※この作品はR-18です。

Monster Survivor   作:てんぞー

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3年目 冬季 目覚め

 ―――歩いている。

 

 磨かれた大理石の通路を、歩いている。見える限り通路が続いている。白く染まった、輝ける通路だった。歩いている。背後からは紫色の手が後ろへと引き込む様に体を引っ張っている。何本も何本もある手が体を後ろへと向かって引きずろうとしている。

 

 それを無視して歩く。

 

 確か、自分はそんな人間になった。そんな気がした。恐怖を殺して、誘惑に勝って、死の前で唾を吐くだけの根性がある男になった……様な気がした。後ろからは甘い香りがする。ついつい、振り返ってしまいそうな匂いだった。或いは誰かの声だったりするのかもしれない。だけど不思議とそれが魅力的には感じなかった。もっと、もっと美しく感じたものがあった筈だ。

 

 気づけば歩き続けていた。

 

 体はまだ、掴まれている。

 

 通路には扉が見える。それは閉ざされていた。だがその向こう側からは羽音の様な声が聞こえてくる。言葉が聞き取れない。何を言っているのか解らない。そう思っていると声は大きくなってきていた。

 

『Lukrie veltora dolmed oltra vie!』

 

『Lekos! 30%! Heroa tmie reo!』

 

 知らない言語、知らない音で怒鳴り合う《ヒト》の言葉が聞こえた。知らない声だった。だが理解するのはそれが、何かを話し合っているという事だけだった。それが何かを伝えようとしているという事も。それだけが理解できた。もっと、その内容を知りたい。そう思った途端、ラジオのダイヤルを回すかのように言語がチューニングされた。言葉が知らないものから、知っている人の声を使って、知っている言語へと会話がチューニングされた。それは理解出来る内容だった。

 

『この計画はいずれ私達を破滅させるぞ!』

 

『承知の上だ! 30%だぞ! 人類の絶滅率は既に30%を超えたぞ!』

 

『解っている! だけどそうじゃないだろう!? 竜機兵に頼る様であれば結局は元の木阿弥だ! 俺達は生き残るための戦いをしている、そうじゃないのか?!』

 

『じゃあ黙って死ねとでも言うのか? 強化処理を行った者に封龍剣を持たせて戦うのだって限界が来る。局地戦にカスタマイズされた竜機兵を投入すれば数で龍を圧倒して倒せる!』

 

『その龍の死によって生み出されたエネルギーをどうするつもりだ、《悪魔》は火山に沈んで龍の生命エネルギーも火山のエネルギーも喰らいながら成長しているぞ!? 今からでも遅くはない、戦う事じゃなくて逃げ、許しを乞う事を考えるべきだ!』

 

『馬鹿か! 畜生に言葉が通じる訳ないだろうがっ! 是は人と龍の生存競争だ! 殺さなきゃ殺されるんだよ! 手段を選ばずに殺す以外にないのさ、俺達には!!』

 

 ハンマーで殴られたかのように言葉が染み込んでくる。どちらも本気で叫んでいた。自分の言葉こそが最も正しい物であると、それが先へと繋がる物であると、その意思が言葉に乗って伝わってくる。扉の向こう側では掴み合う程の強い感情と意思を持った人々の叫び合いが続いていた。だが通路を足を止める事無く進んで行けば、その声も変わって行く。誰か、俺が忘れてしまった誰かの声を使って、俺の知らない誰かの遠い昔の言葉が、俺の知っている言語にチューニングされて聞かされる。

 

『効率的に龍を殺すには……殺すには……やはり毒か……いや、毒じゃない。毒さえも抵抗力を覚えるのが龍だ。一回の感染で確実に殺すには身体機能を破壊するのが早い……』

 

『祈るのです、我々の神に。龍の蛮行から我らを救いくださる事を』

 

『違う、違う違う違う! このアプローチじゃダメだ! 龍の活性化は根本的に生物の原理ではない! なんだこのエネルギーは! 一体どんな理論で発生しているんだ!』

 

『駄目だ、既存の概念では奴には勝てない……属性のエネルギーを吸収する……吸収の出来ないものがいる……毒? ただの毒じゃダメだ、それこそ白血球や赤血球を再生不可に追い込むような毒がいる……』

 

『呪われろ、悪魔め……悪魔めぇ……!』

 

『紛い物だから勝てないのだ……勝つのなら本物を、同じものをぶつけるしかない……』

 

