「しっ―――!」
正面、水鉄砲で放たれてくる水流を刀の居合抜きで真っ二つに割く。だがその拡散率が薄く、真っ二つに割かれた部分が広がり切らずに顔面に衝突する。ぐわっぷ、と声を漏らしながら顔を横に振り払い、水滴を落とす。髪をオールバックで流しつつ、再び鞘に刀を戻し、そして正面、水鉄砲を構えたアイルーに向き直る。
「もう一本!」
「行くニャ」
言葉に合わせて、再び水鉄砲が放たれた。それを居合抜きで真っ二つに割きながら、返しの納刀でも斬撃を発生させ、行きと戻しで二連斬撃を広げる様に放つ。それに合わせ緩いバツ印が水鉄砲を割き、しかしそれから続く水の流れに直ぐに呑み込まれ、割れた個所が消える。連続で放ち続けないと駄目だなぁ、これ、そう思いながら再び強い勢いの水鉄砲を顔面に浴びる。
「駄目だニャァ、相棒は」
「うっせぇ、咆哮対策を出来るうちにやっとくんだよ」
ラズロに頼んで工房長猫に作って貰った水鉄砲で形のない物を斬る感覚、そのコツを掴む為の協力を頼んでいる。秋季、ちょくちょく先生に頼んで公用語の練習をしてきた事もあり、今では立派に此方の世界の公用語を口にする事が出居た。そしてそれでアイルーの公用語で会話が出来る様になった。アイルー語の時はニャニャ言ってないのに、公用語になった瞬間ニャ、と語尾に付くのだからこの世界の猫は不思議だ。
アイデンティティの問題なのだろうか?
そんな事はともかく、
咆哮対策の練習をしていた。音はある程度、耳栓で防げる。だが超咆哮や貫通咆哮とかいうものがもし、この先、習得した龍が出て来るのなら……というより、ティガレックスの斬咆哮を見ていて、アレは咆哮そのものを斬る事が出来るようにならなければ、対処が不可能であると、そう思ったのだ。そういう理由から開いている時間の鍛錬は今は、形のない物を斬る事を練習している。
音は見えないが波として存在している。風もそうだ。だからそれに最も近い性質の水を斬る事で、無を斬るという事の感覚、コツを掴もうとしているのだ。ただ、これが驚く程難しい。
水を斬るだけならそこまで難しくはない。
水を斬って広げるのもそこまで難しくはない。
だがそれを斬ったままにするのは物理法則に反するから難しい。水を斬れたから音を斬れるようになった、という訳でもない。あくまでも流体を斬るという感覚を掴む為の行いであり、その先にある領域に自分の指を届かせる為の鍛錬だった。とはいえ、これが中々うまくいかない。水を斬るだけならそこまで難しくないのが、その先の領域を目指そうとすると
或いは俺、ちょっとは剣才あるのかもしれないと最近は思ってる。まぁ、完全に才能がないというのはあり得ないと思っている。そうだったら今は生きていない。ある程度の才能があったからこそこうやって生き残っているんだろうと思っている。だけどそれはそれとして、どこか複雑な気持ちだ。
あの快適で、そして安全な国に居る間は開花しなかった才能だと考えるとどうしても気が滅入る。
「……今日はここまでにするか」
「あいよ。それにしてもこの寒さの中、良く全裸でいられるもんニャ」
「慣れた」
頭を振って水滴を弾き飛ばしながら、冷気を肌で感じる。沐浴は大型の狩猟前の儀式としてやっていたし、今でもたまにやってる。それに最近ではそこまで肉体が寒さを気にしなくなってきた。事前にホットドリンクを飲んでいるというのもあるが、マガラ化の影響であるのはまず間違いがなかった。まぁ、この程度であれば何も問題はないのだ……たぶん。
まぁ、濡れる以上全裸の方が過ごしやすいので、今はこれでいいのだ。タオルを受け取りながら髪と体を乾かして行きつつ、ふぅ、と息を吐きながら刀を転がした。予想以上に使い辛い武器だ、これは。まともに切れる様になるのに数か月。壊さない様に振るう様になるまで更に数か月。肉質が弱い所以外を狙おうとすれば、間違いなく折れる。これがそう言う武器だった。
