アイルー達との会話は困難を極めた。当然ながら日本語と英語とスペイン語しか喋れない身に異世界語はまだ無理だった。そしてアイルー達も基本的には公用語以外はアイルー達の言葉しか喋られない為、お互いに意思疎通に多大な苦労をする必要があったのだ。これはかなり苦労させられると思ったのだが、
「ニャ、ニャニャ? もしや異世界語……かニャ?」
その言葉に、脳内の全てが吹き飛び、走り寄りながら抱き着いてしまった。
「にゃー!? 落ち着くニャ! 焦る必要はニャいから! ニャ! ニャァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」
ぶっちゃけ泣きそうだった。というか泣いた。わんわん泣いた。正真正銘の日本語をそのアイルーは、その一匹だけは口にする事が出来たのだ。久しく聞く、独り言ではない誰かの声に、今まで自分の胸の中にあった寂しさが爆発する様で、凄く、凄く苦しかった。だけどそれで自分はまだ心が死んでいない、生きている人間であることを実感できた。四年間の孤独が一気に噴出するような形だった。
寂しかった。それを寂しいと思わない様に脳内を別の事で常に満たしていた。
だがこうやって言語が通じた瞬間、涙を我慢できなかった。あぁ、涙が流せる俺はやっぱりまだ人間だ。人間の筈なんだ……まだ生きている……おれは、まだ、しょうきだ。その確認を行えた事が嬉しかった。言葉を喋られる人間性が残っていたのが泣けた。ただただ、本当に嬉しかったのだ。
おかげで結構泣いてしまい、アイルー達から生暖かい視線を向けられてしまった。
そういう事で、アイルー達が《箱庭》に合流した。破壊された船は一旦そのままに放置し、アイルー達を連れて神殿を通り、第二拠点へと案内する。アイルーの数は全部で25匹程、結構大きな数のチームだった。それもその筈、このアイルーは《ギルド》という組織に所属する一種のエージェントであり、独自の行動権で未開拓地を探索するサバイバルスペシャリストチームだったらしい。
選抜されるアイルーもアイルー式のハンターであるニャンターや、アイルーのトレジャーハンターであるトレニャーの中でも上位の実力を持つ者を選抜しており、自己責任をモットーに無謀な調査と開拓を行う命知らずのクレイジーチームだったらしい。今回、此方の大陸へとやってくるのも海はあのラヴィエンテが、そして空はシャンティエンが存在している為、大型の船団を出す事が出来ないギルドの代わりに調査に来たのがこのクレイジー猫さんチームだったらしい。小さく、そして少数。全滅した場合の損失はそこまで重くなく、アイルーだったらまぁ、なんか助かるんじゃね……? 的なノリで突っ込んできたらしい。
実際に生き延びてるから凄い。
しかし海にラヴィエンテ―――つまりは砂浜の主の事だろうが、それとは別に空にシャンティエンがいるとは初めて聞いた。いや、おそらくはこの《箱庭》に入り込まない様に見張っているのだろうか?
ラヴィエンテにはそんな気配欠片もないから、たぶん本当にぼけー、っとしてるだけなのだろうが。
それはともあれ、そうやってアイルー達を第二拠点と第一拠点を紹介し、連れ込む事が出来た。アイルー達にその事情を聴かされたので、唯一日本語が解るアイルーに、今度は此方が事情を話す番だった。だがその前に、どうしても知りたかった。何故、アイルーが存在しない筈の日本語を知っているのか。それが物凄い気になった。拠点に連れて来た所で、それをアイルーへと聞けば、
「時々異世界から人が来るのニャ」
「異世界」
「そうだニャ。大体の場合はメゼポルタ広場かドンドルマの街で見つかるニャ。何度か繰り返し現れるから一部のニャーたちは喋る事を練習して覚えたニャよ」
「はぁー……俺以外にも不幸の極限に突入した様な奴がいたのか……」
「にゃー、詳しい話を聞かなきゃ解らないにゃいが、大抵の場合は特に何も起きる事無く、装備のレプリカや設計図を置いて帰ってるニャよ?」
「アレ? 一般人じゃない?」
「うーん、この前現れたのは丸太を持って、丸太は持ったな? と確認してから突撃してた人だったニャ」
