洞窟中部、大広間に入った瞬間に考えた事は一つ、
「あっ、やべっ」
素でそんな声を漏らした。ランプが照らす光の外側の空間、見えない闇の中に無数の気配が殺気を向けている事を即座に感知し、知覚した瞬間には大きく前に進む様に飛び出し、洞窟の床を片手で叩き、逆立ちする様に体を飛ばしながら両手を左腰へと伸ばし、そこにある柄を掴んで二刀を放つ迎撃準備を整えていた。そのまま、逆さまの視界の中で先ほどまでの場所に、フルフルが雷を纏い、暗闇を照らしながら落ちて来たのを見た。
そしてその雷に照らされ、洞窟の天井が見えた。
そこには醜悪な、フルフルが何頭も張り付く光景が見えた。
体を丸めてそのまま横に回転しながら両足で着地しつつ、何時でも刀を抜ける状態で、続けて落ちて来た複数のフルフルの姿を目撃した。姿は通常の種と変わりは―――いや、今赤色の亜種が落ちて来た。見た目は変異はしていないが、サイズは立派な金冠と銀冠サイズだった。参った、完全に気配を殺して待ち伏せされていたのを自覚した。
『相棒』
「光源が足りねぇ」
『任せろ』
フルフルに正面から向き合いながらまだ刃を抜く事なく、動きを完全に停止させて睨む。ぼとぼとと上から落ちて来るフルフルはこれで全部で五頭に登る。中々やべぇ数が揃って来たな、と冷や汗を掻きつつ、洞窟の中に光が広がる。片目だけでラズロの動きを追えば、アイルー探検セットから強力な光源を生み出す道具を広間にばら撒く様に設置している最中だった。洞窟内での戦闘を想定し、持ち込んできた道具だった。
「うっし、これで戦えるな……」
正面、複数のフルフルが此方を感知し、様子をうかがう様にくねくねと動きながらも近寄る事無く、距離を測っている。その間にフルフルに関する情報を思い出す。
チンコ。
薄い本の常連。
モンハンのリョナ担当。
様々な名前を非公式から得ている、比較的に序盤の方で相手する飛竜だ。昔はもうちょい上位の位置にあったのだが、シリーズの中で強力な飛竜が増えて行く中で、やや置いてけぼりにされているポジションにある。辿異種の実装である程度の地位は回復しているのだが、ゲーム以上に同人誌での活躍のが多い。
モンハンのチンコ担当。なおそう言うタイプの同人は趣味じゃない。可愛いアスール装備ちゃんの本が好き。
違う、そうじゃない。
フルフルは爪、牙、鱗、甲殻という竜種に見られる基本的な要素を一切保有していない、異端の竜種だ。目は退化しており、閃光玉が通じず、その上で発電器官を兼ね備えている為、体内発電で相手を痺れさせたり、それを吐き出す事で有名だ。斬りつけようとしたら電気ガードされた……という経験もプレイヤーの中には多い。しかも咆哮がかなり強い。見た目は不気味だし。
明らかに見た目チンコが公式でネタにされているし。
それでいいのか公式。
「まぁ、刃が比較的に通りやすい相手ってのが救いか」
言葉を呟けばフルフルの気配が此方へと向けられる。確か音と匂いで感知するのがフルフルだったか? まぁ、どちらにしろ感知されないまま戦うのは不可能だ。殺意と覇気を体に込めて刃を鞘から抜けば、その気配に反応し、フルフルが息を吸い込んだのが見えた。
直後、音が喪失した。
合唱の様に放たれたフルフルの悲鳴のような咆哮が洞窟内を駆け巡り、反響する。それに反応して耳栓が自動的に音を遮断したのだ。本当に何も聞こえない状態になったのを少しだけ驚きながらも、咆哮している瞬間はフルフルは無防備だ。真っ直ぐ突っ込み、そしてそのまま、先頭の咆哮を響かせているフルフルの頭に刃を叩き込んだ。
