※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#2

みんな黙って食事をしている最中

「お姉様、いったいどうしまして?」

怪訝な表情で、ルイーゼが私に尋ねてきた。

どうやら私は、知らず知らずのうちに厳しい顔をしていたようだ。私はすぐかぶりを振って

「ううん、なんでもない」

と答え、再び黙々とフォークとスプーンを動かした。

私が厳しい表情をしていたのは、現在真っ当な食材を口にできる市民が、国内にどれだけいるのか考えていたからだ。今朝この屋敷で私たちが口にしている食材は、農民が丹精こめて育てたものが使われている。もちろん農薬は一切使っておらず、使用される食材も有機肥料がほとんどで、化学肥料使用の食材はほとんどない。肉類や魚介類も同様で、前者に使われる飼料は原則有機飼料、後者はほぼ天然物で、養殖された魚が私たちの口に入ることはほとんどない。今から半世紀近く前までは、それがこの国の常識だった。

ところが食糧生産方法が変わった現在では、これら真っ当な食材を口にできるのは、王族、貴族、上流階級、そして上位中流階級に所属する人たちになってしまった。これは将来の世代に重大な禍根を与えかねない。「食い物の恨みは怖い」とは、昔の人はよく言ったものだな、とつくづく思う。

先ほどあげた階層以外の国民が食べている食糧は、ほとんどが「工場」と言われる施設で生産されたものだ。施設運営会社は

「プログラミングされた光合成システムを用いて、品質も栄養価も、畑で生産されたり、飼育場で飼育された作物や食肉と同等か、それ以上の品質の作物を生産している。肥料・飼料も最新の化学物質を使用した物を用いるので安全。我々は最新の科学と知見を用いた結果、これまで難しかった野菜等の栽培作物及び食肉、魚肉の安定供給に成功した」

と、大々的に宣伝している。そしてこのシステムが全国で安定的に稼働できるようになった結果、野菜や食肉を安価な値段で、安定して供給できるようになったと、彼らはいう。

だが私は、彼らが宣伝するシステムが、本当に国民のためになっているかどうか疑問だ。そう思う理由はいくつもある。ざっとあげただけでも

・栽培や飼育に使われている肥料・飼料の問題

・野菜栽培工場で生産されている作物は、種の取れない種類である

・工場で生産される作物及び工場で使われる肥料・飼料の原材料に、遺伝子組み換えされた材料が使われているという疑惑

そして私が一番問題視しているのが、そこで働いている人たちの問題である。

これらの施設がある自治体は、そのほとんどが他にめぼしい産業や勤め先がないところにある。しかもこれらの自治体は、長年過疎問題に苦しんでいるところが多い。地元に働き口がないため、若者は少しでも条件のよい職を求めて、大都会に出てしまうのだ。だから工場誘致が決まると、ほとんどの首長は「地元に就職口ができた」と喜ぶ。

しかし、問題はその「地元にできた新しい就職口」だ。時給は、各自治州政府が定めた最低基準より少し上回る程度、勤務形態は一応8時間労働の3交代制になっているが、実際は毎日のように残業をこなさなくてはいけない。業務内容も、事前にいわれていたそれよりもかなりきついため、身も心もボロボロになって辞めていく人が多い。労働組合もあるが、実際は経営陣と一体となって、末端労働者を監視することには熱心でも、労働環境の改善には極めて消極的だ。

労働者には派遣や短期雇用の人も多く、彼らはちょっとでもミスをしたら、容赦なく職場を追われる。だから正社員はさぞかし待遇がいいのだろうと思われがちだが、彼らも上層部から高いノルマを押しつけられ、心身ともヘトヘトになっている。もちろん彼らにも、労組の支援は全くない。労組幹部になれるのは、経営陣の覚えめでたい社員だけ。だから社員の、労組幹部に対する視線は実に冷ややかだ。

そして、全ての元凶が・・・

 

「殿下、あの男が叙勲されて爵位をうけるというのは、本当の話ですか?」

冷ややかな声で、キャサリンが私たちに質問する。

「ああそうだ」

「本当ですわ」

オルガとルイーゼが、同時に返事をする。二人とも料理を食べ終え、デザートを食べながら紅茶を口に含んでいる。私は残った料理を一気に口に詰め込む。

「お姉様、行儀が悪いですわよ」

「まだ時間があるんだから、もう少しゆっくり食べなよ」

二人は、料理にがっつく私に注意する。私は食べるスピードがやや遅いから、さっさと食べ終わろうと思ったのだが、彼女達には私の様子が、行儀悪く見えたのだろう。

「あのような人物に、宮中の行儀作法が備わっているとは、とても思えませんが」

キャサリンが、不満げにつぶやく。

「選ぶ人間が選ぶ人間だからね。当然といえば当然でしょう」

私がそういうと、その場にいた一同はさもありなん、といいたげにうなずいた。

この国の権力構造を変えるには、どうしたらいいのだろうか?

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