それは1週間前。調が、音女によって鞭打ちを始められた辺りの時間。鞭打ちされていると同時に、調にはとあるものが聞かされていた。
それは、クリスとは違い少女の悲鳴ではなく喘ぎ声、ひたすら感じている声と、その少女の体を映されていた。
『ふ、ふふ……今ので、何回目…?』
『か、数えられるわけ……ないデス…』
その少女は、調の大切な人物である1人。切歌であった。その切歌が、音女と体を交わらせて喘ぐ姿を、延々と見せられていた。
目を背けても、耳が音を聞きとる。耳を塞ごうとしても、両の手足はジーンノイズによって縛られて拘束されているために、できないでいた。
「ふ、ぐ……」
調は、それに対して何も考えなかった。否、考えることを次第にやめ始めていた。
その映像が、繰り返し行われている録画データなのか、はたまたそのままダイレクトで流されているノンカットの映像なのかは、調にはわからない。分からなくなるほどに、体が憔悴しきっているのだ。
『ぁ……また、イク…!』
『ほ、ほらほら……数えないと……永遠に終わらない、よ?』
「……」
目の前の切歌は、気持ちよさそうに喘ぐ。アナルにも、秘裂にもバイブを押し込まれて、痛がるどころか感じている。
自分以外の誰かの手によって、よりにもよって自分達を捕獲した相手によって切歌が喘いでいる。
それが、調の心に亀裂を産んだ。『自分としている時よりも、喘いでいる』と勘違いするほどに、調はその声が印象に残っていた。
気づけば、自身の体を叩き続けたり犯して孕ませてくるジーンノイズの触手は自分から離れていた。
だが、憔悴しきった体は動くことをよしとしなかった。
「ぅ、ぁ……」
「……」
静かになったその場に響く足音。それが誰のものなのか、確認しようとしたが首も動かない。体の一関節一関節が、鉛のように重く感じていた。
その場に来た謎の人物は、自分を抱き上げた後に膝枕へと誘う。
「……つ、疲れきってるね…」
「う、お前、は……」
声を絞りだす調。近づいてきた人物は音女であった。とりあえず敵だと判断しているので、なんとかその場から逃げようと判断する。
だが、体が動かない上に、この膝枕は調に安心感を与えていた。
「な、なんでこんなこと……って顔してるね……でも、まだ教えてあげない…私にとっても、貴方にとっても……必要なことだから。」
「う……」
そして、調は音女の太もものやわらかさに包まれながら眠りにつく。その表情は見えなかったが、人肌くらいの温かさに包まれるのは悪くないと、調はそう思ったのだった。
「ふ、ふふ……いつ、堕ちるかな…」
そう呟く音女の表情には、優しさの欠片すらもなかった。自分の道具として使うために、調に牙を改めて向けたのである。
「……調を、どうするつもりなんデスか。酷いことをするようだったら…」
更に近づく第三者、切歌である。しかし、その姿は全裸でありその上から首輪と犬耳をつけた見た目であった。
「今、以上に酷いことが……あるとでも?あ、あぁ……普通にあるね、うん。し、四肢損壊……とか。」
冗談を交えるかのように音女は話すが、切歌は黙ったままだった。今口を開けば、音女に対する文句と罵倒だけを発してしまいそうになるからだ。それは、調や他の捕まっている人達のためにも言えない言葉である
「腕、足、歯に爪……に、人間だって少しは武器がある、よ?て、抵抗するなら…それらを使えば、いいのに。」
「……その武器を、使わせないようにしているやつが……言えることデスか?」
切歌は音女を睨みつける。だが、初めてであった頃と比べて気が大きくなっているのか、音女はその程度では既に怯えなくなっていた。
「わ、私だって……む、むしろ単純な腕力の勝負なら……私は、誰よりも弱いと思うよ……け、けどね……だから武器を使わせないように、工夫したわけ。」
「……だからって、こんな酷いことが許されるとでも━━━」
「せ、精神の折れなさも、立派な武器……でも、それは回収できない。だから、壊すしか……ない。
許される、とか……許されないじゃあ……ない。」
「……っ!!」
音女のその言葉を聞いて、切歌は踵を返して戻っていく。調がいた部屋には既に、誰もいなくなっている。その部屋にこもって、布団で横になりながら切歌はこう呟く。
「調……あたしは、何を間違えていて何を正解しているのは……わからないデス。調なら……わかるデスか?」
