※この作品はR-18です。

小夜啼鳥の箱庭   作:ペンギン隊長

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Xつ目 過剰出陣、暴力、月狂い 検非違使とか出てる


ゴルゴタの丘

 

 

 

重傷を負った身で己を睨みつけ、刀を抜こうとする一期一振に、小鳥はゆっくりと、しかし躊躇いなく歩み寄る。

「っ、お覚悟っ」

太刀が小鳥の脇腹を抉る。膝立ちの一期を小鳥は優しく抱きしめる。

「、」

小さな手が、優しくその頭を撫でる。

「いい子、いい子。よく頑張ったね」

言霊の込められたその声に、それが耳に届いた者の手から力が抜ける。太刀が床に落ちた。

「もう、無理しなくてもいいんだよ」

ぽたり、ぽたりと一期の瞳から雫が零れる。小鳥はいい子いい子、とそのまま頭を撫でている。

「…私は、いい子、でしょうか」

小鳥は微笑してゆるく首を傾げる。撫でる手は止めない。

そのまま少し泣いて、一期は漸く気がついた。自分が斬り付けたものが、弟たち(守るべきもの)とそう変わらない姿に見える少女であること、自分が斬り付けた傷以外にも幾つもの傷を負っているらしいこと、そして、自分たちを苦しめていた主とは似ても似つかない、全く別の存在であるということに。

「…私は」

「落ち着いた?そうしたら、自分で手入れ部屋に行くことはできるかな。江雪は多分手伝ってくれないから」

「…大丈夫、です」

呆然としたまま、一期は、よろめきながらも立ち上がる。前田と乱が支えにいく。小鳥は太刀を拾って血を拭い、一期に渡す。

「ちゃんと考えるのは、傷を治して、ご飯を食べてからでいいんだよ」

「…はい」

小鳥は微笑した後、江雪に振り返る。

「…主、傷の治療をしてください」

「血は止めてあるから大丈夫。それより、他の刀(ひと)たちはどんな具合かな。とりあえず、怪我をしてるなら手入れを受けて欲しいんだけど」

小鳥は微笑を浮かべて首を傾げる。

 

 

 

一度頭が冷えれば、小鳥と前任を混同できるものはいなかった。何しろ、霊力の質が違いすぎる。何をどう頑張っても、前任は小鳥にはなれない。姿だけなら、科学や呪術でどうにかなるかもしれないが。

「…あの子、大丈夫でしょうか」

「さあな。冷静に考えられる状態なら、傷ついた子供を更に傷つけるような酷いやつはいないと思うが…精神的な余裕がなきゃわからん」

薬研自身、小鳥に会ってすぐその無害さを認識できたとは言えない。刃こそ向けなかったものの、友好的とはとても言えない態度をとった。小鳥は困ったような顔をするばかりだったけれど。

「あの子、主様と違って、僕たちに酷いことをしないと、思います。一兄たちが、酷いことをしていないといいんですが…」

「そうですね。…悪いことをしていないのに痛い思いをするのは、悲しいです」

 

 

 

「少し聞いてもいいかい?」

「なに?」

「一期君に、考え事をするのは手入れと食事の後にしろって言っていただろう。何でか教えてくれないかい?」

「それは、簡単なことだよ。痛かったり、苦しかったり、お腹すいてたりする時は、考え事をしても、嫌なことばかり考えちゃうものなの。だから、お腹いっぱいになってから考えた方が前向きになれるんだよ」

「…そっか」

にこっと笑った小鳥に、光忠は少し困ったような微笑を返す。厨では、式神たちが食事を用意していた。光忠としては、自分が食事の用意をしたいのだが、怪我人は出入り禁止だ、と追い出されてしまったので手入れ部屋の順番待ちをしている。

「…それにしても、式神君たちって料理もできるんだね」

「正しく指示できれば何でもできるよ。旧(マニュアル)式の万能家庭用(ハウスキーピング)ロボットと同じだよ」

「その例示されたものの方を知らないんだけど…」

苦笑して、光忠は小鳥の首に巻かれた包帯を見た。

「…君は、僕たちが恐ろしくないのかい?」

「何故?」

「一期君もそうだけど…その傷は、別の僕たちがつけたものなんじゃないのかい」

「んー…敵意を向けられなければ、怖くないよ。だって、みんな、本当はやさしい刀(ひと)たちだって、知ってるもん。そのやさしさが僕に向けられないとしても、それはその刀(ひと)が怖い刀(ひと)だってことじゃなくて、僕がその刀(ひと)にとってそういう相手じゃないってだけだから」

小鳥の言っている意味が、光忠にはいまいち理解できない。

「だから、あなたも無理に僕に優しくしようとしなくていいんだよ。僕を傷つける"燭台切光忠"が何振りいたとしても、僕は"燭台切光忠"を嫌いになったりはしないから」

江雪からのヘイトは溜まるだろうけど、と付け加える。

「…そんなこと、言わないでくれ」

光忠は泣きたくなるのを必死に堪える。小鳥が一期にかけた言霊は光忠にも届いた。その言葉に、なんだか救われたような気がしたのだ。

 

 

 

 

 

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