それは爛れながらも平穏な日々 作:メキシカンX
IS学園・学生寮。
「学生寮」と名前はついているが、利用者は各国ではVIP待遇されているISの高適合者である。情報漏洩を防ぐために高度のセキュリティが施され、内部設備もホテルのスイートルーム並みの設備や内装が施されている。日常生活での心身のストレス軽減もIS操縦における重要な要素だ。
清潔感ある廊下に画一的なドアが並んでいるその一つ、ドアの横には「シャルロット・デュノア」「ラウラ・ボーデヴィッヒ」の二つの名が表記されている。
「………」
「………」
机に向かい今日の授業の復習を行っているシャルと、リビングで何やら黙考しているラウラ。静かな空間に、シャルの鉛筆を走らせる音だけが響く。
「(……どうしたんだろう、ラウラ)」
午後の授業辺りからラウラはずっとこんな感じだった。もともと賑やかな方ではないが、それにしても静かすぎる。
一夏を巡るライバルであると同時に懇意なルームメイトとしてシャルも心配ではあったが、とりあえずはラウラからの動きを待つ事にした。彼女は代表候補生であるのと同時にドイツ軍の特殊部隊の隊長も兼任している。そちら絡みの問題であれば、機密になるため踏み込めない問題だ。
「……ううむ」
その時、ラウラが唸った。閉じていた瞳を開け、声をかけてくる。
「シャルロット、勉強中にすまない。ちょっといいか?」
「う、うん、どうしたの?」
彼女から声をかけてくれた事に安心しつつ、シャルは手を止めてラウラに向き直った。
ラウラは真剣に何かを考え、その答えが出ない事に相当に苦心しているようだった。
「シャルロット、お前は男性の行動パターンについて詳しいか?」
「え?」
「例えば男性がある行動を取るとき、それがどういった要因に依るものか……とかだ」
予想外の方向からの問いかけに戸惑いつつも、シャルは答えた。
「え、ええっと……まあ、多少なら、かな? 知っての通り、最初はボクもここで三年間男性として振る舞うつもりだったから、大凡の行動とかは勉強してきたよ」
「そうか、ならば聞きたい事がある……男性が女性用のシャワー室から出てきた場合、それは何を意味するものだろうか?」
「はい!?」
更に予想外の方向。ラウラの悩みの正体が今だ読めないまま、シャルは彼女の質問の内容を吟味した。
「そ、そうだね……まず考えられるのは、男性用のシャワーが壊れて使えなくて、代わりに使わせてもらった……とかかな」
「他には?」
「あとは……その人が悪い人で、シャワー室の女性の下着とかを物色していたとか」
「では、それに女性が随行していた場合は?」
「女性が!?」
ラウラの質問がやけに具体性を増してきた。
「男性がシャワー室から出てきて、その後に女性……」
混乱する思考を落ち着かせようと、ここでシャルは一度彼女の発言をまとめる事にした。
ラウラが言う“男性”が誰を意味するのかを推測するのは容易だった。そもそもこの学園で“男性”は一人しかいない。では“女性”とは?
「……ねえ、ラウラ。一夏が女性用のシャワー室から出てきて、それに誰かが一緒だったって事?」
「な!? シャルロット、何故そこまで分かったのだ!?」
今度はラウラが驚いた。彼女は論理的で利発だが、時折こういった天然めいた面を覗かせる。
「そりゃあ分かるよ……ラウラ、午後から何だか変だったし」
「そ、そうか……」
何とか人物をぼやかしつつ聞こうとしていたのだろう。シャルの言葉にラウラは観念するように顔を伏せると、困惑を滲ませつつ言った。
「今日の昼に、私は織斑先生を探していた。以前にシャルロットにも言った、違和感の正体について聞こうと思ったのだ」
「(本人に聞いて答えを貰えるものでもないと思うけど……)」
シャルは内心で思いつつも、話の腰を折らないように黙って頷いた。
「ところが、先生は何処にも見当たらなかった。仕方ないので渡り廊下から教室に戻ろうとした時、何気なく見下ろしたアリーナ方面の廊下で教員用のシャワー室から出てくる織斑先生が見えたのだ」
「渡り廊下って……一般教室棟から特別教室棟に向かう所の? あそこからアリーナの廊下って、かなり距離がなかった?」
「200m程だな。軍の狙撃訓練なら外せば笑われる距離だ」
「………」
相変わらず比較基準がおかしい。
「ええっと……とりあえず、見間違いじゃないって事だね」
「ああ、アレは間違いなく織斑先生だった。そこで彼女を追おうとしたのだが……それを追うように、シャワー室から一夏が出てきたのだ」
