それは爛れながらも平穏な日々 作:メキシカンX
暗闇の中、水音と声が聞こえる。
「んっ、んふっ……ふぁ……」
次第に意識が覚醒してゆく。
織斑一夏は自分が横になっている事と、次いで腰の辺りにかかる重量感に気付いた。誰かが自分の腿辺りに腕を置いている。
「はぁっ……ふぉ、ふぉうへふは、おひふはふん……?」
喘ぎの混じる女性の声。屹立している肉棒に熱い吐息が吐きかけられ、快感に一夏の腰が浮く。
「(な、何だ……!?)」
まだ目覚め切っていない意識の中、一夏は既視感を覚えつつ昨晩の事を思い返した。
千冬のなし崩し感あるセックスの後で、彼女は泊まる事無く部屋を出て言った。
「明日の朝には篠ノ之が朝練の誘いに来るだろう? 私の匂いが残っていては気付かれるからな」
体臭などに無頓着な一夏にはそんなに千冬の匂いが強いとは思えないが、女性にしか気付かない何かがあるのだろう。一応消臭剤を撒き、遅い眠りについた。体内時計を信じるならば、今は早朝のはずだ。
「っぱ……お、織斑君……先から、溢れてきています……」
再び甘い声。聞き覚えのある響きだ。肉棒は固く勃起し、膣内とはまた異なる、弾力ある柔らかいものに包まれている。
「ん……?」
思い瞼をどうにか持ち上げ、一夏は視線を腰に向けた。
普段教室で日常的に会っている、眼鏡と緑髪が特徴的な女性が一夏の肉棒を豊満な乳房で挟みつつ亀頭を舐めしゃぶっている。
「……!?」
「も、もうイキそうなんですか? 遠慮しないで、私の顔にかけて下さいね」
一夏が表情を強張らせたのを絶頂が近いのを我慢していると思ったのだろう。一夏のクラスの副担任、山田真耶は舌の動きを止め柔らかな微笑みを──
「いやいやいや、そうじゃなくて! 山田先生、何やってんですか!?」
「……?」
一夏としては本気で混乱していたのだが真耶は逆に一夏の反応の意味が分からないのか、胸の深い谷間に一夏の肉棒を挟んだまま小首を傾げた。
「何をって……むー、織斑君、こんなに硬くさせながら寝ていたんですか? 何をも何も、織斑君が頼んできたんじゃないですか」
「俺が!?」
当然ながら全く覚えがない。更に混乱する一夏に真耶は言葉を続けた。
「確かに織斑先生があと三か月で出産で、パパになる事への不安なども含めて溜まっているのは先生も分かりますけど……回数が多いですよ? 夕べあれだけやったのに、もうこんなに元気にして……」
「パパ!? 三か月!?」
立て続けに投げかけられる言葉に実際に殴られたような衝撃を受けつつ、一夏は改めて周囲を見回した。どうやら学生寮の一夏の部屋である事に間違いはないようだ。
更に一夏は部屋の壁にかけられたカレンダーを見た。確かに千冬と話をしていた彼女の排卵日から数ヶ月が過ぎ、カレンダーの年度も翌年になっている。
思わず思考が停止した一夏を他所に、真耶は顔を赤らめつつ言った。
「ま、まあ、先生としても織斑君のおちんちんを通じて織斑先生とは竿“姉妹”になる訳て、嬉しくはあるんですが……」
「(まさか……また、夢か!?)」
どこかぼんやりとして思うように動かない思考を懸命に働かせる。思い出すのはつい昨日のシャルとのやけにリアルだった夢だ。
確かに昨日、職員用のシャワー室で間近でシャワーを浴びる彼女の肢体を妄想したりはしたが──だと言ってこんな夢を見るものだろうか。
そして何より奇妙なのは、股間から立ち上るやけに夢にしてはリアルな快感だ。夢の中では痛いとかの感覚は無いと言うが、今感じている真耶の乳房の感触はまさしく一夏が想像した通りの千冬よりも大きく豊かで、柔らかさと弾力を両立させた堪らないものだった。竿全体をすっぽりと包まれ、汗ばんだ乳房で両側から捏ねるように挟まれるとそれだけで腰が浮いてしまう。
「うっ、ううっ! 先生っ! ちょ、ちょっとその胸の動き、止めて……!」
「だから織斑君が『胸でしてくれ』って言ったから、んっ、やっているんじゃないですか……」
「ええっと、だから……!」
考えがまとまらない中、何とか真耶を制止する言葉を探そうとする。