人を斬る為の武器ではあるが、竜を斬る為の武器じゃない。
それが刀と他の近接武器の違いだった。
これを更に竜に特化させたのが太刀なのだろう。今の筋力であればアレを振るう事も出来るだろうが、それにしたって俺にも矜持がある。そう簡単に太刀に手を出す事は出来ない。自分の中で武器は刀か片手剣、大体それで固まっていた。
「それにしても音を斬るなんて無茶な事を考えるニャ、相棒は」
「無茶じゃないんだよなぁ、これが。俺の居た世界、昔は立花道雪って武人が居て、このおっさん雷をぶった切って下半身不随になってるんだよ」
「やべー奴ニャ」
「しかも下半身不随になってるのに神輿に乗って出撃して勝ってる」
「相棒の世界の人間やべーニャ」
日本の武人は凄い。矢で船を吹っ飛ばすとかやらかしているので根本的にファンタジーじゃね? と思いたくなるがリアルなので頭がおかしくなりそうな時がある。戦国やそれ以前の時代を思い出してはならない。アレは完全に異世界だ。ただ、まぁ、それはともかく、
「そういう逸話を聞いてると、明確に俺が肉体的に劣っているとしても、リミッターをぶっ飛ばしていけば、可能性的にはそういう領域に手が届くかもしれないってもんだろ? ならやれることはやっておきたいのさ。風圧と咆哮は俺の体じゃどうにもならないから、な!」
スパ、っと正面の空間を居合抜きで振り払い、風を切って納刀する。風は斬れている。だが継続して、ではない。
「この一回の斬撃で、音を完全に割ってその状態を維持できるようにしなきゃならないんだ……これが出来れば耳栓なしでも居合抜きで咆哮と風圧に対処できる」
「それもうハンターでも何でもなくて新種の怪物ニャ」
いいや、戦国時代の武人なら出来ただろう。特に剣豪とか呼ばれる連中、人の形をした決戦兵器だったとかいう噂だったし。まぁ、剣の道は遠いものだ。簡単にその理に追いつけるものではない。この道に入ってもまだ、四年しか経過していないのだ。長いようで、一生を剣の道に捧げた人間からすれば余りにも短すぎる。それで神髄に到達しようなんて考えは、余りにもおこがましいのかもしれない。
「だがな、ラズロ。強くならなきゃここは生きて行けないんだ。化け物にならなきゃ化け物は殺せないんだよ」
「その為の俺達だニャ」
ラズロのその言葉に笑みを零し、タオルを肩に乗せ、川辺から森林拠点へと戻る為に歩き出す。ラズロの言葉は嬉しい―――嬉しいのだが、冷静に考えていた。
無理だな。
数とか作戦とか。そういう範疇で考えている間は絶対に勝てない。
進化し、成長した怪物、絶種が生まれて来る環境では自分も相手を食らって、絶種の様な進化を辿らなくてはどうにもならないのだ。それがここを生き延びる上で最低限の条件なのだ。罠は踏み潰し、作戦は嘲笑って看破する。既にその片鱗は見えていた。少なくとも《斬虐》のティガレックスはそれが出来ていた。観察して学習して、喰らって強くなる。罠も何も通じない、
純粋な力と技量と暴力だけが通じる世界になるのだ。
その最終的なイメージが見えている。
だからどんな優しい言葉で、どんなに微笑ましい言葉で、どんなに頼りになる言葉であろうと、最終的には変わらなかった。俺が怪物にならないと駄目だった。俺が怪物となって他の竜を殺せるようにならないと駄目だった。常識外れの技量を独学で編み出して振るい、それで竜を塵屑の様に斬り殺せるだけの実力を、腕前を付ける必要があった。それこそかつて、剣豪だとか剣聖だとか、そういう風に呼ばれた連中の領域に自分の実力を押し上げないと駄目だった。
それが、生き残る為の最低条件だった。
本当に感覚的なもので、たぶん、正面衝突以外での勝利は見えない。
それを感じる。最終的に求められているのは力なのだと。あの《悪魔》を相手に出来るだけの力。それがここでは育てられているのだ。まぁ、それ以上の事は現状、何も感じ取れないが。それでもこの環境から生物がいなくなるまで三年、
