※この作品はR-18です。

Monster Survivor   作:てんぞー

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2年目 冬季 Ⅱ

「かはっ、こほっ、ごほっ」

 

 咳き込みながら、ゆっくりと目を開ける。冷たい床の感触を頬で味わいつつもあぁ、と呟く。

 

「生きてるって事は……見逃されたのか……」

 

 倒れたまま呟き、ゆっくりと体を起き上がらせる。濃密な死の気配を感じ取っていた。直感だが……あれはたぶん、()()()()()()だ。認識し、そして名前を口にした所で、此方の存在を知覚したのだ。そして今も、その視線が此方へと向けられているのを自覚する。心臓を今も掴まれている様な感覚が続いている。だけど先ほどまでではない。どうして、まだ自分は生きているんだろうか……?

 

 そう思っていると、新たに感じる気配が一つ、そして熱を感じていた。一つ目は片手剣だった。灰鉄の剣と勝手に呼んでいる片手剣が、ありえない程に熱を帯びているのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()荒れ狂っていた。いや、実際そうなのかもしれない。生きている剣はモンスターハンターの上位レア武器であれば珍しくないし、神殿のメフィストフェレスと敵対するような装飾を見る限り、アレを殺す為の武具を開発していてもおかしくはない。だからこの片手剣も……今は農具として生活している他の武器も、あのおじぎ亜種を殺す為に作られたのかもしれない。

 

「おじぎ龍め……クソ、一瞬でも()()()()()()()()()って思っちまった……」

 

 それが何よりも恥ずかしかった。生きると決めていたのに、それでも極限状態で、死を覚悟した。()()()()()()()()()()()のだ。これが恥ずかしい以外のなんであろうか。まだまだ、覚悟が足りなかったのだろう。はぁ、と溜息を吐きながらゆっくりと立ち上がり、片手剣を握った。柄を通してじんわりと、体全体に暖かさが広がって行くような気がした。こんなこと、今まで一度もなかったのに。

 

 やはり、()が相手ではないと本来の性能を引き出せないタイプなのだろうか……?

 

「まぁ、それはそれとして……こっちも問題、か」

 

 ふぅ、と息を吐き、片手で頭を抱えつつ()殿()()()()()()()()()()()()()()()を感知した。此方もおじぎ龍が目を覚ましたか、或いは此方へと視線を向けた所で目覚めたのかもしれない。大体、何が眠っているのかがそれで察する事が出来た。……後の事を考えたら、何よりも先にそれを確認したほうが良いのかもしれない。

 

 恐らくは、命の恩人だし。

 

「ふぅー……よっし、まだ生きている。幽霊じゃない。なら全力で生きなきゃ……」

 

 是は、生きるための戦いであるのだから。

 

ネタめかして口にしているが、恰好付けた方がまだ精神衛生上はいい。問題はこういうネタさえ口にする余裕がなくなって来た時だ。意識して心の余裕を作る様に、ネタは忘れない。忘れられない。だから無理矢理にでも笑みを作り、深呼吸をして、メンタルをリセットする。死に引きずられそうな意識をそれでクリアリングする。問題解決。

 

「んじゃ、行くか」

 

 確かめる必要があった。その存在を。だから祭儀場を出た所で、迷う事無くフックロープを使って穴を抜けて、下へと降りて行く。フックロープは今回一つしか持ってきていないので、これを設置して行き帰りを楽にする事は、今回は仕方がないから諦めておく。そうやって崩壊している床を通って一気に二階まで降りてから階段で一階まで降りて、

 

 そのまま、地下への階段を降りて行く。

 

 ここは、武器庫や第一の祭儀場があった場所だ。上の広間程豪華でも彫り込まれてもいないが、日常的な祈りなんかをする為の場所がここにはあるほか、その一部が後から武器庫にされたように、乱雑に物が叩き込まれていた。その大半は使い物にならず、使えるものは既に運び出して拠点で運用している。だからこの地下は既に探索されている場所である筈なのだが、

 

「まだ下がある筈だ」

 

 猛る様な気配に、ここで終わらないと思った。光の差し込まない地下の探索を再び行う。今回はランプもあるし、誘導となる気配も感じている。後はどこから更なる地下へと通じるのか、その道を探すだけだ。