その言葉に答える者は、誰もいない。答えるべき相手も、その答えそのものも、今この場には存在しないからだ。
「う……?ここ、は…」
「起き、た?」
調は目を覚ました。知らない天井…という訳では無い。というよりも、どこも同じような部屋の作りをしているからだ。
だが、調に声をかけた人物。それは彼女が大切に思っている1人では無い声だった。
「……なんで、貴方がこんな事を…」
「し、知りたい?で、でも教えない……私が、あなたを助けたい……とか思っていない、から。」
「……体目的?それなら、ほかに相手がいくらでも……」
「あ…あなたみたいな、体つきの子は……あんまりいない、から。せ、性快楽を知らない子を、呼んできても……処女が、少し邪魔……」
「……最低。」
「い、今更……」
音女は、そう言いながら何かをカップに注いでいく。匂いと、色から察するにコーヒーだとすぐに察することが出来た。
「さ、砂糖……何個が、いい?」
「……飲みません。」
「そ、そう……」
音女はそのまま、コーヒーを飲む。その間、調から目を離すことはしなかった。
「……切ちゃんは、どうしたんです。」
「さ、さぁ?へ、部屋に戻ったのは確認出来たけど……それ以降は知らない。」
少しだけ安心する調。自分の代わりに、切歌が苗床になったのかと思ったからだ。
「……ね、ねぇ?まだ……切歌ちゃんのこと、信じてる、の?」
「……当たり前、あなたには分からないだろうけれど。」
「あ、あなたの知らない、切歌ちゃんの顔……わ、私は知っているから……ね?」
「……」
調はそれに少しだけ反応した。既に体を重ねた関係の2人だが、その関係になった調でさえ知らない切歌の顔。
それが調の心に、もやもやとした感情を生み出す。
「……そんなの、あるわけ…」
「は、恥ずかしがりながら…感じてる顔、何度もイかされて…『もうイきたくない』って懇願する顔………い、嫌なのに……興奮している、顔……ま、まだまだあるよ?」
「……そんな、こと…」
『何故そんなことをさせたのか』と憤りたくなった。だが、その顔がどういう顔なのか、調は本当に知らないのだ。
切歌は、調に見せてない顔がある……というのは本当なのである。その事が、切歌に対する不信感をさらに生む。
「そ、そうそう……録音もした、んだよ?」
「……何を?」
「き、聞いてからの……お楽しみ。」
そう言って、何かを取り出す音女。調は、それを見た記憶があった。以前行った、家電量販店に売っていたボイスレコーダーである。
『ぅ……あ、あたしは…』
「…切ちゃん?」
スイッチを押すと、聞こえてきたのは切歌の声。とても、嫌な予感がしていた。
だが、耳を塞ぎたいのに腕が動いてくれないのだ。未だ、完全に回復しきっていないからだ。
『お、音女様、の……ご主人様の……性奴隷、デス…』
切歌の声は、喘いでいた。ボイスレコーダーには、小さすぎて入っていないのか、ともかく何かしらで性感帯を弄られていることは明白だろう。
だが、そんなことは調には関係なかった。
「無、無理やり言わせて……」
「そんな、いやいや言ってるように……聞こえる?」
調の心にあった、不信感の杭が調の心を割ったような気がした。元々あったものが、この声と音女の一言で崩れ去った。
普段の調ならば、音女の意見なんて一蹴していただろう。だが、今の調は心身ともにすり減っていた。それが、冷静な思考を奪っていた。
『ひ、ぁ……イク、イッちゃう……デェス……!!』
音女は、ボイスレコーダーの電源を落とす。調の顔は、真っ青に染まっていた。息が荒くなり、瞳孔も開き始める。
それを治めるかのように、音女は抱き上げて抱きしめる。
「落ち着いて……」
「はぁっ!はぁ……はぁ………」
落ち着きを取り戻す調。無意識的に人肌恋しくなってきた彼女は、誰であっても抱きついてくれれば、安心するようになっていた。
「……はな、れて…」
「ふ、ふふ……それは、嫌。」
「っ……」
「嫌な事は、全部忘れさせて……上げる。厳しさと、優しさ……両方味わせて……ね。」
「貴方にされたことを、忘れるわけがない……」
「そ、そんな顔をしても……意味は無い。説得力も、ない。」
気がつけば、調はまた眠ってしまっていた。目を覚ませば、先程のことが夢だったかのように、また自分はジーンノイズに犯されていた。
