見習いをけしかけた審神者=最初の本丸の審神者
「小鳥さんが、私のこといきなり叩いてきてぇ…」
赤くなった頬を押さえ、瞳を潤ませてそんなことを言う見習いと、眉根を寄せてそれを見ている小鳥を見た刀剣たちの反応は
「え、叩いたの?小鳥ちゃん手ぇ大丈夫?赤くなってない?」
「主を怒らせるって一体何やったんだ?ちゃんと謝った方がいいぞ?」
「もしや、昼どらで見る"この泥棒猫!"というやつか?ははは、俺は主一筋だぞ」
などというズレたものだった。
「…俺は、手を出されるまで出さない主義だ。例えどんなに気に入らなかろうが目障りだろうがムカつこうが不快だろうが、やられてもいないことをやり返したりはしない。俺が君を殴るのは君が俺を殴った時だ」
小鳥はそう言って肩をすくめる。
「…何かされれば、容赦なくやり返すがな?」
その瞳は冷ややかで、路傍の石か養豚場の豚を見るような、と形容されそうなものだった。そして、興味を失ったようにその場を歩き去った。残された者たちは一瞬の逡巡の後、見習いを見る。刀剣たちが一番に信用するのは契約主であり、より付き合いの長い小鳥である。小鳥の言葉をどう解釈するにせよ、確かなのは見習いが嘘をついたということだ。すなわち、見習いが先に小鳥を叩いたか、小鳥は見習いを叩いていないかの二択だ。
「見習いちゃん、小鳥ちゃんを叩いたの?」
「何処へゆかれるのですか、主」
「万屋へ。備品の補充だよ」
「荷物持ちでしたら、お任せ下さい、主。お供します」
「…まあ、一人で出歩くなとも言われてるしね。頼むよ、長谷部」
「主命とあらば」
「お、長谷部と主じゃねーか。何処か出かけるのか?」
「万屋へ備品の補充に行くから長谷部に付き添いを頼んでたところだよ」
「だったら俺も同行していいか?酒の在庫が心もとなくなってきたからな」
「それは貴様らが飲みすぎなんだ」
「追加のお酒を経費で買うのは許可しないけど、それでいいなら構わないよ」
「なんだよケチくさいなぁ、少しくらい良いじゃねぇか」
「一度決めた
ぶっちぎりで酒量が多いのは次郎と日本号だが、酒飲みが他にいないわけではない。というか、小鳥は参加も目撃もしたことがないが、どうも毎日誰かしら酒盛りをしている者がいるらしいのだ。気にしても不毛である。
「…まあ、自分の飲む分自分で確保するしかないってか。お供するぜぇ、主」
「俺一人で十分だ」
「そりゃお前のセリフじゃないだろ」
「見つけた。…随分探したぞ、主」
「…?人違いじゃない。面識もないと思うけど」
「いや、間違いない。俺は、この霊力を求めてやまなかったのだから」
三日月は小鳥の髪を一房取って口付ける。
「…?」
「つれないなぁ、主。その手で降ろしたくせに、顕現させずに保管庫に置かれた時から知ってはいたが。何度向かってもそうだったしな」
「………え、まさか、あなたはもしかして、僕が最初に行った本丸で僕が鍛刀した…」
「縁を繋ぎ直されたとしても、己を喚んだのがそやつか否かわからぬ程俺は愚かではない」
「縁?はよくわからないけど、あの時は全部集めたら異動させられるなんて知らなかったから…」
「…主、どういうことですか?」
「僕が、あの本丸を最初から運営してきたわけじゃなくて引き継ぎだってのは話したでしょ?今の本丸に来る前、ずっと色んな本丸を巡ってきた、その最初の本丸でだけ、そこの刀剣に頼まれて鍛刀したことがあったんだ。仮契約も結べてなかったから顕現はしなかったけど」
「そなたの声はよく覚えておる。そなたが待てと言ったから、俺たちはずっと待っていたのだ。…だが、俺たちを顕現させたのは、あの女だった」
「…ごめん。嘘にするつもりはなかったんだけど。でも、それなら、あなたたちの主はその人だよね?」
「俺も、小狐も鶴も鶯も一期も蛍も…待っていたのはそなただ。あの女ではない。…ずっと、待っていたのだぞ?」
