※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#36

「さっき体温測ったら、38度を超えていたぞ。いままでよく平気でいられたな。おかしいと思わなかったのか? 」

「朝からなんとなくだるいと思っていたけどさ、昼過ぎになればよくなると思ってた…甘かったなぁ…」

はーっとため息をつきながら、オルガが剣呑とした表情を私にを向ける。うわ、まずい。これは本気で怒っている顔だ。

「すぐに医者に診てもらわなきゃダメだろうが」

「ごめん」

「もし今日公式行事があったら、しれっと参加するつもりだったんだ」

「さすがに、そんなことしないって」

「いいえ、お姉様だったらやりかねないわね」

冷たい口調で、ルイーゼが言い放つ。

「素直に『助けてほしい』っていえないのは、お姉様の悪いところよ」

「ハイハイわかりましたよ…それよりも、主治医には連絡を取ったの? 」私は、オルガとルイーゼに尋ねる。

「当たり前じゃない。もうすぐこっちに来るってさ」

ムスッとした表情で、オルガが応える。

「そんなことよりも、聞きたいことがある」

濡れタオルを交換し、新しいタオルを私の額にのせながらオルガが尋ねる。

「私たちの留守の間に何があった? 誰か来たのか? 」

私は、近衛隊長が屋敷を訪問し、今度の私付きの武官がキャサリンになったことを伝えたと話した。

途端に、オルガの表情が曇った。

「あのオンナが、マリナの護衛を担当するのかよ……」

熱で気分が悪いをのこらえながら、私はオルガを諭した。

「私は、キャサリンでよかったと思っている。よく知らない人間に、私の身を護ってもらいたいとは思わないもの」

「社交界で『偽善者代表』だの『あばずれ』だの、さんざん悪評を叩かれているんだぞ。あんな女を自分の護衛にされるなんて、私があなたの立場だったら『ふざけんな! 』って怒鳴り返すがな」

「元不良少女のアナタが、そんなことを言うか」

皮肉交じりに、私はオルガに言い返す。

「だってそうじゃん。国中のメディアから『将来国内のフェンシング界をしょって立つ逸材』といわれていたのに、あんな形で競技をやめちゃってさ。しかもその理由をきちんと説明しない。関係者に話すのがイヤなら、せめて私たちにだけ本音を打ち明けてくれればいいじゃん。でも、彼女は絶対話さない」

「彼女には彼女なりに、話したくない事情があるんでしょうよ」

そこへ侍女の一人が、主治医の来訪を告げた。オルガがすぐさま「中にお入りください」と、入り口に来ているであろう主治医に声をかける。

「まーた倒れちゃったんだって? 」

そう言いながら中に入ってきたのは、私の主治医の一人であるプリシラ・ローラ・ブルグミュラー。この国の医療界の大物であるブルグミュラー一族の一員で、私たちの先輩だ。

「どれどれ、お姉さんが診てあげようか」

軽いノリで私に話しかけると、ベッドのそばにいる椅子に腰掛けた。苦笑しながら彼女は、カバンの中から聴診器を取り出す。

その様子を見ていたオルガは、渋面を浮かべながら

「先輩、真面目にやってください」と突っ込んでくる。

「あら、私はいつも真面目にやってんじゃん」

「あのねプリシラ、ここは皇族のお屋敷なのよ。そしてあなたが診ている患者は皇女殿下なんだから」

「ハイハイ、わかりましたよ」と、プリシラは手をひらひらさせると

「それでは殿下、診察いたしますので」

といい、私の診察を始めた。

聴診器を私の体に当てて丹念に私の体を診察すると、自分の掌を私の額に当てた。

「まだ熱っぽいね。体温測った?」

「さっき測ったら、まだ38度以上あった……」

ふーむ、といいながら、プリシラは錠剤をカバンの中から出した。

「とりあえず、いつもの薬出しておくから、これで様子を見ようか。いつもの症状だから、一晩寝ればだいぶ症状が落ち着くと思うけど、よくならないようならまた連絡してね」

「ありがとう」

「それじゃ、お大事にね」

よいしょ、といいながら立つと、プリシラはオルガとフリーダを呼び寄せ、耳元で何事か言葉をかけた。二人はプリシラが話し終わると、うんうんと頷いている。いったいなにを話したのだろう。

「いったいなにを話し合っていたのよ」私は、オルガに話しかける。

「もちろん、クーデターよ」

ニヤッと笑って、オルガが答える。

「は? どういう意味? 」

「文字通りの意味よ。病弱なあなたを領主の座から引きずり下ろし、ルイーゼを新しい領主にするからよろしくね」

「というわけで、私とオルガは、お姉様を幽閉いたします」

しれっとした口調で、ルイーゼも言葉を続ける。

「期間は、お姉様の体調が元に戻るまで」

それを聞いた私は、へなへなと脱力した。

「なによそれ?だったら『エルヴィラの体調が元に戻るまで、領主の仕事は私たちが代行するから』といえばいいじゃない」

 

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