※この作品はR-18です。

Monster Survivor   作:てんぞー

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6年目 春季 失楽園最終連戦 前戦 《躯王》 Ⅱ

 開戦の号砲は竜機兵達のブレスによって放たれた。

 

 音波。大瀑布。轟雷。雷炎。氷絶。風極。酸。毒。

 

 何十種類という混ざり合ったブレスが一斉に超質量となって襲い掛かって来た。もはやそれを表現するならば壁という言葉が近しい。閃光と音量によって一瞬で空間が満たされて、白い光だけが目の前の空間に満たされた。物凄いレベルの大歓迎だった。これでもか、と言わんばかりの歓迎のブレスだった。

 

 属性のバリエーションなブレス、その大合唱にはまともに受けようとすれば目が潰れ、耳が潰れる音量と質量があった。ブレスそのものが届く前に脳味噌が吹っ飛ぶ、そういう非物質的な攻撃が衝撃の前に迫っていた。

 

『はっはっはっはっはっは―――!』

 

 笑いながらミラバルカンが口からブレスを放ち、熱線―――或いはビームと表現できるそれが融合ブレスを正面からぶち破りながら大地を融解し、融かした次の瞬間にはそれを蒸発させて固め、そして再び融かす。そのプロセスを無限に繰り返しながら概念的な熱量でブレスによる被害を蒸発させ、一直線に放たれたその射線、大地からマグマのカーテンを生み出した。笑いながら放たれたミラバルカンのブレスはかなり気合の入った一撃であり、それが本人の今のモチベーションやテンションを簡単に証明していた。テンション高い連中ばかりだなぁ、

 

 と思いながらも既に剣は振るわれ、音も閃光も切り裂いて敵陣へと飛び込んでいた。まぁ、テンションが高いのは連中ばかりではない。

 

「はーっはっはっは、せめて派手に逝かせてやるぜ……!」

 

「では一番槍を頂こうッ!」

 

 自分も間違いなく、連中の高揚に引きずられて、テンションを上げていた。いや、この状況でテンションを上げられない理由がなかった。

 

 アルマは恨まれていなかった。彼女の生みの親だけではなく、その兄姉たちも彼女を恨まず、愛していた。彼女は愛されて生きてきた子なのだ。

 

 だから自分の行いに―――過ちなんてなかった。

 

 それを胸を張って証明できるという事が嬉しく、そして誇らしく、笑みを浮かべずにいられなかった。それがミラバルカンにも解っているのだろう、お互いにテンションが、気力が既に限界を超えている状態だった。超物量を前に、一切怯むことなく飛び込みながら一番前に飛び込んできた小型の竜機兵を前に、

 

 何時も通り、複数の斬撃、それを一つに束ねて一閃で振るう。幾千幾万と振るって紡いできた軌跡が一振りへと昇華され、回避も防御も出来ない意識の虚を突きながら物理的な強度を無視する様に()()()()()()()()()()一撃で容赦なく、

 

 一切の慈悲もなく10メートルの巨体を斬圧を伸ばす様に流し込みながら一撃で両断する。

 

「見事! 冥府より活躍を見守ろう……!」

 

 両断された竜機兵が満足げな声を放ちながら真っ二つに切り裂かれ、その肉体から魂が抜け落ちた。だがそれが消えるのと同時に、アトラル・カの不可知の思念の糸が伸びて、それが死体を繋ぎとめた。

 

 両断した筈の竜機兵の断面がくっつき、そして再び動き出そうとする。だが動き出す前にその肉体が塵になって崩れた。

 

『殺したのは蘇らない様に俺が葬ろう。貴様は思うがままに振るえ。お前の戦いだ』

 

「サンキュー」

 

 ミラバルカンの咆哮によってアトラル・カの糸が蒸発する。それを合図に、一気に竜機兵へと向かって飛び込んで行く。使える武器はこの剣一本、故に一切止まる事は出来ずに、前へと踏み込んで、体術と剣術の全てで自分よりも体の大きい竜機兵たちを再殺する為に踏み込んで行く。

