※この作品はR-18です。

Monster Survivor   作:てんぞー

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1年目 秋季

 アプトノスの皮が予想よりも硬かったので、それを利用して簡単なベルトを作った。というのも、小道具なんかを持ち歩く為のホルスターみたいなものが欲しかったのだ。だから細長い形に切り出し、それを腰に巻いた。そこに引っ掛けられる様に軽い溝を作りながら、同じサイズをもう一枚用意し、二重構造にするのだ。不格好だが、引っ掛ける事の出来る道具ならこのベルトで抑える事が出来る。つまりは両手が自由になるのだ。これが中々便利で、投擲道具なんかをベルトに装着できるようになった。後はネンチャク草を使えばベルトに道具をくっ付ける事も出来る。

 

 ほんと、ネンチャク草は便利である。

 

 そういう訳でアプトノス狩猟から更に数日が経過した。

 

 竜骨はツリーハウスの骨組に一部を、一部を道具の為に利用した。皮はネンチャク草を使って骨組にくっ付ける事で壁を作る事が出来た。まぁ、明らかに皮が足りてなくて完全にツリーハウスをカバーできたわけではないが、それでも可能である事を理解できただけでも大きな成果だった。そうやってアプトノスの素材を有用に活用できる事が発覚できる裏で、大きな成果が一つあった。

 

 アプトノス肉の干し肉の完成だった。

 

 不味い。血生臭い。だけど食べられる。そういう干し肉が出来たのだ。個人的に考えていた干し肉のイメージからは程遠いのが悔しかったが、それでも乾燥された肉はたぶん、干し肉と呼べるものになっていた。少なくとも食べてお腹を下すような事はなかった。或いはこれぐらいではお腹を壊さないぐらいには体が強くなったのかもしれない。楽観はできないが、それでも肉を長期保存できる手段が生まれたのは、生活における革新だった。これからはアプトノスの肉を使って干し肉を作る事が生活のリストに追加された。

 

 そうやってアプトノスの狩猟によって生活が大幅に改善し始めた中で、次のターゲットを狩猟する為に花畑へと到着した。

 

 時間帯は朝、まだ早い時間だ。少なくとも電気が存在しないこの場所では、明るくなってからすぐ活動し始めないと色々と手遅れになる。活動できる時間という物さえも希少なリソースなのだ。

 

 アプトノベルトにクルミとニトロを合わせて作ったクラッカーを装着し、それ以外にも一応、ブルファンゴ対策にランポスの牙を絡めた小さめのネットを持ち込んできている。爪程大きくはないランポスの牙は、しかし良く肉に食い込むのだ。その為、ネットに組み込んでやれば、投げて相手がもがけばもがく程、肉に食い込む罠になるのでは? と思っている。

 

 ただこの場合、明らかに毛皮がダメになる。その為、最終手段とも呼べる道具だった。純粋にブルファンゴを始末する時にしか使えない。

 

 一応、毒テングダケも持ち込んである。これを使えばケルビやブルファンゴを狩猟するのが楽になるだろう。だけど毛皮と肉。その両方が欲しい、必要だ。特にブルファンゴの毛皮に関しては一部、防具として使用できるだけの防御力が存在するというのはゲームの方で証明されている。つまりそのまま使用する事が出来れば大いに力になるという事実がある。

 

 理想は毒を使わずにケルビとブルファンゴを狩猟する事だ。ケルビは角が薬になるというのは調合のレシピ等から覚えている。モンスターハンターシリーズを遊んでいるプレイヤーであれば、《ケルビの角》と《活力剤》を調合する事で生み出せる《いにしえの秘薬》という回復アイテムはシリーズの中でも最高の効力を発揮するアイテムだ。活力剤そのものは無理でも、角そのものはどうやら、薬の力を引き出すだけの力を持っているらしい。

 

 このサバイバル生活、風邪を引けば一瞬で終わるだろう。

 

