※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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プロローグ
前編


宮殿の自室の窓からみえる、月明かりに照らし出された景色を一人で眺めながら、私は今までのことを思い出していた

手の届かない場所に行ってしまった人たちの顔を。

そして、二度と戻ってこない風景を。

 

私の暮らす国では、これまでありとあらゆる不条理がまかり通っていた。

差別。

嘘。

本音と建て前の乖離。

弱者に対する侮辱行為。

富の偏在。

依怙贔屓。

拡大する一方の格差問題と、固定化が進む階級問題。

そして何より許せなかったのは、この世界にはびこるありとあらゆる不条理を、さも当然といわんばかりに容認し、放置している人たちの存在だった。

貴族。

政治家。

官僚。

経済界。

彼らのほぼ全員は、一般庶民を「モノ」としか見ていない。

司法や警察ですら、彼らが起こす問題には目を瞑り続け、関わらないようにしてきた。

私が彼ら以上に怒りを覚えるのは、労働組合と教育界の人間だ。

本来彼らは弱者の側に立って活動すべき人たちだが、実際は強者の側に立ち、本来守るべき者たちを虐げている。組合幹部は経営者と一体となり、社員を監視している。もちろん労組幹部が、非正規社員の雇用を守る活動はしない。それどころか、非正規社員をモノのように扱い、彼らがちょっとでも意見を言おうものなら、すぐにクビを切る。

そして社会に人材を送り出す教育界の人間は、人間として本来持っている権利は全く教えず、社会に従順であれと教え子にたたき込む。学界に至っては、完全に経済界の言いなりである。

メディアに至っては、ひたすら政権べったりの報道を繰り返し、本来伝えるべき事項については、ほおかむりを決め込み、巧妙に論点をずらすことで、真相を曖昧にする。そうしてまた一つ、悲劇の種が生まれることになるのだ。

もちろんこの国が抱える問題について、厳しく指弾する人たちが大勢いたのは事実だ。

正義感の強いフリージャーナリスト。

NGO。

ごく一部の労働組合。

「社会民主主義」「共産主義」を主張する議員たちと、心ある官僚たち。

そして少数ながらも、これらの問題を解決しようと汗をかいた王族と貴族たち。

しかし彼らのほとんどは、権力に近くなれば近くなるほど従前の主義主張を捨て、ひたすら体制側に媚び諂う存在に堕ちていった。

なぜなら彼らの多くは、体制側と同じ階級出身者だったからだ。

だから彼らは口で「改革」を叫んだところで、虐げられる者の気持を理解できないし、しようともしない。ひょっとしたら、最初からその気もなかったのだろう。

上の階級は口で「弱者目線」「格差解消」を訴えながら、本音では彼らのことを蔑み、バカにしている。政治家は政治家で、選挙の時だけ弱者保護を訴えるが、当選後は平気で態度を変える。もちろん差別されている側も、彼ら上流階級の本音は百も承知だから、彼らの意見に耳を傾けることもない。

虐げられるモノも、時には反撃した事もある。しかしそのたびに権力に弾圧され、メディアの仕掛けるネガティブキャンペーンにより、社会から孤立する。彼らは権力の前に、必要以上の懲罰に心身ともボロボロになり、その多くは悲惨な結末を辿った。

バカにされ、騙され、傷つけられ、存在そのものを否定される。そして時には命を奪われる。そんな社会にすむ住人、いや、そんな社会にすむしかない人たちのことを、心の底から慮る人たちが、この国にどのくらいいるのだろうかといつも考えていた。

ところがそんなある日、意外なところから虐げられる者のために立ち上がる勢力が現れた。そしてその勢力の中心人物は、私もよく知る人物だった。

人々は狂喜乱舞した。ついに、自分たちの願いを聞き届けてくれる人間が現れたと。

しかし、その歓びもつかの間だった。

人々は思い知る。

彼らもまた、自分たちを踏み台にして、権力を握りたかっただけなのだと。

自分たちの願いは聞き届けられることはないのか?

私たちはずっと負け犬のまま人生を終わるのか?

だが虐げられし者たちは、こんどは諦めなかった。

自分たちのできることをやるんだ!という強い信念を持ち、ありとあらゆる手段で反撃に打って出た。気がつくと、私も彼らの仲間に加わっていた。知り合いの多くも、抵抗運動に参加した。国内は、未曾有の混乱状態に陥っていた。

もちろん、体制側もただ黙って手をこまねいていたわけではない。ありとあらゆる手段を使って、民衆たちの反乱を鎮圧しようとした。

かくして国内では、体制側と反体制側の間で、大願成就と陰謀阻止の目的のために、さまざまな陰謀が企図された。出典不明のウワサやデマも多数流れた。混乱収拾のために、両者の間で、何回も交渉が行われた。だが交渉は決裂し、最後は武力闘争にまで発展した。

力と力の対決ならば、体制側が有利な展開のはずである。だが実際にはそうならず、最終的に勝ったのは反乱者たちだった。

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