それは爛れながらも平穏な日々 作:メキシカンX
目覚めにはウサギのダンスを
「(……ん?)」
織斑一夏の意識が目覚めた時、周囲は暗かった。
「んっ……あっ、はぁっ……!」
声が聞こえる。
女性の艶めかしい嬌声が、一夏の耳に届く。
そこでようやく一夏は、暗いのは自分が目を閉じているだけだと気付いた。重い瞼を押し上げ、ゆっくりと目を開ける。
「ンンッ! あ、熱いよ、一夏のっ……!」
股間がやけに気持ちよい。屹立した肉棒を無数の襞が締め付けてきている。
「(千冬、姉……?)」
それにしては妙な違和感があった。
先週、国策という名の無茶振りで実姉である織斑千冬との子作りをする事が決まって以来、既に軽く数十回は一夏は彼女とセックスを繰り返している。千冬の肌の張りや弾力、そして膣の具合なども既に覚えてしまっている。その感触と今、一夏の肉棒を包む感触が微妙に違う。
まだ視界がぼんやりとしていて、ピントが定まらない。壁の色からして、ここが自分の部屋である事は間違いなさそうだ。
一夏は視線を次第に上に向ける。横になっている自分の身体の上で跳ねる肌、揺れる豊かな胸、汗に濡れる艶やかな金髪。
「(……金髪?)」
「ああんっ! 一夏っ、一夏ぁっ!」
一際大きく喘ぎ、彼女、シャルロット・デュノアは腰を持ち上げ、自身の奥まで一夏の肉棒を突き入れさせた。
「シャ、シャル!?」
一気に意識を取り戻した一夏は驚きつつ状況を確認した。自宅のベッドの上で横になっている自分と、騎乗位で腰を振るシャル。
「(いやいやいや、さっぱり分からない!)シャ、シャル!」
「ンッ! い、いいよっ、一夏っ! もっと名前、呼んで……っ!」
名を呼ばれ、シャルは嬉しそうに微笑むと再度腰を持ち上げ、臼をつくように腰を落とした。粘りのある水音と共に、結合部から愛液と一夏の先走りが混ざり合った淫液の飛沫が散る。
「い、いや、そうじゃなくって!」
「……? どうしたの、一夏?」
何とか彼女を止めようと、一夏は語調を強めた。その様子にシャルは腰の動きを止め、不思議そうに一夏を見下ろす。
「ええと、その、シャル、何でこんな事を!?」
「……もう、一夏ったら。ボクにまた言わせたいの?」
一夏としては本気で焦っていたのだが、どうやらシャルには自分が彼女をからかっていると受け止められたのだろう。紅潮した頬を更に赤くし、シャルは身体を倒して一夏に密着させた。大きさこそ千冬程ではないが、同世代の少女と比べれば十分にボリュームある、瑞々しい乳房が一夏の胸板に押し当てられる。
「何でって、決まってるじゃない……ボクは一夏の“肉便器”なんだよ?」
「っ!?」
「あはぁっ! い、一夏の、おちんちん、今、ビクって……」
予想外の言葉に一夏の股間は敏感に反応してしまった。シャルの膣内で反り返る肉棒は更に固さと大きさを増し、彼女を悶えさせる。
「な、何言ってんだよ!?」
「んんっ、だ、大丈夫だよ……赤ちゃん、できても、全部、あんっ、め、面倒、見るから……っ!」
「そういう事じゃ、くうっ! な、なくて……どうして……っ!?」
「どうしてって……ボ、ボクが、そうしたいって言ったら、一夏が……んっ、お、織斑先生が、相手、して、くれない時なら、って……ああっ! ふ、太いぃ……!」
「………!?」
一夏は背中に氷を入れられたような悪寒を感じた。一夏と千冬が肉体関係にある事は指示した当局と当事者の二人、あとは山田先生しか知らない筈だ。
「な、何で千冬姉との事まで!?」
「何でも、何も……全部、一夏が話してくれたんじゃない」
「え……!?」
「どうしたの、一夏? き、気持ちよくて、トんじゃったの、かな……? 分かるよ、ボクも、もう、何回か、イッてる、からぁっ! だ、駄目、我慢、でき……っ!」