 免疫がないし、薬もないからだ。

 

 だから保険用にケルビの角を何本か確保したい。それを薬草と合わせてなんとか……健康を保つ為のアイテムにしたい。調合の手順なんてものは知らないのだが。しかし角は薬、皮は衣服、そして肉は食料。

 

 まるで無駄がない。

 

 サバイバルの救世主だろうか、ケルビって。崇めるぞお前。狩猟出来たらだけど。

 

「……さて、花畑を探索するか。隠れる場所が少ないから怖いんだよな、ここ」

 

 木があればいいのに、この花畑は全体的に開いており、中央の岩場をぐるりと囲むような場所になっている。その岩場もつるつるしていて、登るのに不向きだ。この岩場の北側が、湖になっている。そこは絶好の釣り場になっている。フォロクルル出現の可能性を考えると心安らかに釣りなんて考えられないが。

 

 そういう意味でもここには余り、長居したくはない。さっさとケルビの狩猟を終わらせてしまおう。ブルファンゴに関しては見かけたら……ということにしよう。

 

 ネットを左肩で背負うように握り締めながら、右手にランポスの爪を握って、ケルビの姿を探し始める。ハンターなら足跡とかの痕跡から直ぐに探せるんだろうなぁ、と思いつつ、花畑を歩き始める。秋季に入ったというのに、それでも花畑は綺麗に咲き誇っている。どうやらここは一年中そういう場所なのかもしれない。冬になっても環境が変わらないのだ、ある意味モンスターハンターの世界らしいと思う。

 

「と、見っけ見っけ」

 

 ケルビが三頭程花畑でゆっくりと歩いているのを見つけた。鹿の様な姿をしたその姿を間違える筈はない。アプトノスに続くレベルの雑魚だ。モンスターハンターシリーズの序盤と言えばアプトノス、ケルビ、モスが最弱、食物連鎖の最下層として認識されている。地域が変わるとこれがガウシカとかいうのに変わったりするのだが、どうやら出現する飛竜的に環境はフロンティア、

 

 通称魔境(フロンティア)に環境が近いのかもしれない。

 

「余計な考えは止めて、狩るか」

 

 気配を殺せたら良かったのになぁ、と、そう思いながらベルトに固定させておいたクラッカーを手に取る。ニトロダケとはじけクルミを合わせたこのクラッカーは、衝撃を与えれば小規模な爆発を起こす、単純調合から生み出させる唯一の遠距離武器だった。ランポスの爪が唯一の武装である中、牽制に使えるクラッカーは重要な武器だった。

 

 爪を口で掴み、右手でクラッカーを握る。左手でネットを握り、確実にケルビを捕まえられる様に構える。三頭全部を捕まえる予定はない。まずは一頭でもいいから狩猟するのだ。狩猟出来たという事実が何よりも大事なのだから。

 

 故にケルビを前に、警戒させない様に歩いて近づく。

 

 これはアプトノスの時も同じなのだが、草食竜の類は非常に警戒心が低いのだ……人間に対して。或いは人間が敵である、という認識が非常に薄いのかもしれない。それはつまり人間を目撃したことがないという事実でもある。だから近づけば、ケルビは警戒する事もなく、此方を首を捻りながら視線を向けて来る。逃げる様子であればクラッカーを使う予定だったが、その必要はなくなった。

 

 アプトノスの場合は力と速度と群れに襲われるという性質上、奇襲からの必殺が必須だった。だけどこのケルビであれば、その必要はない。

 

「ごめんな」

 

 言葉と共にケルビの首にランポスの爪を一気に突き刺した。驚きの声が漏れ出す前にネットを落とし、片腕でケルビの首を掴み、そのまま横に倒す様にタックルし、その勢いと衝撃を利用して気道を潰す様に爪を更に突き刺す。ケルビの口から息が漏れそうになるが、爪によって防がれ、何も出てこない。驚いたように角が飛び出すも、それを無視して更に深く爪を突き刺し、

