※この作品はR-18です。

婬堕絶叫ノイズギア   作:長之助

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小物的人質作戦

「……流石に全員は人質は無理。」

 

音女は部屋でボソリと呟く。この地下施設は1階層事に施設の形がまるで違うように作られている。

高さも階層毎に違い、正直まともな建造物なら恐ろしく不便な建物と言えるだろう。

しかし、侵入する敵がいる以上多少の複雑化はしょうがないとも言えるのだ。

そう、別段人間兵器がやって来ることが予測できていた訳では無いが、こと敵の侵入に関しては、返す前に潰すの精神で作られている。

階段を隠せる上に、他の通路とも壁で隠すことも出来る。言うなればドッキリハウスである。

だから、こちらに軟禁している人物がいれば、その人物を先に人質にすることだって可能なのである。

 

「……調ちゃんは、外かな。出てほぼその後に来てたし多分合流してないし連絡も取ってない。

まぁ別にそこはいいよ……問題は誰を人質にするべきか…」

 

風鳴弦十郎という人間、あまりにも生身の人間とは言えない戦闘能力を有しているため、対処の方法を取ろうとしても突破されてしまう確率が高いと考えていた。

 

「念入りにコアも破壊していってる……欠片を吸収出来ないわけじゃないけど、コアそのものを回収させる気は無いよねあれ……一体の質をいくら高くできると言っても、あっちの質が高すぎる……」

 

何故か、本気を出してないようにも見えるために『これは勝てないんじゃないか』という思考に囚われ出す。

 

「というか絶唱イグナイトってダブルコンボなのに、圧倒されてるってなんで……?

何をどうやったら止められるの……」

 

唯一の救いと言えば、地下施設唯一の入口である階段から、そのまま2階層以降に行けないように閉じることが出来ていた、ということである。

ただし、そこ以外の階段は薄い鉄板扉でカモフラージュしているだけなので、バレる可能性が高いのだ。要するにぶち抜かれる。

 

「向こう側が空洞かどうかなんてドアを叩いたら私でもわかることだし…頭の中も筋肉でできてたらいいのに……」

 

チラッと、他のモニターに視線を移す音女。そこに写っているのは、未だ犯されているマリアだった。

 

「……効くかどうか、分からないけど…!」

 

部屋から飛び出す音女。その頭に浮かんでいるのは、正直やりたくもない作戦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『と、止まりなしゃい!!そこの男!!』

 

「ん……?」

 

弦十郎の前に現れる一体のジーンノイズ。そのジーンノイズの体には、モニターが埋め込まれており、そのモニターには犯されているマリアの映像が流されていた。

 

『こ、これ以上…はぁ、進めば……!この女の命はない!!』

 

「人質と来たか……その上、非人道的扱いをしているというのが良くわかった。」

 

そう言いながら構えを解く弦十郎。彼も、このまま攻撃出来るほど冷徹ではない、ということである。

代わりに、その表情は阿修羅を思わせるほど恐ろしいものになっていたが。

 

「何が目的だ、答えろ。」

 

『……ノイズの研究、ただそれだけ。誘われたからやってる事……装者捕獲は、研究の為。』

 

「……今まで色々な敵がいた。バベルの呪詛を解くため、英雄になるため、父親から渡された命題を叶える為……悪意はなかった、とは言えないだろう。

だが、本当に『その程度』の事で少女達を巻き込んだというのならば……」

 

『……巻き込んだのならば?』

 

「俺がこの拳で、施設ごと野望を打ち砕く!!」

 

『……なら、やればいいと思う。世界が失って悲しむような人物でも、多分私は捨てられる……』

 

弦十郎は、声のトーンが微妙に変わった音女に何かを感じ取る。だが、それに関して何も言わずにただじっとし続ける。

 

「世界を敵に回すほどの覚悟があると?」

 

『そんなの、無いよ。た、他人と話だけでオドオドするような女の子に…何も、期待しないで。

た、ただ同価値なだけ……ど、どれだけ世界から愛されていようとも……私にとっては、ただの使いまわせる、一般人……それだけ。』

 

「……そうか、覚悟無く敵を作っていくということか。」

 

