「なるほど……ここは、私達が来ていた世界とはまた別なのですね。」
「そういう事。だから私はこの世界でも、君の知っている立花響でもないから君の事も知らない。」
なんとかセレナを救出することが出来た一同。軽く自己紹介を各自終えてから、今後の課題である仲間の増員についてのことと、これからのことについて話し合っていた。
「それで……本当に駄目だったのか?」
「はい……私の攻撃が、尽く弾かれてしまいました。オマケに、私の武器を吸収する個体もいて…」
「それは、ジーンノイズですね。奏さん達には予め言っておきましたが、あのノイズ達はギアの攻撃を一切受け付けません。
それは戦闘能力としての話ではなく、彼らは生物以外のものであればなんでも吸収することを目的としたノイズだからです。」
「しかも、どうにも吸収したものの力を発揮することができるみたい。
で、今この世界にいるジーンノイズの全てと言っていい数が、この世界の装者の持っていたシンフォギアを使えるんだって。」
「そんな…」
青ざめるセレナ。それもそうである、説明を聞く限りでは装者6人分の力が宿ってるのだから。
1人で6人を相手にするのは、どう考えても無駄である。しかし、あの力は明らかに6つ分の力以上のものがあった。
そのことを疑問に考えたセレナだったが、直ぐにその答えにたどり着く。生物以外のものであればなんでも吸収するジーンノイズ。ならば、生物以外のものであるジーンノイズそのものも吸収できるのであれば、あの強さも納得できるものだとたどり着いた。
「けど、そんなジーンノイズでも弱点はあるみたい。」
「弱点、ですか?」
「はい……ジーンノイズは所謂出された指令だけをこなしていくロボットのようなものです。
つまり、命令系統の1番上である……ジーンノイズの作成者、華雑音女を捕縛…または殺害することによりジーンノイズは全て木偶の坊となります。」
「殺害……」
「無力化するのであれば、合理的な判断だと思います。彼女自身も、身を守るために自分の体の中にジーンノイズのコアを入れて、例外としてジーンノイズとして変貌してしまった。」
セレナは唾を飲む。エルフナインの顔に、目に殺意が宿っていたからだ。合理的手段を取るのは、何も間違ってはいない。しかし、そこに理性や道徳が一切入ってこないようにセレナは感じてしまったのだ。
「あたし達のギアで勝てる確率は?」
「現在の戦力だと、5%あればいいほうだと思われます。勿論、ジーンノイズとの戦闘は除いての話ですが。」
「ジーンノイズとの戦闘を介せば?」
「0%を下回ります。」
「随分と強いんだね、本当に。」
「えぇ、あれは戦闘を行えば行うほど強くなる。ただでさえ、今の強さはとんでもないというのにこれ以上強くなられても困ります。」
手元にあるキーボードを叩きながら、エルフナインは画面を皆に見せる。それは、ある1種の戦闘シミュレーションのようなものである。
「これは?」
「皆さんの戦い方を参考にして作った、シミュレーションです。まだ情報が足らないので不完全ですが、それでもジーンノイズの行動を知る程度なら出来ます。」
画面を見れば、デフォルメ化されたセレナがジーンノイズ一体と戦っている映像になっていた。
「……私のアガートラームに対してだと、同じアガートラームを叩きつけられてる。」
「その後、行動を把握したジーンノイズは、イチイバルのミサイルを飛ばしてノックアウトさせます。
蛇腹剣が多関節武器であるがゆえの弱点をつかれています。次に奏さんと響さんです。」
少しだけキーボードを叩いて、再びエルフナインは画面を見せる。に画面に別れて、同じようにデフォルメ化された奏と響がジーンノイズと戦っていた。
「あたしはある程度遠近両用が利くから……って言ってもこれを見る限り意味が無さそうだね。むしろ利用されてる。」
「槍で攻防を繰り広げる奏さんには、イチイバルで重点的に狙われます。
槍で竜巻を起こす遠距離攻撃も、ミサイルを撃ち込まれてそこで無理やり爆発させられて拡散させられます。
たとえ近接で挑むにしても、響さんの……この世界の響さんのガングニールと天羽々斬などといった近距離系のギアを取り込んでいるために、近接も適した武器を取り出されてしまいます。」
「…もしそうなら、仲間を増やされても一緒じゃないの?」
「いえ、ある程度の予測ができるのであれば、逃げる事は叶うはずです。逃げられれば、体制は立て直せます。」
「あぁ、そういう……」
響は納得したようで、そのまま何かを言うことは無かった。エルフナインはそれを確認してから、改めてキーボードを打ち直してまた新たな画面を見せる。
「しかし、勝てないとは言ってもそのまま全員で華雑音女に戦いを挑むのは、間違いです。」
「確かに……全員で頭を狙いに行けば、ジーンノイズに囲まれて全滅もありえますもんね。」
セレナが納得する。このままメンバーを増やしたところで、ジーンノイズには誰一人として勝てないという前提で話を進めているのだから当然である。
「そうです、だから……ある程度メンバーを集めきったら、囮作戦を行おうと思っています。」
「…可愛い顔して、かなりえぐい作戦を考えるんだね。」
「ジーンノイズ全てが引っかかるとは思っていません。ですが、彼女の手持ちに何体かいたとしても、ある程度周りのジーンノイズを引っぺがすことは必要ということです。」
「……けど、そのためには数が圧倒的に足りない。どちらにせよ、集まってからの話になるね。」