 

 一気に絶命させた。

 

「ふぅー、一匹。血抜きしなきゃな」

 

ランポスさえ出てこなければ肉食竜の類はいないと断言できる花畑だ。血の臭いに誘われて出てこない事を祈りつつ、ケルビの死体を引っ張って、花畑の端の木まで連れて行く。アプトノスの時は血を川に流したが、確か血抜きをするなら木に吊るしたほうが良い様な、そんなイメージを漫画から思い出した。

 

 そういえば新刊、どうなったんだろ。

 

 そんな事を考えながら血が出やすいように更に大きく首を切り裂き、足をツタで縛って木の枝から吊るす。どくどくと血が首筋から溢れ出すのを眺め、傷口が首元にしかないのを見て、満足感を感じる。だけどそれを感じていや、と呟く。

 

「ハンターならもっとスパっと、綺麗にやっただろ。まだまだ。まだだ、まだこの程度じゃないだろ」

 

 満足してはならない。

 

 満足してはならない。

 

 ……満足してはならない。

 

 もっと強さを、もっと効率を求めなくてはダメだ。この程度で満足している様では、生きて行けない。もっと心を渇かせて行く。狩猟に対して一々感慨を抱かない。殺せて当然だと思えるようにならなければならない。それでもどう足掻いてもハンターには届かない。だから努力も修練も鍛錬も気概も足りない。

 

「良し、次だ」

 

 ケルビの群れ全体に情報が伝わらない内に、残りのケルビを狩る。少なくともさっきの二頭は確実に殺す必要がある。

 

 故に残りの狩猟を進める為に、ケルビを追い始めた。

 

 強い相手ではない。

 

 狩猟するのは難しくはない。

 

 逃げた方角は地形的にすぐわかる為、追いかけて狩猟を続行する。

 

 結果、ケルビを合計で四頭狩猟した。

 

当初の予定ではそこまで狩猟する予定はなかったが、予想外に目撃したケルビの数が多かったのが原因だ。人間は危険である、という意識を群れ全体で共有される前に全部狩猟する必要があったのだ。まぁ、それに花畑でフォロクルルとエンカウントしなかった事も幸運だった。肉食竜も出現する事無く、実に好調といえる状況でケルビの狩猟は完了した。

 

 見様見真似の血抜き作業。ケルビの首を大きく斬り裂き、逆さまに吊るして血液を全部流させる。内臓の類はちょっと、食べられる気がしないので迷う事無く抉り抜いて地面の中に埋めた。そしてアプトノスの時の様に肉は干し肉に加工する為に薄くスライスし、干せるように準備をした。そしてついでに、花畑に肉食竜が近づいてこないという事が解ったので、ある事をついに実行した。

 

 そう、焼き肉である。

 

 焚火を起こした。方法は簡単だ。乾燥した枝を重ね、そこにニトロダケの胞子を落とし、後は適当に衝撃を叩き込む。ニトロダケが劇物な事だけあって、これだけで火が付く。そうやって出来た焚火の周囲に枝を突き刺し、その枝に薄くスライスしたケルビ肉を突き刺すのだ。

 

 そうやって焚火を眺めている事しばらく、

 

 肉が焼け始める。

 

 やはり野生の、獣の肉である事もあり、臭いは獣臭が強かった。肉、というよりは獣を焼いているという感じの臭いだった。だけど少しずつ、少しずつ肉が焼けて行き、そしてその姿を、臭いを理解して行くにつれ、抑えきれない涙がこぼれ出すのが理解できた。アプトノスの肉は冬への備えの為に全部、干し肉へと加工してしまった。その為、こうやって焼いて食べようとした事はなかった。だけど目の前でこうやって焼く肉の姿と臭いは、

 