だが、一夏が言葉を見つける前に真耶は左右から乳房に添えていた手の動きを止めた。
「……もう、“また”ですか? 織斑君」
「え? “また”?」
「しょうがないですね……でも、先生も正直、織斑君のが欲しくなってきていて……」
そう言いつつ、真耶は何かを察したような艶めかしい微笑みを浮かべた。
「……!?」
山田真耶。ちょっとドジな所もあるが心優しく、いつもにこにこと朗らかな小柄な副担任。それが一夏の知る真耶の姿だ。
しかし今こうして一夏に向けられている眼鏡越しの視線は──その知る中に存在しないものだった。発情した女性の、まだ少年である一夏にはむせ返りそうな程に淫らな空気。それを麻耶から感じる。
「いつも言っていますけど、織斑先生には秘密ですよ? 『出産まで、口や胸でだけ処理しておいてくれ』って、約束なんですから……」
そう言いつつ真耶は身を起こし、勃起したままの一夏の肉棒に指を絡めると垂直に立たせた。そこに跨るように腰を置いた。
「いつも」という事は、どうやらこれが初めてという訳では無いらしい。
「(いや、そんな事を考えている場合じゃ!)せ、先生! だから待っ……うあっ!?」
「はぁんっ! お、大きいです、織斑君の……私の中、ンンッ、お、押し広げて……!」
ぬるりとした温もりが肉棒を包み、一夏は思わず声をあげた。真耶の中は十分に濡れそぼり、肉厚な襞がぞわぞわとした快感を肉棒に与えてくる。締め付けこそ千冬程ではないが、彼女の人柄がそのまま肉体に反映されているような、暖かく包み込むような感触だ。真耶は一夏の裸の胸板に手を置き、腰を震わせながら快感を堪えている。彼女も相当に感じているのだろう。
「あぁんっ! お、織斑君のおちんちん、凄いっ!」
「くうっ! 先生の中も、熱くて……っ!」
一夏は何とか身体をよじり、真耶の膣内から肉棒を引き抜こうとした。しかし夢の中だからだろうか、身体が思うようにならない。
「(くそっ、どうすれば……!)」
本来、夢の中でセックスしたとしても浮気にはならないはずである。
しかしこの本物の真耶を抱いているかのような実在感と快感はとても「夢だから」で済ませられない程にリアルだった。
真耶の腰が緩やかにくねりつつ上下する度、じゅぽじゅぽという音と共に結合部から粘液が溢れる。真耶の愛液と一夏の先走りが混じり合ったものだ。次第に腰の動きは激しくなってゆき、それに合わせて真耶の重そうな両の乳房がゆさゆさと揺れる。その煽情的な巨乳に一夏は分かっていても視線を吸い寄せられてしまう。
「あっあっああっ! いいっ! お、織斑君っ! いいっ!」
「ううっ! 先生っ、山田先生っ!」
一夏は歯を食いしばり、懸命に射精感に耐えようとした。だが容赦なく真耶の膣内は一夏の肉棒を扱き、撫で、包み、締め付けてくる。
「だっ、駄目だっ! 先生、出るっ!」
「ふぁあっ! お、お願いっ、しますっ! 織斑君っ! このまま、膣内にっ!」
「いや、それはマズっ、ぐあっ!」
膣内射精をねだる真耶を一夏は何とか押し留めようとしたが、とどめとばかりに真耶は一夏の肉棒を締め付けた。抑えようのない強烈な射精感に襲われ、一夏は身体を震わせた。
「ぐっ、ああっ! ダメだ、先生ぃっ!」
「んぁぁっ! イクッ、イクぅっ!」
夢中で真耶は腰を振り、それに合わせて豊かな乳房が激しく揺れる。その淫蕩な姿を見上げつつ、遂に一夏は限界に達した。
「先生、お、俺も、イクッ! うあぁっ!」
そう叫び、一夏は眼を見開いた。
「……あ?」
全身が酷い脱力感に包まれている。その気怠さを振り払いつつ一夏は視線を周囲に向けた。壁のカレンダーを見る。年号は今年で、千冬の排卵日まであと3、4日。
「やっぱり夢かよ……うわ」
げっそりとした表情で一夏は呟くと、自分の腰から感じるべたついた感触に気付いた。何が起きているのかは考えるまでもない。
前回のシャルとの夢の時は何とか堪えたが、今回はそうもいかなかったらしい。