 希望を繋げようとする声。縋りつく声。何かを見出そうとする声。殺意に全てを委ねた声。獣として狩る事を選んだ声。そこには様々な言葉が存在した。だがその全てが事実として、心の奥底では死を感じ取る様な色を孕んでいた。濃密な絶望がここには漂っていた。甘い、甘く蕩ける様な死の匂いがここには充満していた。香しく、そして身を任せてしまいそうになる匂いだった。

 

 ないな、と思った。

 

 二度目はない。前にそう思ったはずだ。そう思った自分を思い出した。故に唾を足元に吐き捨てながら、再び歩き出した。それに合わせ、言語が再生される。古く、ずっと昔から刻みこまれた声と想いが、狭間の中で再生される。

 

『あぁ……駄目だ、時間が足りない……』

 

『無理だ……』

 

『時間が足りない……未来に、滅んだあとに託すしかない……のか……?』

 

『くくく、ふふふ、ひひひひ、はははは……滅べ』

 

『どうせ死ぬんだ』

 

『だったら俺一人だけとか寂しいから』

 

『皆、狂っちまえ』

 

 半透明なシルエットが通り過ぎる。喉を掻き毟りながら絶命する姿。両手の爪が異様に伸びた姿が他の首を突き刺し抉る姿。顔面に噛みつき、顔の皮膚を剥ぎ取る姿。男の逸物を噛み千切る女の姿。腸を引き抜いて鞭のように遊ぶ姿だ。笑い声を響かせながら妊婦が自分の腹から出来かけの赤子を引き抜いた。子供が子供を犯し、その子供は別の男の頭の先を歯を折りながらかみ砕いていた。

 

 そこに正気なんてものは存在しなかった。狂気を反映したシルエットが背後へと過ぎ去って行く。

 

 過ぎ去りし狂気の残響。それが狭間の中に残されていた。どこの狭間、と考える事はしない。それは呑み込まれるという認識を生み出すから。故に白痴のまま、未覚醒の状態で歩く。何時の間にか空間には黒い鱗粉がキラキラと禍々しい輝きを見せながら舞っていた。足元を紫色の液体が溢れており、背後へと向かって流れている。黒い睡蓮が紫色の液体の上に咲き誇り、道を狂気で彩る。

 

 そしてその狂気を冷気が氷結させて行く。睡蓮が、鱗粉が冷気によって氷結されて行き、体に絡みつく鬱陶しい腕が少しずつ凍り付いて行く。それを振り払いながら進んで行けば、狂気に満ちた空間はやがて、厳かな雰囲気を持つ冷道へと変化し、氷の破片が静かに舞い、紫色の液体が流れる空間へと変貌する。床も壁も凍り付いた中で、その果てに、

 

 氷の玉座に座る姿を見た。そこに居るのは裸体を晒す少女だった。片肘を氷の玉座に乗せ、片目を覆い隠す前髪が後ろ髪同様、背丈を超えて玉座から床に伸び、蒼から白へと変色するグラデーションを見せていた。その大きな胸を一切隠す事もなく、色素の薄い肌を露出していた。だがそこに、淫靡さを感じさせるものは何もなかった。少女という姿が邪魔をしている訳ではなく、純粋にその存在が放つ気配が、美しすぎた。

 

 余りにも、美しすぎた。触れればそのまま壊れてしまう芸術品の様なほどに。直感的に理解させられるのだ。直視しただけで、それは―――人ではないのだ、と。

 

 少女が口を開く。

 

『世は』

 

 そこから漏れ出したのは、人の声ではなかった。もっと原始的で、もっとシンプルで、最も複雑な―――龍の声だった。それが言語として、直接脳髄に刻まれる様に音となっていた。

 

『不思議なものである。時に狂気とも呼べる執念は摂理を超える。だがそうあってもそうデザインされた存在を超える事が出来ない―――真実は、最も無残で残酷である時が多い』

 

 歩き、進む。ゴールは見えていた。絡みつく感触を引き千切りながら、死にたくはない―――まだ死ねない。まだだ、まだだ、まだだ。心の中でその意思と渇望だけを燃やして、動き続ける。玉座へと向かって一歩ずつ進む。

 

『大儀であった。貴様は私を解放した』

 

 一歩、進む。

 

『だが試練はこれだけでは終わらない。彼の《悪魔》が存在し続ける限りは』

 