「……ううん」
先ほどまでのラウラと同じようにシャルは唸った。確かに色々とおかしい状況だ。
まず考えられるのは、千冬が一夏に職員用のシャワーを貸したというパターン。状況としては最も違和感はないが、それでも疑問は残る。
もともと男子生徒用の設備を備えていないIS学園において、一夏は女性用の設備を時間を決めて利用する事で補っていた(一応、トイレなどは来客用のために男性用もある)。
アリーナにある生徒用のシャワー室も、授業前の決められた時間に一夏は利用できたはずだ。そしてそれは故障などはしていなかった。
かといって一夏が何かしらの
もう一度、シャルがラウラから聞いた話を含めて客観的に状況を考えてみる。
「『用事』と言って千冬は一夏を職員用のシャワー室に連れてゆき、昼休み一杯を使って『何か』をしていた」
というのが、とりあえず間違いない事実だ。ではその『何か』とは──
「……!?」
「シャルロット?」
突然、シャルの顔が一気に紅潮した。
「いやいや、それは無い! それは無いって! 何を考えてんだボク!?」
「どうした!? 何か気付いたのか!?」
シャルの様子の急変にラウラが食いついてきた。慌てて首を横に振りつつシャルは言った。
「え!? ううん、何でもない、何でもないって!?」
「何でもない訳はなかろう! 頼む、少しでも心当たりがあるなら教えてくれ!」
そう問い詰めてくるラウラの表情は真剣そのものだ。自身が敬愛する千冬への違和感と、「ヨメ」と称している一夏の不明な行動について彼女も不安を抱えているのだろう。
流石にこのまま黙っていては彼女も満足はすまい。シャルはそれを悟ると、おずおずと答えた。
「いや、あの……ほら、ラウラ。ボクが読んでいた少女漫画に、そんなシチュエーションがあってね」
「ああ、お前が読んでいるハイティーン向けの少女漫画雑誌の事か。それで?」
「その中に、ちょっと似たシチュエーションの漫画があったんだ」
男性向けの漫画に少年漫画から青年漫画、大人向けの漫画と分類分けされているように、少女漫画も対象層によって内容は大きく違う。低年齢層向けの少女漫画では主人公と恋愛対象の男性がキスをする程度までだが、ハイティーン向けの少女漫画では表現こそマイルドながらセックスは当たり前。中には調教ものめいた作品まである。シャルが思い出したのは、そんな一作品だ。
平凡な女子高生活を送っていた主人公の学園にちょっとアウトローめいた雰囲気の男性教師が転任してくる。最初は怖いと思っていた主人公だったが、町中で強引な風俗スカウトから助けられて以来、彼の危険な魅力に溺れてゆくという内容だ。
「……で、そのお話の中で、主人公が『用事がある』ってその男性教師に呼ばれて、他の女生徒が来ない男性教員用の宿直室に連れて行かれるんだ」
「それで、どうなるのだ!?」
「そこで、えっと、その、主人公と男性教師は……」
「主人公と男性教師は!?」
「あ、あの、その、だから……」
「………!」
「エ……エッチな、事を……」
顔を真っ赤にしながらシャルは言った。
「………」
ラウラは真剣な表情のまま、数秒間沈黙し──言った。
「……いや、それは無いだろう。恋人同士ならともかく、織斑先生と一夏は実の姉弟だぞ?」
「だ、だからそう言ったじゃない、もう!」
真顔で否定するラウラに、思わずシャルは声を大きくして抗議した。
「しかしそうなると、一体どういう事なのだろう?」
「うーん……考えて答えが出るものでもないみたいだし、織斑先生か一夏に聞くのが一番じゃないかな?」
「……やはりそれしか無いか」
そう答えるラウラの返事は重い。邪推で問い詰めるようになってしまう事に抵抗があるのだろう。
シャルは時計を見た。まだ消灯時間までは少しある。一夏は遅めまで起きているので、まだ部屋に行っても大丈夫な筈だ。
「一夏の部屋に……ちょっと、行ってみようか」
「……そうだな」
立ち上がり、シャルが先に立ってドアを開ける。一夏は空き部屋になっていた奥の方の部屋を一人用として使っている。そんなに離れてはいない。
廊下で何人かの女生徒とすれ違い挨拶を交わしつつ、やがて二人は一夏の部屋のドアの前に立った。
「………」
無意識に息を殺しつつ、シャルはドアをノックした。
「一夏、まだ起きてる? ちょっといいかな?」
『シャ、シャル!?』
ドア越しに一夏の驚いたような声が返ってくる。確かにこの時間に急に一夏の部屋を訪れる事はあまり無い。驚くのも無理はないだろう。
