※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#40

もちろん、皇女としての公務はいい加減。そんな彼女の不行跡は、親戚どころか社交界にも知れ渡っていた。勘当を言い渡されても「引き取ってもいい」という一族は現れなかったのも当然である。

彼女は家を出て、 RBSの寮に住めばいいと安直に思っていたようだ。だがRBSを含めて、我が国にあるグランゼコールは、「ぼったくりエリート学校」と揶揄されるくらいにお金がかかる。もともとの学費が高い上に、実習費、教材費、寮費、果ては寄付金だのOB会費だのと、あれやこれやの名目でお金が消えていく。男爵クラスの貴族ですら、子ども1人をグランゼコールの学費を捻出するのに四苦八苦するくらいだから、一般庶民にとってはもっとハードルが高くなる。そしてそのことが、我が国の格差問題につながっているのだ。

実家から勘当されると言うことは、学校生活にかかる諸費用を出してもらえなくなるだけでなく、実家にある領地を保有する権利権を喪失することを意味する。当座の生活に必要な蓄えはあるとはいえ、それだけでは今後の学生生活を賄えるはずがなかった。

「RBSがダメならギムナジウムがある」と、オルガは公立のギムナジウム編入を画策する。だが公立校は授業料こそ無料だが、実習費や実験費などは実費がかかる。さらに寮のあるギムナジウムは、寮費も取られる。編入試験も受験料が必要だし、編入試験に合格しても、身元引受人がいなければ合格は取り消される。

これらの事実を知った オルガは、自分があまりに世間知らずである事だったことに衝撃を受けた。そしてこの苦境を打破するため、ありとあらゆる親戚や友人に頭を下げてまわった。だがそれまでわがままで自堕落な生活を送り、他人の忠告にまったく耳を傾けなかった彼女を、助けてやろうという奇特な人間はいない。日を追うごとに彼女の表情は暗くなり、それでも周囲は「自業自得だざまあみろ」と、彼女を冷ややかな目で見つめた。

そしてオルガが、最後に頭を下げてすがってきた相手は私だった。私の目の前に現れたオルガは、泣きながらこれまでの不行跡を詫び、今後はあなたの言うことを何でも聞くからといって、何度も何度も頭を下げた。

しかし、私はそんな彼女を、簡単に受け入れる気にはなれなかった。実は彼女が勘当を言い渡された直後、私はオルガを自邸に呼んだ。そして私の屋敷に住むつもりはないかと誘った。しかしオルガはその話を聞いたとたん

「ルイーゼと一緒に住むのなら、ホームレスになった方がマシだ」

と私に突っかかってきた。

今もそうなのだが、オルガとルイーゼはもともと仲が悪い。オルガはルイーゼを

「外面はいいが、陰では他人を見下している腹黒皇女」

といい、ルイーゼもオルガを

「ヤンキー皇女、皇族の恥さらし」

と、あからさまにオルガを見下していた。だからこの二人は顔を合わせると、場所をわきまえず罵り合い、時には取っ組み合いのケンカになった。

オルガが私の屋敷に来た時も、二人は罵り合いのケンカを始めた。あまりの激しさに、私は我慢できずに

「そんなにケンカしたいなら、好きなだけしているがいい。そのかわり、そんな人間を私の屋敷に住まわせるわけにはいかない。今すぐ出て行け! 二人とも!! 」

と怒鳴りつけた。

二人は一瞬黙ったものの、この二人が「はいそうですか」おとなしく引き下がるわけがない。ルイーゼは

「どうしてもお姉さまがあのオンナの身元引受人になるというのなら、私がこの屋敷から出て行く」

と言いだし、それを聞いたオルガも、売り言葉に買い言葉といわんばかりに

「こんな腹黒女と同居するくらいなら、ホームレス暮らしをする方がマシだ」

と反発した。

二人はその後も延々と罵り合い、ついにオルガは

「もういい! マリナに相談した私がバカだった! 」

と捨て台詞を言い、私の屋敷から出て行ってしまった。

私はその様子を見ながら長いため息を突くと、妹はじと目で私をにらみつけながら

「ねえマリナお姉様、本当にあの恥さらしをうちの屋敷に住まわせるつもり? 」

と、冷ややかな口調で言い放った。

「マリナお姉様の決断に口を挟むつもりはないけど、もしそうするというのなら、私がこの屋敷を出て行くわ」

すかさず私は

「バカなことをいうもんじゃないの」

と、妹をたしなめた。

「自分が逆の立場になったらと言うことを、あなたは考えたことがないの? 」

「はぁ? なにをおっしゃっているのお姉様? 私をあんなヤンキー皇女を一緒にしないで」

ふくれっ面で、妹は私に言い返す。

「お姉様だって、こんな優秀な妹を手放したくないと思っているのでしょ? 」

この妹の発言には、さすがの私も頭にきた。屋敷の当主として、これはやり過ごすわけにはいかない。

私は立ち位置を、妹の目の前に動かした。

 

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