まあ、射精してしまったものは仕方ない。トランクスを履き替えなくては。そう思い一夏は視線を自身の腰辺りに向けた。
棒立ちしている篠ノ之箒がいる。
「………」
「………」
「凍り付いた顔」という言葉を具現化したら、今の箒みたいな顔になるのだろう。
頭のどこかで呑気にそんな事を考えつつ、一夏は何かを言おうとした。
「あ、あの、箒……」
「うわあぁぁぁっ!?」
箒は叫び、片手に持った竹刀を一夏の湿ったトランクスに振り下ろした。
───何とか、潰されるのだけは回避した。
「………」
「………」
「えーと、あの、篠ノ之さん?」
「近寄るな、けだもの」
学生寮の部屋は外部の侵入者の入室を防ぐためのロックはあるが、学生同士であればIDカードでロック解除はできる。
朝練を誘いに来た箒は部屋の中から聞こえる一夏の呻き声を体調の急変と判断し、慌てて入ってきた。そしてそこで一夏の夢精の瞬間に立ち会ってしまったのだ。
一夏の受けたショックにしても相当なのだ。箒が一夏の睾丸を潰す前に自制できた事も奇跡と言えるだろう。
全力で拒否の態度を背中で示す箒に、一夏はそれでも言った。
「……すまない。心配してくれたのに、酷いものを見せた」
「……全くだ、今までの人生で『心配して損をした』と一番思えたぞ」
数秒の間を置き、箒は何とか返事をしてくれた。内心で安堵しつつも一夏は言葉を選んで言った。
「その……気をつける。自分で抑えられるものじゃないから断言はできないけど」
やはり数秒の間を置き、箒は首を傾けると一夏に視線を向けた。
「いや……まあ、その、男子の部屋に迂闊に入った私も不用意だった」
「あんなのは滅多に無いんだ。本当に」
千冬とセックスしている時点で、箒に隠し事をしているのは事実だ。しかし、こんな事で箒を傷つけるのは流石に嫌だった。
ふと、箒は振り返り一夏の顔を見た。
「な、何だ、箒?」
「いや……一夏、研究所に行っている最中に何かあったのか?」
「え?」
「何と言うか、雰囲気が……いや、何でもない」
思うような言葉が出なかったのだろう。箒は何かを言おうとした途中で止め、再び校舎へと足を向ける。
「………」
『お前の周囲の女性は勘が鋭いからな』
昨晩、千冬に言われた言葉が頭をよぎる。
背中に冷や汗が滲むのを感じつつ、一夏は改めて今朝の夢について考えた。
これだけ連日千冬とセックスしているのだ。昨日のシャワー室での事があったとはいえ、真耶の淫夢を見た上に夢精する程に欲求不満が溜まっているとは考えられないだろう。
「相談……してみるか」
一夏は小さく呟き、箒の後を追った。
皮肉なことに、今朝の夢精のお陰か授業中にいきなり勃起する頻度は大幅に下がった。
2限目のIS戦闘に関する座学で、黒板代わりのモニターの前で真耶が丁寧な説明を行っている。それを聞きつつ一夏は考えた。
実際、奇妙な話であった。夢で多少リアルな感覚を覚える事自体は無いとは言えない。しかし今回の場合、夢に出てきたシャルも真耶も自分の経験外の感覚を与えてきた。具体的に言えば女陰に挿入した時の快感や締め付け具合などだ。
一夏は千冬以外の女性を知らない。なのに夢の中のそれは千冬とはまた違う“女性”の感触と快感だった。
だとすれば──
「──りむらくん? 織斑君!」
「は、はいっ!?」
自分の名が呼ばれている事にようやく気付き、一夏は慌てて立ち上がった。
「だ、大丈夫ですか?」
教壇の真耶が心配そうにこちらを見ている。どうやら何回も呼ばせてしまったらしい。
一夏は教壇の横に座る千冬をちらりと見てから言った。
「あの……すみません、ちょっと保健室に行かせてもらっていいですか?」
「分かりました。付き添いはどうしましょう……」
こちらの事情を知っているからか、真耶は心から自分を心配しているようだった。そんな彼女を夢の中で犯してしまった事に一夏の心が少し痛む。
付き添いを探す真耶に、セシリアが高々と手を挙げた。
「それならわたくしがお連れ致しますわ!」
「いや、今日の授業は大事なところだ。私が行こう」