 一歩、進む。その姿を見て、ニヤリ、と肉食動物の様な笑みを向けられた。

 

『あぁ、だが諦めきれないか?』

 

 答えるまでもなく、前に出る。

 

『進む事を選ぶか。ならば喜べ、貴様を蝕むその病を一時的に抑え込んでやろう』

 

 足を前へと運ぶ。体が前に進む。玉座にまた一歩、近づいた。もはや玉座は目の前にあった。ここがゴールだった。もはや先に進める場所なんてなかった。ここが終わり、終点、進むべき場所の果て。だから最後の一歩を踏み出し、

 

 人の姿をしている龍の顔が眼前に迫った。

 

『―――霊峰、そこにて待つ。更に強い雄となって来い。それが私を生んだヒトという種の義務だ。貴様の試練はここからだ―――心しろ』

 

 

 

 

「けほっ、こほっ、ごほっ、おえー……気持ち悪い……」

 

「ぶもっ! ももっ! ぶもっ!」

 

 生暖かい感触を顔に感じれば、目の前にウリ坊の顔があった。舌を伸ばして顔をべちょべちょに嘗め回す他、小さなタックルを叩き込んできていた。その甘えん坊な姿はまだ、両腕で抱き上げる事が出来るサイズだった時から一切変わらない様子であり、思わず苦笑が漏れてしまった。体を起き上がらせ、ポンチョの端でべちょべちょになった体をふき取りながら上半身を持ち上げる。スムーズに動く体はまるで何も問題がないかのようだった。その事実を不思議に思いながら、突進して体を擦りつけて来るウリ坊の頭を撫でて、とりあえずは落ち着かせる。

 

「こらこら、大丈夫だから甘えるなって……ったく」

 

 呟きながら体を持ち上げる。

 

「本当にファンタジーだなぁ……」

 

 立ち上がった所で体を伸ばし、手を広げ、体に触れる。腹に触れれば、そのまま内臓が溶けそうな感じがあったのに、今ではそれがまるで感じる事もない、健康な肉体そのもの……に、なっている気がする。

 

「夢―――じゃないよな」

 

 目の下をさすれば、乾いて張り付いていた()()()()()()が剥がれた。軽く指先をナルガナイフで傷つけて血を流してみれば、それがまだ、紫色を―――狂竜症に感染しているという事を示す色をしていた。どうやら、体のぼろぼろな部分が治っただけで、狂竜症そのものが治療されたわけではないらしい。

 

 ()()()()()()()()()()()()様だった。

 

 顔に触れ、体に触れ、チンコを触ってみてまだ立派に人間の男だな、と軽くツッコミが永遠に来ないボケを行いつつ、無くしてしまった道具を思い出し、そして自分が今、遺跡の前にまで戻っている事を確認した。

 

「ファンタジー……」

 

 モドリ玉とかあるしなぁ、では片づけられない。

 

「うーん、ファンタジー……原理とか理論とか全く解らねぇ……」

 

 だけど、全ての行いには因果関係が存在する。何かあった事に対して、何かを得た事に対して、隠されていた力が……なんて、ご都合主義は発生しない。自分の体がこうやって動く以上、何らかの力が発生したのだ。それは夢なんかじゃない。自分が此方の世界へと渡ってしまったように、アリスがワンダーランドへと落ちて来たように、自分もまた、一つのファンタジーを経験したのだ。

 

 納得できるかどうかは別として。

 

『強くなれ、そして私の元に来い。その時を楽しみにしている』

 

 龍の声に素早く振り返れば、そこには人の気配も、龍の気配もなかった。ただ、神殿遺跡の入り口、そこに凍った黒い睡蓮が置いてあった。近づき、それに触れて持ち上げる。不思議と、その氷は手の熱で溶ける様な事はない、面白い性質をしていた。顔を近づければ、花の匂いもする……。

 

「ま……今は話に乗るしかない、か……」

 

 そう呟き、凍り付いた睡蓮をベルトに追加する。お守りには丁度いいだろう、と。名づけるとしたら……《凍る夢》、とでも言った所だろうか? 睡蓮が絶望を、氷がそれを閉ざす希望を……と、考えるのは少々ロマンチックすぎるだろうか? 睡蓮の花言葉には確か、《滅亡》もあった筈だ。存在しない筈の黒い睡蓮。狂気。滅んだ文明。そして残された竜機兵。

 

それらのワードを繋げて連想するのは果たしてどうなのだろうか?