三日月が小鳥の手首を掴もうとするのを日本号が止める。長谷部が庇うようにして前に出る。
「望まぬ主替えには同情するが、主は俺たちの主だ。余計なちょっかいをかけるのはやめてもらおうか」
後ろから、何者かが小鳥の口を塞ぐ。
「!」
振り返ろうとした小鳥に鶯丸が微笑む。
「迎えに来たぞ、主」
鶯丸は小鳥を抱き上げる。小鳥は首を振る。
「どうした?」
「僕は、あなたたちの主じゃない」
「俺を喚んだのは君だろう?何故そんな酷いことを言うんだ」
「僕が契約を結んでいるのはあなたじゃない。だから、あなたと一緒にはいけない」
「…契約を結び直せばいいのか?」
「そういうことじゃ」
鶯丸は小鳥に口付ける。鶯丸は神力を流し込み、契約を結びなおす。
「これで、名実ともに俺は主の刀だろう?」
小鳥はとろんとした目で人形のようにぐったりしている。
「…主?…調子が悪いのか?なら、早く帰って休んだ方がいいな」
鶯丸は小鳥を抱え直して言う。
「三日月、俺は先に帰っているぞ」
「ああ、俺もすぐ追うとしよう」
「!主っ」
「…おいてめぇ、主に何をした」
「主が契約を結んでいる相手ではないからついていけないと言うから、契約を結び直した」
「はァ?」
「成程。確かに後で結び直しておかねばならないな」
「無茶苦茶なこと言ってくれるぜ…主がそれを良しとするわけがないだろう」
「長谷部、日本号、その怪我は一体どうしたんじゃ?!」
「主、が…」
「小鳥ちゃんになんぞあったちや?」
「主が、他の本丸の刀剣に攫われた」
「!」
「何処の本丸の刀剣ですか」
「一番最初の本丸、主が鍛刀したが、顕現させなかった刀剣だと」
「それは本当ですか」
くろのすけが何処からともなく姿を現す。
「くろのすけは何処かわかるのか?」
「管狐は執念深いのです。主さまに危害を加えたものは忘れません」
「…そこの刀剣は小鳥ちゃんに危害を加えゆうか」
「刀剣は危害を加えませんでしたよ。その本丸は、いわゆる放置本丸で人間に悪感情は持っていませんでしたから。危害を加えたのは審神者です。自ら本丸を放棄して姿を晦ましたくせに、主さまが当時確認されていた刀剣の全てを集めたと知ったらぬけぬけ戻ってきて…」
くろのすけの瞳孔はかっぴらいている。
「主さまがその後ブラック本丸たらい回しにされたのは間違いなくその本丸の所為です」
「…あの女性は、主に危害まで加えていたのですか?」
「あの本丸に来た江雪左文字が主さまの初期刀であるあなた一振のみだからと、主さまが意識を失う程したたかに打ったのです」
「!」
「…ねぇそれ、小鳥ちゃん大丈夫なの?」
「…れ、おれ…」
「目が覚めたか、主。良かった」
「お加減はいかがですか、ぬしさま。何処か辛いところは?」
「…おれは、君たちの主じゃないよ」
「何をおっしゃるのです、ぬしさま。私たちの主はあなたですよ」
「僕の鶴丸と小狐丸は君たちじゃない」
「ずっと君のことを待っていた俺たちに、その反応は酷くないかい?」
「あなたが待てと言ったから、私たちは待っていたというのに」
「この本丸は僕の居場所にはならなかった。今の本丸のみんなは、僕に主になって欲しいって言ってくれた」
「ぬしさまを拒んだのは私たちではありません」
「俺たちに主に話しかける口があったら当然共にいることを望んだとも」
「それでも」
「何故なんだ、君が最初に降ろした"鶴丸国永"は顕現させなかったとはいえ、俺だろう?」
「それは…」
「どうして俺じゃ駄目なんだ」
「…ごめんなさい。でも」
「俺だって君が降ろした刀だろう?」
「でも、だって、だって」
小鳥は混乱した様子で頭を振る。
「うー…江雪ぅ…」
「ずるいぞ、あいつばっかり。何で、あいつだけ特別なんだ」
「だって、江雪は俺の声に一番に応えてくれて、それからずっと一緒にいてくれて、俺の所為で酷く傷つけて、でもそばにいてくれて、だからおれは、江雪が望んでくれる限りはずっと一緒にいたいの」