それ、コラボ先じゃねぇか。という事は最強の悪魔狩人さんとか、運命なアーサー王とか、無限で蒼穹なアイツとか、無限バンダナを装備したおじさんとかも迷い込んだことがあるのだろうか……どうしよう、予想外にメゼポルタが魔境過ぎてコメントを失う。そして同時に、彼らが消えて自分の世界へと帰ったという言動は、自分の中に一つの希望を生み出した。彼らはここに流れ着き、技術や装備を分けて、そして再び消えて行った。
つまり、帰る事が出来るのだ。
その為にも、増々死ねなくなった。だからアイルーに自分の境遇を口にする。何時の間にかここに居た事、ここで経験した事、今何が起きているのか、そして何をしているのか。自分の知っている四年を通じた事の情報を共有し、唯一自分の言葉を理解できるアイルーに聞かせ、返答が返ってくる。
「オミャア、頭おかしいんじゃねーの……?」
「解せぬ」
戦慄を浮かべる表情でそんな事を言われた。
アイルーが合流してからの夏季は、忙しくなった。まずギルドに所属するアイルーとは一つの契約を結んだ。アイルー達の為に行動し、そしてアイルー達が俺の為に活動をするという相互の補助契約である。アイルー社会は基本的に物々交換であり、貨幣制度が存在しない。そして基本的に、契約をベースに行動する為、最低限の契約行為は必要だった。何より、ここでの全ての活動を
そういう事で相互の協力体制を作る事に成功した。船が破壊されてしまった以上、アイルー達はギルドの開拓船団本隊がやってくるまではここで生きて行く必要がある。そして環境を考慮する以上、アイルー達だけでの活動は難しい。一応、高位ニャンターも一緒にいるらしいので戦力的にも一気に強化された形だった。だがそれ以上にそれぞれの分野に対して理解のある猫が増えたというのが何よりもうれしい話だった。長期で未開拓地を探索する以上、そこでコミュニティを作り上げるだけの能力が必要だから、農業や建築、鍛冶等の技術を覚えているアイルー達が集まっていたのだ。
そう、あのメゼポルタの工房で技術を覚えたアイルー達が、だ。
まず最初に拠点を見せて怒られた。こんな粗末な物を家と呼ぶのは冒涜であると。お前、これを畑だと言いたいのか? 舐めてんの? あぁ? ……という形でアイルー達が食って掛かった。そこは通訳して貰わなくてもあっさり理解できる事だった。そしてそうやってどこか、自分が四年間世話になった拠点を見ると、一気にその改造に乗り出したのだ。一番安全である第二拠点をベースに、自分が建築した家を一旦改造し、浜辺から破壊された船の木材やパーツを分解して運び込む。
それらを材料に、まずは工房を作成した。何をするにしてもまずは補助具などを作成する為の環境を構築しなくてはならなかった。最低限の道具は船の中に積んであった為、アイルー達に鉄鉱石などの見分け方を教わりつつ、鍛冶場を整える為の重たいものをウリ坊やホルクに運ばせた。
そうやって運び込んだ火事場で、採掘してきた鉄鉱石などを金属へと加工する。ハンマーやのこぎりという道具を持っていても、それらは根本的には消耗品である為、まずは作業用にそれを揃える。スコップ、ピッケル、ハンマー、斧、そういう道具を片っ端から親方アイルーは作成して行き、一瞬でこれからの生産体制を行う為の道具を鍛冶場で作り始めていた。そうやって道具を受け取った大工アイルーは木材を確保する為、樹海へと案内し、そこで木材を調達しながら新しい家の建築を行い始めた。
他にも素人の仕事だった畑を改善して、持ち込んだ作物の種を使った農業を開始する。アイルー達はそうやって物凄い慣れた様子で第二拠点、第一拠点の風景や姿、環境を崩さない様に改良しつつ生活環境を改善する為に動き出した。流石歴戦の開拓チームだけあって、その動きには一切の迷いはなく、そして飛竜避けの為の環境や拠点の作り方も良く知っているらしく、それとなく飛竜とかが入って来にくい様に拠点の改造を進める。
そうやってアイルー達が《箱庭》に到着してから一カ月。
エルペとムーファにはむはむされながらアイルー達によって拠点の姿はガラリと変わった。殺風景だった第二拠点は鍛冶場を構築した他、岩壁を直接掘る事で拡張を行い、その中に工房を設置したのだ。寝泊りする為の家は外に、もっと空気が通りやすい場所を選んではいるものの、やはり岩壁をある程度爆破などを駆使して破壊しつつ広げるというのが基本的な方針だった。だがそうやって生み出された家は、自分が作った物よりも遥かに快適だった。