刃の面をぶよぶよした、その皮膚に当て、素早く、しかし繊細に武器を押し込みながら引く。それに反応する様に刀の刃がフルフルの頭に沈み込み、そのまま咆哮している途中で頭を真っ二つに割って即死させる。
「―――」
良し次、と声を零してもそれが全く聞こえない。悲しいなぁ、と思いながら明かりによって少しずつフルフルの姿がしっかりと見えて来る。殺したフルフルから離れる様に後ろへと体を流せば、その死体を電撃を纏いながら吹っ飛ばすように二体目が後ろから登場した。実に恐ろしい。咆哮が終わって、敵意を感知し、仲間の死を感知したフルフルが体を震わせながら怒りと共に雷を纏い、迫ってくる。
こいつら、クッソめんどくさい。
「だが戦国ウォーロード・立花道雪も雷を斬ったんだ、俺だって鍛えれば出来る筈さ」
まずは今度、音の壁を切り裂く事から練習するのが先だが。そう思いながら大きく跳躍し、フルフルから距離を作る様にしながら走り、相手の動きを誘い込む。円の動きでフルフルの側面に距離を開けたまま入り込みながらフルフルからの動きを挑発する。
フルフルは明確に頭と首の肉質が斬撃が通りやすくなっている。鍛えられた己の目はそれ以外にもいくつか急所を見抜いているものの、一番早く殺せるのは首か頭に致命傷を叩き込む事だ。故にフルフルの団子状態の解消と、そして首伸ばしを誘う。
首伸ばし噛みつきだったら簡単にカウンターが取れる。
そういう願いから距離を開けてみたが、
―――見えたのは一斉に口に雷を溜め込んだフルフルたちの姿だった。
「仲良いなぁ!!」
前方の大地に向かって刀を投げ捨て、その先がこてん、と大地を叩いて持ち上がったのを目撃する前に、刀へと向かって跳躍した。瞬間、電撃のブレスが床一面を這うように放たれ、一瞬で足元に安全な場所がなくなる。落下の方が電撃の持続時間よりも早く終わる。予想通り、殺意の高い工夫が施されているフルフルの動きに、本能的に刀を投擲した事を正解と思いつつ、
刀を踏んだ。
そのまま、落下する前に刀を蹴って跳んだ。このコツは難しい。落下する前に体を前に出すのと、落下している時点で重量を落下しているままの状態、踏んでいる空中の物に乗せない様にするのだ。つまり落下している状態のまま上に乗るという矛盾を、体術で行うのだ。結構難しい事ではあるが、
竜の尻尾の上を走ったり、足場に使ったりして回避する事が必要な身としては、自分の武器を足場に使うのは必要で、基本的な技術だった。
アタリハンテイ力学の加護がないのだからしょうがない。疑似、二段跳びで一気にブレスを吐いた後の硬直しているフルフルの内側へと飛び込み、その首に刀を沈めて、振り上げる様に刀を手放しながら空いている片手で居合撃ちをもう一匹に放つ。ブレスを放った直後の硬直を狙われたフルフルが二頭、首を切断されて姿が前のめりに落下する。その姿を蹴って、体を跳躍させて電撃タックルを回避する。
これで連続狩猟三頭目。
刀は二本、手放して残りは一本だ。それを素早く鞘の中へと納刀しながら、残された二頭の内一頭が素早く天井へと飛び上がって張り付き、地上に残った方は発電を解除しながら、此方へと向かって大きく口を開け、咆哮しながら飛び込んでくる。
「さーて、ここからが難しい所だな?」
上に居るのは亜種、下に居るのは通常種。天井を素早く移動する亜種は此方の背後へと回り込む様に天井を這い回り、そして此方を追い込む様に残されたフルフルが道を塞ぎ、発電の兆候を見せながら迫ってくる。此方が発電している間は攻め込めないっていうのを今のやり取りで覚えられてしまったのかもしれない。此方が接近しようと動き出す瞬間、フルフルの体を一瞬だけ、電気が通り、此方を牽制する。
