それは爛れながらも平穏な日々 作:メキシカンX
「ああんっ! い、一夏っ!」
「ハァ、ハァ……千冬、ど、どうだよ、これは……っ!」
織斑一夏が織斑千冬の胸部による射精促進行為、いわゆる“パイズリ”で射精をしてから二日が過ぎた。
「んっ! ふ、深い……っ! も、もうイキそうか?」
「まだまだ……くっ! ち、千冬こそ、限界なんじゃ……ない、のか?」
「ば、馬鹿にするなっ、んあっ! ま、まだお前、には……!」
大凡、人間の適応力と言うのは大したものだと改めて一夏は思う。
朝食を摂り、家事を消化し、昼食を摂り、頭をひねりつつドリルを解き、仮眠を取り、夕飯の食材を買いに行き、夕飯を早めにつくり、また仮眠を取り、帰宅した千冬と“訓練”と称したセックスをする。
三日目にして、早くも一夏はこの生活リズムに慣れつつあった。同時に、千冬との性行為に対しても。
「んっ、んっ! ああっ! い、イクっ、一夏っ、イクっ!」
「千冬、俺も、俺も……くうっ!」
「あああっ、い、一夏ぁっ!」
幼い頃から剣道などをやっていた事もあり、一夏の肉体は一般的な男子のそれをもともと上回っていた。更にそれはIS学園の優れたフィジカルトレーニングにより継続的に鍛えられ、今ではスリムながら持久力と筋力を併せ持つ肉体を備えている。
また、数日前には童貞だったとはいえ、一度技術やコツを覚えてしまえばそれを実践できるだけの吸収力を一夏は持っていた。
「いち、か……あはぁぁっ!」
「うおっ、ち、千冬ぅっ!」
それが組み合わさった結果、両者のベッド上での主導権は次第に変わりつつあった。
未だ主にリードしているのは千冬ではあるが、一夏も彼女の身体の事が色々と分かってきたのだ。
「はぁ……う、上手くなってきたな、一夏……」
「……“千冬姉”、俺が出すまでに二回イッてなかった?」
「っ!? な、何を言って!?」
「いや、千冬姉がイク時の癖が何か分かってきたって言うか……」
今晩三度目の交合を終えて荒い吐息と共に言う千冬に、一夏はあえて“姉”付きで問いかけた。不意の言葉に千冬はその顔を急に赤くさせ、動揺と共に否定する。
明らかに図星を突かれたような反応に一夏は微笑んだ。
「嬉しいよ。俺だって千冬姉を悦ばせたいから」
「……調子に乗るな、
「ああ、千冬姉は明日も学校だしな」
赤面する顔を隠すように千冬は横になり、一夏に背を向けた。未だ火照りを残す、汗に濡れた背中が艶めかしい。
時計を見れば、既に午前三時を回っていた。仮眠をとっているとはいえ、そろそろ眠気が来る頃だ。一夏も千冬と共に横になり、身体を寄せる。
「おやすみ、千冬姉」
「ああ、おやすみ」
常夜灯の淡い光が灯る室内に、二人の静かな吐息だけが響く。
傍らの千冬の温もりに心地よさを感じつつ、一夏は眠りに落ちて行った。
翌朝、いつもより千冬の出掛けは早かった。
『今日の帰りは遅くなる。夕食の用意は大丈夫なので、自分の分だけ作ってくれ 千冬』
とだけ書かれたメモが食卓に置かれていた。
「……山田先生と飲みにでも行くのかな」
カレンダーを見つつ一夏は呟いた。今日は土曜日、学園での書類仕事などを今日中に済ませれば明日は千冬も一日休みである。そういう日には彼女はたまに真耶を連れてバーなどへ飲みに行っているようだ。
一夏には教職の大変さなどは今ひとつ分からないし、千冬も仕事を家に持ち込んだりはしない。自分には想像できないような苦労や、大人同士の酒の席でしか話せない事だってあるのだろう。
「まあ……今はこっち件の方が大変か」
昼は教職、夜は一夏と毎晩セックス。僅かの睡眠時間で跳ね起き、また翌朝は髪の乱れひとつ残さずIS学園へ。よくよく千冬の体力と気力は規格外だ。
とはいえ彼女も人間だ。いい加減疲れも溜まっているのではないだろうか。一夏は何となくそう思った。
「……今夜は、千冬姉にもゆっくり寝て貰おうかな」
一夏はそう言うと、家事に取り掛かり始めた。
残念な事に、一夏のその気遣い通りにはならなかったのだが。