 

 自分よりも遥かに早く、重く、そして巨大な肉体から放たれる音速を超える拳を斬り払いながら起点として利用し、剣で受けながら斬って、その衝撃で体を浮かべ、攻撃してきた竜機兵の上に乗る。そこに自分の力は極限まで使わず、腕を動かす筋力程度の力しか使わない。後は技巧で全部、受け流して体を上へと押し上げる。そうやって竜機兵の上に着地しながら首を一刀で斬り払い、殺しながら塵になる前に竜機兵から竜機兵へと飛び移りながら殺して回る為に移動する。

 

 それしか出来ないし、それをやるしかない。

 

 なら何時も通り、やるのだ。

 

 ブレスを吐こうとする姿を直感すれば他の竜機兵を盾にし、それで射線を遮りながら殺して素早く跳躍しながら連続で移動する。これが草原の中に十数体、という規模である程度散開していたのであれば捉えられたのかもしれない。だが密集した状態で百近い集団が襲い掛かって来れば、誤射を気にして攻撃を放つことが出来ない。

 

 いや、《躯王》ならそんな事気にせず、自爆攻撃を連続で指示するだろう。

 

 だがその操作をミラバルカンが干渉合戦の果てに無効化している。そのおかげで命を繋いでいる状態にすぎない。余裕であると考えたり、慢心する事なんて出来ない。アトラル・カの干渉が存在しない内に、

 

 斬り殺せるだけ斬り殺す。

 

 跳躍と斬撃を同時に行い、斬り払いながらそれを推進力に変えて、巨体から巨体へと飛び移って行く。斬り殺した竜機兵が背後でミラバルカンの追撃によって即座に塵に変わって行く。その度に言葉が残されて行く。

 

「人に狩られる竜として終われた事に感謝を」

 

「その道行に幸いを」

 

「我らの末妹を頼むぞ」

 

 言葉を積み重ねられる度におう、と小さく答えながら跳躍し、そして竜機兵を同じように足場にしながら接近して来る姿が見えた。従来の姿よりも更に小型化させ、その色は色素を抜いたような灰色をしており、その姿は素早い動きや派手な攻撃の裏に隠れ、瞬きをすれば即座に見失ってしまいそうな程存在感が希薄だった。

 

 或いは()()()()()()とでも表現できる。そう、それだ。

 

 ()()()()()()()()()()()んだ。見ても動きが理解できない。攻撃の矛先を理解する事が出来ない。攻撃の前兆を感じ取れない。それは当然の事だ。《躯王》アトラル・カは()()()()()()()()()()()()()()()のだ。そして死んだ状態のまま成長し、そして狂化されているのだ。

 

 生きている生物との戦いの経験の通用しない相手だと、一目見た瞬間に理解できた。竜機兵を足場に連続で跳躍しながら接近する小柄なアトラル・カの鎌は合計で四つ、どれも禍々しい形に曲がりくねりながらのこぎりの様な、苦痛を与える為だけの刃をしている。水晶剣が恐ろしく頑丈だから斬り負けるとは思わないが、

 

 それでも触れたくはない形状の刃だった。

 

「忘れては困るな!」

 

「我らを忘れれば足を掬われるぞ!」

 

 竜機兵を足場に連続で跳躍しながらも、足場にしようとする竜機兵が高速で仲間に体当たりを叩き込む事で、着地先をズラし、足場を無くす。お前ら、割とノリとテンションで束縛を抜けている癖にきっちりアトラル・カと連携取ってくるよなぁ! と心の中で叫びつつ、着地する筈だった竜機兵の代わりに空中で剣を足場にし、

 

