「海底深くに沈んだ船か……にしても、この船はよほど人材不足に悩まされているようだな。
まさか、戦闘の要である装者二人を行かせるとは。」
「……全ては、俺の失態だ。何を言われても仕方が無いだろう。」
「まぁいいじゃないかサンジェルマン。どちらにせよ、愚者の石を取りに行くまでは、装者達はどう足掻いても使い物にならない、というわけだ。」
「……愚者の石?」
「あぁ……私が考えた。賢者と全てが逆相位の石……ならば愚者しかない、というわけだ。」
海底に沈む、希望。愚者の石と名付けられたそれは、賢者の石…ラピス・フィロソフィカスとは真逆の性質を持つ石だった。
それを使い、イグナイトと賢者の石を同時に使うことが出来るようにするために今は取りに向かっていた。
「賢者を備えるために、愚者を必要とするとはね……」
「まるで、天才に弄ばれるモルモットのようだ。」
音女には、未だ作戦はバレていない。そして、その石があった施設は現在沈んでおり、それを取りに行けている以上、最早取れたも同然なのである。
「バレても……今のままなら特に問題は無い。」
「向こうも、流石に潜水艦を吸収しようとは思うまい。水に潜れる玩具が向こうの手元にあるのなら、話は別だが。」
だが、そうやって少し気を抜いた瞬間に、船は大きく揺れる。まるで、何かに襲われたかのような衝撃に。
「なんだ!?」
「くっ……向こうも嗅ぎつけてきたのか!?」
即座にモニターに映る映像は、潜水艦から外へとカメラへと切り替わる。そこには、大量に弾を撃ち続けているジーンノイズの大軍がいた。
「今は装者達は動けない……仕方ない、私が出るわ。」
「待てサンジェルマン、一人で行くのはいくら何でも危険だ。」
「いいえ……恐らくあのジーンノイズ達は囮よ。本命はあの装者達のはず……だから、貴方が残って様子を見てちょうだい。」
そう言われて、プレラーティは無言で頷く。効かないと分かっていて、わざわざ基地を攻撃していくのはおかしいと思ったからだ。
それこそ、調などを連れてこなければならないはずなのに。
「わかった……なら、頼んだぞ。」
そのままサンジェルマンは外へと赴く。そして、ほぼ同時にプレラーティも響達を守るために、深海へと潜っていくのだった。
「いい……今回の狙いは、船と潜水艦……それに両方囮を送ること。」
調が、ジーンノイズ達に支持を送る。コアの状態でも言うことは聞くため、予め言っておくことで余計な手間暇をかけさせないようにできるのだ。
「……でも、お姉様は一体どんな作戦をしてるんだろ……目的の物が目の前にあるのに、手を出さずにちょっかいをかけるだけなんて。」
ビルの中で首を傾げる調。彼女は音女に言われて、ここで待機しているのだ。
当の本人は、『することがある』と言って出ていったきりなのだが。
「うーん……わかんない事は、考えててもわかんないかな……」
だが、今の調は物事を深く考えなくなっていた。それは、本能的に脳が記憶を思い出そうとする行為全てを、拒否しているからである。
「あ、ありがとう調ちゃん……や、やりたいこと終わった…よ?」
「あ!お姉様!!」
戻ってくる音女、そして抱きつく調。しかしすぐに調は顔を離して、音女に視線を合わせる。無論、体まで離そうとはしない。
「何をしていたんですか?」
「……ふ、ふふ…ちょっと、仕込みを。」
「仕込み……?」
「ま、まぁ……もうすぐ分かる、よ。」
「……?」
「この間と同じ……いや、それ以上早く全てを撃ち落とす!!」
空を飛びながら、両手のガトリングで船を乱射していくジーンノイズの大軍。
鎌の翼で滑空し、丸鋸のプロペラで空を飛ぶ姿は正しく戦闘機。その素早さで、サンジェルマンは少し狙いづらさを感じていた。
「くっ……数こそ当たる、というのは立証できるが…少なくなった時、なかなか骨が折れそうだ……!」
羽に当たったり、プロペラに当たったり……消滅を確認した訳では無いが、海に落ちた以上復帰は難しいと考えて、サンジェルマンはそのまま攻め続けていく。