『そ、そう……あ、貴方にとって、マリア・カデンツァヴナ・イブ……は、人質の価値が、あ…あるんだろうけど……わ、私にしてみれば、代わりはいるから……その気になれば、殺せる。

自分の手でやる勇気がない、から……やらないだけ……あ、あとする必要も無い、から。』

 

聞こえてくる音声をよく聞き取りながら、弦十郎はとあることを考える。

この声の持ち主……音女の事だ。

『女性』であることは、すぐに分かることだ。そして『他人とコミュニケーションを取りづらい性格』というのも読める。

だが、時折彼の耳には彼女の喋り方に違和感があった。ただ、オドオドしているだけ、よりは動き回っているかのような、息切れも聞こえてくる。

 

『わ、分かったら……回れ右をして、帰って。』

 

「……」

 

『き、聞いてるの?』

 

試しに、弦十郎は足音を鳴らさずになんとかジーンノイズの後ろに回る。だが、移動したことに対して音女は何も反応しなかったのだ。

 

「今考えているが、見てわからないか?」

 

『っ!あ、あんまり他人と喋ってこなかったから……そんなのみても、わからない。』

 

「そうか、ならばしょうがないな。」

 

この会話で、弦十郎はある程度の事を予測を立てた。まず、音女は今施設中を走り回っていること。

そして、それがバレないようにサウンドオンリーにしていること。

ならば、何故そんなことをする必要性があるのか。それも、大急ぎで。

ジーンノイズの性質を考えて、弦十郎はその予測を答えとする。

 

「ならば、大急ぎで帰らせてもらう。行(・)き(・)よ(・)り(・)も(・)遥(・)か(・)に(・)全(・)速(・)力(・)で(・)な(・)。」

 

『えっ。』

 

そう言って、弦十郎は凄まじい速度で飛びだす。最早滑空している、とも言えるほど、強烈に飛び出して数秒滞空してから2歩目を床につける。

そして、ものの数秒で階段に到達し、最早階段を使わず某配管工ゲームにある壁キックの要領で、階数を駆け上がっていく。

但し、その力強い脚力の犠牲になった壁は、地下であるにも関わらず深くめり込んでしまっていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間やめてろ!!」

 

走りながら、音女は叫ぶ。その手のひらには1つのジーンノイズのコアがあった。

本来の彼女の作戦は、あそこで弦十郎を足止めしている間に可能な限りコアの欠片をジーンノイズのコアに吸収させることだった。

一撃で粉砕されたとしても、その経験だけなら獲得出来ているのでそれが数さえあれば、例えあの人間兵器であっても、一撃では仕留められないだろうと考えていた。

幸い、律儀に立ち向かってくるジーンノイズを片っ端から倒し続けてくれたので、数だけはあるのだ。

 

「け゛ど゛そ゛れ゛も゛バ゛レ゛た゛!!」

 

声を枯らしながら、音女は走って戻っていく。回収出来たのは1階層にいたジーンノイズだけである。

数としてはそれで問題無いのかもしれないが、今は本体のほうに危機が迫っていた。

 

「はぁ……はぁ……!えれ、エレベーター複数用意、よかった……」

 

初めは悠々と戻るつもりだったが、ジーンノイズが足止めしていたとはいえ、来る時よりも倍速以上の速度とはどういう了見なのか。

音女の後ろからは、階段を使わずに壁を使って階段を登り始める弦十郎の音が近づいてきていた。

 

「げはっほ、ぼへっ!!」

 

予め複数用意していた、エレベーターの1つに乗り込む音女。転がり込むように乗ったため、エレベーターに乗った直後に倒れてしまったが、これで一応逃げきれた……と、音女は安堵の笑みを浮かべる。

 

「ぜぇ……だす、がっ……きぅっ!?」

 

少し降り始めてから、上の方で大きな物音が聞こえる。何かが破壊されたかのような音。

では、何が破壊されたのか……簡単である、エレベーターの扉である。誰が壊したのか、簡単である。壁キックを使い、最早床に足をつけることなく音女に追いつきつつある弦十郎である。

 

「っ〜!!」

 

口を抑える音女。内心では『ギャグ展開か何かですか』などと思いつつも、恐怖でいっぱいいっぱいになっていた。

自分ではなく、ジーンノイズに行かせれば話は早かったのだが、現実そうはうまくいかなかった。

ジーンノイズの場合下手をすればその辺をグルグル回ったり十分に回収しない場合も考えられるからだ。

 

