「切歌!!」
「おや、もう来たのか。」
「早かったわねぇ……ってあら、例のピンクの子がいないわ。」
「大方、あの根暗女にでも捕まったという所だろう……私達には特に関係ない話、というわけだな。」
リディアンに、錬金術師達の手によって一室に放置されていた切歌。切歌を助けるためにマリア、翼、響の3人はリディアンに来ていた。
「切歌を返しなさい……!」
「今の貴方の力でどれだけ私達と戦えるか試してみる気かしら?」
「キャロルのような錬金術を持っていたとしても……! 」
短剣を構えるマリア。その姿を見て、カリオストロとプレラーティはほくそ笑む。
今ここで自分達がやられることなんて、一切考えていないと言わんばかりに。
「あーし達は別に直接戦うことはないわよ。
ただ……ちょっと面白いことを試してみようと思っているの。」
「なんだ、今回はお前が出るのか?」
「あーしなら、失敗しても持ち直せるもの。武闘派舐めないでよね。」
そう言ってカリオストロは、プレラーティからコアを一つ預かる。何をするのかと、マリアは首を傾げたがその答えはすぐに出た。
「えーっと……『ギアセット☆』!」
カリオストロのその声一つで、カリオストロの体にコアから噴出したノイズがまとわりついていく。
ノイズを一体纏わせている、というのがマリアの感想だった。
「ふふ、歌を一切必要とせずにシンフォギアの力を十二分に発揮出来る……
「しかし単純にギア二機分の力だ……一筋縄ではいかないと知りなさーい!!」
「……奪ったギアで、どれだけ戦えるのか!!」
冷静に、しかし確実に戦闘不能にするために勢いよく襲いかかるマリア。カリオストロはその動きを見切っているのか、何度もかわしていく。
「くっ……ちょこまかと……!」
「ほらほらもっと頑張りなさーい!!」
「おい、カリオストロ。あまり建物を壊すのは……聞いていない、という訳だ。」
部屋の壁を破壊して、マリアとカリオストロは外へと出る。カリオストロは、力を試しているかのような……そんな印象を受けた。
「それじゃあまずは……こうかしら!!」
『MEGA・呪りeッTぉ』
カリオストロの腰のパーツが変形し、中から大量のミサイルが射出される。そのミサイルは飛んでいる最中に、先頭のパーツが外れて中から巨大な鎌が現れる。
その鎌は、飛んでいる最中に分裂して、まるでクワガタのような角のミサイルが飛んでいくようだった。
「くっ……!?」
「あら、こんな感じになるのね……」
「叩き落とす!!」
マリアは自分の装備である蛇腹剣を分裂させて、幾つもの短剣に変形させる。
そして、ミサイルに向けて一本一本打ち込んでいく。それだけで、ミサイルは爆散していくが、カリオストロ本人は、今だ無傷だった。
「はぁぁぁあああああ!!」
「あらー、熱血なのはあまり好きじゃないのよ、あーしって。だから……もっと激しくしちゃう!!」
『GIGA・邪刃ウォttKKK』
カリオストロは手甲を変形させて、ボウガンをふたつ作り出す。そこからビーム状の矢を無数に放つ。
「この技は……既に見知っている!!」
クリスも同じ技を使う。ビームボウガンによる、広範囲攻撃。狙い撃ちの必要性がないために、相手に避けるという選択肢を与えない技。
そんな技の最適解というのは、つまり防ぐ事である。
「あら、簡単に防がれちゃった。」
「仲間の技だけで勝てるとでも……!」
カリオストロが放ったボウガンの矢を、完全に防ぎきるマリア。しかし、カリオストロは全く意に介してないどころか、微笑んでいてすらあった。
「何を笑っている!!」
「ふふ、何でもないのよ?ただ、貴方のような正直者を見るのが楽しくてね。」
「何を……っ!?あ、足が……」
いつの間にか、足を拘束されていたマリア。マリアの足を拘束していたのは、先程カリオストロが撃ちマリアが防いだビームボウガンだった。
「それ、ただのビームじゃないのよ〜?いわゆるただの囮で……拘束するための技☆」
「くっ……」
「あ、剣を動かすのも無理よ〜?根元からガッチガッチに固まってるから、ちょっと動かすどころか……バラバラにして一本だけでも使えるようにするのも、無理よ。」