第一拠点、ツリーハウスは根本的に作り直し、自分のそれが児戯だったというのを改めて理解させられるレベルで完璧なツリーハウスを構築し、畑を一旦潰して再整備、育てる野菜や果物を複数の畑で管理するシステムを構築した。それだけではなく、南部の川から水路を掘る事で森林に新鮮な水を届ける事で風呂を作る事に成功したのだ、このアイルー共は。
自分の四年間は何だったのだ、というレベルで大改築と改造をアイルーは行っていた。ただ唯一、家畜周りに関してだけはどうやってここまで手懐けたの? と首を傾げられる程だった。ここまで懐いて一緒に暮らすのは野生の状態ではどうやら、珍しいようだった。
そうやってアイルー達と出会い、合流した事で、生活は大きな変化を得ていた。
「……」
朝、目覚めればベッドの上で起きる。夏である為、上には何もかけていない。だが自分はちゃんとしたベッドの上で目覚めているのだ。その凄まじいまでの違和感に、今でも目を覚ましてからあれ? と首を傾げてしまう。上半身を持ち上げて、そして自分の姿を見る。
ちゃんと、布の服を着ているのだ。
服が、ちゃんとしているのだ。
縫い目がぼろぼろじゃないし、無理やりセッチャクロアリでくっ付けている訳じゃない。まともな服装を寝間着として使っているのだ。最初は布が勿体なさ過ぎる、とアイルーに返そうとしたら憐れな存在を見る様な視線を向けられたので、布の作成も難しくないという事が発覚した。
ちゃんとした寝間着にナイトキャップ。髭も綺麗に剃れる様になった。髪の毛もバラバラじゃなくてアイルーが綺麗に切り揃えてくれる。枕はふわふわ。ベッドはふかふか。毎朝、起きるたびに泣きそうになる。こんな、涙脆いっけ、と想いながら起き上がり、その日の着替え―――新しいインナーを手に取る。
親方アイルーが自分が使っていたゲリョス製のインナーを作り直してくれたものだ。もっとスマートで体にフィットするボディスーツの様な物に仕上がっている、
どれも新品。
汚くない。不快感が欠片もない。
やっぱり泣きそう。文明って素晴らしい。文化って素晴らしい。改めてそれを感じさせる。そうやって着替えて、ツリーハウスの外へと通じる扉を開ける。今までは皮張りだったツリーハウスも、完全に木製の上に毛皮のカーペットまで中に敷いてあるのだから、大きな変化だ。しかも下へと移動しやすい様にツタではなく梯子が設置してある。生活の快適さを感じながらツリーハウスから降りて行き、
地上に降りた所で川から引いた水路から水を両手で汲み上げ、それで顔を洗う。塩を指先に塗って、それで歯を磨き、口をゆすぐ。そして水面に映る自分の姿を確認し、少し血色がよくなったのを見る。生活環境がアイルーによって改善された事によって、大分人間らしい色をする様になったように見える。
それを確認していると、遠くからカーン、カーン、カーン、という音が聞こえてくる。もう既に岩壁の方では工房が稼働を開始していたようだった。あちらでは鉄を使った道具の作成のために日夜働いている。竜対策の道具も色々と作成しているらしく、恐らく一番働いている所でもあった。その金属を叩く音は、まさしく文明の気配である為、少しだけ、安心感を覚える。
そうやって朝の軽いリフレッシュを終えたら、畑近くの広場に設置したキッチンへと向かう。アイルー達が船に積み込んでいたキッチンを、こっちへと運び込んだ形だ。フライパン、スパチュラ、鍋、網、料理用の道具が揃っている他、なんとアイルー達が持ち込んだものの一つには芋があったのだ、芋が。種芋もあった。それを使って今は畑で芋を増やしている最中だった。その外にも栄養が高いと認識されているトマトや玉ねぎも育てている最中でもある。
キッチンの横のスペースに積まれている使える食材をチェックする。
「んー、ハッシュドポテトでも作るか」