 

 ……それが一番難しいのだが。

 

「まぁ、何とかなるだろう」

 

 息を吐き出し、そして吸い込み、心臓を動かす。見られているという気配に一切変化はない。どうやら名前を口にした時点で、ロックオンされたらしい。沐浴している間は目を瞑っててくれると助かるんだけどなぁ、なんて茶化しながら地下を探す。

 

 地上よりも遥かに埃で溢れているこの場所は、流石に口元を布で覆わないと辛い。くしゃみが止まらなくなりそうだ。だけどそれを我慢しつつ、体を奥へ、奥へと進ませて行く。不思議と、此方は崩壊の形跡が一切見えない為歩くのは難しくないのだ。問題は暗闇と埃っぽさだ。めんどくせぇ、そう思いつつも地下探索、その一番奥へと進む。闇に閉ざされた空間ではちょっと、見辛くなっているが、ランプのおかげで視界は確保できた。

 

「さぁて、と……名探偵ならどうやって答えを見つける? そう、そうだ、洞察力だ……良く見て、探すんだ」

 

 この先に道があるとしたら、そこには入る為の痕跡が残る筈だ。経年劣化によって扉の隙間は大きくなっている筈だから、地下なのに隙間のある壁を探せばいい……たぶん。そう判断しながら地下を歩きまわる。下の方から気配を感じるが、そこへと通じる道が見つからない、という問題だった。いや、或いは、地下ではなく外を経由して更に下へと行くのか?

 

「……ありえる」

 

 だけどその場合、別のルートを探す必要がある。そうなると再び遺跡全体を調べる必要が出て来る。そしてその場合の手間と時間を考える。

 

「うーんー……」

 

 ドライフルーツを口の中へと放り込み、それを咀嚼しながら良し、と呟いた。糖分が僅かながら脳味噌に回って来た感じでちょいちょい思考が回り始める。

 

「めんどくさくなってきた。今日はもう帰るか」

 

 一回死にかけたし、大事を取って休むべきなのでは? 下からの気配が本当に()()だとしたら……このまま、放置して封印しておくのが恐らく、世界の為だし。無駄に掘り返す必要もないだろう。息を吐き、そして心を整えた所で地下を出て、遺跡の外へと出て、そして暗くなり始めている山岳の空を見た。

 

「成果はあったけど……喜べるかどうかはまた別問題だな、こりゃ」

 

 遺跡から出ても、未だに自分へと向けられた視線の様な、絡みつく気配は消えない。監視されている。或いは玩具として認識されている。不用意に名前を口走ってしまったのが、おそらくは失敗だった。今度からはもうちょっと口にする言葉に注意しようと思う。これと同じ様な場合で、他の超上位古龍とかの名を口にした場合が恐ろしい。

 

 ふぅー、と息を吐く。絡みつくような気配とプレッシャーが体に重くのしかかり、それが体力を削って行くのが解る。ここにきてハンデ追加かぁ、と思いつつも、生きる為のペナルティだと思ってあきらめる。

 

 この日は、大人しく拠点に帰還した。

 

 

 

 

 それから数日後、おじぎ龍の視線は消えない。監視するような、愛でる様な、遊ぶような、食おうとする寸前で止める様な、そんな視線を感じ続ける。ただ、それ以上何かをする様な事はなかった。それだけにとどまった。見逃されているのか、武器が頑張ってるのか、それとも何か楽しんでいるのか……どちらにしろ、解決のできる手段がないので放置以外の選択肢がなかった。そしてその結果、あの遺跡はしばらく放置しよう、という事で決定した。

 

 憶測が正しかったとして、正直今の自分にはどうしようもなさ過ぎた。解決する手段も可能性も存在しなかった。あの遺跡探索で自分が得たのは臨死体験という結果だけであり、死への意識、そしてそれをなんとか潜り抜けたという経験だけだった。俺が死を乗り越えた、古龍マジックを乗り越えたサバイバーだ! ……なんて、調子に乗る事はしない。

 

 どう足掻いても死亡フラグにしか感じないからだ。

 