 それで空中二段跳びをしながらグローブで剣を引き寄せる。回転しながら引き寄せられる剣を素早く手に取りながら、方向転換と共に竜機兵の顔面に着地し、その頭をスライスしつつ、

 

 その向こう側にアトラル・カの顔面を見た。

 

「おっと危ない」

 

 振るわれてくる四連続の斬撃を皮一枚をもぎりぎり切れない様に回避しながら、塵になる竜機兵を足場に、跳躍しながら連続で斬撃を詰めてくる姿を回避する。その体に生気が存在しない。つまり生物として発する方向性、気配というものが喪失している。故に動きが読めない。

 

 アトラル・カ自体は。

 

 だが動けば風が揺れる。音が生まれる。動きが発生する。

 

 普段は呼吸と気配、そして殺意を読み取って攻撃を回避している。それが喪失する相手にはちゃんと、対処法を考えている。故に跳躍し、足元で歓喜しながら暴れ、アトラル・カに合わせて攻撃を放とうと殴り、体当たりして来る竜機兵の軍団を斬り流しながら推進力に変えて進みつつ、

 

 アトラル・カと竜機兵の上を戦場に切り結んで行く。理解の出来ない斬撃がうねる様に四方から連続で襲い掛かってくる。タイミングを絶妙に乱しながら放たれる連撃は斬り返す動きが絶妙に届かない速度、距離を選んでいる斬撃だった。絶対に一閃で斬り払える攻撃を選ばない様にアトラル・カは()()()()()()()()()()鎌で襲い掛かって来ていた。

 

 その体―――自分自身に糸を絡ませる事で肉体を超える限界駆動を行っていた。剣を迫ってくる姿に通そうとすれば、ありえない軌道で動きが回避に入る。つまり空中で直角に曲がる様な動きによって斬撃の到達を阻むのだ。

 

 ちょっと、困った。

 

 苦手なタイプだ。

 

 打開策を求めて視線をミラバルカンへと片目だけ向けてみれば、

 

 スーパーミラバルカンパンチで竜機兵の上半身が火山の中へと向かってシュートされていた。しかも見事、火口の方へとホールインワンしている様にも見える。それを繰り出し、そして受けながら、竜機兵もミラバルカンも両方共、楽しそうにしている。

 

 もう何をやっても楽しいんじゃないかなぁ、この馬鹿ドラゴンども。

 

 だけど、まぁ、

 

「送るなら、泣いていかにも悲しんでます、ってよりみんな笑っている方が気持ちいいよな」

 

 なにせ―――死者は文句を言えない。

 

 こんな現象、ズルでしかない。だけど元々、葬式なんて()()()()()()()()の為の行いなのだから。そこに不謹慎やらなんやらって付けるのは結局のところ、個人としてのモラルと主張の問題なのだから。だから自分は思うのだ。

 

 いかにも悲しんでます、という風に執るよりは、笑って、お前との時間は楽しかったぜ、と言ってやる方が百倍健全だと。百倍、想い出が輝いて見えるのだと。

 

 だから笑う。

 

 アトラル・カがクソの中のクソ性能しているという事は間違いのない事実だが、それはそれとして、この竜機兵連中は良い奴らばかり。その生まれを恨む事は誰にだって出来る。親を選ぶ事は誰にも出来ない。だけど自分がどういう存在になるかを選ぶ事は、誰にだって出来る。

 

 生まれがそうだから、残りの人生までそうである必要はどこにもないのだ。

 

 生き方は、自分で選ぶものだ。

 

 そしてこの竜機兵たちはそうある事を望んだ。

 

 故に果たす。

 

 そこには同情は一切いらない。

 

「大体見切ったぜ」

 

 言葉と共に竜機兵の頭の上で足を止め、迫ってくる無限軌道のアトラル・カを相手に、三段先の動きを予測し、それに合わせて斬撃を通す。予測されたようにアトラル・カの鎌が二本、剣に接触しそうになり、それを鋭角に捻じ曲げて素早くアトラル・カが回避するのに入る。それに合わせ、無限に軌道を捻じ曲げるその動きに合わせ、