「お疲れ様です、織斑先生」
授業を終え、職員室に戻ってきた千冬に真耶がコーヒーを差し出した。
「ありがとう、真耶」
椅子に腰かけ、千冬はコーヒーを受け取ると軽く冷まして飲んだ。ミルクや砂糖は加えない。真耶は彼女の好みを察しており、既に千冬の好みに合わせた分量で加えられているからだ。
「……大丈夫ですか?」
「ああ、生徒達も大分慣れてきたな。このペースなら一年生のカリキュラムも……」
心配そうな声に千冬が答えると、真耶は首を横に振った。
「い、いいえ、そうではなくて……」
「………」
千冬の表情が僅かに硬くなった。授業の事以外で千冬が心配されるような事と言えば、子作りの件しかない。
「……それこそ大丈夫だ。滞りなく準備は進んでいる」
少しの沈黙の後、千冬は穏やかに真耶に言った。
「で、でも、お疲れではないですか?」
「私の体力は真耶も知っているだろう。何故そう思う?」
「ええっと……織斑先生が座っているところ、私の席なんですが……」
「………」
無言で千冬は隣の席に移った。
「……すまない、真耶」
「い、いいえ……でも、体力はともかく、気持ち的にお疲れなのではと心配で……」
頭を下げる千冬に、真耶はそれ以上に深く頭を下げた。よくよく彼女は誰に対しても腰が低い。国際選手候補生まで行った実力といい教員としての指導力といい、もっと堂々として良いところなのだが、彼女はその姿勢を崩さない。
暫くしてようやく頭を上げた真耶に、千冬は言った。
「なあ、真耶……今晩、一杯付き合って貰えるか?」
「え!? あ、はい、喜んで!」
相談してもらえる事自体が嬉しいのだろう。千冬の言葉に真耶は言葉通りに喜んで答えた。
「織斑先生の様子がおかしい?」
IS学園・第二アリーナ備え付けのシャワールーム。放課後の自主トレを終えた二人の少女がシャワーを浴びつつ言葉を交わしていた。
「うむ……僅かだが、ここ数日になって雰囲気が変わった」
熱いシャワーを浴びる銀髪の小柄な少女、ラウラ・ボーデヴィッヒは隣でシャワーを浴びるシャルに言った。
「それって、具体的にはどんな風に?」
シャルがそう聞くと、ラウラはその表情に困惑を浮かべた。
「それが……どうも上手く言えん。明らかに何かが違っているのだが、それが何かが分からないと言うか……」
「う~ん、それってラウラの気にしすぎじゃないかな? 一夏が留守にしてるからナーバスになってるとか」
「私もそれは考えたが、どうも……」
シャルのもっともな答えにラウラは言葉を濁す。自分の感じている事を上手く言葉に出来ないもどかしさを覚えているようだ。彼女はドイツで千冬が一時的に教官を務めていた頃からの教え子で、生徒たちの中でも最も強く彼女を尊敬している。おそらく、ラウラにしか感じ取れない何かがあるのだろう。
上手く表現できないのは聡明なラウラにしては珍しいことだ。シャルはそう思いつつ言葉を続けた。表現が出てこないならば、ヒントを出してあげれば答えが出るかもしれない。
「例えばさ、疲れているようだとか、何か困っているようだとか、そんな感じ?」
「いや……そうだな」
シャルの言葉にラウラは自分の感覚に最も近い言葉を見つけたのか、シャワーの水音と共に答えた。
「強いて言うならば……『美しくなった』とでも言えばいいか……」
「織斑先生はもともと綺麗だと思うけど……もっと綺麗になったって事?」
予想外の答えにちょっと困惑しつつシャルは言った。
「あくまで近い表現でしかないがな……シャルロット、お前は何か気付いた事はないか?」
そう尋ねてくるラウラの声は真面目である。シャルはそう聞かれ、少し考えた後に答えた。
「そうだね……関係あるか分からないんだけど、一昨日の授業終わりに皆で焼いたクッキーを……」
『BAR・クレッシェンド』
そう書かれた古びた看板の店は、駅からやや離れた商店街の並びの地下にある。
