「……ん、んん…!」
キャロルは悪夢を見ていた。それは昔々の話だった。父親が魔女裁判により火刑に処されてしまい、自分が独り身になってしまったあの日のことを、悪夢として思い出していた。
だが、自分の記憶とその日見た夢はとても乖離しているものだった。
「キャロル…分かってるね?暮らしていく以上は……」
「は、はい……」
まだ幼かった自分。未だ精神が子供のままだった自分に、息を切らしている大人達の手が伸びてくる夢。
実際には、そんなことはされていない。父親の家系はいないことも無かったが、関われば次は自分が魔女として裁かれてしまうことを恐れて、誰も知り合いだと今の事は無かった。
そして同時に、同じ理由で一般人でさえもキャロルを庇おうとは思っていなかった。事実が偽であったとしても、目の前の状況だけで…下手をすれば嘘八百の口車に乗せられてたかが一般人でさえも魔女として処刑される時代だったのだ。
「ん、んむ…ちゅる……」
しかし、夢で見ている自分はその大人達に手を出されていた。その幼い体に欲情し、今だ白さを保っている肌に汚れた白を吐き出す……生きるために、
それを第三者の様な目線で本人であるキャロルが見ていた。
「はぁはぁ……うっ!」
「ひゃっ……!」
未だ浮きでる肋に乗ったかのような乳首、性器としても完成されていないそれを大人達は嬲る。
その光景を見ながら、傍観しているキャロルはこう考えた。『果たして、今の自分と目の前の自分はどちらが人生を楽しく過ごせていたのか』と。
「━━━確信してみる?」
「っ!?」
目の前から……
「なんだ、お前……」
「貴方の本能、本音……望んでいること。今こんな夢を見ているのは、貴方がそれを望んでいるの。」
「ふざけるな、俺がこんなことを望んでいるだと?」
「折角だから見せてあげる……もし、貴方が汚い大人達にこうやって嬲られながら生きていった場合の結末を……」
もう1人のキャロルは、次の瞬間姿を消した。一切そんな素振りもなく、瞬きの一瞬で消えたのでキャロルは困惑して辺りを見渡すが、何も見当たらない。それどころか先程までいたはずの小さなキャロルまで居なくなっていた。
「なんだ、何なんだこの夢は……っ!?」
気がつくと、キャロルの目の前に新たな映像が現れる。そこには、体が大きくなったキャロル…ダウルダブラを身に纏う際になる、成長したキャロルの姿をした『何か』がいた。
その何かは、首に首輪をつけられていて、それ以外に身に纏うものは存在していなかった。
「おー、まだいたのかこいつ。」
「よく生きてるもんだな……耐久力だけはある感じだな。」
「初めから壊れてるやつに、耐久力もクソもあるか……よっと。」
「あひいっ!!」
「グッ!?」
もう1人のキャロルに、近寄ってきた男が陰茎をキャロルの膣に入れる。一切の前戯は無かったが、初めから濡れていたようで問題なく入っていた。
そこまでならただ不快な映像を魅せられている程度で済んでしまうが、突如としてキャロルに異物感が現れる。
場所は膣……そう、目の前の男が入れているものと同じものを今感じとっているのだ。
「な、なんだこれ…中に、何か…んん!?」
しかも、初めて入れられたので痛みを伴うならともかくとしても、今のキャロルには痛みは全くと言っていいほど入ってこなかった。
そして、続け様に男達はキャロルを輪姦し始める。キャロルには、少しの感覚もバッチリ感じとっていた。全てが、愛おしく気持ちいいという快感に包まれて。
「んぶ、んぶぅ……!」
「全く、こいつが村に配置されてよかったな。性欲の処理にこまりゃあしねぇ。
にしても、ガキは出来ねぇの?なんかえらく体つきがいいんで、出来ちまったらできちまったでそのあとが面白そうだがよ。」
「ふー、ふー……!」
