ベイビーからアダルトへステップアップしました 作:右野向左衛門
「あなたの彼氏は、ひょっとしてゲイなの?それとも不能なの?」
「4年間も付き合っていて、未だにセックスがないこと自体信じられない」
「学内にはステキ男が一杯いるのに、なんでそいつにこだわっているの?」
頭の中で、クラスメートたちの声がぐるぐると回っている。
「ナツ、がんばりなさい」
ホームステイ先のパパとママの励ましの声が、ワタシの頭の中で虚しく響く。
以前から人の気持ちにニブいところがあるとは思っていたけど、ここまでとは!
異国、そしてこの家にいるのはワタシとあいつの二人きり。しかも夜遅くにこんな状況になれば、どんなにどんくさいヤツだって察しがつくだろうに。
悔しい!
悔しい!
悔しい!
この4年間は、いったい何だったのか?
怒り憎しみというレベルを超え、ただただ悲しかった。
そう思うと涙が出てきた。
こんな展開になるのだったら
「あとは心の準備とかね」
なんて言うんじゃなかった。
わなわな震えていると、やっとヤツのいる部屋のドアが開く。
今さら遅い!もっと早くワタシの心に気づいてよ!
ワタシの頭は、いつの間にか下を向いていた。
あいつに、心中を悟られたくないと思っていたからだろう。
ワタシの様子を見て、さすがの唐変木も顔色が変わった。
「なっちゃん、ちょっと待ってて。僕も準備するから」
と言い訳する彼の姿を見て、ワタシは心底がっかりした。
百歩譲って、パジャマを着ていたのは許すとしよう。
だがベッドの上に置かれていたのは、対戦相手の細かいデーターの資料だった。
そりゃぁさ、アンタは試合しにやってきたのだろう。
ついでに、ワタシの家に寄りましたってことなんだね
でも、さ・・・・
でも、さ・・・・
でも、さ・・・・
アンタのワタシに対する気持ちは、この程度だったんだね・・・
部屋の中からバタバタとものを片付ける音が聞こえる。
準備ができたのだろう。あいつは部屋の中からドアをノックした。
「なっちゃん、準備ができたよ」
同時に、ドアが静かに開いた。
遅いんだよ今頃。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま部屋の中に入り、頭を上げると・・・
そこには、素っ裸のエーちゃんがいた。
生まれてはじめてみる、アイツの生まれたままの姿。
驚いて彼を見つめると、もっと驚く展開がワタシを待ち受けていた。
ヤツはワタシを自分のそばによせると
「愛している」
と耳元で囁き、唇にキスをすると、ワタシが纏っていたバスタオルを外した。
そしてまじまじと、ワタシを見つめた。
ねえ、ワタシの水着姿を見たことあるんだから、どんなスタイルをしているのか想像がつくだろうと心の中で毒づいたあたしは、一瞬でその認識を変えた。
あいつが知っているワタシの体型は、高校時代のそれだ。
つまり、今のありのままのワタシを見るのは、これが初めてなのだ。
あいつもそのことに気がついたようで、まじまじとこちらを見ている。
慌ててワタシは、腕で乳房を隠した。
そんなにじろじろ見ないでよ、恥ずかしいってば!