 ともあれ、遺跡方面はしばらく封印、侵入禁止にして―――この冬は自分を鍛えてドスランポスへと挑む準備を進めるという事だけだった。変に特殊な物には頼らず、自分が出来る範囲で積み上げて行く事にした。たぶん、今回の遺跡調査の臨死体験は罰なのだろう、と考えておいた。

 

 分不相応の力や物を求めようとした罰だ。既に武器はあるのに、それでも探索して何かいいものが有ったらなぁ、と願った。そんな期待をしてしまった自分への罰だったと思う事にする。改めて、自分の出来る範囲でコツコツと積み上げて行く事を判断する。その為にまずは、

 

 ホルクの調教を進める。

 

 ホルクはフロンティアで育てる事で優秀な能力を発揮してくれるパートナーだった。それを思い出しながら、芸を仕込む様にホルクに指示を出し、餌を与える。遺跡探索の事をすっぱりと諦めれば、それだけ時間の余裕も出て来るが、それを丸々ホルクに注ぎ込む事に決めた。恩義を感じ、その相手に対して従順である為、育成は非常に簡単であると公式で言われている通り、一度衰弱している所を世話してやれば、直ぐに懐いてくれた。

 

 森林南、川の近くは開けているスペースである為に、そこにホルクを連れ出して調練を行う事にしている。既にその体は大きく、翼を広げれば自分よりも遥かに大きい姿を確認する事が出来る。力強さも自分よりもあり、はっきり言って生命力を含め、ホルクの方が能力的には上回っている様に感じられる。

 

 だが恩義は恩義、しっかりと従ってくれるホルクだった。

 

 川辺で軽く飛翔させ、まずは言葉を学習させる。左、という言葉を左へと向かって指さしながら飛ばす事で学習させ、次は右を覚えさせ、上、下、正面等の言語を覚え込ませて行く。成功する度に干し肉を与え、労い、しっかりと報酬が出るという事を教えて行く。

 

 最初は言語すら通じないが、馬鹿ではないのだ。寧ろゲーム内時間で計算し、割と早く学習しているのだから下地は存在するのだ、学習するだけの。後はそれだけの教育を、調練を行えるかどうかの問題だ。

 

 そしてそれがアイドルに出来る事ならサバイバーに出来ない事はない。

 

 2か月も毎日、川辺でホルクを飛翔させながら指示を出して行けば、ホルクが指示を受けるという事に慣れ始める。そして言葉もその頃には少しずつだが学習が進む。簡単な単語ぐらいであれば、そこまで難しい事を指示しない範囲であれば理解して行動してくれるようになる。

 

 そうやって来ると段々と、ホルクと遊ぶのが楽しくなってくる。

 

「そら!」

 

 空へと向けて片手剣を投擲する。素早く旋回したホルクはそれを空中でキャッチすると、大きく川の上を滑る様に飛翔し、それを川辺に落とし、刃から下に突き刺さる様に落とした。それと同時に掬い上げる様にその近くに突き刺さっていた両手剣を足で掴み、止まる事無く飛翔しながら此方の頭上で両手剣を手放し、落下させる。それを手を伸ばして片手で掴み、両手で抑え込みながら握り直した。

 

「良し!」

 

 ちゃんと仕込んだ芸をホルクが達成できたので、両手剣を土に突き刺しながらホルクを呼び寄せ、降りて来たその姿を撫でる。首の下を撫でてから、包み込む様に顔を撫でてやると、喉を鳴らしながら喜ぶのだ、こいつは。だけどそうやってこいつばかり構っていると、

 

「おっふぅっー」

 

「ぶもぶもぉー!」

 

「あぁ、解ってる解ってる。お前もきっちりかまってやるから」

 

 横からウリ坊がタックルを仕掛けてきて、構ってくれと強請ってくる。だがこいつも最近はしっかり食って成長している影響か、大分大きくなってきてブルファンゴサイズ程度にはなって来ていた。その為、勢いの乗ったタックルをかましてくるとその勢いのまま吹き飛ばされる事が度々発生する様になった。それでも手加減しているからか、怪我をしないのが救いだ。とはいえ、割と頻繁に突撃される結果、妙に受け身が上手になって来ていた。