 

まぁ、どちらにしろ思惑は適った。狂竜症に犯された体は健康を取り戻した。何なのだろう……凍らせたのか? それとも壊毒で病を殺した……とか……? だがその場合、あそこまでぐずぐずになっていた肉体が再生した理由が解らない。

 

やはり、モンスターハンターはファンタジー。

 

 ワープ攻撃とか超変形して来るUNKNOWNが存在する世界で今更と言えば今更なのだが……それでやはり、ファンタジーだ。

 

「しっかしどんな理論なんだろうなぁ、ウリ坊?」

 

「もっ! もっ!」

 

「嬉しいのは解るけど突進はやめぃ。体が辛いわ」

 

 なぜか治っているが―――体内から狂竜ウィルスが駆逐されている様ではなかった。ハンター達の様な、コントロールされた状態に抑え込まれた、とでも表現すべき状態に突入しているのが近い……のかもしれない。ただ体に力を込めた感じ、手応えは症状が発症する前の状態となんら変わりない。

 

 どうやら相変わらず、異世界トリップジャンルは俺に厳しいらしい。人生がハードモードならもうちょっとズルしてくれてもいいんじゃないだろうか?

 

「……いや、命を拾えただけでも十分か」

 

 それに文句を言えるような事はないだろう。生きているだけで十分すぎる程、貰っているのだ。だから文句を言うのも考えるのもやめて、ウリ坊の頭を撫でてからその背に跨る。

 

「さ、帰ろう。今日は少しだけ豪華にやるとしようか。塩が作れるおかげで最近は色々と美味しいものが作れるしな。ちょっと山羊乳のシチューとか挑戦してみるか?」

 

 調味料は塩、そしてトウガラシがある。それ以外にもハーブっぽいものは採取出来ているのだ。それを調味料に調整しつつ山羊乳を鍋で沸騰させ、そこに肉や野菜を入れたシチュー……地球で食べる奴程美味しくはないだろうが、それでも栄養満点で素材を大量に投入した飯だ。ここでは最高のごちそうに入るだろう。

 

 ここ最近、ウチケシの実しか食ってないからお腹がすいて来た所だ。とっとと帰ろう。

 

「ぶもっ!」

 

 勢いよく返事したウリ坊が足取り軽く、山道を降りて進んで行く。何とか命を繋いだという安堵が心の中に広がっている。やはり、命が助かった事には何らかの契約を施された身とはいえ、安心できる事だった。

 

「ってやべっ、剣を置いて来たままじゃねーか!」

 

 下山する前に、急いで剣の回収に戻った。

 

 ちょっとだけ、呆れたような気配をどこからか感じつつも、片手剣やナイフ等意識が朦朧とした中で落としたものを回収してから再びウリ坊の背中に跨って下山を開始する。

 

 ウリ坊の背中で軽くゆられながらも、頭の中に満たしてくる感覚は何故、どうして、どうやって、という疑問の連続だった。

 

 故に拠点まで帰る時間の間に、冷静に情報整理を行う事にする。

 

 まずは自分は狂竜症に感染していた。その感染経路は神殿遺跡だ。《生と死の狭間》で見たアレは《夢》、と呼称しよう。あそこで見る限り、一種の遺伝子改造、生物改造、或いは生物建造によってゴア・マガラは生み出された。狂竜ウィルスは効率的に敵対していた竜や龍を屠る為に生み出されたのが経歴であった。だが破滅を前に発狂し、暴走する。狂竜ウィルスを神殿内に放ち、バイオテロが発生した。

 

 発狂した人間が狂気に駆られながら身を滅ぼした。

 

 それがあの神殿の荒廃の理由だった。だから狂竜ウィルス、というよりはプロトタイプ狂竜ウィルスに感染した。プロト・マガラが野生化し、そして進化したのが現代に生きるゴア・マガラ、シャガルマガラなのだろう……と、憶測する。

 

 そしてそれと同時期に《悪魔》を殺す為に生み出されたのが《極氷》か、或いは《絶氷》とも表現される《番人》の龍だった。聞こえた声では生物として完成するまでは時間が足りない……だったか。

 

 だが自分とエンカウントした《番人》は古龍? としては完成されていた。或いは神殿の地下に封印されている年月が眠り姫を完成させたのかもしれない。その能力は、データとして良く知っている。《悪魔》を殺す為に属性エネルギー以外の力を搭載した、というのはアイデアとしては悪くないと思う。

