「……助っ人とやらがいつ来るかは分からないけど、頑張ろう。」
彼女の知らない間に、いつの間にか置かれていた資料に目を通す。装者の使うギアと、名前と性別と簡単なものである。
「……立花響、雪音クリス、風鳴翼、マリア・カデンツァヴナ・イブ、暁切歌、月読調……皆女の子だけど、個性溢れるね。
シンフォギアに関しては偏りすごいけど……」
「んー?偏りが凄いって……どーいうことかしらー?」
「ひんぅ!!」
後ろから突然声をかけられ、奇声を上げる彼女。驚いてしまった彼女は恐る恐る後ろを見る。
「はぁーい、私達が助っ人よ。」
「……本当に彼女が局長の言っていた人物なの?」
「写真と一致している、間違えるわけがないという訳だ。」
無駄に露出が激しいキャピキャピしている女性、雰囲気が堅物そのものと言っても過言ではない女性、そしてカエルの人形を抱いた小さな女の子が突然後ろから湧いていた。
「あーしはカリオストロ、小さいのがプレラーティで硬そうなのがサンジェルマンよ。」
「か、
ビクビクしながら彼女……音女は三人に挨拶を返す……が、自身のことをカリオストロと呼んだ女性は、音女のポケットに入っていたジーンノイズを三つほど取り出して眺めていた。
「ふーん……この中にノイズがまるまる1匹ねぇ……ねえ、これってどれくらいの頻度で成長するの?」
「え、AIと同じで……1度NG行動を取れば、それを二度と取らないように……今回なら『これに当たったら死ぬ』というのをひたすら覚えさせて、自身で予測できるくらいに強くすれば……」
「さっきの偏り、って言うのもこれに活かせる?」
「へ?か、彼女達は6人中3人が相手を斬ることに特化した武器みたいなんで……それの対策って話なら……」
カリオストロは、サンジェルマンに視線を軽く送る。サンジェルマンは納得したのかため息をついて、少しだけ堅苦しい雰囲気を和らげていた。
「斬撃に対する圧倒的耐性…確かに、鋸に鎌に剣に……アガートラームは使える兵装がある、って言うだけだけれど……」
「基本的に、斬撃を使う者が1人以上になる組み合わせが殆ど……という訳だ。」
「そ、そういうことです……」
「それで?斬撃に対する耐性を付ける算段はあるの?」
「し、シンフォギアの斬撃相手という事なら……実践訓練が一番かと……」
「ま、当たり前というわけだ。」
「それじゃあ━━━」
カリオストロが、装者達が来るまでに少しでも強くしようと、提案を出す。その提案に、露骨に嫌そうな顔をする音女なのであった。
「ここが私達の調べる最後のポイントデース!」
「あんまり大声出すなよ……何があるか、分かんねぇんだから。」
翌日。命令されてすぐ装者達は、ノイズが現れた地点から半径1km圏内の場所を、三つのグループに分かれて捜索していた。
「……にしても、廃墟デス。」
「あぁ、ドラマとかに出てきそうなボロボロのビルだぜほんと……」
そして、とある地点に切歌とクリスがいた。彼女達の最終調査地点であるこの場所を、警戒をしながら探索していた。
「むむっ……クリス先輩!こっちに階段があるデス!瓦礫で埋まってたところに!」
「マジか。でも瓦礫ってなるとな……ただ埋まってた可能性があるだろうが……」
「とりあえず、司令に連絡をしておくべきデス。」
「だな……おいおっさ━━━」
埋まっていた地下への階段を見つけ、一度通信を取ろうとするクリス……だが、通信機に手を掛けた瞬間にその通信機が、なにかに撃ち抜かれてクリスの手から飛ばされ、離れていった。
「っ!!誰だ!!」
「はぁい、と入っても顔は今は見せられないのよ、ゴメンね☆
けど通信はしちゃ駄目よ?入るなら……貴方達二人で……入ってきなさい。」