 

 そろそろウリ坊とは言い辛くなってきていた。だが体が大きく、頑丈に育ってきた事はまた朗報でもある。こいつ、既に俺を背中に乗せて移動する程度の事であれば、苦も無く出来る程度には体力と体格が出来上がって来ていたのだ。これでもまだ成長途中の様に感じるから、最終的にはドス級のサイズに育つかもしれない。その場合、一緒に狩猟に参加して貰うかもしれない。

 

 遺跡での生活はともあれ、家畜の調教や生活は、間違いなく順調に進んでいた。遺跡を探索した日からは嬲る様な悪魔の視線が常に自分へと注がれるが―――今更、死にそうになっているのは日常的な事だ、と悟ってしまえばそこまで恐怖を感じるような事はなくなった。そうやって一度、呑み込めるようになればそこまで気にする様な事ではなくなる。寧ろ、自分の狩猟を自慢する相手が出来たと考えればいいのだと思えばいい。

 

 視聴者がいて企画物は意味があるのだから。

 

 このサバイバル企画を仕組んだ責任龍は絶対に殺してやると思っているが。

 

 冬季―――環境は地獄の中の地獄だが、生活は慣れて来た分、悪くはなかった。

 

 

 

 

「―――えー、それでは第■■回ギルド定例会議を開始します」

 

「うむ、それでは始めるとしようかの。まずは大陸情勢から頼むぞ」

 

 それは光が円卓を照らす開けた部屋だった。円卓を囲む様に老人や若人の姿が見える。興味なさげな者、真面目な表情の者、寝ている者、刃を磨く者。様々な者達がそこには集まっていた。そこはメゼポルタと呼ばれる場所、ハンター達の為の区画、そこに存在する責任者が集まる場所であった。集まる者らは誰もがハンターたちの、ギルドという組織の方向性を決める者達。

 

 それらが集まり、成果や問題を話し合うのは定期的な行いであった。

 

「で、どうじゃ?」

 

 と、子供と間違えそうな程に背の低い老人が言葉を口にし、眼鏡を装着した女が答える。

 

「はい、現在フォンロン地方の方の開拓が進んでいます。ですが問題として開拓村の数に対して村付きハンターの数が間に合わないというのが事実でして……」

 

「一応言っておくけどこっちが悪い訳じゃないからな? 年々ハンター志望者の数は増えている。《ココットの再来》や《天堕とし》、《剣神》やら《王殺し》の活躍で寧ろ訓練校の入校者は増えている。ただ単純に需要に対して供給が追い付いていないだけだ。後加えて言えば訓練校の数も足りないな。入校希望者はいるのに、訓練校の方が足りてないから卒業待ちが多すぎてな……」

 

「不足しているのは金の問題か?」

 

「いや、教官も足りてない。引退した連中は基本的に平穏を望むからな……態々教官に成ろうとする奴はいない」

 

「となると現役のを呼び戻して働かせるか、ギルドナイトを導入する必要があるな」

 

「おいおい、勘弁してくださいよ長ー……。ギルドナイトだって便利屋って訳じゃないんですから。寧ろ需要と拡大に対して人材が足りていないのは此方もそうなんですよぉー? ハンターも猟地も増えればそこを見張るギルドナイトも増やさなければいけないんですからぁー。バロウズなんてもう数か月はメゼポルタに戻らず回り続けてるんすよー……?」

 

「おっと、此方を見ても困る。メゼポルタ拡張のために人員を使っている他、調査船の建築とかでもかなり人員を消費しているからな。言っておくけど、この前のシャンティエン戦、アレに飛行船を16隻も沈められたんだよ? こっちの事情も考慮して欲しいかなぁ」

 

「やれやれ、余るのはゼニーばかりじゃのぉ」

 

 キセルを咥えた老人が疲れたように呟く。それを見て、帽子を深く被り、コートで口元を隠し表情も素肌も一切露出しない狩人が頭を横に振った。

 

「ではゼニーばかり余っている長老に対して私から一つ、ゼニーを大量に消費できそうな話を切り出させて貰おう」

 

「ゼニー以上に人手が足らんから止めて欲しいんじゃがなぁ……で、どうした?」

 