「道雪超え、狙うか?」
俺も雷切りサバイバー! とか呼ばれてみてぇわ。そう思いながらも、転がっている刀の反射、そして音で背後、数メートルの距離を開けて亜種が挟み込む様に降りてきたのを察する。うーむ、是は中々厄介だぞぉーぅ、と心の中で囁く。電撃時は攻撃が出来ないと理解したフルフルを相手にするのは面倒だ。
ゲームだったら攻撃リーチぎりぎりで差し込めるんだけどなぁ、と、思いつつ、
正面、フルフル通常種の方へと向かって一気に踏み込む。反応したフルフルが咆哮しながら電撃を纏う。それに一切構う事無く身をかがめ、必殺の一閃を叩き込む為に接近し、
爆発がフルフルの顔面に衝突した。
猫タル爆弾だ。それがフルフルの顔面を横から殴りつけ、そのショックでフルフルの発電を停止させた。
「ノイズが多すぎて此方が一人と一匹だって忘れちゃったかな? 残念」
電撃の無くなった懐へと踏み込みながら顔を真っ二つに叩き割り、そのまま切断面を空いている手で掴みながら体を持ち上げて、体を一気に上へと投げる。後ろから飛び掛かって来た赤いフルフルが電撃を纏いながらフルフルの姿を殴り飛ばす。空中でそれを眺めながら下へと向かって刀を投げつけた。
頭に切先が浅く刺さる様にバランスを取り、
「トゥ!」
その柄の上に着地した。その重量と衝撃で刀が歪みながらフルフルの頭を貫通し、曲がり、口を繋ぎとめる。ゴムが内蔵されているコンバットブーツは刀を通して襲い掛かってくる電流を完全に遮断している。
サンキューゲリョス、フォーエバーゲリョス。
柄を更に深く押し込む様に柄を蹴って転がりながら落ちていた刀を回収する。頭を貫かれた程度ではまだ死ねないフルフルが殺意を濃密に発しながら此方へと首を曲げるが、猫タル爆弾が再び連続でフルフルの顔面、そして首に衝突する。そうやって生み出された隙に一気にフルフルに飛び込み、電撃を発する前にその首を切断して即死させた。
『その曲芸は心臓に悪いから止めろ』
「ハンターだって乗り攻撃をするんだ。俺だってそれに近い事が出来なきゃな」
『理屈は解る。だけどやってる事はおかしい』
まぁ、やれるかなぁ、と思ったら出来たのだからしょうがない。フルフルの頭に突き刺さった刀を軽く観察し、これは打ち直しルート確定ですねぇ……と呟きながら回収する。他の刀はまだ無事だったので、鞘の中に戻しながら軽く息を吐いた。フルフルも五頭をなんとか、連続で狩猟する事が出来た。
だんだん、人間らしくない領域に踏み込んでいるなぁ……。
果たして自分は鍛えれば、どこまで行くのだろうか? どこまで成長できるのだろうか? 自分の限界は? どこまで狩猟出来るのだろうか。その楽しみと疑問が自分の中に湧き上がっているのが解った。
怖いのだが―――同時に、どうしようもなく竜と殺し合っているのが楽しくてしょうがない。自分の中に殺意の悪魔が沸き上がっているのが知覚できた。
戦えば戦う程、技量があり得ない速度で上昇して行く。ありえない程戦意と殺意が沸き上がってくる。竜を見るたびに殺したくなってくる気持ちが湧いてくる。そして殺した相手の血肉を食らえばそれがしばらくの間、満たされて行く。
『相棒?』
「いや、また工房長に怒られるなぁ、って……」
『もう諦めてるよ親方も』
フルフルの死体を軽く見てから、自分の手を見る。
……少しだけ、皮膚が黒くなってきた……か?