だが、それに続いて聞こえてきた声は逆にシャルを驚かせた。
『何だ、デュノアか。待っていてくれ、今開ける』
「(織斑先生!?)」
中から聞こえてきたのは、紛れもない千冬の声だった。ほんの少しの待ち時間の後、ドアが解錠音と共に開いた。
「……おお、ラウラ・ボーデヴィッヒ。お前も一緒か」
「きょうか……いえ、織斑先生。先生こそ、何故一夏の部屋に?」
「どうも今日は思った以上に疲れが残っていてな。風呂に入ってもまだ体が強張っていたので、あいつにマッサージをしてもらっていた所だ」
同様に驚きつつ尋ねるラウラに、千冬は肩を回しつつ答えた。
そう答える千冬はマッサージし易くするためか、黒のスポーツブラに黒のスパッツといった格好だった。本来ならば色気を感じさせないインナーの筈だが、成熟した大人の身体の千冬が着ているだけで艶めかしい。
「(どんな格好でも色っぽくて格好いいとか、叶わないよね……)」
思わずここに来た目的を一瞬忘れ、シャルは素直に羨ましく思った。
それを引き戻したのは、後ろに立っていたラウラの声である。
「すみません、織斑先生。伺いたい事があります」
「何だ?」
「今日の昼……一夏を連れて、どこに行かれていましたか?」
「………?」
千冬は数秒、ラウラと視線を合わせた。
シャルはラウラの思惑を測る。あえてラウラは表現をぼかしている。もし相手に後ろめたい事があったならば、嘘をつきやすいよう誘導しているのだ。
だが、千冬はあっさりと答えた。
「……昼か? 織斑を呼んで、職員用のシャワー室に来てもらっていた」
「はい。それを私も見かけたのですが……何をされていたのですか?」
「壊れた温水器の修繕の手伝いだよ。修理自体は我々でもできる程度のものだったんだが、更衣室の棚を大きく動かさないと駄目でな。我々か弱い女子でなく、男子にやってもらったという訳だ」
「そ、そういう事なんだ……悪いな、一緒にお昼できなくて」
千冬の後ろから一夏の声。部屋着で中腰になり、申し訳なさそうに言っている。シャルは一夏に答えた。
「ううん、大丈夫! お疲れ様、一夏」
「……なるほど、そういう事でしたか」
どうやらラウラも納得したようだ。千冬は腰に手をあてつつ言った。
「それで、どうした? 何だったら話ついでに、あいつのマッサージを寝る前にどうだ?」
「いいえ。その事が気になって一夏に聞こうとしていただけでしたし、もう消灯の時間ですので」
千冬の誘いにラウラは丁寧に頭を下げた。シャルも首を横に振る。
「ボ、ボクも大丈夫です。おやすみなさい、織斑先生」
「ああ、おやすみ。しっかり寝ろよ。明日の授業に眠気を残さないようにな」
そう言うと千冬は微笑み、礼をするとドアを閉じた。オートロックのドアの施錠音が鳴る。
「……ふう。何とも単純な理由だったな」
ため息と共に体の力を抜き、ラウラが言った。相当に緊張していたのだろう。
「う、うん、そうだね」
シャルは少し言葉を詰まらせつつも答え、ラウラと共に自分たちの部屋に足を向けた。
「(一夏……?)」
シャルは思い出す。先ほど、こちらに謝罪していた一夏の様子を。
一見、普通のように見えたが……今なら分かる。普段の一夏が見せる自然な表情と比べ、先程の一夏の表情は明らかに無理に作ったものだった。
「………」
ラウラに説明した少女漫画のストーリーの続きを思い出す。男性教師と宿直室のシャワールームで交わった主人公は、相手の求めるままに校内の様々な場所でセックスするようになり、男性から離れられなくなってゆくのだ。
「……ハァ、欲求不満なのかなぁ、ボク」
何か秘密があるにしても、それだけは無いって。
分かっているのに妄想してしまう自分の頭に対し、シャルは大きくため息をついた。
「迂闊だったな……まさかラウラに見られていたとは」
「廊下にはいなかったのに、どこから……」
「んっ……あ、あいつは軍で狙撃の訓練も受けている。“ヴォーダン・オージェ”に頼らずとも長距離から相手を正確に目視できる」
一夏用の大型ベッドの上で横になり、千冬は本当に一夏のマッサージを受けていた。背骨の辺りの解しを完了し、次は腰骨の辺りへと移る。
「よっ……危ないところだったって訳か。千冬姉がいきなりやってきて『消灯時間までマッサージしろ』って言ってきた時は何かと思ったけど、これが狙いだったんだな」
「いいや、二人が来るのまでは予測できていなかった。結果的に上手くごまかせたというだけだ」
「え?」
予想外の言葉に一夏の指が止まる。