一夏の肉棒が与えてくる快感に、腰を止めているのが我慢できなくなったのだろう。シャルは密着したまま腰を使い始めた。先ほどまでのゆっくりと深いところまで呑み込むストロークとは異なる、小刻みながら激しい動き。その快感に、一夏も思わず呻いた。
「うっ、ううっ! シャ、シャルッ!」
「ど、どう? ボク、一夏に気持ちよくなってもらいたくって、れ、練習、したんだよ……んっ」
そう言うとシャルは身体に力を込めた。きゅっと竿の根元が強く締め付けられたかと思うと、同時に亀頭を無数の襞が舐め上げてくる。
「うあっ!」
「ああっ! き、気持ちいいんだね、一夏ぁ……はあっ、あはぁ……」
「す、凄い、シャルッ……!」
「いいよ、一夏……ボク、何でもしてあげるから……お、織斑先生に、出来ないような事でも、何でも、一夏が、したい事、なら……」
快楽に蕩けた表情でシャルは一夏の胸板に舌を這わせつつ囁いた。日頃の小動物めいた可愛らしい姿とは別人のような淫らな姿に、否応なく一夏の中の劣情が強まってゆく。
「ぐっ、ぐうっ!」
「イ、イキそうなんだねっ、一夏っ! いいよっ! こ、このままっ、
「いや、そ、それはマズいって!」
「ボクの中、一夏の精液欲しがってるっ! お願いっ! 一夏の精液っ、ぜ、全部っ! 肉便器のっ、ボクの膣内に、吐き出してえっ!」
既にシャルは絶頂に向けて夢中で腰を振っており、一夏の言葉も届いていないようだった。強烈な射精感が一夏の腰からこみ上げてくる。
懸命に一夏は歯を食いしばり射精に耐えていたが、それも限界が近づいてきた。力づくでシャルを押しのければ回避できるかもしれないが、暴力を振るう事だけはしたくなかった。
「一夏ッ、一夏ぁっ!」
「ううっ! シャルッ、シャルぅっ!」
「シャルッ!」
彼女の名を叫び、一夏はベッドから跳ね起きた。
「え?」
汗まみれのシャツが体に貼りついている。周囲を見回す。ベッドに居るのは一夏だけだ。
昨晩このベッドで交わっていた千冬の姿も無い。おそらく、既に起きているのだろう。
「何て夢見てんだよ、俺は……!」
数秒ほど呆然とした後、一夏は頭を抱えて自己嫌悪の声を漏らした。
欲求不満──と考えるのは無理があるだろう。何せここ数日、一日最低数回は千冬と交わっている。流石にこれで溜まる程には自分の性欲は強くはない筈だ。
“白式のオーバーホールで数日間学校を休む”という名目で先週から休みを取っていたが、今日から再び登校しなくてはならない。そのプレッシャーから変な夢を見たのだろうか。
そこまで考えてふと一夏はある事に気付き、おそるおそる毛布を持ち上げ、自分の股間を見た。
「……大丈夫か」
トランクスの中の肉棒は強く朝勃ちこそしていたが、幸いにして射精はしていなかった。
それにしても妙に現実感ある夢だった。あのまま目覚めなければ、本当に夢精していたかもしれない。
ようやく多少落ち着き、一夏はベッドから降りると肌着を着替え、ドアを開けた。
「千冬姉ー?」
階下に声をかける。反応はない。既に学校に行ったのだろうか。
ふと、部屋の時計が視界に入った。
「……ヤバい!」
一夏の顔から急速に血の気が引いてゆく。
時計が告げる時間は、この家から全速力でIS学園への最短ルートを取ったとしても一限目の授業開始に間に合わない──いわゆる“アウト”の状況を示していた。
「ヤバいヤバいヤバい! 千冬姉、何で起こしてくれなかったんだ!?」
大慌てでシャツを着つつ、クローゼットのIS学園の制服に手を伸ばす。速攻で着替えると鞄を掴み、ジャケットに袖を通しつつ階段を駆け下りてリビングに飛び込む。
食卓の上には袋入りの菓子パンとパック牛乳、そして一枚のメモ書きが置かれていた。
『電車の待ち時間なりで食え 千冬』
どうやら千冬が起きた時点で一夏はまだ熟睡しており、自分が寝坊すると予測した上で用意していたようだ。
