今日はハロウィンである。
お祭り好きな艦娘が自主的に集まりハロウィンパーティを企画していた。
駆逐艦や潜水艦組がドアに掛けられたかぼちゃマークを目印にしてお菓子を回収しパーティをするのである。
「トリックオアトリート! 提督さん! 悪戯されたくなかったらお菓子ちょーだい?」
潜水艦伊168(以下イムヤ)が執務室のかぼちゃマークのついたドアを開くと、提督は1人で炬燵に入り込んで待っていた。
ご丁寧なことに炬燵の上にはみかんの山が置かれている。
「おお、よく来たなイムヤ……お前も天使のコスか、なかなか可愛いじゃないか」
イムヤ達潜水艦組は天使の羽根と輪っかをつけ、白いレオタードにひらひらスカートをつけてお菓子を回収していた。
たしかに可愛いがこの季節ではかなり寒そうな格好である。
「あー! 提督ずるーい! もう炬燵なんか出してるんだ!」
「ハロウィンが来たら炬燵を用意するのがウチの習わしなんだよ」
「そんなの初耳だよ……それは兎も角お菓子ちょーだい」
「お菓子? うーん、ミカンならあるなあ」
提督は炬燵の上のミカンを取ると皮をむき始める。
「えー、みかんじゃお菓子にならないよー、お菓子くれないなら悪戯しちゃうよ?」
手をわきわきさせるイムヤであったが提督はそれを見てふっと鼻で笑うとミカンを口に含むと手招きした。
「悪戯でもお菓子でもどっちでもいいけどまあこっちに来い」
「うう~…何か企んでるでしょ…あ、そうか!」
イムヤは執務室にずかずかと入り込む。
「きゅーそくせんこー!」
そして炬燵の中へと頭からスライディングで突っ込んだ!
しかし……
「いたっ! て、提督…蹴っ飛ばしてくるなんてひどーい……あ、あれれぇ?」
イムヤは炬燵から蹴り出されてしまった、だが何かがおかしいと布団をめくり上げてみれば炬燵の中から艶めかしい足足足。
その数は1本2本3本……合計10本か。
「あれれ…イムヤがやっと来たです?」
「遅いよもう、みんなで提督に悪戯中なんだぞー」
伊8と伊401の声が聞こえてくる。
炬燵の中から漂ってくるむわっとした汗臭い匂い。
彼女達はどれだけの間、炬燵の中に潜っていたのだろうか?
「みんな見ないと思ってたらこんなところにいたの!?」
「そうでち…提督がなかなかお菓子てくれないからみんなで悪戯中でち……」
「もぐもぐもぐ……」
伊58は提督のすね毛を毟っている。
まるゆが提督の股間に顔をつけて何をしているかは想像しなくても分かった。
「もう何やってるの! 早く出て! 他の部屋からもお菓子回収しないといけないんだから!」
「えー…眠いからイヤ…イムヤが1人で行ってきて…」
と、伊8はお菓子が半分ほど入ったバスケットを炬燵の中から放り出す。
チョコが入っていたらドロドロに熔けているところである。
「だーめ! ちゃんと役割分担したじゃない! っていうかなんでみんな提督の部屋に行くのよ!」
「執務室にかぼちゃマークついてたら覗きたくなるでち!」
「そうそう、それで部屋に炬燵があったら潜っちゃうよね」
「でもまるゆが一番最初に入ってたのにはびっくりしたでち」
「もぐもぐもぐ……」
伊401と伊58は提督の両足をそれぞれ持って股先をするように広げている。
そしてその間に入っているまるゆは相変わらず提督の股間をもぐもぐとしていた。
「このコスプレ寒いからイクはもう出たくないし……」
伊19はぶるぶると身体を震わせている。この調子では本当に飽きるまで炬燵の中から出ないだろう。
「イムヤも潜ろうよ、みんなで潜ってると暖かいよ~」
グフフと笑う伊401はさらに提督の股を割き、イムヤのためのスペースを作って手招きした。
「ダ…ダメダメ! みんなお菓子持ってくるの待ってるんだし……こんなところを他の子に見られたら大変じゃない!」
確かに炬燵の誘惑は強烈だがイムヤはちゃんと真っ当にパーティを楽しみたい気持ちがあったのである。
「えー、何言ってるのさ……本当は潜りたくて潜りたくてたまらないくせに!」
しかし、伊401の浅黒い手がイムヤの足を掴むと、もの凄い勢いで引き込んだ!
「きゃああっ! は、離してぇっ!……たっ助けてっ! 提督助けてぇっ!」
暫くの間は炬燵の布団が波打ってもぞもぞとしていたが、そのうち何事もなかったように炬燵の中は静かになった。
「はぁ…やはりイムヤはダメだったか……今年のミカンは酸っぱいな……」
提督は軽く腰を揺すると、ぼやきながらミカンを口に運ぶ。
そしてミカンを一個食べ終わった頃、元気よくドアが開かれた。
「やっほー司令官! 暁よ! トリックオアトリート!」
コウモリの羽根と角を生やし、黒のレオタードとひらひらスカートの悪魔コスをした駆逐艦暁がやってきた。
「あっ! 炬燵用意してるんだ! 暁も入る入るー!」
「おいおい、それがレディの振る舞いなのか?」
提督の言葉も一目で炬燵の魔力に取り憑かれた暁には届かない。
暁は足を入れた途端に炬燵の中に引きずり込まれ、ぎゃあぎゃあとした騒ぎもあっという間に静かになった。
この後も執務室にやってきた悪魔コスの暁型駆逐艦が4人も炬燵の中に引きずり込まれ、炬燵の中には11人の艦娘がすし詰めになってしまった。
「やれやれ、時代が時代だったらこの”城”は燃やされてハロウィンの生贄にされただろうよ」
提督はみっしりと詰まった炬燵を城に喩えて言う。
そしてトントンとドアがノックされて陸奥が顔を出した。
「あらあらあら、提督はもう炬燵をお出しになったんですか?……それは兎も角ハロウィンパーティに参加する駆逐艦と潜水艦の子どこに行ったか知りません?」
陸奥が困ったような顔をして提督に聞いてきた。
提督は黙って炬燵を指さすと「まさか」という顔をして執務室に入り炬燵の布団をめくり上げる。
そして又、陸奥も炬燵の中へと吸い込まれた。
次は陸奥を探しに来た長門。
お茶が冷めてしまいマース!と文句を言いに来た金剛や大鳳も炬燵の中へと引きずり込まれる。
執務室に入ってきた艦娘は次々と炬燵の中へと潜っていく。
心地よい暖かさと橙色の光りに満ちた安らぎの世界へ。
そのうち提督もその暖かさに耐えきれなくなったので、炬燵の中へと引きずり込まれると、炬燵が裏返ったように炬燵の中に引きずり込まれ、後に残ったのは炬燵の暖かさの残滓だけが残る炬燵用絨毯だけになった。
(了)