「こら、途中で手を止めるな……今晩来たのは、今後お前の部屋に私が来るのを周囲に疑問視させない為だ」
「疑問視?」
「私の排卵日まであと数日とはいえ、それまでに周囲に私とお前の関係の変化を悟られるのは良くない。お前に近い女生徒たちは特に勘が鋭いからな。バレる前にこうして時々お前のところにマッサージを受けにきていると周囲が知っていれば、この部屋に私が定期的に長時間いても疑問には思われにくいという事だ」
「だったら、ラウラに説明していた修繕がどうとかって言うのは?」
「アレはその場の出まかせだ」
腰骨周りを揉み解しつつ、一夏は冷や汗を浮かべた。本当に危ない状況だった訳だ。
「正直なところ、肝が冷えた。お前も部屋に籠ったままだったしな」
「だって千冬姉、それは……うっ!」
うつ伏せの千冬の太腿辺りに跨るようにして腰を揉み解していた一夏の股間に千冬の手が伸びた。部屋着のトレパン越しにも分かるくらい、一夏の肉棒は膨張している。
シャル達が訪問してきた時に一夏が立てなかった理由がこれである。もし普通に立ち上がっていれば、勃起しているのが遠目にも分かってしまっただろう。
「全く、マッサージをさせているだけで勃起するようになるとはな……このエロガキめ」
「お、俺だけじゃないだろ? そんな事言ってるけど、“千冬”だって……」
「っ!? ま、待て、まだ……ンンッ!」
からかうような千冬の言葉に、一夏は両手で腰を揉んでいたのを片手に変え、空いた手をスパッツの中に差し込んだ。指先にしっとりした湿り気と、同時に熱い火照りが伝わってくる。
「マッサージだけでこんなに濡らして、お互い様だろ?」
「お、お前の今日の触り方が、特別にいやらしいからだ!」
「俺は今までと同じマッサージしかしていないぜ? 千冬の身体が、俺の指に感じやすくなってるんだ」
「ンッ、あっ、ああっ!」
手探りでスパッツの中に入れた指を動かす。ショリショリとした陰毛の感触を経て、その先の柔らかな陰唇に指が届いた。指先にとろりとした熱い液体が絡みつく。
一方、その間も千冬の手は一夏の股間から離れてはいなかった。愛おしそうにトレパンの上から勃起の形に添って撫でさすり、一夏の興奮を煽り立ててくる。
「千冬……いいかな?」
上体を倒し、うつ伏せの千冬に囁くように一夏は言った。
「ああ……私も、我慢できなくなって、きた……」
一夏の胸の中で千冬は態勢を変え、仰向けになった。スポーツブラをずり上げると、横になりながらも形を崩さない豊かな双丘が重そうに揺れつつ露わになる。先端の桜色の乳首は既に固く突起し、手を伸ばした一夏の掌を弾力と共に押し返してくる。
「……綺麗だ、千冬」
「改めてそういう事を言うな。恥ずかしく、なる……」
率直な一夏の言葉に、千冬は僅かに赤面した。スパッツの両サイドに指を差し込み、そのまま脱がしてゆく。ステッチの部分に少し染みがついていた。次いでトレパンを下着ごと下ろすと、千冬の愛撫によって十分に昂った肉棒が跳ねるように飛び出した。既に亀頭は露出し、赤黒くひくついている。千冬と最初に交わった時と比べて、少し大きくなったかもしれない。
その反り返る肉棒を見詰めつつ、千冬は言った。
「全く、ほんの一週間ほど前まで挿入するなり射精していたのが、随分と凶悪になったもの……んくっ!?」
「……千冬も、最初にしてくれた時に比べて随分とスケベになったよな」
「こ、こらっ、ああっ! 誰の、せいだと……っ!」
濡れた秘所を指で弄りつつ、一夏は千冬の敏感な反応に感慨深く言った。、言い返そうとする千冬の唇を、自身の唇で抑え込む。
「んっ……はぁっ……い、いち、かぁ……」
「ふぅっ……んっ……ふぁ……」
キスをして舌を絡めるだけで千冬の瞳はとろんとなり、肌に汗が浮かんでくる。
唇を離し、一夏は言った。
「……ああ、俺のせいだ。俺のせいで、千冬はキスだけでこんなに感じるようになった」
「一夏……あはぁっ!」
指先に絡んでいた愛液の粘度が強くなる。
「だから……これからも、もっといやらしく、俺だけの千冬になってほしい」
「……それは大人になってから言うセリフだ、馬鹿者」
窘めるような言葉と裏腹に、千冬は脚を広げた。
「そう思うなら、実戦で見せてみろ。私を……もっと狂わせてくれ、一夏」
「千冬……っ!」
「あっ……あ、はぁぁっ! 一夏っ、一夏っ! もっと、もっと奥まで……っ!」
一夏の背中に手を回し、強く抱きしめてくる千冬の温もりを感じつつ一夏は千冬の女陰に肉棒を深く突き入れた。