プロローグ
特異災害対策機動部二課、略して
特異災害『ノイズ』から人々を守るために設立された、シンフォギアシステムを用いた部署。
現在、シンフォギアを使う少女達……装者と呼ばれる彼女達は六人所属している。
シンフォギアとは、簡単に説明すれば歌で起動する兵器。
起動のために必要な歌を奏で、シンフォギアを体に身にまとって心の中にある自分の歌を歌いながら戦う、それが装者である。
そして、今その二課で装者6人が集まっていた。
「変なノイズ反応……ですか?」
茶髪の少女が、大柄な男性に話しかける。この少女の名は立花響、私立リディアン音楽院に所属している生徒であり、現在2年生である。
「あぁ……通常のノイズ、そしてアルカノイズとも違う反応が昨日の深夜なら今日の朝方にまで何度か確認された。」
「ノイズならなんで呼ばねーんだよおっさん。」
大柄な男性、風鳴弦十郎が少し困ったような顔をしながら話す。そして、彼を『おっさん』と呼んだ、銀髪が特徴的な少女は雪音クリス。響と同じリディアンに所属している生徒である。現在3年生。
「少し説明しづらいのだが……
「消えた……反応を見失った、ということですか?」
「いいや、文字通り……現れた瞬間灰になって消えた。」
凛とした態度で、冷静に構える少女風鳴翼。青い髪が特徴的な彼女は、弦十郎の姪であり、現在はトップアーティストとして活動を続けていた。
「灰になって……?誰かが犠牲になった、というわけでも無いの?」
「それも違う……街の監視カメラに写っている、まずはそれを見てから君たちの意見が欲しい。」
ピンクの髪の女性、マリア・カデンツァヴナ・イブ。唯一の20歳を超えている装者である。
彼女も翼と同じようにアイドルをやっている。
「映像、デスか?」
「映像に残るような場所に出たってことですか?」
金髪の少女と、黒髪の少女が疑問を抱く。金髪の少女の名は暁切歌、特徴的な喋り方をする、リディアンの一年生である。
そして黒髪の少女の名は月読調、装者達の中では一番小柄な少女であり、ツインテールが特徴的なリディアンの一年生である。
「あぁ……皆も知っていると思うが、フロンティア事変の後からノイズのの数は減少、出ることはなくなった。
だが、その後起こった魔法少女異変において新たなノイズ……アルカノイズが確認された。」
「ノイズは自分ごと触れた相手を炭化させる能力……だが、アルカノイズは、その炭化能力が相手だけに作用するようになっていた。」
「そして、本来なら無機物を通り抜けられるノイズだけど、アルカノイズは自身の意思で、無機物も炭化させることが出来る。」
翼とマリアが、弦十郎の説明に補足を入れる。アルカノイズとは、魔法少女事変において出てきた新たな敵、錬金術師キャロルが見せた新たなノイズ。
1度はそのアルカノイズによって、窮地に立たされた装者達だったが、新たな力とともにキャロルを打ち破ったのであった。
「……どちらのノイズにも属さない、新たな力ノイズ。すぐに炭化すると言っても、危ないとは言いきれないかもしれない。」
「そうですね……師匠、映像お願いします。」
「あぁ……これが、昨日観測されたノイズだ。」
そして、モニターに映像が流れ始める。ノイズが出る数秒前の映像だ。
「……あ、あれ?急に出てきて……」
「……本当にすぐ炭化したな。」
響と、クリスが呆然としてすぐに止まった映像を眺めていた。他のメンバーも同様に、唖然としていた。
「……キャロルの様に、誰かが召喚したようには見えませんでしたし……」
「いきなり地面から現れたデス!」
「現れた、って言うより生えたみたいね。 」
調、切歌、マリアがそれぞれ口々に話す。弦十郎も、これ以上何を話すべきかを悩んでいるかのような仕草をとっていた。
「……とまぁ、本当に一瞬だったんだ。警戒しなくていい……という訳では無いが……」
「危険性は低いってこったな。けどよ、これはこれで謎だよな。何ですぐにこいつら炭化したんだろうな……」
「地下……そこになにか施設がある、という線はないのですか?」
「あるのはシェルターと地下鉄くらいのものさ。あとはせいぜい水道管程度といったところだ。
「ふむ……」
翼も考え込む。しかし、いくら考え込んでも答えは出なかった。
「……が、あくまでもノイズに危険性がないと言うだけだ。」
「……ノイズの事、以外になにかあるのね?」
「任務、というやつだ。至急地下に何かあるかを確認するためにな。」
「……?えっと、今さっき地下には特に何も無いって……」
「馬鹿、あくまで表向きの話だろ?よく考えてみろ、ノイズが地下から来たとして、わざわざ『ノイズは地下から発生してる』なんて大々的にいう奴がいるかよ。」
クリスの説明に、合点がいったのか納得した表情になる響。それを見てから、弦十郎は軽く咳き込んでから声を張り上げる。
「では頼むぞ!出てきた場所のマップや、近辺の建造物のデータと入るために必要な許可は既にあらかたとってある!