だったらなおの事、最初から遅刻しないように起こしてくれれば良かったのでは。一夏はそう思いながらも一応感謝しつつパンと牛乳を鞄に入れた。
「ええっと……ガスよし、電気よし、水道よし!」
日頃から家事を任されている習慣からか、こんな時でも出かけ前のチェックだけはしてしまう。
高速で一通りを確認し終えると、一夏は家のドアを開けて飛び出した。
白い机と椅子が整然と並ぶ、清潔感あるIS学園の教室。教壇の織斑千冬は教鞭でスクリーンの一角を示した。
「このように、近年の各国のISは各メーカーが独自の主要装備による特色づけを進めており、特に光学兵器やエネルギー兵器の新装備開発が顕著になっている。しかし……」
教壇のキーボードを操作し、画像が切り替わる。
「……近年のモンテ・グロッソの大会上位機種の武装データだ。見れば分かると思うが、実弾兵器の併用率が非常に高い。そうだな……デュノア、この理由は分かるか?」
千冬は教室を見回し、シャルを指した。すっと立ち上がり、淀みなくシャルが答える。
「はい。安定性と、頑丈さだと思います」
「そうだ。確かに光学兵器やエネルギー兵器は実弾兵器に比べ強力かつ変則的な攻撃を可能とするが、その構造は複雑で繊細だ。無論、各メーカーも耐久性のテストは行っているが、そんな物は実戦での何の保証にもならない。過去の大会においても、有力な選手が予想外の整備不良によって敗退したケースなどもある。今日は午後から……」
急に千冬が説明を止めた。廊下の遠くから、バタバタと走ってくる音がする。
「………」
千冬は無言で教室のドアに歩み寄った。
「全く、一夏め。復帰早々遅刻とは」
「つ、疲れてたんじゃないかな?」
憮然とした表情で箒が呟く。小声でそれをフォローするシャル。やがて足音は教室の前で止まり、ドアが開いた。
「すみません! 織斑一夏、遅れま……あ痛ーっ!?」
教室に飛び込んできた一夏は、突然の頭部の痛みに額を押さえてうずくまった。待ち構えていた千冬の出席簿が狙い過たず一夏を打ち据えたのだ。
「出たー! 織斑先生の出席簿アタック、本気Ver!」
「女子にはまだ手加減してくれるけど、織斑君への一撃だけは相変わらず容赦ないよねー」
「織斑君、お帰りー!」
わっと教室が沸き、クラスの女子たちが一夏に声をかけてくる。
「お前ら、静かにしろ……織斑、復帰初日から重役出勤とは、お前も随分と出世したものだな?」
まだ痛みの引かない一夏に、千冬は容赦ない言葉を投げかけてくる。
起こしてくれなかった上にこの一撃という状況に、一夏は流石に何か言い返そうと口を開きかけた。
「ちょっと待ってくれよ、千冬姉! それを言ったら……痛っ!」
「“織斑先生”だ。『研究所に行っている間』に、教師の呼び方まで忘れたか?」
「(……あ)」
更に出席簿の一撃。
その時一夏は、千冬が冷たい言葉と共に目配せを送ってきている事にようやく気付いた。
表向きはここ数日間、一夏はオーバーホールのために研究所に寝泊りしていて、千冬ともロクに会っていない事になっているのだ。
「(そういう事かよ、千冬姉)……す、すみませんでした。織斑先生」
「分かればいい。さっさと席に着け」
振り向きもせず教壇に戻る千冬だったが、一夏には彼女の本心が分かった。
千冬はあえて一夏を遅刻させて“普段の情景”を作り上げ、二人の関係の変化をカモフラージュしていたのだ。
確かに一緒に登校していたり、普段の接し方が変わっていたならば違和感を覚える生徒も出てくるだろう。特に一夏の周囲には勘の鋭い少女が多い。
とりあえずそれは成功したようだった。弟に容赦ない姉と、その姉に頭の上がらない弟。クラスの女子の反応はそんな“変わらない二人”へのものだ。
自分の席に向かいつつ、一夏は千冬に視線を向けた。
「(そういうつもりなら、教えてくれていいだろ?)」