話している間に、カリオストロの腰パーツが再び変形していく。その形は、まるでギロチンの様だった。
「これを、こうして……」
ビームボウガンから、それぞれ1本ずつレーザーがマリアに向けられる。その後、ビームボウガンは変形して三脚を表し、その上に変形した腰パーツがセットされる。
「……あなたが今ここで降伏してくれたら、このギロチンは発射しないでおいてあげる。」
「慈悲ってわけ?生憎、私はそんなのを受ける気は無いわ。」
「あら、そう?なら早く死になさい?」
カリオストロが、ギロチンに蹴りを入れる。その勢いでギロチンは発射され、マリア目掛けてビームが示した軌道に乗って、その体を裂かんとして飛んでいく。
「……はぁっ!!」
「あら?」
マリアが飛ばした短剣。それがマリアの元に戻ってきて、拘束を切り裂く。
これはカリオストロも予想外だったらしく、ギロチンが届く前にマリアはその場から脱出する。
「思いのほか苦戦しているというわけだな、カリオストロ。」
「援護はいらないわよ〜……こうすればいいもの!!」
『OMEGA・名ァSりぃ来M』
「さぁ!これは回避出来るかしら!?」
1つの巨大なミサイルが、カリオストロの背中に現れる。それは、上空に向けて発射されるが、突如ミサイルの装甲が剥がれ、中から小さな鎌が現れて、回転しながらマリアに向かって飛んでくる。
「こんな、大量の……!」
「数がどれくらいあるか分からないけれど〜、回避し続けられる数ではないわよね〜?」
「舐める、なぁァァァァァ!!」
『HORIZON†CANNON』
右腕の装甲を変形させて、砲身が現れる。そこから極太のビームを射出して、飛んでくる鎌を消し飛ばしていくマリア。
だが、あまりにも数が多いために、それにかかりっきりになってしまう。
「ボディがガラ空きよん!!」
「がはっ……!?」
空いているマリアの腹に、カリオストロの拳が入る。マリアの鳩尾に入れられた拳は、マリアの意識を軽く持っていく。
「ぐ、は……!」
「あら、今の受けて立ち上がるの?」
「切歌を取り戻して……調も取り返す…っ!!そのためにっ!!抜剣、オールリリース!!」
ペンダントを3回押す。それはイグナイトの全出力を出すために行う行動。行動時間は加速度的に減り、更に自身の体にかかる負担も恐ろしいものだった。
だが、それほどまでに取り返したいのだ。
「銀の左腕に━━━」
歌い始めるマリア。だが、その歌はすぐに中断されてしまう。マリアとカリオストロの間に、突如爆発が起こったのだ。
「な、何!?」
「何なのよもう!!」
地雷などの、地面にあらかじめ仕掛けられていたようなものではなく、何者かの攻撃。攻撃の主に意識がいったふたりは、攻撃された方向に目線を向ける。
「……マリア、どいて!!」
「あ、あら?桃色ツインテールちゃん?」
「調!?なんでこんな所に……」
なんと、そこに居たのは調だった。その身には、シュルシャガナ……とは似ている別のギアを身につけており、そして彼女の後ろには何十、何百体もの黒いノイズがいた。
「……そのノイズ達、イグナイトの力持ちかしら?しかも、ノイズギアまで身につけて……音女ちゃんからのプレゼントかしら?」
「……」
「調、何を……」
「ごめんなさいマリア……切ちゃんと、先輩を助けるためなの……!」
『Gatrandis…babel ziggurat…edenal……』
「これは……」
「絶唱!?調、止めなさい!!」
『Emustolronzen…fine el baral zizzl』
しかし、調は止めることなく歌詞を紡ぐ。絶唱…装者がシンフォギアの力を発揮させる技だが、これを行うとバックファイアにより体に深いダメージを負ってしまう。
過去、元ガングニール装者である天羽奏も、絶唱による一撃で体が炭化してなくなっているのだ。
『Gatrandis babel ziggurat edenal』
『Emustolronzen fine el zizzl』
しかし、歌いきっても調の体に何ら変化は起こらない。変化が起こっているのは……周りのノイズ達だった。
「な、何!?ノイズ達からオーラみたいなのが……」
