フィーネは、リディアンに攻め込んでいた。その理由としては、リディアンに乗り込むことで敵を倒すのと、それが果たせなかった場合でも味方になれるような人物を解放していけば、戦力になると考えたのだ。
但し、乗り込むだけでも多大なる力を使わねば侵入すらままならないということ、それを理解しているフィーネは、ジーンノイズすら反応できないほどの、ソニックブームが起こるほどの速度でリディアンへと無理やり乗り込んだのだ。
当然、そこまで体を張ると思っていなかった音女は、逃げ惑いながらジーンノイズのノイズギアを起動。
だが、それでもまだ力が追いついていないため、体についているノイズギアのパーツのほとんどを取り外してそれらを一つにまとめて奇っ怪な生物を生み出したのだ。
それを盾に音女は逃げて、フィーネは道を塞ぐ聖遺物で出来たこの生物に対して、戦うことになったのであった。
「……腹からはシュルシャガナの丸鋸、翼は天羽々斬、胸にイチイバルに尻尾はガングニールとアガートラーム……手足はガングニールとイガリマ。詰めに詰めたかのような生物だな……」
しかし、力は本物である。遠近における万能さを宿しているのだ。それでいて、ほかのギアの弱点をホキのギアで補うと言ったことも出来ている。
思っている以上に、この生物は面倒なのだ。
「だが、それでも今は進まねばならないのだ…!ふん!!」
手に持っている鞭のような武器を振るって、聖遺物生物に攻撃を仕掛けに行こうとするフィーネ。だが、どれだけ素早く連続で振るっても聖遺物生物はすべてをはじき返してしまうのだ。
「ちっ……ならば、これで!!」
「っ!!」
武器の先にエネルギーを貯めて、それを聖遺物生物に向けて放つ。近くにいる者達が犠牲になりかねないほどの威力だが、弾き返したとしても余程の硬さが無い限りは、触れた部分は削られてしまうだろう……そうフィーネは考えていた。
聖遺物生物もそれを察したのか、弾き飛ばそうとせずに翼で己の体を完全に包み込んで防御体制に一瞬で移行する。
「クッ…!?」
そして、爆風が起きる。1部が吹き飛んでしまったが、それでもまだフィーネはあの生物が生きているのでは?と予測していた。故に、警戒は怠らずにむしろ最大限よりも上を目指せるほどに警戒していた
「……krrrraaaa…」
「……まさか、無傷とはな。そこまで上手だと、もはや誰かを相手にしているのかすら分からなくなってきそうだ。」
苦笑いしながら、舌打ちすることすらなかった。今の攻撃で傷を負わないことを考えると、フィーネの全力の攻撃すら致命傷にすら届かないだろう。
「だが…!それならば、戦い方を変えればいいだけ!!」
武器を振るって、フィーネは聖遺物生物の隙間を縫って壁に武器を突き刺した。それが引っ張っても取れないほどに強力にめり込んでいると確信してから、フィーネはそこを抜けるためにジャンプする。
「っ!!」
「ぐぁっ…!?」
だが、今までどれだけ強力な攻撃を受けても壊れる気配のなかった武器を、聖遺物生物は簡単に切り裂いた。
ジャンプしていたため、反動であらぬ方向にフィーネは吹き飛ばされてしまう。
「ばかな…これを破壊するなど……!」
単純なシンフォギアの攻撃力であっても、破壊されることのなかったこの武装。しかし、相手にとっては紙も同然らしくバラバラの粉々というわけである。
「……いや、まだだ。」
フィーネはじっと聖遺物生物を見据える。フィーネの速度に普通についてこれていることから、恐らく聖遺物生物自身の速度も尋常ではない速度があるのだろう。
となれば、フィーネはまたあの自分を傷つけるほどの速度を出さなければいけないという事になる。
「それでも…!」
だが、それでもフィーネは諦めようとはしていなかった。この先に全ての元凶がいるのだ。逃がすわけが……ない。
フィーネは、肉弾戦の構えをとる。
「さぁこい聖遺物の化け物。まだまだ私の相手をしてもらうからな。」
不敵な笑みを浮かべて、フィーネは聖遺物生物を視線から離さない。それに対して聖遺物生物は変わらずフィーネを見ていた。
しかし、そこに油断も隙もない。ただ淡々と相手を倒すことにのみ特化させた兵器は、どんなものが相手でもそれを崩すことは無いのであった。
「ぜぇ…ぜぇ……ぉえ……!」
ギアありき、それ以前にジーンノイズの体になっているのに音女は走りすぎて吐きかけていた。
ジーンノイズになってから、飯いらずになったおかげでまともに飯を食べていないはずなのだが、人間だった頃の名残なのだろうかと本人もどうでもいいと感じていることを考えていた。
「……撒けたかな…いや、流石にあれを倒されたら私もう打つ手ないんだけど……」
酸欠になっているような気がしたが、本当にただの気の所為だったのか少し落ち着けば、先程までの疲れが嘘のように無くなっていた。
この体には得しかないと、しみじみ感じていた。
「……けどまぁ、どれだけ集めようとシンフォギアはシンフォギア。完全聖遺物レベルの賢者の石こそ取り込んでいるものの、2つの聖遺物を持っている彼女はかなり厄介だよね……」
しかし、あれ以上の手が音女には思いつかなかった。だが、こうして撒けたという事は、少なくともフィーネの中にあるジーンノイズの洗脳を動かせるということになる。
初めから警戒しておいてやればよかっただけの話なのだが、油断してそしてその隙をつかれてしまっているのだ。ある意味で自業自得だと音女