調査を頼んだ!!」
「「「はい!!」」」
元気よく返す装者達。しかし、これが自分達の悲劇の始まりだとは誰も気づかないのであった。
装者達が出ることを決める前日、つまりは謎のノイズが確認された数時間後。
「……あれ、何体かいなくなってんじゃん……うわぁ……絶対バレたよここ……」
一人の白衣を着た男が、床に丸まっていた。ボサボサの髪と、ヨレヨレの服を着た女性だった。
「もー……まぁノイズ反応追えば……うわ、消えてる。これ外に出て即死したかなぁ……メモメモっと……」
巨大な図鑑のような本を取り出し、そのままペンで箇条書きしていく女性、その後にはガラスがあり、下にある部屋をさらに観察ができるという構造になっている。
「えーっと……いなくなったのは……3体くらいか。」
目立つように書かれている名前。『ジーンノイズ』と名付けられているその項目を見て、女性はため息をついていた。
「アルカノイズは大量生産の目処立ってるけど……それをもっと強力なものにしろ、って言われてもねぇ……」
彼女は、とある人物からアルカノイズを強力なものに変えろ、とお達しが来ていた。
彼女自身、その人物との面識はその時が初めてであったが……
「……まぁ、ノイズの研究もできて一石二鳥だよねほんと。」
ほんわかとした表情で階下にいる、ノイズ達を見ていた。だが、すぐに現実を見て、真顔でため息をついていた。
「いっぱい新しいノイズの案を浮かべては、データ出してテストで作って……ようやく許可が降りたのがこのジーンノイズ…バレるなんて運が悪いなぁ……」
荷物をいそいそと集め、彼女は荷物をまとめていた。が、不意に実験のひとつが終わってないことを思い出した。
「……ジーン、遺伝子の名を冠するノイズ。人間の卵子と精子を掛け合わせて作ったノイズ……細胞分裂で増えるし、倒されても新しい種を残す新種……けど、それだけしか取得がなかった。」
ページの1つには、実験項目なのか赤丸で何度も囲まれている場所を復唱し始める。
「『ノイズから炭化能力を取り除き、リソースを増やす』って実験……これをジーンノイズに組込めれば……相手の事をすぐさま学習して、しかも学習したことをそのまま次世代に移すノイズが生み出される……はず。」
しかし、そうなれば最早ノイズではない……というのがネックであった。ある意味無限に力をつけるノイズではあるが、ただのノイズの見た目をした何かになってしまうのだ。
「まぁでも……無限に成長する兵士っていうのは……コストいいよね……お、出てきた……」
必要だともらった機材からテレポートジェムが生成される。この一粒を投げると、どこかからアルカノイズが出てくるという仕組みなのだが……
「出てきたのはほんの10個……ジーンノイズは、このコアから急速に細胞分裂して増えるけど……やられる時に炭になるだけで、攻撃能力が今のところ一切ないって言うのがね。」
出てきたコアをポケットに入れて女性は荷物を整理していく。早くしなければ、捕まってしまうことは分かりきっているからだ。
「私は、ただの錬金術師とやらに誘われた一般科学者なんで……戦うとか勘弁ですよ本当……ん?」
突然、彼女の後ろから声が聞こえてくる。初めは驚いていたが、何度もされているうちに慣れていた。
彼女に新しいノイズを作れと言った、張本人である。
「やぁ、制作はどうだい?ジーンノイズのね。」
「あぁ……今さっきそれっぽいもの出来ましたよ。10個だけですけど。」
「それでいいよ、その地で計画を進めるにおいて一番邪魔なのを排除するのに必要だからね、ジーンノイズは。」
「……一応言っときますけど、今は一般人でも鈍器さえ持ってたら倒せるくらいには弱いですよ。防御もアルカノイズ以下なんですし。」
「大丈夫だよ、今回はそのためにわざわざ連絡をしたんだ……助っ人の事をね。」
「助っ人?錬金術師の人達?」
「そうさ、まぁアクが強いけれど十分戦力になるさ、彼女達はね。」
「へー……」
興味なさげに、彼女は張本人の話を聞き続ける。特徴的な喋り方と、男性の割に長い髪が印象的なことだけは覚えている。
「彼女達にも、伝えてあるよ。ジーンノイズの事をね。
とりあえずは君の言うことを聞いてくれると考えてもらって大丈夫さ、計画のためだからね。」
「……で、もしかして私はここに残れと?」
「あぁ、せっかくバレたんだ。それを十分に活かしてくれたまえ、ジーンノイズをね。」
それで通信は切れる。彼女はため息をついて、机に突っ伏してまた溜息をつく。
「……言うこと聞かなかったら殺されるよなぁ、だったらヘマして捕まった方がマシかも……まぁ捕まるのも嫌だし、ヘマは起こさないけど……」
助っ人というのが、どんな人物なのか大して気にせずに……彼女は纏めてた荷物を、再び元の場所に戻すのであった。
言うことを聞かなければ殺られる、と思っているので仕方なくいうことは聞くが。