「…それは、つまり、君の声に応えたのが俺だったら、君は俺とずっと一緒にいてくれたということか」
「………うん。多分、そうなんだろうね。僕にとって江雪が特別なのは、初期刀だから、だよ」
それは、潔くも残酷な言葉だった。
「此処には僕の江雪がいないから、僕の江雪のところに帰らないと」
「何で?主の帰る場所は俺たちのところのはずでしょ?俺たちはずっと、主のことを待ってたんだよ?」
「私たちはあなたの元で刀を振るうために降りたのです。けして、あの女に仕えるためではありません」
「正式な契約を結べば良いのか?俺たちを主の刀でないとする要素があるとすればそれくらいだろう」
「…そういえばまだ契約を結び直していなかったな」
小鳥は怯えた様子で逃げ道を探す。
「主、心配する必要はない。主に迫る危険は全て俺たちが排除する。君はただ、俺たちと共に生きてくれればいいんだ」
「おれは」
ぽろぽろ、と小鳥の瞳から雫がこぼれ落ちる。
「どうされました、主」
「ごめんなさい、でも」
小鳥は胸を押さえる。視界が明滅している。
「…主?」
「っ、呪詛か?!」
呼吸をするのが辛いのか、喉を押さえている。
「…あいつの所為だね。待ってて主、すぐ殺してくるから」
「、ころすのは、よくない」
「何で?主を苦しめて、俺たちから引き離してるやつだよ。妙な小細工までしてさ」
「どうしても、しようがない時以外は、ころすのは、ダメ。しんだ人をいきかえらせることは、できないから」
けほけほと小鳥は苦しげに呼吸する。
「それに、しんでしまったら、そこでおわりだよ、なにもかも」
「…石切丸を呼んでくる。蛍丸、できる限り呪詛を抑えられないか」
「そういうの、俺の専門じゃないんだけど…まあ、できる限りやってみるよ」
「あの女のところには誰が行く?」
「あやつは三日月と一期が気に入りじゃろう?二振りが行ってくれば良いのではないか」
「なら石切丸を呼んでくるのは俺が行ってこよう。それでいいか?」
「私も呪詛を抑える方に回ることにしよう」
「俺は…そうだな、主の呼吸が少しでも楽になるように背をさすっていよう」
「どさくさに紛れてお前」
「さっさと決着を付けよう。主をあまり苦しませたくない」
「しばしお待ちください、主。すぐ戻りますので」
「…それでは、例の本丸…玉響本丸へゲートを繋ぎます。くれぐれも、主さまの安全と奪還を最優先に動いてください」
くろのすけはゲートを操作して他の本丸のゲートに繋ぐ。
「…江雪左文字、殿ですか?一体何故この本丸に来られたのでしょうか」
「私たちの主…小鳥が、この本丸の刀剣男士に攫われましたので、取り返しに参りました」
「小鳥、殿ですか」
蜻蛉切は少し困惑した様子だったが、共にいた大倶利伽羅は少し表情を曇らせた。
「何か、知っているようですね」
「…小鳥は見ていないが、三日月たちが何やら妙な動きをしていたのは知っている」
「妙な動き?」
「…あいつらは多分、主に逆らうことができる」
主従契約の縛りにより、通常、刀剣男士は審神者に命令されれば逆らおうと思えないし、危害を加えられない。審神者を害そうと思えば強い心理的抵抗を覚える。それを悪用しているのが大体ブラック本丸である。ちなみに仮契約の内は拘束力が若干弱いし、契約していない相手にはお察しである。
「…それは、つまり」
「あいつらは顕現した主を主と認めていない」
「江雪…?」
「えっ。…主の感知能力高すぎない?」
「だからこそ、私たちの見分けもつくのだろうね。…三日月たちは何をしているのやら」
「…にしても、何で俺なんだ?日本号は手入れ中だけど、槍なら蜻蛉切もいるだろ」
「…性格上、関わっていなかったようですが、蜻蛉切殿も主が鍛刀していましたので。…大太刀は、元からいたのは次郎太刀殿のみでしたが」
「…それでは、私もあちら側にいる可能性があるのでは?」
「太郎太刀殿は、己が関わっていると思われますか…?」
