最近着任したビスマルクはイライラしていた。
ドイツから遠く極東日本の鎮守府にようやくやってきたというのに、鎮守府には緊張感というものがまるでなかったからだ。
緊張感の無さは規律の緩みが原因であり、規律が緩んでいる現状はビスマルクには耐えがたいものであった。
午前の訓練が終わり、ドイツ艦達を集めて食堂で食事をしながらビスマルクは何時も愚痴るのだった。
「まったくみんな緩みすぎよ、ここの提督は何をやってるのかしら! ねえ、レーベもマックスもそう思わない?」
「うーん…通常任務中はこんなものだよ? やることやってればある程度までは提督も目を瞑ってくれるし」
「そうね、大規模作戦中なら皆もキリッとするわよ……ああ、ビスマルクはまだ知らないのよね」
ビスマルクは思わず片手で顔を覆うと緩みきった雰囲気に染まりきってしまった同郷の仲間を哀れんだ。
「そういう話じゃないの! 普段からもっとビシッとしてないと有事に際してちゃんと行動出来るわけないでしょう!」
どんっ!とテーブルを叩くと同時に食堂の入り口の方からのんびりした声が聞こえてきた。
「あー、お腹すいたーっ! Aランチお願いしまーっす」
「401が道草してなければ昼食時間にこんなに遅れなかったのに……」
「どうでもいいでち…どうせ午後からもオリョールでち…暫く休ませてほしいでち…」
今日も朝から出撃していた潜水艦組である。
スケジュールでは午前中には帰ってくるはずなのだが、昼食時間が終わりそうになってようやく帰ってきたようだ。
「ほら見なさい! 仮にも軍艦がこんなにも時間に遅れていいわけないでしょう!」
「そんな指ささないでよ、みんな見てる……それにいいじゃないか昼食時間にちょっと遅れたぐらい」
「出撃中だったみたいだからね、何かトラブルでもあったんでしょう」
「ぬぐぐ…もう我慢出来ないわ……」
「……気にしすぎよビスマルク」
ドイツでならきっちり注意していたビスマルクだが、日本では外様のゲスト艦である。
現場でなら兎も角、鎮守府内で艦娘に直接口を出すのは憚られる。
というわけでビスマルクは業務時間が終わる頃になって提督に直接文句を言いに向かった。
今まで何度か苦言を述べていたのだが、今度は本気である。
一晩かけてでも説得せねばと、カイゼン案の書類を持って執務室へと急いだ。
さらに今週はレーベが秘書艦なので説得もしやすいだろうと踏んでのことである。
「さてと…この書類を出せば少しは説得もしやすくなるわよね……あら、なんの声かしら…?」
執務室の扉の前でノックしようとしたところ、何か妙な声が聞こえた。
「………んっ………ふっ………んあっ………あっ!」
「…っ!………はっ…!………レー…ベッ!」
くぐもった男女の声、ドアの向こうから聞こえる妙に艶めいた声。
ビスマルクは乙女であるがその声の意味するところが分からぬわけではない。
「………っ!!!!」
一瞬で顔が真っ赤になり「まさか」「そんな」と呟きながら、ドアを少しだけ開く。
ここで提督がニホンの変態ビデオでも見ていたのならそのまま殴り込んだところだったが、隙間から垣間見えたものは提督がレーベに覆い被さり腰を前後に振っているところだった。
「て、いとく…もっと…もっとぉっ…ああーっ!」
「ツヴァイになってさらにスケベになったなレーベはっ! このっ! このっ!」
机に腹ばいになったレーベは足が床に届かず、宙に浮かせながら後ろから提督に犯されている。
幼い少年のような面影を残すレーベは、腰と尻がぶつかりあって激しい音が立つたびにあえぎ声をあげた。
その艶めいた声がビスマルクの耳朶にたたき込まれ、仲間が後ろから犯されているというに衝撃的な光景に「ひっ」と声が出そうになる。
ビスマルクはギリギリで口を押さえると、取り落とした書類を拾って自室へと慌てて逃げ帰った。
そして次の日、珍しく寝坊したビスマルクは他の艦娘達にからかわれながら、レーベを目で追っていた。
レーベは提督の秘書艦として書類を抱えながらあっちこっちに連絡し、執務室で業務を手伝っている。
昨晩の事は夢だったんじゃないのかと思いながら執務室に顔を出し、レーベと他愛ない会話をしながら提督を見た。
頭をぽりぽりと掻きながら書類仕事をしている姿は、昨晩レーベを犯していたケダモノとはどうしてもイメージが合わない。
「んもう、ビスマルクったらボクと提督とどっちに用があるの?」
「えっ? ああっ、ごめんなさい」
ビスマルクは思わず提督をじっと見ていたらしい、むすっとした顔のレーベがビスマルクの耳元に口を近づけて囁いた。
「……ダメだよ、提督はニホンの子達のモノなんだから」
「ちっ…違うわよっ…私はそんな意味で見てたんじゃ…っ! わ、私はそろそろ演習に行ってくるから、失礼するわ!」
慌てて立ち上がったビスマルクは執務室から急いで出て行く、後ろからレーベと提督の笑い声が聞こえてくるような気がした。
耳まで真っ赤になりながら「こんなはずじゃ…」とビスマルクは廊下を早歩きしていく。