「……いや、待て。やはり違和感がある。何故一撃を入れたのに、自壊していく様子がない?」
海に落ちたもの、最後まで確認した訳では無いが、落ちていく過程でイグナイトが抜ける様子が見えなかったのだ。
下に落ちて、未だ無事。下に落ちてから自壊していった可能性も存在しているが、そこまで甘い見通しでいるわけにもいかないだろう。
と、そこまでの考えに至ったその時、突如船が大きく揺れる。
「くっ……!?なんだ!?」
響く轟音、海からは水柱が上がり、海面下で何かが爆発していることだけ理解ができた。
その爆発の正体がなんなのか、サンジェルマンは即座に何通りか予想を立てながら、ジーンノイズを的確に仕留めていき始めるのであった。
「……爆弾?」
「う、うん……じ、ジーンノイズにはそれを搭載したの……」
「でも、水面下に落ちたら……湿って爆発しないんじゃあ……?」
「ば、爆発だけなら……水面下でも、する。」
ビル内にて、調と音女は話し合っていた。音女は、自慢げにこそ話さないものの、自分の作戦を語るのが楽しいのか笑みを浮かべていた。
「で、でも……欲しいものが、あったんじゃあ?」
「……け、賢者の石を攻略したいのは……本当。で、でも……相手に渡るくらいなら……相手ごと、消し去る。」
「そ、それで……良かったんですか?」
「いい、の。ほ、欲しいと言っても……あくまで、シンフォギアのおまけ……だったから。」
「お姉様がいいのなら……」
調はそれで話を切った。音女自身、興味が無いといえば嘘になるが、それ以上に脅威の排除に躍起になっていた。
「……わ、私…苗床の様子見てくる、ね。」
「は、はい!」
音女は1人で部屋から出る。既に調、クリスはこちらの手に落ちている。切歌も、調の様子を写したビデオでも見せれば、簡単に折れるだろう。
だが1人、未だ心が折れかけてすらいない者がいた。マリアである。
「多分……2人の様子を見せても、キレるだけ…後回しにしていた方がいいかもしれないけど……」
静かな廊下に、コツコツと足音が響く。そして、マリアを捉えている部屋までたどり着く。
「……気、気分はどう?喋れたら……答えて、ね?」
「んぐ、んんん!!」
目の前のマリアは、歌姫とは程遠い姿を晒していた。目を隠され、口と下半身の二穴を激しく犯されて、喘いでいるのだ。
『徹底的に犯せ』という命令の元、さらにそこから尿道までもが犯されていた。
「……しゃ、喋れない……よね。し、仕方ない……」
音女が指を鳴らす事によって、マリアは犯されなくなった。目隠しは外されず、口以外の穴に入っている触手は抜かれなかったが、一旦停止されたことでなんとか、喋れるようにはなっていた。
「はぁ、はぁ……いい加減、切歌と…調を……」
「も、もう貴方のことなんて……分からなくなってる、よ。調ちゃんは、私に甘えてくるくらい、だし。」
「嘘をつくな!いや、いや……たとえ嘘じゃなかったとしたら……貴様を許さない……だけだ!!」
「か、身体は堕ちても心は堕ちず…み、皆同じにも程がある……」
呆れた顔をする音女。それがカンに障ったのか、目隠しされながらもマリアが怒ってるのが手に取るようにわかった。
「貴方なんかに、屈したりは……」
「そ、そう言っても……皆、堕ちてった…ら、楽になろう……ね?」
「絶対に、屈しない!」
「……そう。」
再び指を鳴らす音女。そしてまたマリアへの陵辱が再開される。音女は、もうマリアに興味を無くしているのか、そのまま部屋を出て別のことを考えていた。
無論、今考えるのはサンジェルマン達のことである。出来ればマリアが堕ちてくれていれば、手駒が増やせたのだが……そこまで甘くはないとため息をついた。
「でもまぁ……どうなるかは見てのお楽しみ、か。」
「状況はどうなっている!!」
「サンジェルマン、プレラーティ両氏いずれもジーンノイズとの戦闘続行中!ですが、この船と潜水艦にダメージが蓄積していってます!!」
「くっ……!」
