「やった! 予算が通ったぞ!」
司令部からようやく届いた工事の日取りに私は思わず小躍りしてしまった。
「えっ! もしかして、艦娘の改造工廠の予算でも通ったんですか!?」
秘書艦の明石さんがキラキラした目で私を見てくる。
改造工廠…? まさか改修工廠だけじゃ飽き足らないの……?
「いやいや、艦娘寮の拡張工事の予算が通ったんだよ!」
「なぁんだ拡張工事って………えっ、まだ寮をお広くするつもりなんですか?」
「うん、週末には新しい子が来るからな。用意しておかないと!」
「はぁ……まだ着任どころか名前も分かってないというのに……」
明石さんは私の喜色満面の笑みを見て呆れたような声を漏らす。
だが寮の空き部屋を用意しておかなければ、作戦海域に出撃すら出来ぬのだ。大淀さんなんとかしてくだち!
「兎に角、えーっと……明日から増築工事に入るから」
書類をめくって工事日程を確認する。
明日も朝早くからやってくるらしい。
「ええっ! 明日ですかぁ!?」
「うむ、午前中には建築妖精さんが増築工事を開始してくれるらしい。
明石さんは監督を頼むぞ……ああ、見ているだけでいいから」
「……はい、了解しました」
そして次の日。
ねじりハチマキにヒゲを生やした妖精さんやヘルメットに木槌を持った妖精さんや
鉄骨担ぎの妖精さん、更に左官妖精さんまでもが、増築資材を満載した船でやってきた。
彼らが艦娘寮を増築するのだ。
小高い丘の上にある艦娘寮は上から見るとコの字になっている全18階建てのマンションである。
1階部分は大浴場に食堂が完備されており、2階から18階が艦娘用のフロアで1階につき10部屋の個室がある。
各部屋は1Kバストイレ付き。トイレはもちろんウォシュレット完備だ。
そして建築妖精さん達は艦娘寮近くの空き地に増築資材を運び込むと”19階”を増築する作業に入った。
この増築作業をするのはこれで8度目であるが、毎回素晴らしい仕事をしてくれる。
彼らは非常階段を駆け上がって屋上に小型クレーンを据え付けると、中型クレーンのパーツを屋上に持ってきて
中型クレーンを作り、さらに大きな材料をつり上げていく。
鉄骨を建てボルトで繋ぎ、速乾性コンクリで床を作ると、防音耐熱耐火性の特製石膏ボードを張っていく。
凄まじい速度で作業をしている妖精さん達はまるで分身の術をしているように100人ぐらいに見える。
彼らは天気が良ければ昼間は作業をし、夜になれば船に帰って眠った。
「いやあ、妖精さんって本当に働き者ですねー」
「ああ、凄いだろう。だが、腕がいい分高額なんだよな……」
予算を認めて貰うために色々と裏技を使ってしまって、少々懐が痛い。
この時期は他にも工事する鎮守府があるのでスケジュールは詰め詰めだそうだ。
こうして3日ほどで増築作業は終わった。
見上げてみれば19階の新築部分はぴっかぴかに輝いているようだ。
「ああよかったよかった、作戦開始に間に合った」
「提督~、リストのチェック終わりました~……本当に突貫作業でしたね」
明石さんは新しく出来た部屋のチェックを終わらせると書類を出して私の捺印を要求してきた。
それをぽんぽんと印を押すと、建築妖精さんに書類を手渡す。
「では、お疲れ様でした。また何かありましたら司令部の方から連絡しますんで……」
これで彼らの仕事は終わりだ。
港から帰っていく建築妖精さん達を見送ると私は自室へと戻っていった。
………ところで、艦娘寮のコの字型の中庭にあるのが私が住む平屋建てのプレハブ小屋である。
部屋にカーテンをつけることは禁止されており、常に艦娘の視線を感じる。
そう、私は艦娘全員から監視されているのだ。
ああ、早く新しい艦娘が着任して私を監視してくれないだろうか……
(了)
こっそり目標にしてたお気に入り100件突破しました。皆様ありがとうございます。