駅前こそ週末の仕事終わりのサラリーマンで居酒屋やバーは賑わうが、少し離れてしまえば静かなもの。ましてや一見様お断りの雰囲気のこの店に来る団体客はいない。何人かの客が、それぞれ静かに飲んでいるだけである。
「いらっしゃい。久しぶりですね」
「ご無沙汰しています」
白いシャツに黒のベストが似合う壮年のマスターが声をかけると、千冬は微笑んでカウンターの端の席に座った。真耶もその横に座る。
「ボトルを」
「お、織斑先生?」
何気なく言った千冬の言葉に真耶は驚いた。いつもであればグラスビール程度からスタートするのが彼女の飲みの流儀だ。それをいきなりウイスキーをボトルで注文という事は、今日は本気で酔うつもりらしい。
「え、えーと、私はハイボールを薄めでお願いします。ライムを絞ってください」
「……はい、薄めで。お待ちください」
その雰囲気がマスターにも伝わったのだろう。察するように、本当に風味付け程度にしかウイスキーを入れないハイボールを作り始める。
やがて、千冬の前にはボトルと氷、ウイスキーグラス、チェイサー。真耶の前には細長いグラスのハイボール。間にはおつまみのスモークチーズとアンチョビの皿が置かれた。
「ええと、それじゃ。お仕事お疲れさまでした」
「お疲れ様」
グラスを軽く合わせ、千冬はウイスキーグラスを呷ると一息で飲んだ。思わず目を丸くする真耶を気にする事無く二杯目を注いでゆく。
「その……やっぱり大丈夫じゃない、ですよね? 織斑先生……」
そう尋ねる真耶の顔には、心からの心配が浮かんでいる。
考えるまでもなく、それは当然の話と言えた。今まで普通の姉弟として過ごしてきた相手といきなり強制的に子作りしろと言われ、更にそれが出来なければ体外受精で別の母体で育てさせると言うのだ。普通の女性であれば耐えられない仕打ちである。
これが単純な外部からの依頼であれば有無を言わせず拒否する事もできただろう。しかし表向き国際機関とはいえ、IS学園の最大のスポンサーは日本そのものだ。その日本政府から直接の秘密裏な依頼ともなれば、無下にするのは難しかった。
何より真耶にとって苦しかったのは、全力で拒否しようとした真耶に対して当人である千冬が受理してしまった事である。彼女は真耶に対して一言だけ言った。
「大丈夫だ」
そして、依頼を受けたその日の内に彼女は一夏を応接室まで呼んだ。あの時に一夏が噴出したコーヒーの匂いが、真耶の眼鏡にはまだ残っている。
真耶は手元のハイボール(に近いライム水)を少し飲むと言った。
「無理する必要はありません、今からでも拒否しましょう! 相手が政府だからって、織斑先生の立場なら向こうも強気には出られないはずです!」
そう言う真耶に、千冬はグラスを手に答えた。琥珀色の中の氷が澄んだ音を立てる。
「違うんだ、真耶」
「……違う?」
怪訝な顔をする真耶に、千冬は言葉を続けた。
「この話を受けた時、正直なところ私自身はどうでも良かった……ただ、一夏が不憫でならなかった」
「織斑君が不憫……ですか?」
「だってそうだろう? 訳も分からず『世界唯一の男性IS適合者』と持ち上げられ、まともな恋愛も、セックスもせずにいきなり精子を摘出され、本人の知らない所で自分の子供が生まれ育っているなど、余りに一夏が可哀想すぎるじゃないか」
そう言うと千冬は二杯目を呑んだ。チェイサーを軽く口にして、早くも三杯目を作り始める。グラスに氷を足しつつ更に千冬は言った。
「だから、私はこの件に時間をかけたくなかった。出来るだけ少ない日数で、短期間で一夏が問題なく子作りできるように備え、排卵期が来れば一発で子供ができるようにしてゆくつもりだった」
「……それが、辛くなってきたんじゃないんですか?」
話の流れからすれば、そう千冬が思い始めたと考えるのが自然だ。しかし千冬は首を横に振った。
「……それだったら、まだ良かったのだがな」
「『良かった』?」
「ここ数日、私は一夏とセックスを繰り返している」
「……!」
何気ない口調で千冬が言う。予測はしていたとはいえ、それを直接言われるのは真耶にとっても衝撃はあった。
