ついに全ての楽園の守護者が死亡した。これにより環境維持を行っていた全ての竜が消えてなくなり、絶種の抑え込みが完全に消え去った。残された僅かな竜達はお互いに食らい合い、そして完成された絶種に食い殺されてこの環境からは通常の種が完全に消え去るだろう。ここに楽園の完全崩壊は確定した。もはやそれが元の形に戻るような事はない。
これによって、次の目標を目指す事が出来る様になった。
「これで絶種の討伐と、《眠り姫》に会いに行けるな」
全ての守護竜を討伐し終わった所で、緊急会議を拠点で開く事になった。そこには今まで見た事のない姿も増えている。紅白クソトカゲの参加は勿論のこと、今までは砂漠と高地で会う事もなく働き続けていた、三つの新しい顔が拠点のテーブルを囲む様に顔を合わせていた。
まずは黒い、中華風の仙人の様な姿をしている人物がいる。チャイナドレスの様に全体でワンパーツの服装、刺繍が施された一品物、これまた男か女か判別し辛い中性的な容姿の持ち主であり、スリットから覗く足が実に悩ましい人物―――黒麒麟だった。或いはその中性的な容姿は、龍として男とも女とも違う、という意味なのかもしれないが。
そしてその横に座っているのは、貴族風の二人組だった。男と女、上品な服装に身を包んだ二人組は―――子供だった。姿は完全に子供だが、その内なる気配にそれが子供の姿を借りているだけだというのを理解させられる。王冠を被った貴族風の少年と、ティアラを被った貴族風の少女。ロリショタカップルのテオ・テスカトルとナナ・テスカトリだった。見た目の業が深すぎる。
そして未だに死亡して蘇っていないオオナズチ君があの世にいる為、今回の会議には不参加だった。その代わりにオオナズチ人形を首から【僕は古龍の恥晒しです】という看板をぶら下げて椅子に座らせている。
当然の様に、クソトカゲ発案と実行だった。
身内相手ですら一切の容赦がなかった。
だがそんな事で守護竜が全て死滅した今、絶種は何かを感じ取ってか、大人しく、力を蓄える様になった。それをクソトカゲは前、俺を待っているのだ、と言った。その言葉を鵜呑みにする訳ではないが、あれだけ暴れていたのがいきなり大人しくなるのだ、何らかの理由や事情があるのは間違いないのだろう。それ故、これから何をするべきなのか、そして何を知っているのか。
その為の会議だった。何せ、これからの仮想敵は、あの絶種共になるのだから。
「とりあえず、後は絶種を始末して《眠り姫》を殺せば―――」
「あぁ、確実に《悪魔》を討伐する事が出来るだろうな。お前が生き残れば、という前提になるが」
此方の言葉を肯定する様にクソトカゲが返答した。彼は嘘をつかない。だからそれは間違いのない、確定事項なのだろう。とはいえ、どうやって倒せるのか、という事に関しては一つも説明を入れないからかなり怪しいもんではあるのだが。とはいえ、真実だけが道ではないのはこの生活で良く理解している。
「雪山のティガレックス、砂漠のラ・ロ、そして火山のアトラル・カ……だっけ?」
「絶種として完成されていた高地のブラキディオスはあのイビルジョーが相打つ形で討伐したからな。故に残された戦いは全てで五度になろう」
答えたのは黒麒麟だった。恐らく、あのブラキディオスに関して一番良く理解しているのはこの黒麒麟だろう。故に死んでしまったが、あのブラキディオスはどういう絶種だったのかを聞く事にする。その質問に黒麒麟が答えてくれる。
「アレは異様に目が良い」
「目?」
黒麒麟から然り、という言葉が返ってくる。
「接近しようものならどんな攻撃を叩き込もうとしても全てを薄皮一枚の距離で回避し、龍、雷、氷の属性から一番通りの良い物で拘束、動けなくなった所を頭と心臓をそれぞれ完全に粉砕する事で確実に殺す事を狙ってくる相手だ。確実に反撃を狙える時以外では絶対に攻撃を行わない、隙を見せない、自分の肉体で受けて耐えるという選択肢を絶対に取らない奴だった」
だからこそ肉体そのものは本来のブラキディオスと比べてやや細身であった、と黒麒麟は説明する。だがその事実が真実なら、俺に対する天敵の様な存在じゃねぇか、と存在そのものに果てしない悪意を感じた。攻撃手段が剣一本である自分にとって、絶対に体で攻撃を受けようとしない、確実な回避とカウンター、回避不能の拘束攻撃を放ってくる相手は天敵中の天敵だ。