目の前にいるキャロルは、大人の姿のキャロルである。故に、胸の大きさなどは全くと言っていいほど違うのだが、揉まれた時の感覚は1mmのズレもなくきちんとキャロルは揉まれている快感を味わっていた。
アナルにも膣にも入れられて、まるで道具のように犯されている自分を見ながら、全く同じ快感をキャロルは味わっていた。
「ふ、うぅぐ……!」
虚空を睨みつける。そこには自分が犯されている風景しか見えない。だが、目の前で犯されている自分が自分と同じ感覚を味わっている…それが、キャロルにありえないものを見せる。
屋根が見えた、小屋が見えた、そして目の前には男達がいた。
「っ!?」
正しく、犯されている自分が見えている光景そのものだろう。しかし、自分の手や口は自分の思い通りに動かせない。ただ犯されている光景を延々と五感全てで味わうしかない。
『これはおかしい』とキャロルは考える。幾らなんでも夢にしては具体的すぎる上に、意識もハッキリしていて感覚もはっきりと感じとれているからだ。
「んぶ、じゅるるるる……」
しかし、夢から覚めるという行為を頭も体も許してはくれない。なすがままされるがままに体は勝手に動いて、男達の射精を促そうとしていた。
『止めろ、止めてくれ』と懇願したかったキャロル。言葉を発することも出来ないまま、男達の射精が近いことを悟っていた。
「んぶ、ううう!」
口の中に、膣の中に、アナルの中に……キャロルは射精される。男達はそれで満足したのか、はたまた飽きたのかはわからないがそのまま小屋から出ていったのであった。
「━━━はっ!?」
キャロルは目を覚ました。勢いよく起き上がり、そのまま一気に警戒態勢に入って念入りな周囲の確認を行う。
だが、特に何もいなかった。文字通り…あれはただの夢だったのだ。
「…いや、そんなはずはない。あんな、あんなあからさまな……」
しかし、体には特に目立った痕跡は残っていない。どこからか侵入したジーンノイズが、寝ている自分の体をまさぐっていたのではないか…とキャロルは思ってたが、どうにもそんなことは起こっていなかったようで、膣の中にもアナルにも何も残っていなかった。
「……体に、異常はない…くそっ、変な夢を見たせいか頭が痛い…疲れてるのか…?全く頭が回らん……」
頭を抱えながら、キャロルは再度横になっていた。軽く仮眠するつもりだったが、こうなれば時間いっぱいまで寝る事を考えた。そうそう同じ夢を見ることは無いだろうと楽観的な発想をして……
「……なんだ、隣で寝ている私の身にもなれ。」
「…いや、すまん……」
少し呆れたような物言いだったが、フィーネが気にしてキャロルに声をかけていた。
「……疲れているんだ、お前も横になれ。ここに敵が来たら、さすがに分かるだろう。」
「……あぁ、そうだよな…」
改めて、キャロルは自分達がいるところを確認する。とあるホテルの一室、親子ということにして部屋をひとつ借りたのだ。
高級ホテルという訳でもないが、階層がそれなりに高いところを選んでいるので、侵入するにしてもしないにしても扉か窓から侵入しなければならない。
さらに、万が一侵入者が来た時のためにキャロルの錬金術でこの部屋だけに警報がなるようにしてあるのだ。そう簡単には来ないだろう。
「……念のために、明日はもう少し離れたホテルで寝てもいいかもしれないな。」
囮とはいえ、流石にこの位置は近すぎるのかもしれない。だが、あまり離れるのも宜しくないのも事実なので、キャロルはどうすればいいか悩み始める。
「……まぁいい、明日考えるか。所詮夢は夢だ……同じのを数度見ない限り、大袈裟にすることでもないだろう。」
そう言って、キャロルは横に寝転んで再び眠りにつき始める。この時のキャロルは気づいていなかった。嫌な汗で少し滲んでいる自分の体、その汗とはまた別に『耳』が湿っていることに……