 抗えないほどに、涙を誘った。何故だか解らないが、無性に泣きたくなってきた。焼けたそれを口に運べば、初めてまともとも表現できる、食事だったのかもしれない。生でも何でもなく、まともではなくても料理した食べ物だった。

 

「なんだこれ、くっさ! まっずっ」

 

 口の中に運んだケルビの焼肉は―――不味かった。臭みが強いし。肉は筋張っていて硬いし。良く考えれば日本で食っている肉は食肉用に育てられているんだから、野生で食べる動物の肉よりも遥かに美味しいに決まっている。自然の、手が入っていない動物の肉なんだ、食べる為の肉じゃないんだから美味しくないのは決まっている。

 

 だけど……だけど、

 

「クッソ、不味い……不味いわ。トウガラシでも見つけてこなきゃ話にならねぇ」

 

 そう言いながら食べる事を止められなかった。肉を焼いて、食べる。此方に迷い込んでから初めて、文明的な食事を自分がしている事実に、涙が止められなかった。この程度の事で満足する事なんてできないし、止まる事も出来なかった。それでもこうやって肉を焼いて食べていると、嫌でも日本の食事と比べてしまう。

 

 何も考えず、当たり前の様に食べていた時代。

 

 自分は何て幸せだったのだろうと思う。そしてこうならなければその有難さを理解しない自分も、何て救いがないのだろう。

 

「父さん、母さん、心配していないかな……」

 

 肉を食べながら日本の両親を思い出す。大学に行くために一人で生活を始めた時、スマートフォンが壊れた結果しばらく実家と連絡を取らない時期があった。その時、ウチの母親は偉く心配したそうで、その心配性で体調を崩してしまった程だ。

 

 突然、息子が異世界でサバイバルを始めたと知ったら心臓ショックで死ぬんじゃないだろうか。

 

「サバイバルして帰って来ました、とか教えたら笑えるな。あー、でも本に出来そうだ」

 

 生きて、帰って来れたら。そう思いながら口の中に肉を叩き込んで、飲み込んだ。アプトノスの干し肉同様、欠片も美味しくはなかった。だが肉を焼いて食べる、というのは文明の行いだった。取ったままを食べるのではなく、それを料理するというのは人間の、知性の行いだ。自分がまだ生きている人間である、というのをおかげで自覚出来た。食べ終わり、火を消した所で日は沈み始めていた。段々と空は暗くなり、夕日が見え始める。

 

 夜になれば星と月以外の明かりがなくなる。そうなると夜行性の動物が一気に活動を始める……正直、余り活動したくない時間帯だった。予想外に多くケルビを狩ってしまったのだ、その分、帰りは少し遅くなってしまう。そろそろゆっくりしていないで、早めに帰らなくてはならないだろう。

 

「うっし、行くか」

 

 呟き、ネットを置き、代わりに解体したケルビの皮と肉を抱えた。流石に四頭分全部は一度には無理なので、何度か往復する必要がある。それまでに肉が喰われていない事を祈りつつ花畑を後にする為に歩き出そうとした。

 

 と、した。

 

 動きを止めるものがあったからだ。

 

鳥の嘶きの様な声が響いた。

 

「―――」

 

 心臓を鷲掴みにされる様な恐怖と共に、空を滑空する様に飛翔する、カラフルな色彩の体を見た。夕日に照らされるそれは絢爛な色を輝かせながら旋回し、鳴き声を空に響かせながら段々と高度を落としてくる。

 

 その、竜の名を知っている。

 

 花畑でしか目撃されない、花の蜜を吸う竜だった。

 

 その名をフォロクルル。シリーズの魔境(フロンティア)出身の竜だった。

 

 絶対に戦ってはいけない。抗う事を考えてはいけない。()()()()()()()()()()()()()()と本能が叫ぶのと同時に、持っていたケルビの肉も毛皮も全て投げ捨てて、その日の成果を全て放棄し、花畑に背を向ける様に全力で走り出した。ランポスの爪なんて象につまようじ程度のものでしかない、こいつ相手には。