リオレウスの時の様に、面制圧攻撃はまぁ、ある程度耐えられるし、切り払える。
だが確実な回避を狙って拘束して来るという奴に関しては、ちょっと対抗手段がない。イビルジョー兄貴がその身と引き換えに、ガンメタ絶種を始末してくれたことを本当に感謝するしかない。情報有りでも自分一人だった場合、勝てる手段のない相手だった。
「まぁ、我の場合氷壁や氷柱を生み出して、進路妨害と環境閉鎖を行えばそこまで押し込むのに苦労する相手ではなかった。とはいえ、少しでも接近すると頭を一撃で消し飛ばされるのには困ったがな……」
「それを良い思い出の様に語れるお前らの存在が一番困ったわ」
死ぬときは素直に死んでおけよ、と毎度のことながら思う。ギャグ補正でも何でもなく、普通に死亡後蘇生するとはいったい何事だ。生物として間違ってない? としか思えない。助かってるから文句は余り言えないのだが。
ともあれ、一番困ったちゃんのブラキディオスは、イビルジョーが命を引き換えに倒してくれた。これで《悪魔》の覚醒まで一段階進んだ。殺せるという事を証明してくれたんだ、次のも確実に殺すとして、
「他の絶種に関しては」
「あぁ、僕らが砂漠の奴に関して説明するよ」
「妾はもうあ奴を見たくないのじゃ」
のじゃロリ妾貴族ドラゴン。このナナ・テスカトリの属性過多がヤバい。心の中でその衝撃を抑え込みつつ、砂漠の絶種―――つまりはラ・ロの事に関してテオナナ夫婦から話を聞く。
「恐らく性能的な意味で《悪魔》に一番近いのは間違いなくこいつだろう。形態の変化を行って、それぞれの属性に対して特化した形態に変化するんだよ、奴は」
「妾ら、徹底してメタられた」
あぁ、だから一方的に食事されてしまったのか……と納得してしまう。モンスターハンター世界は、属性は本当に大事だからなぁ、と思うが、それだけじゃないとテオ・テスカトルが口にする。
「奴はある程度の時間を操作する」
「なんか酷い単語が聞こえてきた」
「自分が放った攻撃、自身の肉体限定である程度の現象の逆行、傷の高速再生、瀕死状態からの即座の復帰を行ってくる。故に避けたと思って踏み込めば逆再生された攻撃によって消し飛ぶ」
「妾アイツ嫌い」
「完全にF産ですねぇ、これ……」
完全なフロンティアマジックの使い手だった。しかし時間―――時間を操る龍、なんてシリーズ中まだ存在した事すらなかった。恐らくシリーズ初ではないだろうか、明確に時間概念に干渉する事の出来る存在は。とはいえ、ラ・ロのフロンティアでの扱い、難易度を考えると飛竜種扱いでありながら、領域的には古龍最上位の部類に突っ込んでいた存在だ。
何が出来てもおかしくはないだろう。ただ、話を聞いている感じ、どうやら複数の属性と現象をコントロールすることに特化した絶種らしい。範囲が異様に広く、そして終わらせた攻撃を再生する事で再び発生させる……事前情報が無ければ即死するタイプの相手ではあるものの、此方はまだ、ブラキディオスよりはやりやすく感じる。接近が出来るという時点で、勝機が残るからだ。
こいつに関しては、ラ・ロそのものの正統派進化の様に感じられる。というか既にインフレして極限に至っていたラ・ロがそのまま、限界を超えた感じだ。確か称号は《刻竜》だったか? それ更に上位の次元に昇華させた個体、
名称するなら《刻帝》、といった所だろうか。ラ・ロという悪魔的な飛竜が到達すべき頂点の姿とも呼べる。魔境出身の最終進化系とか本当に勘弁して欲しい。それでも殺す予定なのだが。ブラキディオスとは違い、此方は戦術面ではなく生物として圧倒的な悪意を孕んでいるタイプだ。
「雪山の《斬虐》は……まぁ、解ってるし、この際いいか」
自分でエンカウントしたので、アレがどういう存在なのかはよく理解している。全身が刃の様に発達したティガレックス、それを使って行動、移動、咆哮全てに自分とハルドメルグから学習した剣術で切れ味を伸ばしつつ、徹底して嬲り殺す事に手加減をしない、という奴だった。こいつはブラキディオス同様、戦術面で相手を殺しに行くタイプだ。
