さて、11月7日は今年の立冬である。
晩ご飯には大根のみぞれ鍋を作ろうと秘書艦の鳳翔さんが言うので、私も仕事を一区切りさせて手伝うことにした。
「やっぱり冬を迎える前にはたっぷりと栄養を補給しませんとね」
私が大根おろしを作ることを告げると、鳳翔さんはかぼちゃの煮物を作ることにしたようだ。
「ああよかった、今日はもう一品増やしたかったんです」
「ははは、こういう作業はまかしておいてください」
台所に立って軽く手を洗うと、適当な大根を一本選び皮をむき始める。
鳳翔さんはかぼちゃを半分ざくざくと切っていき、醤油・酒・砂糖・みりんを同じ量だけ混ぜて水を足し、煮汁を手早く用意した。
あとは煮汁を沸騰させてカボチャを入れ、煮詰めるだけである。
私の方はといえばすり下ろし機を用意して皮を剥いた大根をおろし始める。
汗をかくので上着はすでにハンガーにかけておいた。
無言で大根をおろしていると鳳翔さんはカボチャの煮物の火を見ながら牛肉を切っていた。
「今日はですね、良いところのお肉が手に入ったんですよ」
と、鳳翔さんはブロック肉を切りながら楽しそうに笑う。
わざわざ用意してくれたのだろうか、ありがたいことである。
鳳翔さんが2人分の牛肉をさっと薄切りにすると、大根おろしの手伝いをすると言ってきた。
「ああ、すみません。私が手伝うって言ったのに鳳翔さんにやらせてしまって」
「いいんですよ提督、私はみんなでお料理するの好きなんです」
やれやれ、結局手早く出来る鳳翔さんにほとんどやらせてしまった。
私はまだ半分も大根をおろせていない。
ボウルをもう一つ用意し、腕まくりをした鳳翔さんと2人で大根をおろすと鍋に大根肉大根肉大根肉と交互に敷き詰めていく。
後はもう火を付けて煮立たせたあとダシの素を入れて混ぜるだけである。
コンロの方を鳳翔さんにまかせると、私は書類の広がるちゃぶ台を綺麗に片付けてカセットコンロを用意した。
「さあ出来ましたよ」
ぐつぐつ煮えた大根のみぞれ鍋に各種調味料を用意し、カボチャの煮物に炊きたてのご飯を並べる。
「ああ、美味しそうだ。いただきます」
「いただきます」
鳳翔さんは小皿にカボチャを取り分けて薦めてきた。
「どうですか、カボチャは身体をあたためる効果あるんですよ」
「ああ、頂くよ……うむ、美味い」
カボチャを一口入れると、ほくほくとした感触が舌の上で熔けて甘辛さが口の中に広がる。
きちんと煮詰めているのはさすが鳳翔さんだ。
「では、お鍋の方もどうぞ、美味しく出来上がってますよ」
今度は牛肉にみぞれをかけたものをお椀によそってきた。
ポン酢をかけて口に運び、さらに白米をかっこむのがこれまた美味い。
「ああ美味し美味し、鳳翔さんの作ってくれたものなら何杯でもいけますよ」
「あらいやですよもう、何を食べてもいつも美味しい美味しいって言うんですから」
本当に美味しいのだからしょうがない。
ポン酢にレモン汁、普通の醤油とタレを変えながらガツガツと食べ進めると、いつの間にか鍋は空となってしまった。
「ああ、ごちそうさま。お腹いっぱいだ……」
「おそまつさまでした」
鳳翔さんが用意してくれた食後のお茶を飲むとほっと一息つく。
ごろりと横になって食休みしていると、鳳翔さんが食器を流しに持っていく。
手伝おうとしたが「そのまま横になっててください」と止められてしまった。
夕焼けが執務室の中を赤く照らす。
洗い物をしている、鳳翔さんの誘うように左右に揺れる尻を眺めているとムラムラとしてしまうが、
膨らんだお腹の苦しさに負けてぐったりとしながらお腹を撫でる。
そして思わず呟いた。
「鳳翔さん……いくらなんでも常夏のパラオで冬対策もないと思うんですけお……」
(了)