声が切れる。クリスと切歌は、顔を見合わせて仕方なく階段を降りていくのであった。
「うわ、ほんとに入ってきた……でも、なんで……?」
「簡単な話よ。シンフォギアを起動させるためには歌がいる、要するに狙うだけの隙があるのよ。
その隙を、あのタイミングで出すべきではないと判断したのよ。」
「どうせ、シンフォギアを起動させれば意地でも他の装者達に反応は拾われるという訳だ。
ならば、相手の策に乗っかる方がマシという訳だ。」
「な、なるほど……」
サンジェルマンとプレラーティの説明により、納得する音女。そしてぱっと後ろを向いて、立っているノイズ……姿の変わったジーンノイズ達を見ていた。
「にしても、人は取り込まないのね。」
鎧武者のような、かなりゴツゴツした見た目となったジーンノイズの前に、サンジェルマンが包丁を投げる。
ジーンノイズはそれに気付いて、体から触手を伸ばして包丁を手に取ったあと、それを消化するかのごとく身体に取り込んだ。
「こうやって、無機物を取り込んで成長するのは面白いわね。」
「カリオストロが言っていたこともあながち嘘ではなかった、という訳だ。
他もう一体も銃弾を大量に取り込ませてみよう……確実に面白い進化を遂げる……という訳だ。」
どこにそんなスペースがあったのか、プレラーティは持っていたカエルの人形から、大量の多種多様な銃弾をもう一体のノイズに与える。
「で、でも……これだと唯取り込んでいるだけで……経験値がたまらない、と言いますか……」
「経験値……この時代にある娯楽物で使われる単語だな、しかしこれはどちらかと言うと経験値ではなく装備の新調……そう思ってくれても構わないわけだ。」
「そ、装備の新調……?」
「まぁ、見たらわかるわよ。さ、行きなさい。」
サンジェルマンの命令で、動き出す2体のジーンノイズ。大量に取り込んだ斬撃特化と銃撃特化の二体のノイズがどこまで通用するのか、少しだけ不安な音女であった。
「ちっ……んだよこいつァ!!」
「全然攻撃が通らないデェス!!」
二体のジーンノイズに苦戦するクリスと切歌。思いの外善戦している事に、モニター越しから見てて音女は安堵していた。
「洒落せぇ……抜剣行くぞ!!」
「デース!!」
「え、抜剣?」
「「イグナイトモジュール、抜剣!!」」
胸のペンダント状のものを取り、スイッチを入れて空中に放り投げる。すると、ペンダントから棘のようなものが生え、それが装者たちの胸に刺さる。
「ひっ!?」
音女は二人が自決したのだと思った。しかし、それまで白色があった部分は黒く染まり、ギアの形も禍々しいものへと変貌していく。
「な、なんですかあれ……」
「ダインスレイブ……あれは魔剣を使ったいわば呪いの力。通称、イグナイト。」
「の、呪い……?も、もしかしてめっちゃ強くなってたり……?」
「当たり前だろう、でなければあんなものは使う理由がない、というわけだ。
だが、それを使わせるのが目的でもある……というわけだ。」
プレラーティとサンジェルマンの言っていることが、イマイチ理解できていない音女。それを察してか、サンジェルマンが溜息をつきながら説明を入れ始める。
「いいかしら?ノイズというのは本来まともな生物でない……それこそ、シンフォギアの殆どが完全な形を保っていた……という時代よりも以前からいるのよ?」
「は、はい……すっごい大昔の生物ってことだけは……」
「生物じゃないって……まぁいいわ。そして、あなたの研究の成果……ジーンノイズは知識の蓄え、無機物…いえ、『有機物でないもの』の蓄え……それが行える、というのもさっき判明したわね。」
「え、えぇ……けど、それが何か……?」