「…いえ、余程のことがなければ興味を持たないでしょうね」
「少数精鋭で行く以上、練度の高い者が出る必要があるからのぅ」
「…俺が選ばれたのはお目付け役って意味でだろうけどね」
「お目付け役が必要だと思うのかい、浦島」
「主さんのこと咄嗟に抱きとめたり、じーっと見つめられても照れずに見返したり、ちゃんとお話したりできるって胸張って言えるようになってからそういうこというべきだと俺は思うんだよね」
「うっ」
「小鳥ちゃんは可愛いかろうもん。緊張するのも仕方ないにゃ」
「最悪、主の対応は私がしますので」
「…小鳥殿は、刀剣に慕われているのですね」
「そっちの本丸を騒がせるのは心苦しいき、付きおうてもらわなくてもいいのじゃが…」
「いえ、誰も対応しない方が問題ですので」
「失礼いたします、主!」
「…蜻蛉切か。まさかお前が来るとはな」
「三日月殿、それに一期殿も、何をされておいでですか」
「何?…この女がなぁ、主に呪詛をかけておるようなのだ。故に、それを解かせようとしている」
「三日月殿、我々の主は」
「俺がこの本丸に降りたのは、主が喚んだからだ。この女のためではない。…主が待てと言っておらねば、自分で本体を折ってこの本丸から去っていたぞ」
「…主があなた方に待っていて欲しいと言ったのは、本丸を移ることになることを知らなかったからです。知っていれば、そうは言わなかったでしょう」
「主を追いかける事のできた江雪殿には、私たちの気持ちは分かりません」
「・・・」
「ちいくっと待った。そもそも、そのおなごが小鳥ちゃんに呪詛をかけちょるっちゅうんは、本当の話ながか?」
「他に誰があのようなことをするというのだ」
「主さんに何があったの」
「…主は、呼吸するのが辛い様子でした。それでもそれ以外に方法がないのでなければ、殺してはいけないとおっしゃられたのです」
「やっぱり、私のものを盗むつもりなのね。許さないわよ」
「…ん…誰…?」
「この本丸の審神者ですよ、ぬしさま」
小鳥は相当意識が朦朧としているようだった。
「おれだって、おれのものに手を出すやつは許さないけど」
そう言って、小鳥はにっこりと微笑う。
「お前がおれの江雪を盗ろうとしたことをおれは知ってるよ。ひとのものを盗んだら泥棒だよ?…恥を知れ、下郎。だからお前の祈りは届かぬのだ」
けほけほと苦しげな咳をしながら小鳥は、否、"小鳥に降りた何か"が笑う。
「その傷だって因果応報だろう。己の身を守ろうとしただけの小鳥を恨むのは筋違いだ」
「私は、私たちは、特別なの。あんたみたいな庶民とは違うのよ。あんたは。大人しく私たちのために働いていれば良かったのよ」
何かはそのセリフを鼻で笑う。
「神と相対する上で
「なん、ですって…?」
「お前の"言霊"はそっくり返そう。…"身をわきまえろ。おれのものに手を出すやつは呪われろ"」
よく見るとその瞳は金色に輝いている。呪詛返しが発動したことで玉響は息が詰まったように喉を押さえる。
「うむ。これで息もしやすくなったな。ははは。それが私の愛し子に散々苦労をかけた報いだ。まあ、利子の一部程度だがな」
「…主の躯で妙なことをするのはやめてくださいませんか」
「うん?お前はその女が腹立たしくないのか?江雪左文字。そいつとその親の所為で、このように話がこじれたのだぞ。あの男が妙なことを考えずきちんと小鳥を新しい本丸においておけば。何も不都合は起きなかったのだ」
それは淡々と言う。
「愛し子がその身を傷つけられることも穢されることもなく、審神者として健やかに過ごしていたはずだ。違うか?」
「それとこれとは話が別です。主は、あなたのしようとしていることを望んでいません」
「さて、どうだろうな。この子の本当に望むことを誰が知っている?この子は既に己の意思を押し込めることに慣れてしまったというのに」
「主は心優しい方です。己が傷ついても、他者を傷つけることは望みません」