「ふ、ぅ……んぐ、ぉ……!」
自分の声以上に、秘裂からの水音が調の耳に届く。突かれる度に、痺れるような感覚に襲われる。それが、犯されていることへの快感だと気づいた時には、体が完全に麻痺していると理解出来ていた。
「んぐ、ぼ…!」
触手から出された液体が、口の中に広がる。ほぼ同時に、アナルや膣内にも送り込まれる。
膣内に出されたら、また腹が膨らみ始めてくる。だが、それも体の感覚が麻痺している為に、痛みを感じなかった。
「あぇ……う、ぐ…!」
ポロポロと、膣内から溢れ出るジーンノイズのコア。水音共に無機質な音が、部屋に響き渡る。
しかし、痛みは感じずに違和感だけがあったのだ。満腹になった時の、腹の圧迫感に近いものを感じながら、調はなす術もなく受け入れていく。
「ぶはっ……はぁ、はぁ……ひぐっ!?」
口から触手が抜けたかと思った直後、何かが弾ける音が聞こえる。その後から尻に痛みがやってくる。叩かれたのだ、勢いよく。
だが、そのまま犯されてるのもあるのか、調には叩かれて快感を感じる様になっていた。
「あ、ぎっ!?」
1振、2振り……ロボットの様に、遠慮も躊躇もなく触手の鞭が振るわれる。火花が弾けるような痛みと、電流のように流れる快楽。
それは、本能的に自分が壊れていくことを悟り始める調の姿だった。
「はぐぅ!いぎぃ!?」
痛みは麻痺し、快感へと変化させる。後戻り出来なくなっていく感覚。言葉にできない恐怖と、興味と……快感を覚えながら調は壊れていき始める。
「あがぁ!?」
どこか、自分でも判別をつけられなかったが、性感帯に触手が振りかざされたようで……一際大きく弾け飛ぶ様な感覚を調は味わった。
ふと、頭に切歌が浮かび上がる。自分の大切な人、守りたかった人。しかし、守りたかった彼女は自分に相談も無く他人に体を使わせた。
いや、頼まれたからこそ自分に体を使わせたのではないか?もし、頼まれなかったら……自分を慰めることは無かったのではないか?
「うぎゅう……!」
ネガティブな思考に、調は囚われていく。そして、それは負の感情で調の心を蝕んでいく。
「あ、ぎぃぃぃぃいいいいいいいい!?」
そして、痛みを伴うまま絶頂に達する。戻れない、快楽の深み。それに浸かったことを理解し始める調。
そして、見覚えのある映像が流れ始める。切歌と音女の行為。だが、調の目は切歌を向いておらず、音女に向いていた。何を考えるでもなく、何かあったような、そんなような。ぼーっとした頭で犯され、叩かれ、達しながら調はその映像を見続けていく。
また、映像が流れ始める。映像が終わる頃なのか自分が気絶してよく覚えていないだけなのかは、分からない。
ただ、映像を見続けていると気づいたら音女の部屋で起きている生活になっていく。そして、音女がなにか飲み物を出してくる。
「ん、ちゅ……」
「あ、ん……!」
知らない間に、自分でも気付かない間に、調は音女と体を交わらせていた。
しかし、不快感はなかった。寧ろ、あのジーンノイズに犯されることが夢だったのではないか?と思うようになっていた。
事実、いつも眠ったあとに決まって犯されているからだ。そして、目が覚めたら音女の部屋で起きる。
「ふふ……」
全て、夢だったのだと。ではこれより前の生活は何をしていたのか?最初の頃は、まだ覚えていた。しかし、最近は有耶無耶になってきていた。
誰か大切な人がいたような気がする、と考えているだけだ。きっとされも夢なのだと。誰かが裏切ることは無いのだと。
調はそう思うようになっていくのであった。
「……って、事があった。」
「精神に負荷をかけさせまくって……崩壊させたってこと?えげつない真似をするのね。」
そして、時間は現在へと戻る。カリオストロはジーンノイズに拘束されながら、笑みを崩さない。その余裕が、少しだけ音女には鬱陶しかった。
「……運んで。」
ジーンノイズが、カリオストロを運んでいく。ふと、消えたプレラーティのことを思い出した。窓から飛び降りた可能性も無くはない、どうせ死にはしないとわかっている。
「……まさか、助っ人?」
未だ捕まえられていない2人の装者の事を思い出しながら、音女はその部屋で待機するのであった。
補足
・カリオストロ
捕まえられて、移動させられている
・月読調
完全精神崩壊、過去のことを夢だと思うようにしている
・暁切歌
雌奴隷宣言済