「はじめは『本番』のための練習のつもりだった。排卵期に入って一夏が怖気づいたり、あるいは上手くできなかったりすれば次の排卵期まで待たなければならないからな」
「今は、違うという事ですか?」
息を呑みつつ真耶は尋ねた。千冬は頷き、三杯目を呷る。
「最初の晩、一夏に抱かれた時に気付いてしまったんだ。ずっとこうなる事を望んでいたという事に」
「……織斑君と?」
真耶はハイボールを多めに飲んだ。これから千冬が言うであろう事を自身が受け止め切れるよう、心を整えるために。
「アイツの事は、確かに昔から愛おしくは思っていた。私自身、それはあくまで弟に対しての親愛みたいなものと思っていたのだが……どうやら、違っていたらしい」
「そ、それこそ勘違いの可能性だって……!」
「そうでないから、辛いんだ」
言葉を強めて反論しようとする真耶に対し、千冬の口調はあくまで静かだった。アルコールが回ってきたのだろうか。顔に赤みが差してゆく。
「一夏にとって、この件は所詮は一過性のものだ。まだ性に触れたばかりだから私を求めてはきてくれるが、事が終われば私からは離れるだろう。いや、そうでなければいけない」
「織斑先生……」
「それが……私には、辛いんだ」
ボトルをグラスに傾け、四杯目を作る。明らかに早すぎるペースだが、真耶には止められない。
「あいつの事を愛おしく思う。強く抱きしめてほしいと思う。常に一緒にいたいと思う。一夏の望む事ならば、何でもしてやりたいと思う。気持ちよくしてやりたいと思うし、私自身も一夏のそれを受け入れたいと思う」
「………」
「今この時も……私は、あいつに抱かれたくて堪らないんだ」
「織斑……先生」
「……
言葉を失う真耶を他所に、千冬は自嘲と共に四杯目のグラスを呷った。
デジタル時計の表示が「23:15」を示す。
「……本当に遅いな、千冬姉」
TVの映画劇場を見終え、時計に視線を移しながら一夏は思った。
主に週末、千冬はたまに真耶と朝まで飲む時がある。今夜もそれだろうか。それにしたって一本くらい電話があっても良いものだが。
一夏はそう思いつつソファに身体を預けた。夜に備えて仮眠を取った事もあって、まだ目は冴えたままだ。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「……ん?」
来客にしては遅い時間だ。気のせいかと一夏は思ったが、すぐに二度目のチャイムが鳴った。
「お、織斑君、起きてますか~!?」
「山田先生!?」
焦り交じりで呼びかけてくる聞き慣れた声に、一夏はソファから跳ね起きるとドアへと向かった。鍵を外し、ドアを開ける。
途端、外から強烈な酒の匂いと共に二人の女性が転がり込んできた。ひとりは完全に泥酔している千冬、もう一人は汗をかきつつ彼女に肩を貸す真耶である。
「千冬姉! 山田先生!? どうしたんだよ、一体!?」
驚いて尋ねる一夏に、真耶は自分より大柄な千冬を抱えるのに苦心しつつ答えた。
「その、織斑先生、ちょっと飲み過ぎたみたいで……」
「ぬぁ、何を言う、まやぁ……私はぁ、まら、飲める……」
呂律の回らない言葉でそれに言い返す千冬。これだけ完全に酔っている千冬を見るのは、一夏も初めてだった。
「と、とりあえず、ソファに寝かせましょう! こっちです、俺も抱えますから……」
「ありがとうございます、織斑君……織斑先生、玄関を上がりますよ? よい……しょ!」
「おぉ、力持ちだな、真耶……ははっ……」
二人で何とか玄関に千冬を上げ、そのままリビングへと運ぶ。ソファにゆっくりと千冬の身体を横たえさせると、そこで初めて真耶は大きく息を吐いた。
「はぁ、はぁ……大変でした……この辺り、タクシーも通ってなくて……」
「お店から歩いてきたんですか!?」
千冬の行きつけの店は、一夏も名前と大体の場所程度は聞いていた。そこからとなると結構な距離である。
「あの、山田先生も休んでください。お茶入れますから」