「『何かを取り込む』という性質……そして相手は土壇場の切り札を今使っている……それは固形物でないにしても、有機物ではない呪いの力。
ここまで言ったら流石にわかるかしら?」
「っ!!の、呪いの力を取り込む……!?」
「そういう事よ……見なさい、傷ついても致命傷でない限り、シンフォギアの攻撃であっても即時回復するジーンノイズを。」
音女の作ったものだったが、何故かサンジェルマンやプレラーティの方が、ジーンノイズの力をよく分かっていた。
「く、クリス先輩!何か効いてる筈なのに効いてないように思えてくるのデース!」
「あぁ……確実に奴らの体は吹き飛んでいってる……の割に、結構動けてるよな……つか、黒くなっていってねぇか?」
「叩いたら黒くなるなんて、まるで桃デス。」
「ちっ……ここが外なら一気に吹き飛ばすところだが……」
「市街地、しかもここは地下デース……」
ここまで見て、改めて音女は思う。『どうしてまともな経験を積まずにジーンノイズ達がここまで戦えているのか』と。
それに気づいたのか、プレラーティが注釈を入れる。
「先程装備の新調と言った訳だが……銃弾や、適当な刃物の類を食べさせることで、奴らは体の形を変えたのは分かるか?」
「は、はい……それくらいは…見た感じで…」
「経験を、装備で補っていると考えるとわかり易い訳だ。
極論だが……レベル1のキャラに、最強の装備をつけている状態…それが今のあの2体の状況な訳だ。」
「経験は全然ないけれど……装備が無茶苦茶強いから、強くなってる風に見えてるだけ……って事ですか?」
「そういう訳だ。事実、当たり過ぎて体がボロボロになっているが、あの二体の本体は無事な訳だ。」
「な、なるほど……にしてもお二人はよく私よりジーンノイズの性質に気づきましたね……」
「簡単よ……そもそもノイズが記憶して、体を変化させるようになってる時点で、記憶よりも確実な存在としてある無機物は、取り込めるかもしれないって仮説自体は立ててたわよ。」
「そ、そうだったんですか……」
『自分はただ人間のように成長するノイズ、という印象しかなかった』と思っていた音女は、広い視野を持っていた方がいいとふと思っていた。
そして、刻一刻と時が過ぎていく。
「ち……だが向こうも限界が近づいてきてるはずだ!!一気に片付けるぞ!!」
「デース!!」
その時の間に、ジーンノイズ達の装備は削られていく。だが、第三者としてモニターから見ている音女達には、見えていたのだ。
動きの良くなっていくジーンノイズ達を。
「っ……トドメぇ!!下がってろ!!」
「了解、デェス!!」
切歌が後ろに下がり、クリスがガトリングを構えて一気に乱射する。構える盾のない、弾く武器もないジーンノイズの2体は成すすべもなくその体を灰へと変える。
「はぁ……!はぁ……!」
「め、滅茶苦茶しんどいデース……」
「い、一旦戻るぞ……」
イグナイトが解けて、肩で息をしながら来た道を戻っていくクリスと切歌。特に、切歌はLINKERと呼ばれる薬を投与して、無理矢理シンフォギアとの適合率を上げているタイプの装者なので、あまり時間をかけていられないのだ。
「ふふ、でも逃がさな〜い。」
「っ……迷い込んだ一般市民…なわけねぇか。」
「このタイミングで、敵デスか……」
遂に二人の前に姿を現すカリオストロ。その手には2つの小さな何かを持っていた。
当然、それは先ほど二人が撃破したジーンノイズのコアだったのだが、今すぐ戻るべきだと判断した二人は、そんなものがあることすらも確認していなかった。
「んだよ、お前。そんな小石であたしらとやろうってのか?」
「流石に舐められたものデェス……!」
「ふふ、貴方達とやるのは正解…けど相手は私じゃないわ。多分……これをこうすれば……」