「(そんな器用な真似が、お前に出来ないからだろうが!)」
抗議の視線に、有無を言わせぬ圧力が込められた視線が返ってくる。
直接言葉が聞こえた訳ではないが、千冬の視線からはそんなメッセージが伝わってきた。
椅子に座り、ひと息つく。
「……痛っ」
「弛んでいるぞ、一夏。向こうでも、ちゃんと自主練はしていたのだろうな?」
箒に頭をこつんとテキストで叩かれた。そちらの方を向き、適当な返事を返す。
「あ、ああ、まあ……」
「……全く。その反応は随分と怠けていたようだな。放課後、剣道場に来い」
「一夏さん! こちら、ご用意できてますわ」
横からにゅっとノートを持った手が突き出される。
「セシリア?」
「一夏さんがお休みの間の授業内容を、みんなで協力して纏めておきましたの」
「次のテストに出そうな所もあったし、読んでおいてね」
誇らしげに言うセシリアに、シャルが補足をする。
「あ、ああ、ありがとうセシリア。あと……シャルも」
今朝の夢が思い起こされ、セシリアには普通にお礼を言えたがシャルとは何となく視線を逸らしてしまう。小首を傾げるシャル。
「一夏?」
「いや、何でもないんだ、何でも……ええと、ラウラは?」
誤魔化すように一夏は教室の後方を見た。
「……ああ。一夏、戻ってきたか」
そう答えるラウラの視線は、一夏でなく千冬に向けられていた。まるで彼女の些細な違和感でも見抜こうとしているように。
「ど、どうしたんだ、ラウラ?」
「……いや、気にしないでくれ。少し気になる事があるだけだ」
淡々と答えるラウラに、一夏はそれ以上の事を聞かずにテキストを広げた。教壇で授業を再開する千冬に視線を向ける。
「話を戻すぞ。確かにISに対して実弾兵器は決定力とするには難しい面もあるが……」
教壇に立つ千冬はいつもの黒スーツ姿で、凛々しさを感じさせる佇まいで授業を進めてゆく。
その姿を眺めつつ、一夏は何となく考えた。
「(不思議なもんだよな……)」
今ああやって凛々しく授業を行っている女性が、ベッドの中で自分の肉棒に悶え、快楽を貪るというギャップ。そして、それが自分の実姉であるという事実。
ほんの数日前までは、こんな関係になるとは一夏自身も思っていなかった。そしておそらくは、千冬も。
彼女が泥酔して帰ってきた翌日、一夏は千冬に自身の想いを打ち明け、千冬もそれを受け入れた。
直後は一夏は腰痛で、千冬は二日酔いでそれ以上の事はできなかったが──その次の日の日曜は、朝から何度も交わった。
朝起きてからセックスして、朝食を摂ってからセックスして、シャワーを浴びながらセックスして、お昼を食べてからセックスして、少し昼寝してからセックスして──本当に、一夏の精巣がカラになるまで交わった。
一夏は夢中で千冬の身体を求め、千冬も夢中で一夏を求めてきた。
千冬の排卵日まではあとほんの数日。“練習”という意味でのセックスは無くなったが、この調子ならば問題なく千冬を妊娠させる事も出来るだろう。
「(千冬姉を、妊娠か……)」
一夏は自分がそれについて、全く抵抗感を覚えていない事に自分の事ながら驚いた。自分の倫理観は、思っていた以上に緩かったようだ。
“その時”を思わず一夏は想像してしまう。夢中で腰を打ち付け合い、危険日の千冬の膣内に射精する自分の姿を。
「(……あ)」
そこまで考え、一夏は自分の肉棒が完全に勃起してしまった事に気付いた。タイトなIS学園の制服はスラックスの前面をぴんと張らせ、屹立した一夏の肉棒の存在をこれ以上なくアピールしてしまっている。
咄嗟に時計を見る。授業終了まであと少し。
「(まずい……何とかしないと!)」
勃起を気持ち隠そうと浅めに座りつつ、一夏は懸命に意識を逸らそうとする。
その様子に、千冬の視線が向けられた。
「(……何をやってるんだ、お前は)」
冷たい瞳がそう言っているように、一夏には思えた。