「一つ教えておいてやろう、江雪左文字。愛し子は優しいから人を傷つけないのではない。ただ、その相手とその行為に意味を見出せないので放置しているだけなのだよ。まあ、無関心というやつだ、ははは」
「――」
江雪の瞳が見開かれる。
「間違いを正さないのは、少なくとも"良いこと"ではないだろう?間違いを正すのがそのもののためとも限らんが」
小鳥は酷く消耗した様子で目を閉じている。
「…これ、どうやって収拾付けるんだ?」
「…くろのすけを呼びます」
とても、嫌な予感がしていた。
呪詛返しとは、ただでさえ呪が重くなる。それが、神の手によるものなら尚更だ。ただしそれは、玉響を苦しめはしても命を奪いはしなかった。
だからこそ、話がややこしい。死んでしまえば、主を失った本丸として処理すればいいだけである。玉響は生きている。審神者を続けられるかと言えば、本人にそうする気があれば可能だろう。そもそも彼女は本丸に霊力を供給する以上のことは大してしていなかった。変わらないといえば、変わらない。
刀剣は、余程のことがなければ己を喚び応えた主を見捨てられない。
「…この本丸も、小鳥さんに関わりがあったんですね」
「寧ろ元凶ですが」
「…小鳥さんが関わった本丸が公式記録に残されていないんです。これまでの本丸も、前任から直接今の審神者に引き継がれたことになっていますし」
「では、主はどうしていたことになっているんですか」
「…現在の本丸が初配属、それ以前は存在しなかった、ということになります」
「全ての記録は私がバックアップを取っていますよ。期間も含めて」
「それを提出願えますか?」
「嫌です。あなたに直接の責任のないことは知っていますが、政府の人間は信用なりませんし、情報を悪用されても困りますので」
「小鳥さんは、よく人間不信になりませんでしたね…」
「何を言ってるんですか。僕は最初から人間不信ですよ」
「えっ」
「じっくり話をしなければ、いえ、話をしても相手の本当に考えていることなんてわからないでしょう?見てすぐ、会ってすぐ敵味方と断じるのは早計と、わかっているだけですよ」
にこり、と小鳥は微笑う。
青雁本丸の拡張は速やかに行われた。
それが一番順当だという判断からだ。そして本丸の住民が増えることになった。
元から青雁本丸にいた刀と、玉響本丸から移ってきた刀はあまり仲が宜しくない。まあ、ある意味価値観が逆に近いので仕方ないといえば仕方ない。練度の上では青雁刀剣≧玉響刀剣>小鳥刀剣ということになる。江雪を除けば、大体顕現してからの時間と比例している。
練度差のこともあり、刀剣たち自身も区別がついた。問題は呼び分けだ。玉響本丸から移った刀剣の内、小鳥に鍛刀された刀は、玉響の刀と扱われるのを嫌がった。己は元より小鳥の刀である、と。それだけならわからなくもなかったのだが、此処で問題になるのは、この本丸に来て小鳥が鍛刀した中に同一の刀剣がいるということである。
「…鶴丸は鶴丸と国永でいいと思うんだけど、蛍丸と小狐丸はどうしようか」
蛍丸は刀工の名で言えば来国俊、銘には打たれた日が刻まれている。小狐丸は三条宗近の作であり、銘は小鍛冶宗近、小狐と刻まれている。
「いっそ何かかっこいいあだ名付けてよ。刀匠の名前だと国俊とかぶるしさ」
「僕にネーミングセンスを求めないでくれ。蛍君と蛍ちゃんと呼び分けるしかない」
「俺、ちゃん付はやだなー」
「小狐丸は小狐と宗近じゃまずいか?」
「それは、私より三日月が反応しそうですね。まあ、面白そうなので良いのではありませんか?」
「三日月を呼び分ける必要がなくて行幸でしたね」
*ただし二振りいる
「…蛍丸は、瞳の色から萌黄、とでも呼んでみるか?」
「全然、刀関係ないね。…まあ、いいけど」
「…穏便に収まったようで、何よりです」
ドロップの浦島と日本号以外、青雁本丸で鍛刀された刀剣は前任の影響()を受けている