「……?」

 

ドアを壊した音までは聞いた音女。念の為に全階層に止まるボタンを押して撹乱しようかと考えたその時だった。

 

「ふん!!」

 

「っ!!」

 

唐突に屋根から響く轟音。その音と共に、エレベーターの屋根は腕1本貫かれていた。恐らく、音がしなかったのはジャンプして、落下速度と合わせて拳を繰り出すことで、より屋根を貫きやすくした……と言ったところだろう。

しかし、そんなことは今の音女には些細なことである。

 

「っ……!っっっっ……!」

 

今の轟音と貫かれた拳を見て、完全に音女は腰を抜かしていた。このままジーンノイズを出して不意打ちで仕掛けてもいいのだが、ネガティブ思考に囚われた音女にとっては、最早弦十郎は勝ち目がない相手となっていた。

 

「いるんだろう、そこに。」

 

「い、いたら何!!こ、こんなことして……人質が、どうなっても!?」

 

「そうした場合、俺は君を殺すことになるだろう。」

 

静かながら、怒りがこもった声。その声に、音女は怯えつつも対策を練る。恐らく、殺せば本当に自分は殺されるだろうと。

しかし、その時基地内のスピーカーにノイズが走る。

 

『……どきたまえよ、消されたくはないだろう?風鳴弦十郎。』

 

「誰だ!!」

 

『覚えてもらおうか、アダム……パヴァリア光明結社のアダムと。』

 

「原初の人間と同じ名だと?」

 

『さて、既に向かわせているよ…助っ人を。潰されては困るからね、私たちのお得意先を。』

 

その放送の最中に突然、襟を引っ張られる音女。突然のことで声を出せず、そのまま音女の視界は光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたた……何…」

 

「局長に感謝するんだな、お前の持っていた物は全部別の場所に保管してくれた、というわけだ。」

 

「こ、このしゃべり方は……ぷ、プレラーティ…」

 

「あーしもいるわよ〜」

 

音女の目の前にいるのは、プレラーティとカリオストロだった。協力関係は既に彼女達の行動から考えて、打ち切られた物だと音女は思っていた。

だから、局長……アダムが音女を助ける行為をするとは、とても思えなかったのだ。

 

「な、なんで……こんな、ところに………」

 

「……こちらも、上からの命令には逆らえない、というわけだ。」

 

顔を伏せるプレラーティ。よく見れば、この場にサンジェルマンがいない。つまり、何かしらの理由でサンジェルマンがこちらに来れないということでもあるだろう。

 

「……きょ、局長と仲良くない?」

 

「ふん、あんな変人と仲良くできるだけおかしいわ。」

 

カリオストロがそう愚痴る。音女は合点がいった、恐らく折檻でもされたのだろうと予測できた。

 

「……と、ところで…ここ、は?」

 

「貴方に与えられる新しい基地よん。偶(・)然(・)使(・)用(・)用(・)途(・)の(・)な(・)い(・)ビ(・)ル(・)が(・)手(・)に(・)入(・)っ(・)た(・)ら(・)し(・)い(・)か(・)ら(・)作(・)っ(・)た(・)ら(・)し(・)い(・)わ(・)。」

 

「……う、嬉しいけど。なんでそこまでされるのか……」

 

「自称万能と、あの男は言っている。だから、不完全故に完全に無限に近づけるジーンノイズは見ていて楽しい……と言っているというわけだ。」

 

「は、はぁ……」

 

渋々納得する音女。ここまで転移してきたようだが、ならば前の基地は一体どうなったのだろうか……と、音女は思った。

だが、今はそれを確認する術はないしあんな化け物筋肉とか変わるのはもうゴメンだ、と新しい基地を見ながらそう思ったのであった。




補足

・アダム
どこからともなくスピーカーをジャック、サンジェルマンを折檻。
・前基地
現状不明、ただもう使い物にはならない
・現基地
地下施設ではなく露出した施設。パッと見た感じはタダのビルなので前よりは騙しやすい。尚、基地になる前までに使われていた形跡があるが、そこにいた人間達はどこに行ったのか不明。
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