いや―――二年で絶滅、という所だろうか。
「時間が足りないなぁー」
「その為に俺達がいるんだニャ。探索も開拓もなにもかも、まずは生き残ってからニャ」
「おっしゃる通りで」
まずは生き残る。そうしなきゃ何も始まらない……と思った所で、空から何かが降ってくるのが見えた。見上げながら手を伸ばせば、そこに降りて来るものは白く、そして手の中であっさりと溶けて消える物だった。
「おー、雪だニャ。やっぱ冬と言えば雪だニャー……相棒?」
溶けた雪を握りしめながら空を見上げつつ、
「……ここで三度、冬を過ごしているけどここで降るのは初めてだ……」
呟き、降り注ぐ空を見ながら思った。
そろそろ全裸が辛くなってきた。
冬季。
少し、厄介な事になった。
雪が降り積もり、かつてない程に丘付近が冷え込んだ。ここ四年間で経験する一番寒い状況であり、急遽拠点は冬と雪に対する対策を行う為に更に改造が施され、樹海の木々を一部切り倒してそれを薪にした。一部作業を中断してこの作業を手伝うアイルー達が出て来るレベルで冬は一気に冷え込んだのだ。かつてない冷え込みに一体何事か、と思いもしたが、問題はそこではなかったのだ。
丘が雪に覆われた。
その影響で雪山から《斬虐》が降りて来たのだ。
生物が、まるで丘に近づくような事はなかった。本能的に絶対に勝てない上位捕食者の存在に、全ての生物が怯える様に逃亡した。通常であればこういう連中を真っ先に始末するであろうイビルジョーも―――今回に限っては、近づかなかった。沼地の奥の方へと一時的に避難したのだ。そう、それで発覚してしまったのだ。
あの守護者連中でさえ絶種には勝てない。
だから生まれる前にその可能性を食い殺しているのだ。そして漸く、長年の食性の疑問が解消された。《偏食》のイビルジョーの役割は、率先して絶種に至る可能性のある個体を食い殺して行く事でその可能性を閉ざす事にあったのだ。適度に喰い、恐怖させ、そして進化の道筋を見失わせる。適度なストレスと解放を与える事で今の環境に適応したままにする。だがそれを乗り越えて誕生してしまった種族最強最後の一体に対しては、もはや勝利する方法がなかったらしい。
丘を冬季の間、《斬虐》は支配した。ただそれが丘を出る事がなかった事、高地や沼地、そして岩壁に一切接近する事がなかったのが唯一の救いだった。あの《斬虐》のティガレックスは、その生態を観察する辺り、どうやら雪の存在する範囲から離れる事が出来ないという性質を保有していた。それ故に雪が降るこの季節にしか山を下りる事が出来なかった。
そんな制限がなければ、おそらくは既にほかの環境に乗り込んで
悪意とは知性によって生み出されるものである。
遊ぶ為だけにアリの巣に水を流し込んで楽しむ残虐性を持ち合わせるのは人間だけだ。逆に言えば人間だけがどうやって効率的に苦しめるのかという事を考えられるという事でもある。
その知性と残虐性、底知れない悪意を得たのがあのティガレックスだった。絶対に近寄ってはならない、接近する時は勝てる時だけ。そしてそれは今の所、欠片も勝機を見出せる事はなかった。ただ一つ、岩壁へと近寄るのを本能的に嫌がっている様な気配だけは感じられた。
岩壁においてある何かに反応しているのだ。
或いはそれは本来の姿を取り戻そうとしている片手剣かもしれない。
その向こう側の火山に居る《悪魔》かもしれない。
それとも俺の狂竜ウィルスから抽出して作った睡蓮を凍らせた、《眠り姫》の気配かもしれない。
どちらにしろ、《斬虐》は絶対に岩壁に近寄る様な事はしなかった。そして同時に、その向こう側へと行こうとする事もなかった。故に対策はシンプルに、丘方面へと出ない、近づかない、雪が解けるのを待つだけだった。観察に気球を飛ばそうものなら、一瞬で飛びついて破壊するだろう。それだけの慎重さもある。