 

 常に先手を取り続ける事でアトラル・カの斬撃を全て、それが完全な加速に乗る前に押しつぶす。足元の竜機兵が口を開き、ブレスで薙ぎ払おうとしてくるのを蹴り飛ばして逃げれば、その姿をミラバルカンが殴り飛ばして塵に返した。

 

 ここまでまともに戦おうとする古龍も珍しい。態々殴り合う必要すらないだろうに、それでも殴り合って倒す、というのは一種のミラバルカン流の敬意の見せ方なのかもしれない。

 

 どいつもこいつも、喋り、対等な目線で話し合ってみれば面白かったりいい奴だったりする。

 

 必要なのは自分から歩み寄ろうとする事なのかもしれない。

 

 ―――それでもどう足掻いても受け入れられない相手はいるのだが。

 

逃亡する様に竜機兵を足場に跳躍する。何度目にもなる落下と跳躍、受け流しによる反動での加速。繰り返せば繰り返すほど勢いが乗って行くが、同時にがりがりと体力が削られて行く。人間としてのスペックは全て技量に極振りされている以上、身体のベースは日本人で、自分がそう望んだ。だから長期戦なんて出来ない。

 

 だから刃の方向性を見せない、捉えられない、知覚が極限まで難しいアトラル・カの存在は天敵とも言える。

 

 ただ、まぁ、慣れてしまえば楽だ。

 

 スペックを人間以上、高速飛行できる存在、慣性無視、そして人類では不可能な方向性から斬撃を飛ばしてくる相手だと想定すればいい。読みも生体ベースではなく、ハルドメルグの水銀を相手にした時の様な無機質の多重稼働ベースに切り替えれば。

 

 生物だと思わずに殺せばいいのだ。

 

 吠える竜機兵たちの戦場で、足を止め、斬撃を通す。無限軌道の先を予測し、そしてアトラル・カの回避が不可能な、知覚を超える斬撃を放つ。

 

 それが飛び込んできたアトラル・カの姿を真っ二つにした。だがそれで終わらせず、十字になる様に斬撃を刻んで、竜機兵の上にアトラル・カの躯を晒し、

 

 次の瞬間には躯がくっつくのが見えた。

 

『なんだ、蒸発させられないのか? 人間は脆弱だなぁ』

 

「お前は黙って親戚筋と殴り合ってろ」

 

 言葉と共に跳躍し、襲い掛かってくる翼撃を回避し、そのまま足場にする。数が多すぎて全てを相手しているとやはり、時間も体力も足りない。となると竜機兵を足場に、アトラル・カを始末するのが一番早い。だが勝てないと踏んだのか、アトラル・カがその姿を竜機兵の合間に隠し、身をくらませた。逃げたか? と一瞬だけ考え、否定する。

 

 となると、大体何をしようとするのか解ってくる。

 

 足場を殺して跳躍しながら、ミラバルカンの背へと飛び乗る。

 

 それに合わせ、大地が鳴動を開始する。それに合わせ、ぼろぼろと冥府より帰ってきていた竜機兵たちが崩れ始める。

 

「ここまでか」

 

「だが満足だ、実に満足であった」

 

「実に良き闘争であった」

 

「楽しかった、ありがとう」

 

「我らと向き合い、忘れようとせずにいてくれてありがとう」

 

「最後まで戦えない事だけは惜しいが、託そう」

 

「良き時間であったから故に……」

 

 竜機兵たちが朽ちる。その光景をミラバルカンの頭の上から眺める。呼び出され、そして歓喜に吠えた姿が朽ちて、塵となって風に吸い込まれ、それが草原に散らばりながら消えて行く。かつての残滓さえ、もはやこの楽園には残されない。

 

 未来へと進む上では不要だ。

 