学習、対策、そして実行。観察することを忘れず、それで覚えた事を通して最も有効な戦術を選ぶ悪辣さがあのティガレックスには存在する。それが自分にとって有用であれば取り込み、運用する賢さがある。ドドブランゴを使った囮と観察、此方の剣術を盗み見ての転用、
あいつはモンスターと呼ぶには余りにも賢過ぎる。
戦い方がモンスターではなく、ハンターの様な存在に近い。
或いはそうなのかもしれない。モンスター全体、種としての天敵はハンターだ。ハンターが危険なモンスターを狩り殺すのだ。だったら強くなる時、自然と天敵の、怨敵の力を呑み込んで強くなろうとする……それがティガレックスの辿った進化の道だったのかもしれない。
合理性の化身とも呼べる。
「んで最後のが火山のアトラル・カ……なんだよな?」
「あぁ、一番シンプルで一番面倒な奴だ」
クソトカゲがなんともない様に、つまらなさそうに言う。
「通常のそれよりも操れる糸が多く、そしてより強いだけだ。そして操る時、そのスペックを最大まで引きずり出す事が出来る。それだけの生物だ、アレは」
「ん……? それだけ?」
「あぁ、それだけだ」
クソトカゲのその言葉にやや、拍子抜けする。それなら絶種と呼ぶには少々弱くないか? とは思わなくもない。だが、とクソトカゲが思い出させるように口を開く。
「忘れていないか? ここがどういう土地だったのかを」
「……うん? んん??」
「この大地に何が眠っているのか、何を使って戦った時代があったのか、忘れてはいないか?」
「んン!?」
クソトカゲの言葉に、古代の時代の発明と、何をしていたのか、その記録や神殿で見た内容を、思い出す。そして何故文明が滅んだのか、何がこの大地で暴れたのかを思い出す。少し前までは環境生物の楽園だったこの場所も、大昔は戦場になっていたのだ。だとしたら眠っている筈なのだ。
「……竜機兵、動かせるのか、その……蟷螂は」
「喜べ、一体や二体じゃないぞ」
「もしかして一番やべー奴じゃねぇのかそれ」
竜機兵、かつて人と龍が殺し合う事のきっかけとなった兵器。百の竜の素材から生み出される、人工の命。ゴア・マガラのプロトタイプや、《眠り姫》の兄弟たち。それらが戦いで破壊され、この大地では眠っているのだ。ギルドの手が入っていないのだから、当然手付かずのままの状態で眠り続けているのだ。
それを複数同時に操るというのは、ある意味絶種単体よりもやばいと表現できる。
「ただ、アトラル・カ自体はそこまで強くはない。その能力を極限まで伸ばす方向に進化したようだな」
「つまり斬れば殺せる、か。奇襲で一気に殺すか、物量を回避して斬り込むか……攻略法はどちらか、か」
「ま、出来なければ死ぬだけだからな」
簡単に言ってくれる糞トカゲの存在に少しだけイラつきを覚えつつも、その言葉に偽りはないのだから、溜息を吐いて、古龍達から得た情報を並べてみる。死亡している絶種はブラキディオス一体のみ。それ以外は現状、ダメージらしいダメージさえも受けていない。
雪山を根城にする《斬虐》のティガレックス。《狩り》を行う絶種になる。戦闘方法を学習し、そして自分に適応させながら戦闘力を磨いて行く。悪辣さという意味ではこいつが一番上なのかもしれない。ハルドメルグが言うには、こいつは殺す為であれば手段を一切選ばないという性質が存在するらしい。
砂漠に君臨する《刻帝》のラ・ロはより《悪魔》に近しい存在として進化した。様々な属性を操るだけではなく、限定的な時間概念の操作を取得する事によって自分の放った属性攻撃をリプレイとでも表現すべきことを行い、一度の攻撃で複数の行動を割り込ませる事が出来る。相手の弱点を見極めて徹底して手を封じ込める知性がこいつには存在すると言われている。
火山に座す《躯王》とでも呼ぶべき竜ではない、甲虫の王者アトラル・カは自分の特性を更に強める形でラ・ロ同様、正統派の進化を果たした存在だと言える。だが悪意に歪んでいるのは他の連中となんら変わらない。かつてこの地で滅びた竜機兵をその糸で複数同時に、本来のスペックで使役する事が出来る。質と量の暴力で殴りかかってくるのが想像できる。
どれも方向性が違うだけでめんどくさい。