カリオストロが、ジーンノイズのコアの2つのうち1つを手の中で砕く。そして、その欠片をもう一つの方に近づけると……もうひとつの方が、砕かれたコアの破片をすべて取り込み始める。
「っ!!無理矢理突破するぞ!!」
「デ、デェス!?」
何かやばい、と察したクリス。咄嗟に切歌の手を持ってその場を走り抜けようと試みる。
「残念、ちょーっと危機管理能力が足りなかったわね☆」
カリオストロは、クリスがその場を走り抜けるよりも早く一つなったジーンノイズのコアを地面に叩きつける。
そして、クリスがカリオストロを走って横切ろうとした瞬間、体が壁に叩きつけられていた。
「がっ……! ?」
理解が追いつかなかったクリス。そして、幾らシンフォギアと言えども、装着者の体を完全に守れる訳では無いのだ。
簡単に言えば、クリスはその一撃で頭を揺らしてしまっていた。
「クリス先輩!!っ!?な、そのノイズはさっき……!?」
「ふふ、私達の新しいノイズ……頑張って倒してね☆」
そのまま地面に倒れるクリス。盛大に凹んだ壁、そして先程倒したジーンノイズ二体が合体したかのような姿を持つジーンノイズ。
LINKERが切れるまでの時間が刻一刻と迫る中、相方でありLINKERなしでもシンフォギアを纏えるクリスのダウン。
そして、出口はノイズの後ろ側……
「……時間稼ぎ、出来るといいデスけど……」
「させると思う?」
カリオストロが、倒れたクリスの頭を掴んで体を持ち上げる。それに、切歌は下唇を噛む。
「別にあーしは貴方がこの場から逃げても構わないしぃ、ここで目の前のこのノイズに対して時間稼ぎを行うのも構わないけどぉ……残されたこの子はどんな目に遭っちゃうのかしらぁ?」
簡単な脅し、しかしその脅しは未だ15,16歳の少女には十分なものだった。
「あ、絶唱も駄目よー?」
絶唱、それはイグナイトの他にあるシンフォギアの切り札。それを使えば確実にこの窮地は脱出可能である。
しかし、それは敵も許してくれるものではなかった。
「……何を、させる気デスか?」
「ふふ、それはウチの新作ノイズ作成班班長に聞いてちょうだい?」
ウィンクをしながら、カリオストロは残酷に少女を罠に嵌める。
これから行われる仕打ちがどんなものか、唯一知るのは━━━
「捕縛でよかったの?」
「は、はい……ジーンノイズは記憶して成長するのももちろんですけど……元になっている物が、物だけに……増やす為には、あぁいう子が必要なんです……」
「捕虜の少女……この時代の文化に触れていたせいか、妙にそそるものがある、というわけだ……」
未だビクビクしてる音女。しかし喋り方とは裏腹に、捕まえられた少女二人を見るその表情は、真っ黒と言わざるを得ないほどに、酷い笑みを浮かべていたのであった。
補足説明
・ジーンノイズ
やられてもその経験を生かせる様になってるノイズ。体が潰れてもコアが無事なら再び使用できる。無機物や、呪いの力といった有機物出ないものの力も後付で得ることが可能。
・今回のジーンノイズA
包丁などの刃物を大量に吸収したジーンノイズ。近接特化で鎧武者のような姿をしていた。もう一匹の方と合体した。
・今回のジーンノイズB
銃弾を大量に吸収したジーンノイズ。体から大量の銃口を生やしており、腕も銃口に変更されている。Aと合体してひとつになった。
・2匹のジーンノイズの進化
イグナイトの呪い、イガリマとイチイバルとの戦闘データ、大量の刃物と銃弾を吸収、2匹は一つとなりその力も格段に上がる。ほぼ不意打ちに近い形とはいえ、雪音クリスを無効化。
しかし、1匹ずつの頃はイグナイトで押し負ける。
音女がなんでノイズ作るようになったのかとか、少し交えながらそろそろエロに入っていこうと思います。