて笑い話があったが、私の場合はお湯と手で初霜を研ぐ。石鹸で洗うなど論外だ。
まずはお湯で温めながら残っていたぬかを手で取っていく、
初霜は声を最初はくすぐったい声をあげるが丹念に手で擦ってやると艶やかな声をあげた。
食欲をそそられるがまだ食べられる状態ではない。
さらにシャワーの温かさでぽわぽわと表情を緩めていくがまだ食べるには適さない。
・・・・・
何よりも肌が温かすぎる。
私は初霜に水をかけて身体を引き締めていった。
もう秋だけあって少し寒い目にあってもらうがこれは仕方の無いことなのだ。
初霜はガチガチと歯の根が合わないようだが許しておくれ。
そして身体に残った水分をタオルで優しく拭うとベッドで炊きあげに入る。
「始めちょろちょろ中ぱっぱ赤子泣くとも蓋取るな」という有名な言葉があるがこれは江戸時代の初期頃から書物に登場していたという。
この言葉の通り私は初霜に火を入れることにした。
ところで、初霜は他のお米に比べて大粒の米粒である。
「始めちょろちょろ」でその米粒を指で丹念に熱を入れる。
こうすることで内側から全体に熱が行き渡っていくのだ。
そして熱に浮かされたような顔付きになったら「中ぱっぱ」で初霜に指を入れて激しくかき回してしっかりと頭の中まで沸騰させる。
するとそのうち赤子のように泣き出すのでしっかりとキスして蓋をするのである。
こうすることで初霜のうま味が中で凝縮されていく。
さあ、ようやく食べ頃になった。
ここで私は今朝、陸揚げされた魚の刺身を初霜の身体に並べていく。
わざわざ初霜の肌を水で締めさせたのはこのためである。
刺身が生暖かくなるのは避けたいし、初霜が炊きあがっても肌の表面はまだ冷たい程度に冷やしたい。
そんな絶妙なバランスを探求するために去年は手持ちの初霜をいっぱいに使ってしまった。
だから今年はとても美味しく頂けることだろう。
先程も言ったが初霜は大粒のお米である。
そして寿司酢を染みこませた酢飯の寿司にも良く合うお米である。
私は初霜の中から出て来た酢醤油を刺身につけて食べる…むう、初霜のうま味が出ている!
こんなのを一口でも食べたらもう止まらない。
酢醤油をつけて食う、体表の汗をしっかり染みこませて食う。
さらに刺身を大粒のお米の上に乗せてかぶりつく。初霜も食べられて悦んでいるようだ、だってお米がこんなにも立っているんだから。
ああ、美味しい美味しい。
気がつけばあっという間に刺身を全部食べてしまった。
初霜はうっとりした顔で恵方巻きを欲しそうにしているが、恵方巻きは節分の時に食べるんだよ? だからその時まで待つんだよと頭を撫でてやる。
初霜は大粒でしっかりした巻きものが出来て恵方巻きが大好きだから、ものすごく切なそうな顔をする。
私はその表情を見ただけで射精してしまった。
(了)