だから冬季、《斬虐》のティガレックスの登場で丘方面への道は完全に塞がれた。空でさえ利用が出来なかった。なので其方は放置するしかなかった。冬が終わった後で残っているものがあるというのを祈りつつ。
その為、迎える場所、範囲が大きく限定される冬が始まり、それと引き換えに拠点改造や装備の改良に集中できるようになった。
その中でも一番大きな成果は、
「焼けたぞー」
「にゃー! 待ってました!」
指に付いたクリームを舐めて、ちゃんとした甘さがあるのを確認しつつスポンジ状の土台が白く塗られ、そしてフルーツで飾った菓子―――つまりはケーキをテーブルへと運んできた。第二拠点の家は今、冬超えの為に暖炉が全力で稼働しており、空気を温めながらダイニングを暖かい空間にしていた。テーブルの上には様々な料理が並んでおり、合作で色々と作って腐りそうな物を率先して消費している形であり、
ちょっとした、宴になっている。
冬、それはクリスマスの季節だった。少なくとも、地球では。無論、そんな概念が此方の世界にはなく、キリストの生誕を祝う祭りだと言ってもアイルー達がそれを理解する事はない。なんで他人の誕生日をそこまで祝わなきゃいけない? という表情さえ浮かべる。
だけど根本的にお祭り好きな猫だった。
この冬、ティガレックスの存在で環境が封鎖され、自由に動けないストレスを、ちょっとしたパーティーで解消しようという話だった。悪い発想じゃなかった。寧ろ良い。これだけ派手に飲み食いするのはこの星に来てから初めてだった。
テーブルの上にはずらり、とアイルーとの合作料理が広げられている。アイルー達がここに到着してから新しい素材の獲得、高速栽培、そして新しい調味料の発見や精製で生活が凄い豊かになっているものの、それを大量消費するようなイベントは初めてだっただけに、かなり気合を入れてしまった。
アイルーキッチンでおなじみのチーズフォンデュ! 是は地球で食べた事のある奴よりも遥かに美味しい、と言うか次元違いの旨さだった。これだけは完全に負けているな、と敗北感を感じさせるものであり、チーズを作る時にアイルーの秘伝のレシピがあるらしい。それに合わせるのはあの畑で取れた各種野菜に、
この冬、漸く入手する事に成功した、小麦から作ったパンだった。
そう、ついに小麦が生活に入ったのだ。
もう、本格的な農耕生活をしている気分だった。最初は小麦を見つけられなかったのも事実だが、どうやら最近、改めて小麦を発見する事にトレニャー担当が成功したらしく、それを栽培して数を増やす事に成功したのだ。
相変わらず季節感もクソもない。だがそのおかげで美味しいものが今、食べられている。ケーキの材料もそうだし、フォンデュと一緒に食べる為のパンもそうだ。それ以外にもパン粉を作ったので、それを利用してヒプノック肉を揚げた、チキンカツモドキを作る事にも成功した。
これがかなり上手く行き、外はサクサク、中はもう、言葉では表現できないレベルで蕩けそうな程に美味しい。やはりちゃんと下処理を行えばこの世界の素材は、地球を超えるポテンシャルを持ち合わせている。
もっと、早く知りたい所だった。
チキンをダイス状にして混ぜた、トウガラシ交じりのサラダやシリーズお馴染みの骨付き肉、アイルー達が得意とする串焼き料理。それをテーブルの上に広げ、並べ、そして小麦粉や砂糖を使ってお菓子も作って並べている。
蓄えにはある程度今では余裕がある為、一度ぐらいこうやって大量に消費しても問題はないし、何よりこうやって囲んで一緒に食べるというのは一つ、物凄い嬉しい事だった。
一人ではない、というのはそれだけで違うのだ。
寂しく感じたら誰かと手を繋ぐ事が出来る。
悲しいと感じたら誰かに聞いて貰える。
少し機嫌が悪かったらストレスの解消に付き合って貰える。