最近は活性させてない筈だった。それでも自分の中の《ナニカ》が活性化しているとすれば、何らかの理由で到底考えられないこの技のキレと動きのキレが上昇しているのだとすれば、それは間違いなく。
今も消えず、強まり続けている《悪魔》と《眠り姫》の気配、その視線、そして心臓を今でも撫で続ける様な感覚によるものなのだろう。どうしようもない事実に、今はそれを忘却に追い込み、
「うっし、フルフルが他にもいるかもしれないし、合流される前に抜けよう」
再び、洞窟の奥を目指した。
「マジかー」
『一つ抜ければ異郷、とでも言うべきなのだろうな』
洞窟を抜けて顔に感じるのは熱風だった。既に秋季に入っているというのに、凄まじいまでの熱量を感じていた。顔にかかる熱風はまさしく、砂漠と呼べる環境のそれだった。そう、一面砂で満たされた砂海、そこは砂漠と呼ぶべき環境だった。所々サボテンが生息しており、遠くには岩場や砂の盛り上がりが見える。また、砂海から突き出たヒレがガレオスやドスガレオスの存在を教えてくれる。ゴーグルにかかる砂粒がこれが偽物ではなく現実であると、本物である事を伝えている。
「前のもそうだけど環境、変わりすぎだろ」
『《箱庭》の名に相応しいだけの事はあるが……どうするか? 少し探索するか?』
「……一応しよう。次回また通る時にフルフルの巣が再生してたとか面倒だしな」
『では気を付けよう、ここは隠れる場所が少ないからな』
ラズロの言葉に頷きつつ、砂漠を歩き始める。
その物凄い歩きづらさと足元の不安定さに驚く。砂浜で走るのは慣れているつもりだったのだが……それよりも遥かに安定しない足元を感じさせた。ここで戦うとなると体力との勝負とは別に、足元を慣らす必要があるだろう。とてもじゃないが、長期間走っていられる場所ではない。砂浜よりも遥かに不安定な足場、正直、ここでの戦闘はなるべく避けたい話だった。
そう思いながら砂地に身を隠しながら姿を砂漠を進んで行く。生息生物は洞窟付近から確認する限りは基本的な砂漠の生物で満たされている様な様子だった。これがゲームだとその他にもボルボロス等が登場していた記憶がある。ここでは一体どんな生物が生息しているのだろうか?
まぁ、まだ絶種に辿り着いていないとは思う。雪山の様に食料の制限された環境ではあるが、ここは他の環境と比べると土地が余っているというレベルで広い。とてもだが一日や二日では全体を歩き回れないレベルでの広さを感じる。ガレオスやドスガレオスも、警戒している気配はあるが敵意を振りまいている様な様子はない。
「うーん、まだ平和な方……か?」
『おいおい、これを見ろよ』
近くの茂みに接近していたラズロがそれにくっついていた物を口の中に放り込み、味を確かめながら此方にも投げて来た。それを受け取りつつ眺めれば、それがイチゴであるのが解った。
『熱帯イチゴだ』
「ほほー、これが……ん、うめぇ」
『こいつを氷結晶と合わせれば即席クーラードリンクの出来上がりだ』
「ほえー、そんなレシピがあったのか……。そういやぁサボテンは中に水が詰まってるって話を聞いたな。そっちはどうなんだ?」
『さて、それは―――』
ラズロが言葉を放った瞬間、言葉を切り上げて二人で一気に砂の中へと飛び込む様に隠れた。直感的に、何か強大な物が接近している、というのを超本能的に察した結果だった。即座に隠れ、砂を被って体を隠した所で、砂の海の向こう側、砂塵を被りながら戦う三つの姿が見えた。
一つは白亜のモノブロス。一本角が特徴的なモンスターであり、初代モンスターハンターのソロモードにおける大ボスとでも呼べる存在だった。これの通常種をソロで討伐する事が、ココットの英雄としての資格……だったか? だがこのモノブロスのその角はただの角ではなく、まるで剣の様に平べったく、そして鎧の様に甲殻が厚くなっていた。
その次に見えるのは片角が折れているものの、もう片方がその代わりに異常発達したディアブロスだった。それは通常の色ではなく、血を浴びたような斑模様をしており、全身から感じる威圧感のそれは今まで相対した、敵対的な竜の中ではトップに割り込む化け物だった。
最後に見える奴は赤い、ディアブロスに似た姿をしている奴だった。だがこいつは三頭の中では一番、異様とも言える姿をしていた。
三頭の異常発展竜。
その全てが赤黒いオーラを纏っていた。
『見ろよ連中……食い合ってるぜ……』