 

 だから逃げるしかなかった。

 

 追いかけてこない事を祈って。馬鹿だった。フォロクルルが花畑に生息する可能性を知っていたのに、なのに肉の誘惑に負けたのだ。

 

 振り返る事無く、走り続ける。フォロクルルが追いかけてこない事を。ただひたすら、祈りながら暗くなって行く森の中へと逃げる様に。

 

 ただただ、走り続ける。

 

 

 

 

 自己嫌悪と羞恥で死にそうな気持を堪えながら朝、ツリーハウスで目覚めた。フォロクルルとはエンカウントする可能性があったのに、最後まで気を抜かずに居なければいけなかった。なのに、それを怠った結果が昨日の醜態だった。自殺したくなってくる。だけど死にたくはないから、改善するしかない。もっと油断しない様に、忘れない様に頑張るしかない。幸い、フォロクルルは襲い掛かってくる事も追いかけて来る事もなかった。肉食ではなく、蜜を食べるからだろうか。

 

 しかしあの巨体を蜜で維持するとはどんなファンタジーなのだろうか。

 

「あー、糞。本当に俺はクッソだな……」

 

 罵倒しながらも、朝になったら活動を開始する。アプトノスの干し肉を噛み千切って、味わわずに飲み込む。このクソ不味い干し肉を食べるには、これが一番現実的なやり方だった。その後で果物を少し齧って、お腹の中を満たしたらツリーハウスを出て、花畑へと向かう。

 

 道具は爪にクラッカーだけだ。フォロクルルが見えた瞬間、再び逃亡確定だ。何とかしてランポスの牙を使ったネットだけでも回収しておきたい。今の所、ランポスの爪と牙は、持っている分しかなく、これ以上増やすのも難しい話なのだ。少なくとも今の自分にランポスの狩猟は無理な話だ。もっと強くならなければだめだ。

 

 故に道具の回収を最優先として花畑へと向かい―――自分の道具や戦利品が、荒らされていない事に安堵を浮かべた。花畑の隅に放置されているネットや毛皮を見て溜息を吐いた。

 

「良かった……アイルーとかがいれば間違いなく盗まれていそうだったけど」

 

 やっぱり、この周辺にアイルーとかはいないのだろうか? まぁ、いないっぽいよな、とは思う。アイルーがいればもうちょっと住みやすい環境だったと思う。野生のアイルーであれ、文明を築くだけの力があるのだから。

 

「うっし、フォロクルルが来る前に全部運ぶか」

 

 花畑を眺め、遠くにブルファンゴが見える事に警戒心を上げながら、此方が見つかる前にさっさと必要な物を集めて撤退しよう。余計な欲は自分の身を滅ぼす事は良く解っているからだ。荷物を抱えている状態でブルファンゴと追いかけっこなんて想像もしたくはない。

 

 そういう事でさっさとネットと毛皮を優先して運び出す。肉は一晩放置していたのがよかったのか悪いのか、いくつかが乾燥して干し肉になる途中の姿を見せていた。腐ってないよな? 大丈夫だよな? 不安に思いながらも齧ってみて、アプトノスと同じレベルで不味かったからセーフと判断した。未だにまともな干し肉の作り方は解らないが、お腹は痛くならないし、下痢にもなってないし、ちゃんとお腹いっぱいになる。ならこれで成功であるに違いない。

 

 そうだと誰か言ってくれ。

 

 ともあれ、時間をかけて花畑とツリーハウスを往復する事でケルビの素材はツリーハウスへと持ち帰る事に成功した。

 

 一番安心できる拠点の中に入って、腰を落ち着けながら自分が剥いだ毛皮を確認する。これが現代の知識だと皮を鞣す必要があるらしいが、その具体的な知識がないから、原始バーバリアンスタイルの毛皮しかどうにもならないのが現実だ。それはともあれ、

 