 だからこの結末は当然のものだ。

 

 そしてその塵の中から、巨大な機構が出現する。かつて、ゲームのスクリーン内で目撃した要塞の様な姿よりも更に大きく、禍々しく、そして何個も撃竜槍を背負った、異形の巨大機構の姿が出現する。大地を揺らしながら出現する姿は、

 

 それこそ、ミラバルカンよりも巨大だった。

 

 全長凡そ70……いや、80を超えているかもしれない。そんな巨大な姿がいくつもの鋼の足を持ち、そして糸によって吊るされる十数の撃竜槍を浮かべ、そして旧戦艦らしき砲塔を何十も備えた、陸上戦艦とでも呼べるような巨大な姿に変貌した。

 

「いやぁ……大陸のハンターはアレと殴り合うって噂ほんと? 人間やめてんな」

 

『安心しろ、違う意味でお前程は止めてはいない―――掴まっていろ!』

 

 片膝をつく様にしつつミラバルカンの角を掴み、口から炎を吐き出しながらミラバルカンが吠えた。

 

 それに合わせ、要塞化アトラル・カの全身から蒸気が溢れ出し、それが空気を汚染し、溶かし始める。成程、こいつは文明が生んだ悪意を凝縮させたようなやつだな、とその姿を見て思う。

 

 死者の利用。

 

 環境の汚染。

 

 殺してもその死骸を使う。

 

 壊して作って壊して作り直す。

 

 人間が行って来た悪事、それを形にした様な性質の絶種だった。人と戦う際に振るうのは人類が生み出した文明という、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。積み上げて来た文明によって滅ぶ。人間が積み上げて来た努力が、その象徴を奪われ、それによって滅ぼされるのだ。

 

 これ以上ない屈辱である。

 

『まぁ、俺には関係ないがな』

 

「やっちまえ」

 

 言葉と共にミラバルカンが踏み出した。その姿の二倍以上の巨体を誇る要塞がその巨体の質量をぶつける様に突進してきた。

 

 草原の大地の上で、ミラバルカンと要塞が正面から組み合った。その衝撃で周辺の大地が吹き飛び、クレーター状に大地が剥がれながら陥没し、ひび割れが草原全体に広がって行きながら爆裂する様に吹き上がって行く。此方へと来るものだけをミラバルカンがどうやら、きっちりと殺してくれているらしくミラバルカンの頭の上はかなり快適だった。

 

『愉快だ! この程度で俺を仕留められると思った貴様の態度が愉快だ……!』

 

 組みついた要塞をそのままに、逆にミラバルカンが一歩、火山へと向けて推し進めた。それに対抗する様に撃竜槍が空から弾丸の様に射出され、それがミラバルカンを狙ってくる。

 

「おっと、悪いがおさわりは禁止だ」

 

 手を出すまでもないだろう。だが落ちて来る撃竜槍を切り裂き、そしてお互いにぶつける様に衝突させ合い、それが綺麗にミラバルカンを中心とした周囲に落ちてくるように剣を振るって叩き落す。これが液体や流体であれば面倒だし切り分けるのが無理に近いのだが、

 

 質量を持った物質的な攻撃であれば、力加減と技巧だけでどうにかなる。相手が50メートル以上になったら質量差で難しいが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 切り裂いて無力化し、相手の次の行動の前にミラバルカンが要塞に噛みついた。

 

 そして噛みついたまま、ブレスを放った。

 

 マグマの熱線が鋼鉄を一瞬で噛み千切りながら炎を貫く様に吐き出し、大穴を開けて地面を穿ちながらそれを上へと持って行き、大地に線を引きながらそのまま空へと向かって、傷口を再生できない様に熔かして天へと持って行くように、真っ二つにした。火山まで届くブレスはそのまま、火山の火口まで繋がる溶岩流の道を生み出していた。

 

 くすぶる炎を口の端から吐き出しつつ、ミラバルカンは口の端を持ち上げる様に笑った。

 