は反省をしていた。
「さて、とりあえず早速……」
辺りを見回して、周りにフィーネの姿も生み出した聖遺物生物の姿もないことを確認してから、音女は少しだけ集中する。遠隔で複雑な命令を出すのは、なかなかに集中力がいることのようだ。
「……『ギアの解除』『完全聖遺物の放棄』『四つん這いになってグラウンドまで来い』……って感じかな。」
この命令に対して、従ったふりをされてしまったのならば最早完敗だろう。命令が聞かないことを意味するのだから。
ふと、音女はフィーネに対して少し疑問を抱いていた。恐らく彼女はいくつもの作戦を考えただろう。
しかし、どうしてあの不意打ちが確実に成功すると思ったのか…それだけが謎なのだ。いや、手違いやミスなどによって失敗に終わったのだとしたら簡単な話なのだが、あまりにもミスをしているようには見えなかったのだ。
「……まさか、失敗していないフリとかじゃないよね?なんか怖くなってきたな……とりあえずグラウンドには出ないでおこっと。」
ジーンノイズにグラウンドの監視を任せて、音女は別のジーンノイズを使って自分の通ってきた道を監視させていく。フィーネが命令に従わなかった場合、そのまま逃げる。従っているのならばそのまま部屋に向かう。
どちらにせよ警戒が解けるまでは会うことは無いだろう。
「……あー、でもこれエリクサー症候群起きる気がするなー…」
エリクサー症候群。要するに、とあるアイテムを大事に思い過ぎた結果使うことがないまま、ゲームを終わってしまうといった状態のこと。
少し意味合いこそ違ってくるものの、疑心暗鬼が募りすぎたが故に一生会うことがない可能性だってあるのだ。
「ま、その時はそのときでカメラの映像とかで確認しとけばいい話かな。最悪殺ればいいし。」
溜息をつきながら、音女は部屋へと戻っていく。特に信じてもいないのだが、この決着は神のみぞ知ると言ったところだろう。
恐らくは自分が勝ったと思うが、警戒するに越したことはないのだ。
「……道中、爆発音とかも聞こえなかったあたり本当に戦いは終わったのかな?
とりあえずグラウンド確認してみようかな。」
監視部屋に到着した音女。ひとまず少しだけ警戒を解きながら、グラウンドを監視しているジーンノイズの視点を写す。
写った映像には、ちゃんと全裸になっているフィーネがただ呆然と四つん這いになっていた。
「……追加でもうひとつ命令言ってみよっか。『犬のように片足を上げておしっこをして』」
「………」
黙ったままフィーネは片足を上げて、少し力んだ後にその股から小便が流れていき始める。
これは本当に勝ったのか?音女はいまだ警戒を解かないまま、しかしその警戒をほんの少しずつ無くしていく。まだ彼女の中の危険アラームは、鳴り響いたままである。
「……じゃあ『そこのジーンノイズと全匹セックスして』」
命令を出す音女。その場にいるジーンノイズは約10匹。ジーンノイズに満足というものは無いので、打ち止めなくそのまま永久に続けられていく。
完全に壊れるまでに本来ならば、どのくらいの時間がいるだろうか?1日2日では数が足りないだろう。
10匹ほどいるのだから、激しく責め立ててやればずっと犯されていくのだろうが、ある程度予測を立てておかないとだめだろう。
「栄養に関しては、逐次ジーンノイズから飲まされるから問題ないとして……1週間…いや、やっぱりもうちょっと多めに見積って2週間まずは犯させようかな。
流石にそこまでやって、まだ理性が残っているようなら、崩すのは無理に等しいだろうし。」
2週間犯されて、まともな精神状態を保っている人物はいないだろう。しかし、目の前にいるフィーネという女は気が遠くなるような時間を生きているようなものなのだ。
警戒するに越したことはない。ただ2週間待つだけではなく、2週間経った後に彼女の精神が壊れていることの証明をしなければならないのだ。
「……一応影武者作っておこうかな。目隠しをしておいて……気配も誤認させるようにしないと……」
そして、ブツブツと独り言を喋り始める音女。本当の意味での最後になるかもしれないのだ。ここで失敗して水泡に帰す…という結末だけは、犯してはならないのだ。できる限りの作戦を、思いつく限りの作戦を。
影武者、気配誤認、足りなければ調教追加、周りには武力制圧に長けさせたジーンノイズを配置……などといった作戦を立てていく。
「……まぁ、ここまでやって壊れてなかったら……やっぱり命運尽きてるよね。そこが私のゴールですってか。」
皮肉めいた笑みを浮かべて、音女は作戦を紙に書き記していく。年密な作戦計画は立てておいて損はないだろう。
「……ひとまずこのカメラの映像から全て察しないと……ここが1番重要なポイントなんだし、私もしばらくぶりの本気を出さないとね……!」
じっと流れてくる映像に睨みをつける音女。その映像の中では、既にフィーネがジーンノイズ達に犯されているシーンだった。
だが、生まれた疑心暗鬼は簡単に消せやしないのだ。素直に簡単に、抵抗なく呆気なく……そんな状態で犯されているのがご都合に見える程には音女は疑ってかかっていた。
だが、あとから分かったことではあるのだが、やはりこの時点でフィーネは完全に音女の支配下に送られており、音女が警戒しているようなことは一切全くなんの関係もない、という事なのであった。