《斬虐》は時間と相手を与えれば際限なく賢くなって行く。《刻帝》は遠距離も近距離も関係なく薙ぎ払って蒸発させて来る。《躯王》はソロ竜大戦という感じだ。どいつもこいつも人類が戦って勝つことをまるで考えずにデザインされたような滅茶苦茶さだ。
だがあえて、最初に挑む相手を選ぶのなら、
「ティガレックスから殺しに行くのが無難、か」
お互い、キリングレンジが近接である以上、接近する必要がある。その必要がない他の二体と比べ、《斬虐》のティガレックスが自分から接近してくれるのであれば、まだ勝機が見えて来る。ぶっちゃけ、他の二体に関しては完全に気配を遮断してから奇襲による必殺でしか勝利するイメージがまるで湧いてこない。見る事が出来れば話は変わるかもしれないが現状、勝ち目は薄いとしか言う事が出来ない。
いや……一番
どちらにしろ、最終的には全部殺す必要がある。そう考えると順番の違いでしかない。それにそろそろ、
「幼い姫に会いに行くには《斬虐》が邪魔ではあるな……なら一番最初に殺したい、そうだろう?」
内心を透かされたような言葉に、やはり少しだけクソトカゲにイラっとするが―――その言葉自体、間違いではない。そもそも、
守護竜を倒し終えたら、一番最初に彼女の所へ行こう、と決めていたのだ。あの守護竜達を全員倒せば、それだけの成長を見込める。つまり、絶種と最低限戦えるレベルまで自分が成長している……筈……なのだ。だから雪山の絶種を殺し、その足でそのまま霊峰へと、彼女の居場所へと目指す。
そこで、彼女を―――殺す。
このクソみたいな世界、その役割から解放する。
それが自分に出来る事の全てだと思っている。その為だけに、守護竜を殺した。死にたくないから、彼女を殺してあげないとならないから我慢してきた。そしてそれも漸く、後少し。終わりが見えて来た。だから、
「準備が整い次第、雪山に入る」
その言葉を自分の口から放った。それに異論をはさむ存在はいなかった。黒麒麟は納得している様子で、テオナナ夫婦はお互いにクッキーをあーんさせあっていた。ハルドメルグは相変わらずローブの下で何を考えているのかまるで解らなく、
ミラバルカンは、どこか楽しそうだった。楽しそうに此方を見ているのが良く見えた。だから眉をひそめ、そしてなんだよ、と少し、機嫌の悪い声をミラバルカンへと向けた。それを受けミラバルカンがいや、と声を零した。
「お前には関係のない事だ。それよりも殺す覚悟は出来ているのか? 躊躇しないのか?」
「今更……足を止める事もないだろ」
ミラバルカンが何を求めているのか。それを彼がその口から放つことはないだろう。だけどなんとなく、彼の求めている事は解る。そして彼自身が、その予測を超える様な展開を待ち望んでいる事も、察している。根本的にどうにでもなる、と本人が理解しているからこそ、楽しんでいる余裕だった。
そのにやけ面を絶対にその内、ぶち壊してやるからな、このクソトカゲめ。
心の中でそう呟きながら、対策会議は一旦閉幕した。拠点に新たな住人を増やしながら。それが終わった所で、クソトカゲがオオナズチ人形をテーブルの上に叩きつける様に乗せた。
「それはそれとして、古龍の恥晒しをどうするか、このまま追加で会議しないか?」
「200年程パシらせればいいだろう」
「いや、それじゃ屈辱感が足りない。火口に投げ込もう」
「ドンドルマに向けて投げ捨てるのはどうだ。ハンターが蟻の如く群がりそうだ」
やはり古龍は邪悪。それを確信しつつ、絶種討伐の為の準備が進む。
秋から冬へと変わる頃。実りから終わりの季節へ。騒がしくも世界は静かに。
ブラキはフルカウンター型。何をどう手段を変えても、剣でしか戦えない以上サバイバー君が永遠に勝利する事の出来ない相手だったので、ジョーニキの特攻は唯一、勝率0%の相手を潰すという結果に。
戦術学習特化とも言える斬ティガ。F産龍の究極型とも言える刻ラロ。ゲームでは絶対に見ない物量と質に特化したアトラルカ。方向性は全部違っても、究極的に悪魔的に悪意しか込められていない進化、戦闘方法を取ってくるという事で共通している。
実は修正前段階だとここに《山喰い》オストガロアというヤマツカミの皮を被った陸戦ガロアを登場させる予定だったけどこっそりオミット。コンセプトはある程度カマキリの方に受け継がれたり。
後1回、準備や確認挟んだら雪山かなー……。