ビュオオオオオ…ガタガタガタッ…ザザァーッ!
雨戸を猛風雨が襲う。
激しくガタガタと音を立てているが昼のうちに補強していたので今夜は大丈夫だろう。
「ザザッ…地方では……猛烈なザッ…台風ザッザッ号が上陸し…ザッ…水位が…ザザザッ」
据えつきのラジオからは雑音混じりの台風情報が入る。
この分では明日も後片付けが大変だろう。
昼の台風対策で後回しにしていた書類を片付けながら提督は一息ついた。
「さすがの提督もあまり根を詰めていたらドジっ子しちゃいますよ?お茶入れてきますね!」
左手の薬指に指輪を光らせた秘書艦の五月雨はそう言って執務室から出て行った。
そんな頑張り屋の彼女を見送って提督は笑みを零す。
「あんないい子が俺の嫁さんだなんて本当に俺は幸せものだなぁ…んん?」
その時である、天井の灯りが明滅するとぷつっと消えてしまい、ラジオの音声も途絶えた。
どうやら停電してしまったらしい。
風で電線が切れたのかブレーカーが落ちたのか、どちらにせよなんとかしなければ電気は復旧しない。
「やれやれ…懐中電灯は…あ、電池切れだ、こりゃまいったな、ブレーカーがある食堂まで見に行ってくるか」
役に立たない備え付きの懐中電灯を仕舞うと提督はため息を一つ付いて部屋から出ようとする。
するとドアを開けて誰かが入ってきた、灯りも無くまだ目も暗闇に慣れていないこの場では誰が入ってきたのか分からない。
「提督!…あ、私です!大丈夫ですか?」
「おお、五月雨か早かったな」
「は、はい!わ…私、五月雨です!提督のことが心配になって…急いで戻って来ちゃいました!」
(ああ、本当に五月雨は可愛いなあ)と提督は暗闇の中で嫁には見せられぬいやらしい笑顔を浮かべる。
「あの…ま、真っ暗ですね…」
「そうだな、早く復旧させないと…って、おいおいこんな時に何を…」
「私…怖くなっちゃって…こんなに暗いと心細くなっちゃって…」
暗闇の中で提督は彼女に抱きしめられる、女の汗の臭い、若い女性のほのかな匂いが提督の鼻孔をくすぐる。
そんなことをされたら提督が思わず悪戯をしてしまうのを誰も咎められないであろう。
「ひゃんっ!どこ触っ…どこを触ってるんですかっ!あんっ!」
「誘ってきたのは五月雨の方じゃないか…なあ?」
「あっ、わ、私はこんなつもりで抱きついたんじゃっ!もうバカバカっ!」
提督の手が彼女の尻を撫でる、暗闇の中で艦娘の身体をまさぐるのは提督の特権と言わんばかりに。
「も、もう駄目です…ん、あんっ!ほ、ほら…電気を復旧させるために食堂に行かないと…」
「それなら明石さんか間宮さんがもう行ってるだろうさ…それよりも…」
「きゃんっ!こ、これ以上は駄目っ駄目だよぉっ!」
スカートの中に提督の手が入ってくると、彼女は思わず声を荒げる。
提督は心地よい声を聞いたとばかりに舌なめずりをしながら下着の上から割れ目を擦った。
ぶるぶると彼女は肩を震わせたが提督に向かって何事か囁いた。
「ね、ねえ…こんなことよりもいつもみたいに私に…キ、キスしてよ………」
「ん?(いつもみたいに?)………そうだな。ほら、アゴをあげて…ん」
「あん…ん…ちゅ………」
提督は暗闇の中で彼女のアゴを掴むと唇を重ね、上唇を唇で挟み舐めあげる。
興奮してきたのか彼女の口から熱い吐息が漏れるのを感じると、今度は下唇を同じように舐めしゃぶった。
そして本丸を責めるようにぽっかりあいた口に舌をねじ込み口内を一通り楽しんだ後に口を離す。
「んぐっ…んっんふぅ…んちゅ…ちゅ…あぷ…んふっ…だ、駄目だよ…こんなキスされたらぁ」
「何を言ってるんだ?”いつもみたい”なキスをして欲しかったんだろ、五月雨?」
「あん…だ、だって…だってこんなに激しいなんて………ふぅ…真っ暗な部屋の中で、お互いの顔を見えないのにこんなことしてると…凄く興奮しちゃうからぁ…」
提督はまたニヤリと笑うと、腕の中で身体をよじらせる彼女を押さえつけるように抱きしめてさらにキスを繰り返す。
溜めた唾液を彼女の口腔に送り込み、唇を食べるように歯を軽く立て、歯茎まで舐めしゃぶりつくした。
「はぐんんっ…んっんちゅっちゅ…はぶ、ね、ねえ提督、あ、わたし…もう…もうこれ以上は………」
「そうだな、下着まで随分ぐっしょりになってるもんな」
「っ!!!!」
キスしながら提督は彼女の下着の上から念入りに愛撫していたのだ。
異常な状況下での愛撫は思った以上に彼女を興奮させてしまっていたらしい。
灯りがあれば耳まで真っ赤になった彼女の顔が楽しめたことだろう。
「だ、駄目だよっ…やっぱりこんなところで…せ、セックスなんて…!」
「おいおい今更それはないだろ?」
彼女は思わず狼狽するが提督はそんなこと関係ないとばかりにベルトを外そうとした瞬間。
「提督っ!遅くなってごめんなさい!大丈夫ですか!」
フラッシュライトが提督を照らした。
「え!誰だ?」
「あっ!」
「あれっ!あなた誰!?」
今まで提督とキスし合っていた”誰か”がドアに向かって一直線に走る。
突っ込んでくる”誰か”に驚いて入り口にやってきた”もう1人の誰か”がその場で転倒する。
そして残されたのはベルトが外れかけた提督と転倒して懐中電灯を取りこぼした”もう1人の誰か”だけであった。
「お、お~い…そこにいるのは…誰だ?」
「私ですよう…提督ぅ~五月雨です~」
懐中電灯をとった”もう1人の誰か”はライトを自分の顔に当てる。
どうやら”もう1人の誰か”が五月雨だったようだ。
「う~ん………どうやら本当に五月雨のようだな、じゃあさっき出て行ったのは誰か分かるか?」
「顔にライト当てる前にずっこけちゃって…あ~んもう!」
五月雨はドジっ子だなあと笑いながら提督は手を貸して立ち上がらせる。
「それで提督と話してたのは誰だったんです?」
「さあ、よくわからない、幽霊かもしれない」
「ええっ!?幽霊ですか?冗談はやめてください、本当だったら怖いですよぉ!」
提督は本当のことを言うわけにもいかず五月雨に対して何があったのか誤魔化してしまう。
そして懐中電灯を持っている五月雨の手をとってお互いの顔を確認する。
「あれ?顔がちょっと汚れてますよ提督、特に口の周りが」
「ああ、どこか雨漏りでもしてるのかな?」
「雨漏り…ですか?」
怪訝そうな顔をする五月雨を無視して提督は口周りを袖で拭った。
「それにしても…あれは本当に誰だったんだろう…………?」
「実は相手の口の中に舌を突っ込んだ時点で既に分かっていた」
「彼女には歯がなかった…抜歯されていたんだ…つまり」
「彼女は涼風だったんだよ」
(了)
この頃は涼風の歯を抜歯するのがマイブームだったのでこのような意味不明なオチになりました。