響のその言葉に、エルフナインが頷く。結局はこの結論に至るのだ。その答えに至ってから、エルフナインは一同を次なる仲間の元へと案内していくのであった。
彼女は、店員も居ないようなガラ空きの店で無料の水を飲みながら考えに耽っていた。
彼女の見た目と、その格好はお世辞に言っても目立たないという訳ではなく、恐らく性格のいい人物が彼女の姿を見た時、真っ先に迷子か何かだと疑うかもしれない。
しかし、性格のいい人物がいないどころかこの街には既にまともな人は住んでいないのだろう、未だに誰一人としてその目で人を目撃していないのだ。
「……ふん、この俺がこうやって隠れることになるなんてな。」
ため息に苛立ちを込めながら、少女…錬金術師キャロルはそうつぶやいた。彼女もまた、ギャラルホルンから呼び出された平行世界の人物の一人であった。
「……ダウルダブラは正常に動いていた。しかし、こう呼び出された以上は思い出をどこかから回収せねばなるまい。
ガリィが居なければ俺がやるしかないが……些か気が進まんな。」
さらにため息をついて、テーブルに顔を寝かせながらキャロルは面倒くさそうに声を出す。
「…いや、何を面倒くさがる必要がある。口付けなど、意識するほどのことでもないだろうに。この身は既に命題のために性を捨てている……あんな体になるのは、ダウルダブラの起動条件上仕方なくで……いや、こんなことを言っても仕方が無いか。」
キャロルは立ちあがり、ダウルダブラを背負って歩き始める。本来ならば、ここは何か注文しておくべきところなのだろうが、それを言う店員も諌める客もいない。本当に、鍵だけが開けられている無人の店である。
「ここまで人がいないというのも、静かでいいが……不気味でもあるか。」
空を睨みつけながら、キャロルは舌打ちをする。空を飛んでいるノイズ…ジーンノイズが、アルカノイズとは別種のノイズであることは彼女の目で見てすぐに理解できた。
そして、ジーンノイズがアルカノイズと比べられないほどに強大な力を持っていることにも、すぐに気づいていた。
故に、なるべく見つからないように行動していた。目立たないように、隙を見計らって移動し続ける。
「地面に降りてこないのと、地上に一体もいないのが幸いか……攻めてダウルダブラを小型化できれば話は早いのだが……」
少し移動してから、再び建物内に入ってキャロルは考える。物体として存在こそしているが、ダウルダブラもシンフォギアも現代における物理法則は完全に無視されている。何故なら、そこに聖遺物としての力が備わっているからだ。
「ふむ……体に合わせて大きくできるのであれば、逆に今の体のように小さいまま使える形を模索するべきか。
幸い、人がほとんといないのなら目立つようなこともないだろう。」
錬金術を駆使して、ダウルダブラの小型化をその場で行い始めるキャロル。起動するのに、少し手間がかかってしまうが、そこは移動とジーンノイズに見つからないようにするためのことを考えれば目をつむれる程度である。
「出かければ目立つ、目立たないようにするためには……それくらいしないとな……よし、完成だ。」
ある程度の小型化に成功したキャロルは、小さくなったダウルダブラを髪につけて髪飾りのように扱い始める。
「こうすれば、簡単に使えるだろうな。多少の見栄えもいいだろう…」
そうして、キャロルは再び外へと出る。上を警戒しながら、しかし敢えて見つかるような状況を作り出す。ダウルダブラがあれば、まず間違いなく目立っていたが、どうやらただの髪飾りとして使っているダウルダブラの大きさならば、気づかれることはないようだ。
「こちらに飛んでくる気配なしか……ふっ、俺の才能に不可能はない。」
少し満足気な顔を浮かべながら、キャロルは進んでいく。どこともしれない場所をただ真っ直ぐに。
「しかし……アルカノイズでなければ、あれは一体何なのやら……1度戦って情報収集したいところだが、生憎オートスコアラー達は今こちらにいない。
どうしようもないな。」
自分の作った人形達がいるなら、まず戦わせて情報を得るのが得策なのだが、材料が足りない上に作る為の時間も足りていない為、無理なことだと認識していた。
「……誰か近づいてくるな。1度離れるか。」
溜息をつきながら、どうするか考えていたキャロルだったが、近くから何人かの走っているような足音が聞こえていた。
ジーンノイズに追われている一般市民かとも思ったが、仮にそうだとしたら自分が巻き込まれる可能性が高い。
未だよくわかっていないこのタイミングで、敵に捕まることだけはキャロルはしたくなかったのだ。
「ここですか?」
「はい……この波長、ダウルダブラのファウストローブ。キャロル!いるのでしょうキャロル!!」
エルフナイン達は、次の仲間を探すために目的地にたどり着いていた。
そこには、隠れているとはいえキャロルのいる場所だった。エルフナインは、キャロルの名を叫んで呼ぶがキャロルから反応はない。
「僕です!エルフナインです!キャロル、今そこにいる貴方なら気づいているかもしれませんが、あなたはこの世界の住人ではありません!平行世界、完全聖遺物であるギャラルホルンの力で平行世界から訪れた1人です!
キャロル、貴方にはプライドが邪魔をしているから簡単には首を振れないかもしれませんが、ここは1度協力して━━━」
言い切る前に、キャロルは物陰から出てきてエルフナインの顔を睨んでいた。
ここから、ここから話し合いが始まるのであった。