そう呟き、朝食の為にジャガイモの下処理に入る。作る物はハッシュドポテト、アイルーが持ち込んだ鶏から取れた卵で半熟卵、サラダ、そしてスープも作る。自分にはそこらへん、基本的な道具や知識がなかったのだが、アイルー達がそれを補ってくれたおかげで日本で作っていたレシピを簡易的にだが再現できるようになったのだ。やはり食文化は文明の極みだよな、と環境が本当の意味で整った事で色々と料理が作れるようになったのは嬉しい。
日本に居る間も、基本的に大学に入ってからは一人での生活だった。
寂しく思う事はあったが、それ以上に一人での生活は楽しかった。節約する為に安いレシピを探したり、どうやって少しでもガチャに回す為のお金を確保するとか……そういうことばかりに頭を回してはガチャったりゲームを購入したりする日常だった……あの頃が懐かしい。
料理出来るのに道具も材料もなければ全く意味がない。だけどそれもこうやって揃えられたのだから、漸く人間らしい食事が出来るようにこの夏季、なり始めていた。
「うっし、いい感じに色がついて来たからひっくり返して、っと」
ポテトの中には改めて正しく学んだ血抜きの仕方で作って燻製肉を細かくしたものを軽く火を通してから混ぜている。これがけっこー美味しいのだ。半生でも今の内臓であれば普通に食べられるし、火加減をミスっても平気なのが悪くない。まぁ、時折竜を見かけたらアイツの血肉美味しそう……と思ってしまうのが弱点だが。
まぁ、それはそれとして、
朝食の準備を進めていれば、その気配に誘われる様に出現して来る家畜共やアイルーの気配を感じ始める。匂いに釣られる様に出現する姿に何時も通り確認を取りながら、覚えたての共通語の軽い片言でテーブルにお皿を並べる様に指示を出す。木から切り出したテーブルの上にアイルーが料理を並べて行くのを眺めつつ、サラダの余りをエルペやムーファの方へと投げて、つまみ食いさせてやる。
「ニャァー……朝から美味しそうな匂いをしているのニャ」
「おや、おはよう《先生》。今日は起きるのが遅かったな」
「ニャニャ、遺跡から持ってきた文献を眺めてたら夜更かししてしまったのニャ。それにしても良く《サバイバー》にゃんはそう細かく料理が出来る物だニャ」
「これが俺の所ではスタンダードだったからな、っと! はい、お皿を出してー」
言葉を口にすれば、言語が通じなくても匂いと雰囲気で察したアイルー達が皿を掲げて受け取りに来る。本当に見ているだけで心が癒される連中だなぁ、と想いながら数か月前と比べ、はるかに進歩した食料事情に苦笑を零す。栄養だけを取っていた状態から、今では食事が娯楽になりつつある。そのおかげか、前よりも肉体に力が入る様になった。やはり、最低限を確保する……だけでは体には余り、良くなかったようだった。
テーブルに着いた所でアイルーと一緒に、自分で作った朝食を食べる。それを口にし、やはり美味しいと思う。
最初はアイルーが料理を作ったのだ。専属のシェフがいる訳ではないが、オトモ経験のあるアイルーであればキッチンを使う事ぐらいは基本技能らしいのだ。その料理は無論、美味しい、
美味しいのだが……こう、地球人からすると大雑把なのだ。別に、プロの料理人を目指していた訳ではないし、自活レベルで料理をしているだけだったが、それでもアイルー達の料理はなんというか雑というか……文化的に未成熟さを感じるものがあった。
というのも食材に込められた力を最大限に引き出す為に、食材の味をフルに活かした豪快な料理がこの世界における食事のスタンダードらしい。大きくブロックに切った肉を焼いて味付けし、豪快に齧りつくとか、そういうレベルの料理だ。不味い訳じゃないのだ、下処理とかちゃんと行われているし。
ただ、雑なのだ。美味しいけど。
そこが日本人として許せなかった部分だった。もっと、こう、なんかあるだろ! 調味料も材料も道具も揃ってるんだから! という主張の結果、地球産の料理を提供してみればこれら、方向性がこの世界の料理とは違って斬新という新鮮というか、ここまで細かく料理するの……? 的な雰囲気がアイルー達から漂う、という面白い反応が見れた。
これが異文化交流、という奴なのだろう。
シェフ経験のあるアイルーからすれば細かい処理や工夫を行って味を出来るだけ引き出そうとする地球の調理方法は珍しく、そして興味深く、それで能力的なボーナスが付かなくても食べたくなるものらしい。