そして、この後の演習では珍しくミスを連発したビスマルクだった。
業務が終わった頃、ビスマルクは書類を持って再び執務室へと急いだ。
「いくらなんでも今日は…いえ、昨日のは幻よ何も無かったのよ、何もかも……」
レーベに直接問いただすのが一番だろうが、ビスマルクはその手段を取れなかった。
まさか「昨日、執務室を覗き見したらあなたが提督とセックスしてたんだけど、まさかつきあってるの?」とは聞けない。
あの時の光景を思い出しそうになると頭を振って記憶を振り払った。
そして再び執務室のドアの前。
「……あれ、この声…嘘、まさかまた……」
ドアの向こうからまた男女の声、睦み合いの声。ビスマルクは息を殺しながらドアを少し開く。
今度は机に座った提督の上にレーベが座り、背面座位で両足を大きく開いて犯されていた。
「ああっ…は、恥ずかしいよ提督ぅっ…だ、誰かきたら…ああっ…全部見られちゃうっ!」
提督の主砲がレーベの小ぶりの性器に根元まで挿入されている。
あまりの生々しい光景にビスマルクは目を離せなくなる。
「ごめんなさい、もう全部見えちゃってるわ……」
両足を大きく開いたレーベは下から突き上げられる度にあえぎ声を漏らす。
レーベは大分慣れているようで、提督の主砲全部を胎内に修めても快楽しか感じぬらしい。
「見られてもいいじゃないか…どうせ見られた方が感じるんだろ?」
「ボ、ボクそんな…ああっ…い、淫乱じゃない…もんっ…あぁーっ!」
レーベは乳首を後ろからねじられると頭をがくがくとさせ、秘裂の隙間からぴゅるっと潮を吹いた。
利発そうな顔があっという間に蕩けてオスを悦ばすような顔になっているのを見ると、ビスマルクは生唾を飲み込むしかなかった。
「あぁああ……いやあ……これ以上ボクを虐めないでぇ…ああっ…は…お、おかしく…おかしくなるぅっ」
「ダメダメ、レーベの身体はもっとおかしくして欲しいって言ってるぞ」
提督は悪戯っぽく笑うと、レーベの細い腰を掴んでぐんと突き上げる。
ビスマルクの目にはレーベのお腹が内側から押し上げられ、主砲の影が見えたような気がした。
じわじわと下腹部が熱くなっていくのを感じる、書類はぎゅっと握りつぶされ手汗でくしゃくしゃになっていることに気がついた。
「あぁーっ! お…おほぉ…こ、これいいのぉ…あぁー…はぁはぁ…あぁー……」
「いやあ、お前がこんな乱れるところビスマルクに見せてやりたいなあ」
唐突に自分の名前を出されて、ビスマルクの心臓がドキリとなる。
いけない、早くここから逃げないと、と思うが足が動かない、ドアの隙間から見えるレーベの痴態から目を離せない。
息は段々と荒くなり、意志に反してもっと見ようとドアに顔がつきそうなぐらいまで近づいていった。
「ダメ…ダメだよぉ…こんなところ見られたらビスマルクに軽蔑されちゃうっ……!」
「ほらレーベ、ビスマルクに見られてると想像してみな」
「あっ…つ、つきあげないでっ…んふ…ふ…ぁあ……あぁーっ!」
下から腰を突き上げられ白い喉を見せながら高い声をあげるレーベ。
もうスイッチが入ったのか耳まで紅潮させながうわごとを呟き続ける。
「あ…み、見て…ビスマルク……ボ、ボクが…提督に愛されてるところ…見てぇっ!……すごく気持ちいいんだよ…提督はみんなのモノなのに…ボクが独り占めにして…凄く…すっごく気持ちいいんだよぉっ…あっ…あぁーっ…もっとっ…近くで…見てぇっ!」
あまりの臨場感に、その誘うような声に、ビスマルクは思わず一歩踏み出しそうになる。
これ以上近づいたら部屋の中に……提督とレーベの情事の場に踏み込むことになる。
あと少しでバランスを崩し、部屋の中に転がりこみそうになったところで「待って」と肩を掴まれ仰向けにされた。
「あっ」とビスマルクが視線を向けると、見下ろすようにマックスがいた。
覗き見に集中しすぎて、他の誰かが来るのに全く気がつかなかったのだ。
「あ、こ、これは…その」
「ちょっと黙ってて」
目を白黒させながら言い訳しようとしたが、マックスにぴしゃりと黙らされ。そのまま引きずられるように廊下の奥まで連れられていく。
何か言おうと手をあわあわさせていたビスマルクだったが、マックスは呆れたような声を出した。
「……ビスマルク、あれは罠よ、ああやって覗き見してた艦娘を誘い込んで2人で襲いかかるの」
「えっ…な、なによそれ……」
「それにしても随分と熱心にのぞき込んでいたわね……そんなに興奮してたのかしら?」
「なっ! ちっ…違うわっ! わ、私がそんなこと…あるわけないじゃない!」
耳まで真っ赤にして否定するビスマルクだったが、マックスはニヤニヤとするだけだった。
そして――――
「それでね、私も前に2人掛かりで滅茶苦茶にされたの……でも今夜は3人掛かりみたいね」
うっとりとした顔をしたマックスがビスマルクの腰を抱いてくる。
はっとしたビスマルクが視線を感じて執務室の方を振り返ってみると、裸のレーベと提督がこちらを手招きしていた………
(了)