 剥いだケルビの皮は、どれもザクザクと、所々穴が開いている。正直、アプトノスよりも気になるレベルで。アプトノスの皮はまだ手ごたえが硬かったから良かったのだが―――ケルビの毛皮が、予想よりも柔らかったのが問題だった。おかげでダメにはなっていないが、それでも見た目がぼろぼろだ。

 

「まぁ、素人が手を出せばこんなもんだよな……」

 

 このまま毛皮のローブにしようとしても、穴だらけになるだろうから、何枚も重ねて穴を隠す必要が出て来るだろう。あとは……そうだ、セッチャクロアリだ。たしかモンスターハンター世界にはそんな結合を助ける虫の存在があった筈だ。アレを使って毛皮を重ねたり、傷を隠す事を考えればいいのかもしれない。

 

「とりあえず干し肉を増やして、これで毛皮も四頭分……全然足りないな」

 

 ネンチャク草だけでは限界があるから、どこかでセッチャクロアリを探してくるとして、毛皮も皮も備蓄も正直、これでは全然足りないと思う。

 

「正直、冬がどれだけ冷え込むのか、どれだけ環境が変化するのか、っていうのが解らないから怖いんだよなぁ……」

 

 例えばこのツリーハウス、紅葉で葉が落ちるのなら、今は天井が葉っぱによって支えられている状態なので、改めて天井を作る必要が出て来る。その場合、更にアプトノスを狩猟する必要が出てくるのだ。

 

「……やっぱり、アプトノスとケルビを狩る量を増やさなければだめだな、こりゃ……」

 

 どう考えても一頭や二頭狩猟数を増やした所では足りなかった。となるともっと積極的に外に出て、アプトノスやケルビを狩猟する必要がある。……或いはブルファンゴを狙う方が良いのかもしれない。ブルファンゴはケルビよりも遥かに頑丈な生物だ。その分、狩猟するのは大変だろうが、それでも頑丈という事は誤って毛皮を傷つける事が難しい、という事だ。

 

「そういやぁ《クモの巣》を《ツタの葉》と調合するとオーソドックスなネットが調合できたよな」

 

 それを更に《トラップツール》と調合する事で《落とし穴》を作成できるのだが―――正直、ただのクモの巣が飛竜を何秒も拘束する事の出来る道具へと変貌するというのだから、驚きである。

 

 それだけ強いのなら、糸替わりに出来ないのだろうか?

 

「うーん……今度は西エリアでセッチャクロアリとクモの巣探しか……? 普通に糸が手に入らないのが辛いなぁ」

 

 自分の服を解体するのは最終手段。なにせ、無事な服装は重要だ。特にこういう森林の中では。場合によっては虫刺されでぽっくり熱病を患って逝くかもしれないのだから。やっぱり、新しい服を確保したい。

 

 その為にはトライ&エラー、数をこなして資材を集めるしかない。

 

 布はまぁ、やっぱり無理だ。だけど皮なら何とかなる。だからそれで作れるものを作るしかない。ケルビだってまだ腐る程いるんだ。集めればケルビ皮のベッドなんて作れるかもしれない。

 

 そう考えるとまだ夢はある。

 

「ま、とりあえずはアプトノスとケルビ狩りだな。連中の居場所を探して、次を狩る準備をしなきゃな」

 

 保存が利きそうなものを探しつつ、更に備蓄の為に狩猟を進める。その合間に体を鍛えなければならない。休んでいる暇なんてない。油断も慢心する暇もない。フォロクルルの事も忘れてはならない。

 

 ここは大自然、死は唐突にやってくる。

 

 だからこそそれまでに必死に、備えなければならないのだ。




 なおフォロクルルそのものは臆病な性格らしいので、見かけた所で直ぐに襲う様な生態ではないらしいのね。なのであのタイミングで逃げて正解だったりする。

 次回から冬へ……。サバイバルは更に厳しくなって行く。
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