※この作品はR-18です。

艦娘百夜物語   作:ブラックマンバ

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第75夜「霧島と将棋と盤外の一手」

 

霧島は提督の将棋相手をするのが好きだった。

別に将棋そのものが好きなわけではない、提督と将棋をするのが好きなのである。

 

艦娘は元々は軍艦なのであるから、ほとんど全ての艦娘は将棋を指せる、軍人将棋もいける。

例外は海外艦であるドイツ組ぐらいである。

ちなみに以前、鎮守府で開かれた将棋大会で優勝したのは雪風だった。

 

兎に角、霧島と提督は暇な時間があれば二つ折りの木製将棋盤を開いては指しあっていた。

 

「霧島は最近どうよ」

「……ここ一週間は提督の秘書艦をしていますが」

「いや、そうじゃなくてプライベートの話でさぁ……」

「お話することは特にありません…ってまさか金剛お姉様について聞きたいんですか?」

「違う違う、お前の話を聞きたいの」

 

と、このように提督と世間話をしながら。

お互いにベーコン将棋(某有名フリーゲームサイトにてプレイできる1人用将棋)を相手に、平手でやっと勝てる程度の腕なので延々と暇つぶしが出来るのだ。

 

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「それじゃあ、霧島ちょっと一局付き合ってくれ」

「またですか……仕方ありませんね、一局だけですよ」

 

提督は今日も夕食後に霧島を将棋に誘った。

 

「提督、女性を誘うならもうちょっと雰囲気があるのがいいのですが」

「別にいいじゃないか……霧島もなんだかんだでやる気みたいだし」

「……そうですか?」

 

霧島の指先は意識せずとも滑るように動き、提督よりも先に駒を並べていた。

「霧島はまず形から先に入るタイプですネー」というのは将棋大会で霧島と対戦した金剛の弁だ。

 

「じゃ、お願いします」

「お願いしますね、提督」

 

すっと互いに礼をすると、霧島が駒に手を出す。

 

「この前は私が負けましたから、今回は私が先手でいいですよね」

 

霧島は2本の指で駒を掴むとぴしゃりと音を立てて指した。

安物の将棋盤なのであんまり強く指されて割れたら困る、と提督に言われてるのだが最初の一手だけは格好をつけてしまう。

 

「相変わらずだなあ、霧島は……」

「いいじゃないですかー別にー!」

 

霧島がむっと唇を尖らせてるのを見ると提督はくくくと忍び笑いをする。

そして序盤はお互いにやることが分かっているのでサクサクと進むんでいった。

 

「……2倍の戦力があって挟み撃ちしたら楽勝なんだがなぁ……」

「提督、それはもう将棋ではありません、はさみ将棋にでもしますか?」

 

霧島は呆れながら突出した角を取る。

 

「いやいや、俺達の話だよ、深海棲艦相手にだよ。連合艦隊を組めるようになったんだからなんとかしたい」

 

提督は渋そうな顔をして銀で歩を取った。

 

「……それは難しいんじゃないですか? 深海棲艦の方が遙かに数が多いんですし、多分挟み撃ちしようとした別艦隊は別の深海棲艦に襲われますよ」

「そうだなあ……だったらせめて司令部がもっとマシな作戦を立ててくれたらいいんだが……おっと、ちょっとその金は待ってくれ」

「待ったは無し……っていつも言ってるでしょう?」

 

霧島の金が提督の陣地に切り込む。

 

「あーダメか………俺達は限られた戦力しかないのに、総戦力も分からんようのを相手にしないとあかん」

「話の続きですか? それは確かにそうですが今のところはなんとか勝ってはいますよ」

 

提督は銀を進めるが霧島の金はチャンスとばかりにさらに深く切り込んできた。

今度は勝てるかなと霧島はほくそ笑む。

 

「戦術クラスでいくら勝ってもしょうがない」

 

提督は切り込んできた金に対抗するように王の近くの銀を上げた。

 

「今はギリギリのところでシーレーンを守れているが、奴らがいつ本土へと侵攻を開始するか分からん」

「この前のように強力な艦を揃えてですか? しかしその前に我々が出撃して叩き潰しますよ! 王手です!」

 

開いたところにぴしゃりと角を置いて王手をかける霧島。

艦娘が触れられる情報では前に出るしかないのは分かる。

しかし司令部では深海棲艦がさらなる戦力を集結させているという情報を掴みつつあった。

 

「ならば今こそ戦力を充実させなければならないんだ、真の勝利のために」

 

王手を掛けてきた角を提督は歩で防いだ。

 

「ふふふ、もし提督が逆転の一手を考えられる大戦略家なら今すぐにでも司令部に行くべきですね」

 

霧島はここが攻め時とばかりに振っていた飛車を前に出す。

それを見て、提督は顔を上げると霧島の顔を見ながらこう言った。

 

「あ、実は俺、逆転の一手は考えてるんだわ」

「え? 本当ですか? ………っ!?」

 

と、ここで提督は懐から小さな箱を取り出して盤面に置いた。

 

「これで王手…かかったかな?」

「え、え…な、なんですかこれ……」

 

盤面に突拍子もないものが置かれ、霧島が呆然としているところで提督は箱を開く。

中には飾り気のない銀色の指輪が入っていた。

 

「霧島、俺とケッコンしてくれないか」

「こ、この手は……私にも想像…つきませんでした……」

 

霧島は「ああ…」とため息を吐きながら指輪を手に取る。

 

「本当に……これは反則です……提督は…大した戦略家ですね…もう、私の負けでいいです……!」

 

そして薬指に指輪を嵌めると、嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 

(了)

 

 

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