だが、それは千冬にあっさりと否定された。一夏を気遣う視線を送りつつ、残念そうにセシリアは手を下げた。
一夏は気持ち身体がだるそうに見えるように歩きつつ、千冬の椅子まで行った。
「すみません、織斑先生……」
「気にするな。真耶、この馬鹿を送ったらすぐに戻る」
頭を下げる真耶に千冬は軽く答えると、特に一夏の心配をする風でもなく先行して教室のドアを開けた。
「ゆっくりで構わん。来い」
「は、はい、織斑先生」
一夏は答え、その後を追った。廊下に出て、ドアを閉める。
果たして千冬はドアの近くに立っていた。授業中の無人の廊下を、並んで歩く。
「……で、何があった? 勃起ではないようだが」
既に彼女は一夏に異常がある事に気付いていたようだ。話が早いと思いつつ、一夏は言った。
「それが……今日も、また変な夢を見たんだ」
「夢? お前が言っていた、デュノアとの夢の事か?」
「ああ、それなんだけど……今朝は山田先生が出てきた」
「……ふむ」
怒るかと思ったが、意外にも千冬は何か考えるように顎に指をあてた。
「やはり、『そういった』夢だったのか?」
「ああ、千冬姉がもう妊娠7ヶ月くらいで、俺の相手ができないからって山田先生が頼まれた……って、設定だったみたいだ」
「随分と生々しい設定だ」
「生々しいのはそれだけじゃないんだ。感覚もやけにリアルで……その、箒に夢精するところを見られた」
「……よく潰されなかったものだ。玉無しになれば、この計画もご破算だったろうな」
こちらとしては必死に守ったのだが、千冬は苦笑を浮かべた。
「正直、千冬姉と毎日やってるから欲求不満ではないと思うんだけど……」
「分からんぞ? 女を知って、お前の深層心理的に他の女に興味が出てきているのかもしれん」
「………」
「冗談だ」
こちらの気を少しでも晴らそうとしてくれているのだろう。そう言いつつも千冬の表情は真面目なままだ。
「本当に心当たりはないのか?」
「あったらそれも言ってるって」
「だとすれば、外的要因か……」
ふと、千冬は足を止めた。釣られて一夏も足を止める。
「どうしたんだ、千冬姉?」
「一夏、“白式”の情報ネットワークへのアクセス記録の照合はできるか?」
「え? あ、ちょ、ちょっと待ってくれ」
突然の問いかけに、一夏は腕に装着されていたブレスレット状の“白式”に触れた。
「……何だ、これ?」
一夏は眉をひそめた。通常、ネットワークへのアクセスは整備の時などの限定的な状況や、あるいは緊急時でなければ発生しないはずだ。それが何故か、昨日と今日の朝にアクセス記録が残っている。接続者は不明。
「……なるほど。そういう事か」
一夏の反応で、千冬は何かを察したのだろう。頷き、再び歩き始める。
「一夏、今晩もお前の部屋に行く。一緒に寝るぞ」
「え?」
「こんな芸当ができる奴など、世界で数人いるかいないかだ」
そう言う千冬の表情には、静かな怒りが浮かんでいた。
某所。
薄赤く照らされた室内には無数の機械が並び、何を意味するのか不明な数値や状態を示し続けている。
その部屋の中央、歪んだ銀色の椅子に座りつつ幾つものホログラムモニターを展開し、高速タイピングを半分眠ったような顔で行う女性。
「うんうん、やっぱりいっくんは同世代より年上のがシチュエーション的に興奮するみたいだねー」
傍らに置かれたコーヒーをひとくち。色からして明らかにドリップに時間をかけ過ぎたエグみの強いであろうコーヒーを眉一つ動かさず飲む。
「……まー、いっくんはともかく、話を聞けばちーちゃんは気付くよねー」
コーヒーの横に置かれた黒焦げのトーストをひとくち。
「さーてさて、こりゃ今晩が勝負所かな? それにしても、萎びた象さんみたいだったいっくんのアレも随分と立派になったもんだねー。私もあそこが疼いてきそうだよ。まあ嘘だけど」
誰に語るでもなく彼女は言うと、キーボードに走らせていた指を一旦止め、大きく背を伸ばした。
「ちーちゃんの排卵日まで日も無いし……とっととぶち壊さないとね」