「寒い……」
提督は全裸で腰にタオルを巻いたまま鎮守府の本舎裏で秋風に吹かれていた。
さすがにこの季節にドラム缶風呂は辛い。
水で濡れた身体からはあっという間に体温が奪われ、提督は水気をタオルで急いで拭きながら建物内に戻る。
「くそー、どうして俺が毎度毎度こんな目にあわなければならんのだ」
提督の私室には風呂場などないので、以前は修理用ドッグの浴場を借りていた。
しかしあるとき「提督が入った風呂に入りたくない」などという批判が一部艦娘より相次いだ結果、本舎裏でドラム缶風呂となってしまったのである。
執務室の浴室モードも「提督が裸になってるところで他の艦娘が入ってきたらどうするんですか! セクハラです!」ということで禁止されている。
「へくしっ……うー…風邪ひいたらたまったもんじゃないな……」
しかし捨てる神あれば拾う神あり、提督の濡れ鼠のような姿を見て哀れに思った艦娘が提案してきた。
私の部屋のお風呂を使いませんか?と。
最初は「艦娘の部屋に入るなど……」と渋っていた提督であったが、絶対にバレたりしませんからと押し切られてしまった。
そして……
「お、お邪魔しまーす……」
周りを気にしながら提督は寮の1階のベランダに上がり込む。気分は空き巣か下着ドロである。
その部屋の窓の鍵は掛けてなかったのでゆっくり開くと、転がり込むように入り込んだ。
「あっ!……ちょっとびっくりしてしまいました。来てくれたんですね、嬉しいです提督」
大淀は少し驚いた顔をしていたが、すぐに嬉しそうな顔になる。
「いや、すまないな大淀、ちょっとお湯を借りるよ」
「いえいえ、ゆっくりしていってくださいね」
大淀は部屋では私服を着ているのかと提督は思ったがいつもの服装のままであった。
「お風呂はもう沸いてますから、ささ、お早くどうぞ」
「では、入らせて貰うよ」
艦娘寮は「女性向け」ということで新築新設計の寮である。
完全個室にユニットバストイレ付き、寮自体には食堂と大浴場まで用意されており、いたれりつくせりであった。
それに対して提督の私室は鎮守府の宿直室を改造したもので風呂もトイレも別である。
「くっそー不公平だよなあ……ああ…でも久しぶりに手足を伸ばして風呂に入れるなんて……」
こうして提督は久しぶりにゆったりとした入浴を楽しんだ。
さて、脱衣所に戻ってみればタオルはあれど服は無し、ため息を一つついた提督は大淀さんを呼ぶが返事がない。
やはりこれは…と思いながら部屋に戻ってみるとベッドの布団が盛り上がっていた。
「大淀さん、あんまりこういう悪戯は……」
布団をめくりあげてみれば大淀が提督の上着を羽織って待っていた。
上着の隙間から見える大淀の肢体には薄いブルーの清潔な下着が申し訳程度に覆っており、提督は思わず生唾を飲み込んだ。
「うふふ……提督の服を温めておきました……さあ、1枚ずつちゃんと脱がしてくださいね♪」
誘うような表情の大淀にごくりと生唾を飲んだ提督は布団の中に潜り込み、
お互いの身体をもぞもぞとさせながら服や下着をベッドの下に放って濃厚な時間を過ごした。
「それじゃ、またいつでも来て下さいね提督」
ほかほかになった大淀に見送られて提督はベランダから飛び降りる。
結局、大淀と一緒に風呂に入り直すハメになったが狭い湯船で一緒になるのは悪くなかった。
「さてと……明日は明石さんの部屋にお呼ばれかー……」
今度は頭の上に服を載っけて入浴しないとな、と提督は思いながら執務室に帰っていくのであった。
(了)