 

 《壊毒》、ゲームシステム的には最悪に部類される毒の一種、それを眠り姫だった龍―――つまりドゥレムディラは搭載していた。ゲーム的には魔境(フロンティア)出身、そして生息地は古代の文明であり、その建造物の天廊出身だった筈だ。いや、そういえばアレコンテンツ終了したんだっけ、と思い出す。

 

 ただ古代文明の建造物、そしてそこの番人として君臨していた龍。

 

 剥ぎ取りでも固有の素材は取得できない……筈だった。確かに、まぁ、竜機兵とも思えなくはないのだろうか……? まぁ、どちらにしろ、推論を立てるにはちょっとファンタジーが強すぎる。地球であれば100%科学で大体の事が解決できるのに、この世界ではふわっとしたファンタジー要素が強すぎて、何がどうという事を考えづらいのだ。

 

 もうバスターゴリラ的な思考に切り替えた方がいいのだろうか。

 

 というかなんだよ、人型モードって。公式でもそんなネタはあったけど。というか見た目が幼くて微妙に犯罪チックだったぞ。法律なんてこの野生には存在しないけど。

 

 相変わらず、考えれば考える程頭がおかしくなりそうな世界だった。と言うか心臓ぶち抜いても心臓が動き続ける奴とかいるし、考えるだけ無駄だよなぁ、ここら辺、と悟っておく。

 

 ただ、現状、積み上げた情報の中で唯一理解出来ているのは、自分の狂竜症が決して完治している訳ではない、という事実だ。そしてその為、最終的には眠り姫の所へと再び向かう必要がある。

 

 彼女は言った。

 

 霊峰で待っていると。

 

 そしてここで霊峰と呼べるような場所は一つしか存在しない。あの神殿遺跡の最上階から山の頂上へと向かって続く道だ。それだけがおそらくは霊峰と呼べるようなエリアへと続いている道だ。何せ、それがこの場所で最も高く、そして険しい道であり、雲を貫く山の頂へと続いているのだから。

 

 行くとしたら春か夏、最低でも暖かくなっている季節じゃないと凍死すると考える。それにもっと強く、という言葉が気になる。

 

 それに試練はここからだ、という言葉も気になる。

 

 気になる事が多すぎる。もっと、こう、手加減をしてくれないだろうか。

 

「なぁ、ウリ坊」

 

「ももっ?」

 

 下山し、丘に入った所でウリ坊の頭を撫でながら同意を求めれば、上へと視線を向けようとしながら首を傾げている。全く、可愛らしい奴め。元がブルファンゴだとは思えない程愛い奴に育ったなぁ、と思う。臨死体験というか一回、確実に死んだ心にその愛らしさが染み込んでくる。

 

 やっぱり、アニマルセラピーは効果があると思う。

 

「帰ったら美味しいもん食ってゆっくりお昼寝しようなー」

 

「ぶも!」

 

「クェァッ―――!」

 

 同意するような声に続いて、鳥の嘶きの様な、しかし強烈な音が響いた。ウリ坊の背に乗ったまま、空を見上げれば、そこには此方に狙いを定める様に空を旋回しつつ、どこか赤黒いオーラを纏った桃色の怪鳥の姿が見えた。その身に纏うオーラはどっかで感じた事があるなぁ、と思っていたら四六時中感じているお辞儀覗き魔龍の視線から感じる気配と同質のものだった。

 

「試練ってこれかー……」

 

 呟いた直後、

 

 空から爆撃の様な速度で超重量が叩き込まれてきた。




 モンハンは生態や理論がちょくちょく出ていてもファンタジーである。

 時折古龍が人に擬態して挑戦状を送ってくるし。明らかに同一個体っぽいのが出て来るし。それでいて負けるとキレてラース化するのがいたりするし。殺したのになぜか蘇るし。

 モンハンは中身があるようでファンタジーな部分が多い。ファンタジーというかファジー。笛の音を聞いてパワーアップってお前どういう事だよ! と言いたくなる時は度々ある。自己暗示にしたって風圧無効は理解できないよね、って。

 眠り姫の目覚めにめっふぃーもちょっと目を覚ましたので生態系激化、チュートリアルの終わりと本番の開始はオーラ先生で。
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