『成程、まだ死ねないか』

 

 真っ二つに融解させ、マグマが侵食する中でもアトラル・カは滅べずにいた。否、既に死亡している。そしてその上で動いているのだ。故に存在としての活動そのものがあやふやなのだ。

 

 死んでも動ける。生きているのに死んでいる。死んでいるからこそ生きている。

 

 だからどれだけ致命傷を叩き込んだ所で、死を迎える事がない。

 

 或いはその存在そのものを全て、綺麗に消し飛ばしでもしない限りは。

 

 融解するアトラル・カはその姿を再構築しようと融解した部分をオミットし、その姿をもっと強力な要塞へと変化させようとしている。ミラバルカンに対応してもっと巨大で、もっと破壊をまき散らす姿へと変化しようとしているのだろう。これ以上大きくなると流石に、始末するのが手間になるだろう。

 

「だけど俺、一緒に戦ってくれる古龍は一人じゃないんでな」

 

 素早く、ベルトに装着していたダガーを投擲する。それが要塞を再生させようとするアトラル・カの内部へと取り込まれ、そして埋まった。姿形を変え、撃竜槍を更にアトラル・カが増やそうとする。今度は近距離でも使える刃と圧倒的質量のウォーハンマーを、兵器を更に生み出して纏おうとして、

 

 その動きが停止した。

 

 ミラバルカンが羽ばたき、空へと舞い上がる。追いかけようとしても、要塞の動きは鈍く、徐々にその姿に氷が覆って行くのが見える。足を、体を、要塞から抜け出そうとしたアトラル・カの本体そのものを覆って行く。

 

 投擲されたのは黒麒麟のダガー。

 

 力を使い果たすレベルで力が注ぎ込まれた、二本目も二回目も存在しない、一度だけの武器。それを使っただけだった。そしてそれを呑み込んだ結果、アトラル・カはその姿が完全に動けずに凍り付いた。

 

 その姿を、天から災厄を呼び寄せたミラバルカンが一撃で呑み込み、細胞も塵も何も残さないように、概念すら滅び去る様に消し飛ばした。

 

 その後には融解し、滅び去った草原の姿だけが残った。

 

 アレだけ楽しそうにしていた竜機兵たちも、アトラル・カの姿も、もはやそこには残されていない。この楽園そのものの未来を示唆する様に、滅び去って、美しかった景色が消え去っていた。

 

 その景色を、たっぷりと眺めた。

 

「次で最後、か」

 

『あぁ。そして今みたいな俺の攻撃では倒せない相手だ』

 

 《悪魔》メフィストフェレス。

 

 それは無限にエネルギーを吸収し、それを吐き出す事で完全なカウンターを放つ事が出来る生物。ミラバルカンが本気を出せばどうにかなるのだろうが、今度は、完全に消し飛ばすような攻撃は出来ない。それをしない。アトラル・カはそうしなければ殺しきれない相手だった。だが次は違う。()()()()()()()()()相手だ。

 

 つまり、必然的に俺が倒す必要がある。

 

 ―――漸く、ここまで来てしまった、という言葉が頭をよぎった。

 

 だから口を開いた。

 

「行こう、友よ。いい加減、楽園を伝説として終わらせよう」

 

『あぁ、行こう。最後の戦いだ』

 

 言葉と共に、前哨戦を終わらせ―――最終戦へと向け、火山へと飛んだ。




 頼る事に恥ずかしさはない、それが助け合うという事であるが故に。

 倒せないなら頼る。その為に手を取り合うという。拙者、終盤で託された装備、アイテム、それを一つずつ使い潰しながら戦い、最後に進んで行くという流れ大好き侍。場面の一つ一つで丁度良く道具が命を救って先に進むというシーンが解っていても大好きで御座る。

 友情感強いよね。

 次回、悪魔の目覚め。
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