「提督……ふふ……お仕事をやめてこちらで休憩いたしません……?」
「いや、この報告書を書き終えるまで休めないよ」
扶桑は幸せの絶頂にいた。
今日は明石の手によって更なる改装を施され、久しぶりに軽巡や駆逐のお供ではない艦隊戦へと出撃出来た。
更に秘書艦として一日中提督と一緒にいれた。そして何よりも……
「そんなこと言わずに…あのー…提督? 聞こえないふりしちゃぁイヤですよ…ほぅら……」
明石から貰ったねじ回しのドライバーを取り出すと、扶桑は提督の後頭部へと突き刺した。
「えいっ♪」
そしてくるくると逆時計回りに回して、提督の頭のネジを緩めていった。
「くるくるくる、くるくるくる、ほうら、提督、気持ちよくなっちゃえ~」
「お、お、おおお……ふわぁああ…あー…報告書なんかやってられんねぇ……」
提督の目はとろんとなり、机の上に上半身を投げ出させた。
「あら、少し緩めすぎたみたい…ちょっと締めて…っと」
扶桑はくいっと手首を回転させてねじを気持ち締め付ける。
「んっ…んむ…ああ…報告書は明日でもいいかぁ……」
「そうですよ……ね、提督…ちょっとこちらのソファでお休みしませんか?」
扶桑は執務室備え付けのソファに座ると、膝をぽんぽんと叩いた。
提督はそれを見ると椅子から立ち上がり、ふらふらと近づいていく。
「ああ、いいのかい扶桑…?」
「ええ構いませんよ……提督も今日はお疲れになったんでしょう?」
提督がその誘惑に抗えなかったのは後頭部に生えている”ねじ”を緩められたからだ。
緩めれば緩めるほど提督は態度も何もかも緩まり、締めれば締めるほど四角四面のしゃちほこばった提督になる。
「ああ…扶桑に膝枕してもらうだなんて初めてのような気がする……」
ソファにごろりと転がって扶桑の膝に頭を乗せる提督。
扶桑は膝にかかる幸せの重さに、思わず嬉しそうなうっとりとした表情となる。
「うふふ、提督の気の済むまで私を枕にして休んでてくださいね……」
「そんなこと言われたら扶桑の膝枕から離れられないよ…あああ……」
その手に握ったねじ回しで扶桑は提督を完全に操っていた。
借りてきた猫のように甘えて頬ずりをしてくる提督の頭を優しく抱きながら、扶桑は幸せに浸っていた。
「ねぇ提督……明日は半ドンですし午後からはどこかにお出かけしませんか?」
「ああ…いいねえ…どこに行こうか…?」
「そうですね…久しぶりに私服に着替えて電車に乗って…街に出たいです……」
ねじ回しを手の中で弄び、くるくると左右に回し、扶桑は提督の後頭部のねじを見つめていた。
このねじをちょっと回すだけで好きなように出来る。
今まで他人のモノだった提督を自分のモノに出来る……そう考えるだけで扶桑は幸せで頭がどうにかなりそうだった。
「ね、提督…ケッコンしましょ…う……?」
「そ、それは…ダメ…だよ…私には妻子が……」
「いいじゃないですか……カッコカリ…あくまで仮なんですから…ふふふ」
素面では言えない言葉も、自分の膝を枕にして緩みきった提督が相手ならいくらでも言える。
それにもっと緩めたらきっと提督は私に逆らえない……
そう思った扶桑はねじ回しをねじに差し込むと、ゆっくりと緩め始める。
「ねえ提督…私のこと好きですよね……?」
「あ…うう…うん…扶桑は好きだよ………か、艦むすとして……」
くるり。
「ねえ提督…私のこと好きですよね……?」
「あー…うん…す、好き……だよ……でも………」
くるり。
「ねえ提督…私のこと好きですよね……?」
「あー…ううー………す、すき……で、………も……」
くるり、くるり。
扶桑は提督の耳元で囁きながら何度も同じ質問を繰り返す。
提督は段々と痴呆のような顔になっていくが、扶桑が納得するような答えが出てこない。
「ねえ提督…私と一緒になりましょう?」
くるり…からん。
ねじ回しから摩擦抵抗が無くなり、提督の後頭部からねじが外れ……地面に落ちた。
そして提督は……ねじを外され、完全に身体が緩みきった提督は………
「ああ、明石さん……困ったことになったの……提督の頭のネジが……ええ、そう、緩めすぎて取れちゃったの……」
そう困ったように内線電話を使う扶桑の足元には、
緩めて緩めて緩めすぎて身体も蕩け切って、真っ白な牛乳のような液体になってしまった提督が広がっていた……
(了)