未だ続く爆発。サンジェルマンが一撃で仕留めても、仕留められたジーンノイズは直後に自爆し始めるのだ。
そして、プレラーティの方にもジーンノイズは集まっていた。水中である以上、水圧の空気の問題があるため、長く戦い続けることはプレラーティの負担にもなってしまう。
「はぁぁぁぁぁ!!」
撃ち落とすサンジェルマン、叩き潰すプレラーティ。どちらも段々と体力を消耗し始めていた。
「くっ……幾らなんでも数が多すぎ……きゃっ!!」
後ろから不意打ちを食らうサンジェルマン。吹き飛ばされ、転がってしまう。
「なぜ、何故こんな数を……まさか、全部投入し始めてきた……!?数だけなら、ジーンノイズはいくらでも用意が出来る……!」
撃ち落とし、撃ち落とし。それでも数は一向に減らない。量より質、という言葉があるが、質すらも上回るほどの数がいれば話は別だろう。
「プレラーティ……無事だろうか……?」
プレラーティの事を思うサンジェルマン。その当の本人であるプレラーティは━━━
「……!」
水中で、沈む施設の入口を必死にジーンノイズから守っていた。しかし、そのために水中の爆発に何度も巻き込まれ続けていた。
響や、翼は施設内で無事に探索を続けているものの、爆発による施設の軽い崩落に巻き込まれ続けて、至る所に損傷を受けていた。
「ぐぶっ……!」
そして何より、水中での息の呼吸が限界に近づいていた。いくら、ファウストローブを纏っているとしても、人の身である限り呼吸は免れないことだった。
「ごばっ!?」
そして、呼吸が続かなくなったことで段々とプレラーティに隙が生まれ始めていた。
そのせいで、腹にジーンノイズの突撃を許してしまう。
「ごぼっ……」
そして、その突撃で最後の空気が肺から排出されていく。当然、抜けたものを補おうと、水が肺の中に入り込んでくる。
当然、空気が足らないのでプレラーティの意識は沈んでいく。体を動かすこともままならないまま、プレラーティは残りのジーンノイズの施設への侵入を許してしまうのであった。
「……翼さん、来ました。」
「……そうか。私達の命運も、ここまでか?」
「いえ、逆に考えましょう……みんなを助けに行けるんだ、って。」
「ふふ、立花は前向きだな……そうだな、私達はもはや場所の把握もできていない。これで……雪音達を助けに行ける。」
潜水艇の中で、響と翼は静かに語り合う。シンフォギアが通じない相手だから諦めた……というわけではない。
例え今潜水艇を放棄して、シンフォギアで立ち向かったとしても……無視して進んで取りに行った場合でも……結末が一緒だと、理解してしまったのだ。
だが、抵抗しなければ捕まえてくれるかもしれない……そうなれば、シンフォギアを失ったとしても、みんなを助けに行けるんだ。と、そう思っているのだ。
「さて……本気で爆破されたら……どうする?」
「その時は……逃げましょう、2人を連れて。」
「そうだな……命があれば、助けに行ける。ここで捕らえられても、捕えられなくても……雪音達はすごく早いか、早いか……どちらにしても助けに行ける。」
翼は、天井を見上げる。助けられるか、否か……では無い。絶対に助けられると信じていた。
その為に、賭ける。相手が自分たちを殺しにくるか……否かを。
「…沈んだ?」
「はい、ジーンノイズ達が次々と帰還してきているから……多分。」
「だ、出してた命令って……し、『施設の破壊』と……『邪魔者の排除』だったはず……お、終われば、帰還。
だ、だから……どちらかは……終わってる、ハズ。」
「本当に、捕虜はいらなかったんですか?」
「う、うん……シンフォギアと、ファウストローブは欲しかったけど……ね。も、もういいかな……」
ビルの中で、そう言う音女。だが、彼女は1つ確信していることがあった。
恐らく、邪魔者の排除は終わっていない……少なくとも、装者達は生きていると。
補足
・飛行自爆型ジーンノイズ
戦闘機の様なフォルムをしたジーンノイズ。しかし、突撃と弾薬バラマキ、そして自爆しかすることがない。