「いいえ! 私は大丈夫です。今ならまだ終電も間に合いますし……」
真耶はそう答えると、すぐに退出しようとする。一夏は改めて横になる千冬を見た。相当に酒が回っているのだろう。顔どころか首筋まで紅潮させ、スーツの乱れも気にせず半分寝ているような酷い様だ。
「それにしても……何で千冬姉、こんなに飲んで?」
「………」
ふと、真耶の表情が普段の穏やかな様子から真剣なものに変わった。
「あの……織斑君」
「はい?」
一夏は真耶に向き直った。その真剣な様子に少し驚く。
「あ、あの、私がこういう事を言える立場ではありませんし、これが正しいのかも分かりませんが……」
そこまで言うと、真耶は一度深呼吸をした。
「──それがどんな結果になろうとも、織斑先生の幸せを考えてあげてください」
「……はい」
正直なところ、一夏には真耶が本当に言いたい事の半分程度も伝わってはいなかった。しかし、「千冬に幸せになってほしい」という気持ちだけは、確かに伝わった。
「ふぅ……それじゃ織斑君、遅くにごめんなさい。織斑先生には無理しないよう伝えておいてください」
そう言うと真耶は普段の穏やかな表情に戻り、一礼するとリビングを出て行った。ドアを開け、出てゆく音。
遠ざかる足音を聞きつつ、再び一夏は千冬を見た。
「ええっと、こういう時はどうすりゃいいんだ? 確かまず、水を飲ませるんだっけ……」
「……いち、か?」
その時、千冬の目が開いた。ぼんやりした瞳で一夏を見上げる。
「起きたのか、千冬姉?」
問いかける一夏。しかし、まだ酔いは全然覚めていないようだ。呂律の回らない口調で千冬は言った。
「おぉ、一夏……何で、お、お前がこの店にぃ、居るんだ? ここは20未満は、来ては、らめだぞ?」
「……ここは家だよ、千冬姉」
呆れつつ答える一夏。千冬はそこで初めて周囲を見た。
「んん……店に、いたと思ったら、家? 何だ、夢かぁ……?」
「夢じゃないって……ほら、水を飲んで、シャワーでも浴びて……」
呆れながらも一夏は千冬に近づいて腰を落とし、抱き起そうとした。だが──
「ふふっ、一夏ぁ……」
千冬は力なく一夏に抱き着き、その手を彼の股間に伸ばした。
「ちょ、千冬姉!?」
「一夏……セックス、しよう?」
酒の匂いの混じる吐息で言ってくる千冬に、流石に一夏は拒絶を返した。
「そんなんじゃ“練習”どころじゃないだろ? 今日は千冬姉も休んで……」
そう言われた千冬は、まるで子供が駄々をこねるように頭を振った。
「……嫌だ」
「『嫌だ』って……大丈夫だって、練習を一日抜いたって、ちゃんと千冬姉との子作りは出来る程度に慣れてきたからさ」
「嫌だ」
「だから……」
「夢の中でまで……“練習”を言い訳にして、お前とセックスしたくはない」
「……え?」
一夏の動きが止まる。
千冬は言葉を続ける。次第に感情が昂ってきたのか、次第にその口調は強くなってゆく。
「一夏とおまんこしたい。一夏の逞しいチンポを、私の一番奥まで突き入れてほしい。何も考えず、何度でも一夏とセックスしたい。私を愛してほしい。一緒に気持ちよくなりたい! 子作りが出来てからも、一夏のチンポを、他の女に使ってほしくない! 一夏は、一夏は、ずっと私とだけ一緒に居てほしい! 夢の中の一夏なら、そのくらい甘えさせてくれても良いだろう!?」
千冬は泥酔していた。酒臭い息で、泣きながら、叫ぶように一夏に訴えていた。
しかし、その言葉には───嘘は、無かった。
一夏の表情は驚きから僅かの不安、そして最後には決意に変わった。
「……分かった、“千冬姉”」
言いつつ、その火照る身体を抱きしめる。
「ずっと、ずっと一緒にいる。千冬姉が俺に飽きて見捨てる日が来るまで、絶対に一緒に居る」
「……嬉しい」
千冬の顔がほころぶ。
「なあ、今晩はずっとセックスしよう? 一夏の精液、一滴残らず、欲しい……」
「……ああ、しよう。何回でも、何回でも」
それ以上囁く時間も惜しむかのように、二人は唇を重ね合わせた。