《騎士》のモノブロス、《血染め》のディアブロス、そして《溶帝》のヴァルサブロスとでも表現すべきだろうか? 連中はどれも理性を消し飛ばしたかのようなすさまじい殺意と破壊衝動に溢れている。なのにそれを完全なる理性でコントロールしながら、お互いを食い合う様に噛みつき、噛み千切り、そしてそれを呑み込んで自分の力にしようとしていた。
あまりに通常の生態を無視したその理解外の光景は、見る生物全てを恐怖に叩き込みながら、問答無用で逃亡させるだけの迫力があった。先ほどまで存在していた他の生物の気配、その全てが逃亡している。
残されたのは食い合っている近縁種の三頭と、それを観察している自分たちだけだった。
『狂ってる……狂ってるぜ、アレ』
「絶種ってのはこうやって進化しながら生まれるのか……やべぇな」
噛み千切り、呑み込むたびに赤黒い《悪魔》のオーラが、そいつの中に蓄積されて行く。そのエネルギーが世代交代によって発生する進化を強制的に変異という形で発現させながら、加速させているのだ。五世代かけて発生させるはずの変異をオーラで蓄積させ、その次の世代で更に変異させる。
そうやって絶滅に至るまでの道筋を生み出して行くのだ。
悪意だ。
是には悪意しか存在しない。悪意の居場所しか存在しないのだ。
だけど、それを見ていて思う。俺も同じことをしているじゃないかと。何年、何十年という鍛錬の果てで得る筈の経験、成長、そして技術や奥義。それを短期間で他の命を喰らいながら、啜りながら身に付けている。
あの怪物たちがやっている事と、俺がやっている事とは何の違いもない。そしてそれが正しいのであれば、俺が得ているここ数か月の成長というもの、その根源にあるのは―――。
「アレが完成される前にここで殺したい所だな……」
『出来るか?』
モノブロス、ディアブロス、そしてヴァルサブロスの三つ巴を見る。本気で殺し合っている三種の動きはどれも、必殺を狙って攻撃の回避と融合を行いつつ、相手の甲殻を噛み千切って力を高め、必殺の瞬間を狙っている。
そして―――ディアブロスが出し抜いた。
ヴァルサブロスの溶甲がモノブロスの口を焼き、そして潰した。それでモノブロスが呼吸を潰された瞬間、ディアブロスがヴァルサブロスの喉元に角を突き刺し、そのまま首を引き千切り、そのまま尻尾をモノブロスの顔面に叩きつけて、頭を吹き飛ばした。
二つの屍の上に君臨した新たな進化を辿り始めるディアブロスが、口や喉を焼きながらもヴァルサブロスとモノブロスの死肉を喰い始めた。
「……帰るか」
『……そうだな』
うん、帰ろう。砂漠無理。マジ無理。ここ無理だわ。だけどあのディアブロス、今のうちに仕留めないと、数カ月以内に絶種として完成されそうな、その土台が完成してしまったような……そんな気がする。とはいえ、今のままではまだ、ディアブロスを倒せる気はしない。
もっと、もっとだ。
まだまだ、まだだ。
殺さなくてはならない。更に狩らなくてはならない。あの《悪魔》の理が進化を促進させる蟲毒の術であるのなら自分は―――もっと、
更に竜を殺さなくてはならない。
「うーん、耳栓だけじゃ風圧対策にならねぇしなぁ……」
『ん? なんか思いついたのか?』
いや、簡単な話、
「音の壁とか風の壁とか、斬れるようにならないかなぁ、って……」
ラズロが何言ってんだこいつ、という表情を浮かべて来るので、そのまま、大人しく帰る事にした。
サバイバー君に対する干渉は全部三種類ある。
一つ目は狂竜ウィルス。これが肉体を解除しつつ、肉体的リミッターを外している。つまりウィルスに任せればどこまでも身体能力が上がり、限界を超えて動いて自壊し死亡する事でゴア・マガラへと転輪する。
二つ目はメッフィーの視線。推しをスマホの画面に表示させるタイプのオタクのメッフィーは迷う事無く推しに聖杯を全て捧げるタイプでもある。なので一番最初に無理、不可能という考えを脳に生み出させる精神的リミッターを外したのがこれ。同時に存在するオーラを殺す事で蓄積、変異を促す環境を構築したのもこいつ。システム的には本人の悪意に影響された理想へと向かって進化して行く。
三つ目は眠り姫。現時点ではその干渉内容は不明。ただし強くなるような事、させるような事、何かを変化させるような干渉は一切なし。干渉と言いつつ全社二つの様な事は一切やっていない。
砂漠も地獄だぜ。というだけで次回、アイルークリスマス。