「ミラボレアスが西に興味持ち出した。どうやら西の方でお仲間が目覚めたみたいだ」

 

 その言葉にギルドナイトを統括する男が顔面を円卓に叩きつけた。その姿を周りの者たちが静かに見届け、心の中で冥福を祈った。ギルドナイト統括はさめざめと涙を流していた。

 

「ごめんよー、とーちゃん家に帰るのまたしばらく無理そうだよぉー……そろそろ顔を忘れられてそう……」

 

「前にミラボレアスが興味を持つそぶりを見せたのは何時じゃったかのぉ」

 

「グラン・ミラオスの覚醒でしたね」

 

「《猟王》のおかげであの事件はタンジア港が半分吹き飛ぶ程度で済みましたからねー……」

 

「正直、生物なら殺した時点で死んでいてくれって感じですよね、アレ」

 

「古龍の中でも上位の連中は普通に蘇るからなぁ……おかげで今じゃ迎撃戦以外で古龍の相手をしようとするのはG級でもイカレた連中ばかりだ」

 

「そいつらのおかげで儲かってるんじゃけどな」

 

 溜息が零れた。それは今、この世界を支配していると表現できる組織、その中心部に属するメンバーの集まりだった。成果は上々、人の生活圏は年々広がっている。だがそれに抵抗する様に龍たちが近年出現する様子に、ギルドは拡張に拡張を重ねる必要があり、それを続けて来た。新大陸の発掘、そして開拓。異世界の言葉に当てはめればこれは()()()()()()()()とでも表現できる状態だった。

 

 その情熱はもはやギルドの手を超えていた。ギルドを利用する。ギルドに還元する。その仕組みは大きくギルドを富ませていた。だが肝心の人手が圧倒的に足りていなかった。情熱だけが先行した結果、ギルドの手を抜ける範囲で人類が広がり始めていた。それをギルドはどうにかしたかった。だがどうしようもなく、人手が不足していた。

 

「駄目じゃな。活動を縮小する必要があるわい」

 

「反発されますよ」

 

「承知の上じゃ……それでもこれ以上このペースで活動を続けていればギルドが分解してまうわい。その場合、ギルドなしで開拓がはじまるぞ」

 

「……」

 

 その最悪を考え、沈黙が生まれる。ギルドが存在するからこそ、連携して古龍の動きや物資、人材の動きを把握できるのだ。ギルドがパンクし、その機能が停止すれば古龍等の動きを追えなくなる―――先のグラン・ミラオスの出現はギルドが飛行船を一つ潰す速度でG級ハンターの最強格を送り込んだからこそ、どうにかなった話だ。ギルドの理念も、理想も、儲ける為にある訳ではなく、ハンターを支援し、そして安全な開拓を行う為に存在するものだ。

 

 それを、その場にいる者全てが理解していた。

 

 金だけでは解決できない問題だった。

 

「時間が、必要ですね……」

 

「だがミラボレアスの件は今すぐ対処しなければならない事だ」

 

「龍暦院と協力しましょう。後は西の大陸に拠点を作る必要がありますが―――」

 

「あそこの海にはラヴィエンテが、空にはシャンティエンがいる。造船所の事情を考えて其方の開拓に着手できる船を造るには後8年……いや、活動の一時的縮小を考えれば人手を別の所へと回せるから6年、かな……」

 

「かぁー、ままならんのぉ……ここ10年近くはちっとは大人しくする必要がありそうだの」

 

 ギルド長の言葉に頭を悩ませる中で、一人、大きくいびきをかき始める姿があった。その姿を円卓に座っている者達は無言で眺めると、ギルドナイト統括と、訓練校の統括が両側から眠っている姿を掴み、それをそのまま窓の外へ投げ捨てた。

 

 空前絶後の狩猟時代が今、大陸には到来していた。

 

 多くの人間が活気で溢れ、そして力で生活は満たされていた。

 

―――だがその活気が、辺境の未開拓地に届くにはまだ数年の時を必要としていた。




 サバイバーなら死んでた(窓放り投げを見て

 まだまだギルドが到着するまで6年近くかかるみたいですねー……。
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