「なっちゃんの生まれたままの姿、初めて見たよ。こんなにも豊満な身体の持ち主だったんだね」
当たり前でしょ、とワタシは心の中で毒づく。毎日厳しいトレーニングを積んでいるんだから、このくらいは当然でしょ。なんのためにワタシはアメリカに留学していると思っているんだ。舐めんなよ!と思ってワタシは視線を、このテニス馬鹿のいる方に向けた。
目の前にいるアイツの身体は、高校時代のそれとは全くの別物だった。
しなやかさとたくましさを兼ね備えた体つき。
まさに、理想のテニス選手の肉体をしていた。
気がつくとワタシは
「エーちゃんもたくましいじゃん。充実したトレーニングをしていないと、ここまでの身体にならないよ」
といっていた。
彼はにっこりと微笑むと、ワタシの掌をやさしく握り、ゆっくりと下に降ろした。
エーちゃんは生まれて初めて、ワタシのおっぱいを見たのだ。
ワタシも、エーちゃんの体つきを改めてじっくり観察する。
高校時代の身体とは、何もかも変わっていた。
全体的に、がっしりとした体つきになっている。
厚い胸板。太い腕。がっしりとした腰回り。
太ももにいたっては、ワタシのウェストよりも確実に大きく、太い。
これが、ATPツアー仕様の身体なのだ。
このくらいの身体を作らないと、世界では戦えないのだ。
彼の姿を見て、私は自分の甘さを後悔した。
そして、さっきまでワタシは「かまってちゃん」だったのかも知れないと、彼に対して申し訳なさで一杯になった。
「なっちゃん」
気がつくと、エーちゃんはワタシに呼びかけていた。
そうだ。
彼はワタシのことを、純粋に好きなのだ。
そして彼も、覚悟を決めてワタシの前に立っているのだ。
ワタシがとるべき態度はただ一つ。
「抱いて」
と、私は静かに言った。
ワタシはエーちゃんに手を引かれてベッドに向かい、彼に促されてベッドの上に横たわった。口から吐き出される息は荒く、身体はブルブル震えている。無事に事が終わるのだろうかと、内心はビクビクしている。
エーちゃんはワタシを黙って見つめていた。そして額、頬、唇の順番でキスをし、同時にワタシの髪の毛をやさしく愛撫する。もう片方の手は、ワタシの身体を愛撫している。なぜかアイツは、ワタシのふくよかな果実に手を伸ばさない。ご馳走は、最後にいただこうという魂胆なのだろうか。彼の手がワタシの背中にたどり着き、ゆっくりと動く。今まで経験したことがない快楽の世界に、ワタシは思わず声が出そうになる。そして彼がワタシのてのひらを握ってきた。感謝と愛情の気持ちをこめて、ワタシは彼の手を握り返す。
そしてエーちゃんの両手は、ワタシの乳房にたどり着く。そしてゆっくりしたリズムで、ワタシの一番大事な場所を愛撫しはじめる。彼の手が動くたびに、エーちゃんの愛情がひしひしと伝わってくる。無意識のうちに、ワタシもエーちゃんの身体を愛撫しはじめていた。時間をかけて愛撫をしているうちに、いつの間にか私たちは汗まみれになっていた。
待ち望んでいた瞬間が、手の届く位置にまで来た。
私たちは満足げな表情を浮かべ、お互いの顔と身体にキスの雨を降らせ続けた。
「エーちゃん・・・ちょっといいかな?」
ワタシは上半身をあげると、彼も同じタイミングで起き上がる。ワタシはクローゼットの引き出しを開けると、コンドームの箱を取り出した。箱の中から袋に入ったコンドームを一つ取り出し、それを彼に渡した。エーちゃんはそれが、コンドームだとはすぐわからなかったようで、じっと外袋を見つめていた。その様子を見ると、コンドームを生で見たことは生まれて初めてらしい。ということは・・・。
ワタシはもじもじとしながら
「エーちゃんがこっちに来るって知ったときから、覚悟していたの」
「覚悟?」
コイツは何をすっとぼけてるんだ?というツッコミは、ここでは言うまい。
ワタシはすぐさま
「うん!」
とクビを縦に振り
「ひょっとしたら、エーちゃんと一線を越えることがあるかもしれないと思っていた。もしそういう雰囲気になったとき、必要な道具がないと困るなと思って用意しておいた」
アメリカのカップルは、これが常識なのだよ。正式に付き合う=セックスしている。私たち半4年間行動を共にしてきたのに、ずっとキス止まりだった。おかげで、ワタシは学内で変人呼ばわりされているのを、コイツはわからないだろうな。
「本当は私、今日は安全日なんだ。だから生でやっても別にかまわないと思っている。でも初めての時は、やっぱりお互いに納得する形で迎えたいな」