嬉しく感じたら、それを笑って誰かと分け合う事が出来る。
それは当然の事では? と生きていると思いかねない。一人暮らしをしている一般人がいるとして、それでもネットという環境に繋がる事によって、感情の変化を他人と共有する事が出来る場所があるのだ。
それが今まで、自分にはなかった。そしてアイルーと出会えたことで、それが出来るようになった。自分の中にあった人間性とも呼べるものが少しずつ、ほぐれて本来の形を取り戻すのが日常的に感じられ、笑うという事の本当の意味を今では思い出せる。
「ニャー! それはニャーの魚ニャー!」
「ニャっふっふっふっふ……早いもの勝ちだニャ」
「あぁ、この骨のライン美しいニャ……食べるのが惜しいニャ……」
「じゃあ食うニャ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
料理をキッチンから運びつつ並べ、椅子に座れば騒がしいアイルー達の乱痴気騒ぎが聞こえるし、見える。外の環境は月日が流れる度に更に悪化して行くのに、今では丘で《斬虐》が徘徊しているのに、まるでそんな事を感じさせないだけの楽しさがここにはあった。
地球では味わえない経験だった。
ここに来れて良かった? と聞かれたら少し困る。
ここに来た事で新しい事に挑戦できて、そして色々と出来る様になったが―――それでも、死ぬかもしれないというのは恐ろしい。だから来れて良かった、とは一概には言い辛い。
だけど間違いなく、今が楽しいとは断言出来た。冬、活動を一時的に縮小し、大人しい冬の日常を鍛錬しながら過ごしつつ、クリスマスをアイルー達と楽しむ。作る事に成功した蜂蜜酒や果実酒を片手に、アイルー達が肩を並べ、上機嫌に声を張る。
歌を歌い、酒を飲み、ご馳走を食べる。
一年に一度だけの異文化のお祭りを、一緒に楽しむ―――そんな冬が過ぎて行く。
それは眺めていた。
それは深淵の中で微睡みながら眺めていた。
一挙一動を逃す事無く眺めていた。
それが最初に覚えたのは純粋な興味だった。そして次に抱いたのは愉しみだった。そしてそれはやがて、目覚めを少しずつ感じながら、期待へと変わって行く。少しずつ、少しずつそれの瞳が開いて行く。まだ、完全な覚醒には程遠い、だがその目覚めの段階に合わせ、少しずつだが力が漏れる。何千年と蓄えられたエネルギーが、吸い続けられたエネルギーがその身体から溢れ、環境に溢れ出す。
汚染する様に。
まだ、浅い微睡みの中で、それは最近のお気に入りを見て、笑みを零した。
きっと、今度こそは、と微睡みの淵で思考した。
そしてそれと同時に己の揺り篭となった世界を見た。
少しずつ、少しずつ、環境は喰らい合って純化されて行く。拡散された力は喰らい合う事で一つへと収束して行く。それは可能性が一本道へと束ね上げられる様な行いであり、それを通して一つの結末へとたどり着くまでの道しるべだった。
ランポスと呼ばれる種、亜種、その近縁種が全て絶滅した。
ゴゴモア、ババコンガと呼ばれる森に住まう種の亜種も派生種も絶滅した。
ライゼクス、ガムートと呼ばれる種も捕食者に食い尽くされて絶滅した。
感じ取って踏み込んだテオ・テスカトルとナナ・テスカトリは絶種によって始末され、無限に殺されて喰われ続けている。
だがそんな些末な事にそれは目を向けない。牽制するような、可愛らしい視線も意に介さない。
ただ唯一、愉しみを満たすその姿だけを眺め続ける。
微睡みの中―――その目覚めの時まで。
絶滅率30%突入。
それに伴い下位個体が完全に絶滅。
環境から小型肉食獣が完全に駆逐されたので中型・大型種がスナック感覚で腹を満たす事が出来ず、飢餓感に後押しされて同種を腹を満たす為に捕食する確率がフィーバーですよこれ。
という訳で4年目終了。
次回5年目、古龍でさえ食料となる年が始まる。