キャロルはその日はそれ以降夢を見ることなく、きちんと起きることが出来ていた。
そして、そのことからやはり夢はただの夢だと断定して気にしていたことも頭の隅においやって気にしなくなっていた。
「さて、今日はどうする?」
「そうだな……攻めてみるか、やつの基地に。」
「正気か?」
「当然、正面突破で乗り込むわけじゃない。適当なところに遠いところから攻撃を仕掛ければいいだけだ。
一度か二度……その程度でも、向こうの警戒を煽るのにはちょうどいいだろう。それを見て、やつの警戒度合いを見る。それと、どこから侵入すればいいのか、などもある程度は操作できるだろう。」
「それは、向こうがまともであることが前提条件の話だが?」
「まぁ、それもそうか。」
フィーネとキャロルは、軽口かそれとも本気で言っているのかわからない会話を続けていたが、ふとキャロルがふらついているのがフィーネの目に止まった。
「おい、どうした?」
「…?何がだ?」
「体がフラフラのように見えるが。」
「何を言っている、俺は至って正常だ。」
キャロルが何かを隠している様子や、嘘を言っている風には聞こえなかった。本気で、そう考えていると言わんばかりに真面目な顔になっていた。
「……そうか、そう思うのならまぁいいんだが。」
「まったく……一体何を言って━━━」
ふと、キャロルは目をこする。何か、遠くに見えた気がしたからだ。それが、どうにもキャロルは気になってしょうがなかった。
「……おい、あそこになにか見えないか?」
「……どこだ。生憎、私の目にはこの時代の建造物ばかり目に入る。
別段、気になるようなものは全く見えないが……」
「…いや、なら1人で確認してくる。何も無ければ、すぐに戻ってくる。」
そう言ってキャロルは部屋から出ていく。フィーネは、少しキャロルのことを目で追いながら、部屋を出てから少しだけ考える。
「……昨日、いや今日か…夜遅くに何を起きたのかと思っていたが……明らかに様子がおかしいな。
少し、追いかけてみるか。」
キャロルが出たしばらくあとに、フィーネは彼女を追いかける。明らかに異常だと思えてくる彼女の行動に、少しだけ危機感を感じながら。
キャロルは、1人ダウルダブラをまとって空を飛んでいた。目に見えたヤケに気になるものを追いかけて、そしてそれが見えた場所に足を下ろした。
そこには、1人の男性がいた。
「っ…!?パ、パ……?」
「……」
その後ろ姿は、キャロルの父親のそれだった。いや、後ろ姿だけではなかった。動き方のくせ、微笑みかけてくる表情、そして、漏れる息などその全てが父親と瓜二つだった。
「パパ……パパ!」
キャロルは駆けていく。そして、そのままその男にダイブするかのように抱きつく。
しかし、キャロルの父親は火刑にあい死亡している。その事は、キャロル自身もわかり切っているはずなのに、今の彼女はそれを気にも留めようとしていなかった。
「パパ、パパ……!」
顔を擦り付けるキャロル。その匂いも、小さな頃嗅いだ父親の匂いそのものだった。
そして、そんな光景を見ながらフィーネが遅れてやって来ていた。
「……キャロル、何をしている。」
「……うるさい、俺とパパの邪魔をするな。」
「パパ?そいつがお前のパパ?冗談を言うな。私がお前の父親の顔を知らなくても、それがお前の父親じゃないと断言出来る。
「……お前こそ、冗談を言うな。人に化けたノイズとでも言うつもりか?ならば、体臭は一体どう説明が付けられる?」
キャロルは弦を弾く。それは、ダウルダブラを身につけた彼女が行う攻撃行動だった。
同時に、フィーネも蛇腹剣を振るい始める。
突如始まった同士討ち、真実は一体、どちらにあるのか。それは、勝った者が決めることである。