そう、料理を食べると強くなるらしい。アイルーも。
意味が解らない。ただ相変わらず、自分には全く影響がないので、厨房は握らせて貰っている。小麦粉があればもうちょいレシピが増えるんだけどなぁ、と思いつつテーブルに着いた所で、
アイルー達と朝食を囲む。とりあえず仕事を置いて、集まったアイルー達が朝食の間、にゃーにゃーと鳴いたり、公用語で情報交換を行う様に話し合うのが見られる。その大半は流暢すぎて自分には理解できない会話なのだが、となりに座ってくる三毛猫のアイルー、唯一日本語、《異世界語》と認識しているそれを喋ることができる彼、《先生》がかいつまんで通訳してくれる。
「ニャニャ、《遠征工房長》によると両手剣の修復はやっぱり材質が不明過ぎてどうしようもないらしいニャ。潰してサイズをもう一回り小さく作り直すならどうにかなるらしいニャ」
「マジかー……修復不可能かー……」
「しゃーないニャ。メゼポルタかドンドルマにゃらどうにかなったかもしれないかもニャ。ただ使えるリソースは限られているから潰して新しいものに流用するのをお勧めするニャよ」
「じゃあ潰そう。ついでに両刃槍も材料として使って欲しい。竜の素材も結構色々と溜め込んでるしな」
「ニャニャ……ニャ?」
「ニャニャ……にゃ! にゃーあ、ニャ!」
アイルー達の会話は見ていると非常に和む。それを見ているだけで一日を終わらせられる程度には。とはいえ、そうもいかないのが大変な所なのだが。先生と工房長と呼ばれているアイルーが話し終わると、先生がこっちを向いた。
「にゃにかリクエストがあるにゃら言って欲しいと言ってるにゃ。本場の施設とは違うからハンターさんが装備するみたいな特別なスキルを与える武具は作れにゃいけど、それ以外の品質なら保証するにゃ」
「おぉ、じゃあ後で設計図を引いて持ち込むわ」
「出来るのにゃ?」
中学校の頃に設計図の書き方をカリキュラムで習っているので大丈夫だ。今思えばなんで学校であんな事を教えられたのかは解らないが、謎な技術として今、役立つのだから良しとしよう。工房長アイルーは此方へとニヤリ、と笑みを浮かべてからサムズアップを向けて来るので、サムズアップを返しておく。その間にも先生は情報を集め、それを教えてくれる。
「ニャニャニャ……馬鹿みたいに鉄鉱石が足りなくて希少鉱石ばかり出る? 逆に考えるにゃ、それをスタンダードにするニャ。今日からはフルクライトの螺子を使うのにゃ。使い方がアレ過ぎて正気を疑うニャこれ。……ニャ? コショウを見つけた? サトウキビの横に生えてた? 花畑にある湖の反対側に生えてたのにゃね。動植物の生態系ガン無視凄いニャ。だけどコショウの補充が出来るのと砂糖を手に入れられるのは物凄く嬉しい事ニャ。だけどなんでマタタビを一切見かけないニャ? なんでニャ? 舐めてんのかニャ?」
話を横から聞いているだけでもかなり正気を疑う数々の発言が聞こえて来るし、アイルー達の知る《常識》と照らし合わせる事で、ここが相当頭のおかしい環境である事も理解させられる。なーんで俺はこんな所に来ちゃったかなぁ、と思いつつあると、
「ニャ……嘴の形がおかしいヒプノックが丘を占領していて邪魔になっているニャ? 確かにあそこを封鎖されると山と沼に採掘に行けにゃくなるにゃ。となると……」
先生が口に出した言葉にお、と声を零す。その音に朝食を食べる手を一時的に止め、そして笑みを浮かべた。
「どうやら俺の出番の様だな?」
その言葉に先生が此方へと視線を向け、頷いた。
新たな環境、新たな変化、そして変質し続けるこの《箱庭》。
新たな狩猟がこの四年目からは始まる。
アイルー達のサバイバーに対する協力体制は同情3で思惑が7という所。
明らかな異常環境で単独生存できる戦力をそのまま失うのは余りに惜しいので、常にコンディションとメンタルを高い状態で維持しておけば戦力として十分に働いてくれるであろうという考えがあったりする。まぁ、それはそれとして一緒に生活していると友情が生まれて普通に仲良くなる。
なお今回の話を聞けば解るかもしれないけど、公式でコラボした先は来た事あるよ扱い。そう、魔法ゴリラまどかちゃんが登場したのだ……。
次回、対ヒプノック(?)。