緑、赤、桃色の肉眼で判別できるほど濃いオーラが、カリオストロの本能に警鐘を鳴らしていた。
「貴方……何をしたの……」
「……」
調は答えない。口には出さない……が、彼女が音女に捕まったあとの事を思い出していた。
「……つ、月読調ちゃん…でいい、よね?」
「……」
調は頷く。その体は拘束されておらず、ギアを取り上げられているだけで、それ以外は特に何もされているわけではなかった。
「あ、貴方…暁切歌ちゃん……を助けたい……?」
「何か、あるんですか。」
調は音女を睨みつける。それだけで腰が引けてる音女だったが、何か決意しているのか、目線を合わせながら調と話を続ける。
「しゅ、手段はある……あな、あなたが失敗しない限り……は、だ、大丈夫だと思う……
あ、貴方のシンフォギアを取り込んだ……こ、このノイズ。こ…これに、レコーダーを……ほ、他のノイズには…ワイヤレスイヤホンを、仕込んだ……」
「レコーダー…?ワイヤレスイヤホン…?」
「あ、あとは貴方が歌うだけで……お、同じように他のノイズたちも、シンフォギアをう…歌って……るような状態になる。
あ、あなたが親機で、他ノイズ……が子機…」
「……要するに、私が歌えば貴方の作ったノイズ達が同じように強くなるってことですね?」
「か、簡単に言えばそういうこと……も、もし暁切歌を取り返してくれたら……雪音クリス、暁切歌は……と、特別に苗床にしないであげる。」
調は、疑問に思った。自分を捕虜にしているはずのこの女性が、捕虜である自分に対して有利すぎる情報を出していることを。
嘘であっても、調は切歌を助けたいと決意しているので、切歌を条件に出されれば、なんでもする覚悟があった。
「……貴方は、そんな事をしなくても私を無理やり従わせればいいでしょう?
そもそも、私をノイズ達の慰み者にする為にここに連れてきたんじゃあないんですか。」
「さ、流石に母体は選ぶ……し、しないわけじゃなかった……けど、わ、私が作ったものを乱用されるのは……なんか、腹立つ。」
爪を噛みながら、心底腹が立っているのが分かる調。しかし、それは彼女の望んでいる答えではなかった。
「私が聞きたいのは……私に出す条件に、貴方のメリットが全くないということです。」
「……別に、初めからメリットもデメリットもない。わ、私は確かに装者達をつ、捕まえたいとは思ってる……けど、そ…それは別に苗床が欲しいっていう……のとは、繋がらない。」
そう、音女に取っては捕まえるまでが大事なのであって、捕まえて苗床にするまでが目的ではないのだ。
『運良く装者達が女の子だったからついでに苗床にしたりしようとした』程度でしかない。
「……でも、女の子とエッチなことはしたい。というかさせて恥ずかしがらせたい。」
「……」
ドン引きしたが、しかし少なくとも希望があるのはこちらだった。他の装者を攻撃しろ、と言われないだけマシなのである。
「……そ、それと…途中で逃げ出すとか考えないように。私の命令ひとつで……ノイズ達は貴方達に牙を向ける。」
「……分かりました。」
音女から出された条件は3つ。
1つは『切歌を連れてここまで戻ってくること』
もう1つは『他の装者と情報共有(アイコンタクトなども含む)をしないこと』
最後の1つは『初めから絶唱を歌うこと』
の3つであった。最後の1つは、先程の親機子機の下りで音女が予想した『ジーンノイズの絶唱による強化』をついでに実験するためのものでもあった。
実際、絶唱による強化は、大成功だった。ノイズ一体がギア3つ分の絶唱を使っているのだから。
そして、それらはイグナイトも含まれていた。
「……切ちゃんと、先輩の為に……!倒す!!」
調は、
補足
・カリオストロ
ジーンノイズを纏ってマリアと戦闘を行う。イガリマと、イチイバルの両方の性質を持つ。
・月読調
同じくジーンノイズを纏う。しかしこちらはカリオストロのとは違い、シュルシャガナも追加されている。切歌を守る為には、音女の方が今のところと判断した。しかし、いつかはちゃんと救出するつもりである。
・ジーンノイズ
音女側のジーンノイズは、シュルシャガナを吸収、更に絶唱により更に強化を重ねられる。